問いしるべ
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包絡線

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包絡線

東大の問題から、直線の通過領域を考える

著者:柚木芹香

東大の問題と和・積の基本問題から、直線の通過領域を包絡線で捉える。動く図を使って、接線・放物線・判別式のつながりを確かめる。

この章の目次 · 4節
  1. 東大の問題から学ぶ包絡線(1997年・文科第4問)
  2. 和と積の正体――(u+v, uv)にも接線が隠れている
  3. 問題演習――包絡線で東大の問題を解く
  4. おわりに

01東大の問題から学ぶ包絡線(1997年・文科第4問)

問題:1997年 東京大学 前期・文科 第4問

問題

オリジナル

0≤t≤1 をみたす実数 t に対して、xy 平面上の点 A,B を

A(2(t2+t+1)3(t+1),−2),B(23t,−2t)

と定める。t が 0≤t≤1 を動くとき、直線 AB の通りうる範囲を図示せよ。


解説を読む前に、ぜひ手を動かして解いてみてほしい。詰まったら、あるいは解けたら、ここに戻ってこよう!

まず、動く直線を一本の式にする

まずは直線 AB の式を求めよう。そうしなければ何も始まらない。二点の x 座標の差は

2(t2+t+1)3(t+1)−2t3=23(t+1)

なので、傾きは

−2−(−2t)2/[3(t+1)]=3(t2−1).

傾きがわかったので、点Bを通る直線の式を書き、整理します。

y+2t=3(t2−1)(x−2t3)y=3(t2−1)x−2t3(0≤t≤1)

ここまでの計算が難しかった方は、いったん直線の式について復習してから戻ってきてほしい。ここからは、この式が求められたところから話を進めよう。

さて、ここからが問題です。

f(t)=y−3(t2−1)x+2t3=0

……受験生の皆さんの脳内をシミュレーションしてみたつもりですが、違いましたかね……? 😓

実は、この直線は「接線」だった

さて、ここで一つ、不思議な方法をご紹介させてください。曲線の見つけ方はあとで説明します。今はペンを取り出して、写経する気分でついてきてください。

曲線 y=x3−3x 上の、x=t に対応する点は (t,t3−3t)。そこでの接線の傾きは、微分係数から 3t2−3 だから、接線の式は

y−(t3−3t)=(3t2−3)(x−t)y=3(t2−1)x−2t3

これは、まさに直線 AB の式である。つまり、曲線 y=x3−3x の x=t(0≤t≤1)における接線が、直線 AB だったのだ。図にすると、次のようになる。

[図:直線ABは、三次曲線の接線]

tを0から1まで動かすと、接点Pは三次曲線y=x³−3x上の(0,0)から(1,−2)まで動きます。直線ABは、その点での接線に一致します。 tを動かすと過去の直線が薄い橙色で残り、通った範囲が見えてきます。「残像を消す」で消去できます。

実際にスライダーを動かしてみてください。接線の通った跡が重なると、求める領域の形が見えてきます。接点をこの区間で動かしたときの接線の通過範囲を、境界も含めて図示すればよいわけです。

そんな曲線、どうやって見つけるんだ?

まあまあ、落ち着いていただいて。この不思議な式変形は、次の形に落とし込むのだ、という目標があればたどり着けます。

y−g(t)=g′(t)(x−t).

これは、曲線 y=g(x) の x=t における接線の式です。右辺を展開して、y について整理すると

y=g′(t)x+g(t)−tg′(t).

これを、先ほど求めた直線の式

y=3(t2−1)x−2t3

と見比べます。同じ直線にしたいのだから、x の係数と定数項がそれぞれ一致すればよい。つまり、探している関数 g の条件は

g′(t)=3t2−3g(t)−tg′(t)=−2t3

微分された関数から、元の関数へ戻す

最初の式は、未知の関数 g の微分を含む方程式、つまり微分方程式です。ただし今回は、「微分すると 3t2−3 になる関数は何か」と考えるだけ。積分すると

g(t)=∫(3t2−3)dt=t3−3t+C.

積分定数 C は、もう一つの条件で決まります。代入すると

g(t)−tg′(t)=(t3−3t+C)−t(3t2−3)=−2t3+C

これが −2t3 と一致するには C=0。したがって

g(t)=t3−3t.

あの三次曲線は、突然のひらめきで持ってきたものではなく、接線の式に合わせて逆算できたのです。

微分方程式を解かず、三次式として探してもよい

その文句は受け付けません。縛りプレイで大学受験を突破できるのなら、どうぞそのようになさってくださいね。

……と強気に書きましたが、今回やったことは多項式の積分と代入です。それに、g(t) が三次式だと仮定すれば、積分を使わずに見つけることもできます。

g(t)=at3+bt2+ct+dg′(t)=3at2+2bt+cg(t)−tg′(t)=−2at3−bt2+d

これらを、それぞれ 3t2−3、−2t3 と比較すれば

a=1,b=0,c=−3,d=0

と決まります。やはり g(t)=t3−3t です。ここで必要なのは、一般的な微分方程式を解くことではありません。接線の式に当てはまる関数を一つ見つけて、実際に一致すると確かめれば十分です。ただの式変形なのですから。

なお、今回は元のパラメータ t を、そのまま接点の x 座標として使えました。いつもそうできるとは限りません。この点は、次の問題でさっそく効いてきます。


そうお思いの方に、朗報です。この記事の存在意義は、そこにこそあります。次に、もう一つ問題を解いていきましょう。

次の問題:三角関数で動く直線

問題

オリジナル

θ がすべての実数を動くとき、直線

y=(cos⁡θ)x+cos⁡2θ

の通過領域を求め、図示せよ。

まずは三角関数を整理する

倍角の公式 cos⁡2θ=2cos2⁡θ−1 を使い、t=cos⁡θ と置きます。θ がすべての実数を動くと、t は −1≤t≤1 のすべての値をとるので、問題の直線は

y=tx+2t2−1(−1≤t≤1)

と書けます。三角関数の見た目に惑わされず、ここからはこの直線を考えましょう。

今度は、どの曲線の接線なのか?

先ほどと同じように、曲線の接線として表したい。ただし、今回は接点の x 座標を t と決めつけず、別の文字 u で表します。切片が傾き t の二次式になっているので、まずは二次関数

g(x)=ax2+bx+c(a≠0)

の接線として表せないか試してみましょう。x=u における接線は

y−(au2+bu+c)=(2au+b)(x−u)y=(2au+b)x−au2+c

これを y=tx+2t2−1 に合わせます。傾きの一致から

t=2au+b,u=t−b2a.

定数項も一致させ、接点の座標を代入すると、

−au2+c=2t2−1−(t−b)24a+c=2t2−1

t の二次・一次・定数の係数を比較して

−14a=2,b2a=0,c−b24a=−1a=−18,b=0,c=−1

探していた曲線は

y=−x28−1

でした。接点の x 座標は u=−4t。念のため接線の式を確かめると

y−(−2t2−1)=t(x+4t)y=tx+2t2−1

確かに元の式と一致します。

t が −1 から 1 まで動く間、接点の x 座標は 4 から −4 まで動きます。今回の直線は、この放物線の −4≤x≤4 の部分に接する直線だったのです。このように、動く直線の族に接する曲線が、この記事の主役である包絡線です。

接線の動く範囲を図示する

したがって、求める領域は、放物線 y=−x2/8−1 上で接点の x 座標を −4 から 4 まで動かしたときに、接線が通る範囲です。下の図の青い領域が答えで、境界も含みます。

t=cos⁡θ を動かして、接線が通った跡を眺めてみましょう。薄い橙色の残像が積み重なると、領域の形が見えてきます。「通過領域」の表示を切り替えて、答えと見比べてみてください。

[図:三角関数で動く直線の通過領域]

放物線y=−x²/8−1上で、接点の横座標が−4から4まで動くときの接線の通過範囲です。青い領域が答えで、境界を含みます。薄い橙色の残像と見比べられます。

02和と積の正体――(u+v, uv)にも接線が隠れている

今度は、和と積がお相手です

直線が動く問題を二つ見たところで、少し景色を変えてみましょう。

問題

オリジナル

u,v がそれぞれすべての実数を動くとき、点

(u+v,uv)

の動く範囲を求め、図示せよ。

お見事。その方法で解けます。どうぞ、その鉛筆はいったん置かずに持っていてください。今日は、その手順の中で何が起きているのかを、少しばかり覗いてみたいのです。「知っている問題だった」と「知っている現象だった」は、なかなか違う。前者は問題の服装が変わると途端に怪しくなります。数学の問題だって、毎日同じ制服を着てくれるとは限りませんからね。

文字に二つの仕事をさせない

まず、動く点の座標を

x=u+v,y=uv

と置きます。これから図を描くのは xy 平面です。u,v は入力、(x,y) はその入力から作られる点。この二つを区別しておきましょう。

同じ文字に二つの仕事をさせて、あとで自分が混乱するほうがよほど面倒です。文字に払う給料はゼロなので、必要なときは雇いましょう。

さて、u と v が二つとも動く。いかにも忙しそうです。では、片方に少し待っていてもらいましょう。u を固定し、v だけを動かします。すると

v=x−uy=u(x−u)=ux−u2

おや、直線になりました。

u を一つ決めて、残りを動かしただけです。手品にしては、仕掛けがずいぶん安上がりでしょう?

またお前か、接線

ここまで来れば、前の節と同じことを考えられます。y=ux−u2 は、どの曲線の接線でしょうか。切片が傾き u の二次式なので、二次関数を試してみます。まず y=ax2 の、x=s における接線は

y−as2=2as(x−s)y=2asx−as2

傾きを u に合わせるには 2as=u、つまり s=u/(2a)。これを切片へ代入すると

−as2=−u24a.

これを −u2 にしたいので、a=1/4 とすればよい。したがって、試してみるべき曲線は

y=x24.

実際に、x=2u における接線を求めると

y−u2=u(x−2u)y=ux−u2

確かに一致しました。

u はすべての実数を動くので、接点の横座標 2u もすべての実数を動きます。今回は放物線の一部分だけではなく、放物線全体の接線を集めているわけです。

[図:二つの数を動かして、和と積の点を見る]

uを固定すると、点(x,y)=(u+v,uv)は放物線y=x²/4の接線y=ux−u²上を動きます。u=vなら点は放物線上にあり、uとvを入れ替えても点は動きません。全実数の入力が作る領域はy≤x²/4です。

「和と積だから判別式」と唱えるだけでも、この問題の答えは出ます。でも、ほかの方法にも目を向けてみませんか、というお誘いだったわけです。

少しだけ、そのつながりを覗いてみましょう。ここからは偏微分という記号も出てきますが、やることは「ほかの文字を固定して、一つの文字で微分する」だけです。記号が増えたからといって、急に別の惑星へ来たわけではありません。まず、一般の接線の式を

F(x,y,t)=y−g(t)−g′(t)(x−t)=0

と書きます。t を一つ決めると、一本の直線が決まります。その直線と、パラメータを少しずらした直線

F(x,y,t+Δt)=0

との交点を CΔt=(XΔt,YΔt) としましょう。添字は「ずらし幅によって交点も変わる」という目印です。以下、図では短く C と呼びます。この交点は、二本の直線の式を両方とも満たします。ならば、式を引いてもゼロです。Δt≠0 として、差を Δt で割ると

F(XΔt,YΔt,t+Δt)−F(XΔt,YΔt,t)Δt=0.

見覚えのある形になりましたね。二本の交点が存在し、Δt→0 で有限の点 (X,Y) に近づくとします。F が十分なめらかなら、この極限で

F(X,Y,t)=0,∂F∂t(X,Y,t)=0

が得られます。∂F/∂t は、x,y を固定して t だけで微分したものです。こうして近づいた交点の軌跡が、包絡線を見つける手がかりになります。「十分近い二本の交点」そのものと、その極限は区別しておきましょう。

抽象的な話だけでは、鉛筆も退屈してしまいます。今の問題の直線で、交点を実際に求めてみましょう。

y=ux−u2y=(u+Δu)x−(u+Δu)2

二式を引き、ゼロでないずらし幅で割ります。求まった横座標を一本目の式に戻せば、

0=Δux−2uΔu−(Δu)2x=2u+Δuy=u(2u+Δu)−u2=u2+uΔu

したがって、交点は

C=(2u+Δu, u2+uΔu).

下の図で、まず u を固定したまま Δu を小さくしてください。二本の直線が近づくにつれて、交点 C はどこへ向かうでしょうか。

[図:二本の直線を近づけて、交点Cを追う]

y=ux−u²とy=(u+Δu)x−(u+Δu)²の交点は、Δu≠0のときC=(2u+Δu,u²+uΔu)。Δu→0でQ=(2u,u²)へ近づき、Qの軌跡はy=x²/4になります。Cでの判別式はD=(Δu)²。Δu=0では直線が一致するため、一意な交点ではなく極限の点Qを表示します。

Δu→0 とすると、交点は (2u,u2) に近づきます。x=2u から u=x/2 を代入すれば

y=x24.

また会いましたね、放物線。今度は接線の式を当てにいくことさえせず、隣り合う二本を連立しただけで出てきました。

では、判別式はどこにいたのでしょう。今の直線を、u についての二次方程式として読み直します。

F(x,y,u)=u2−xu+y∂F∂u=2u−x

したがって、先ほどの二つの条件は

{u2−xu+y=0,2u−x=0.

これは、二次方程式とその導関数が同じ u でゼロになる条件。つまり、重解条件そのものです。微分がゼロになるだけでは足りません。元の式もゼロになる、この二つがそろって初めて重解になります。二次方程式の言葉で書けば

D=x2−4y=0.

接線から出てきた包絡線と、判別式から出てきた境界は、同じ条件を別の方向から眺めていたのです。しかも、図の交点 C では

D=(2u+Δu)2−4(u2+uΔu)=(Δu)2

二本が近づくほど D もゼロに近づく。判別式も、ちゃんと図の中で働いていたわけです。電卓の中にしか住めない生き物ではありません。

この問題では、D≥0 なら実数 u が存在し、v=x−u とすれば uv=y も満たします。よって求める範囲は

y≤x24

で、境界も含みます。D=0 は境界、D≥0 は領域全体。この違いも押さえておきましょう。

ここまでわかれば、包絡線を探すための手順も見えてきます。動く直線を F(x,y,t)=0 と書き、

{F(x,y,t)=0,∂F∂t(x,y,t)=0

を連立して、t を消去する。ただし、得られるのは包絡線の候補です。パラメータの範囲や端の直線、退化する場合も確かめて、求める通過領域を判断します。二次式なら、ここで判別式による重解条件と直接つながります。

さて、ここから先は問題演習で、このアイデアの威力を試してみましょう。東大入試レベルの問題も扱う予定ですので、どうぞ身構えてください。十分に身構えたあとで、仕掛けの簡単さに拍子抜けしてもらえたら、書き手としては大成功です。

03問題演習――包絡線で東大の問題を解く

ここからは問題演習です。最初の相手は、1990年の東大後期。名前だけで鉛筆を置かないでください。まずは、動いている直線を一つ捕まえましょう。

第1問:1990年 東京大学 後期・理科I類

問題

オリジナル

xy 平面上の4点 O(0,0), A(2,0), B(2,2), C(0,2) を頂点とする正方形を Q とする。このとき、次の条件を満たす xy 平面上の点 P の存在する範囲を図示し、その部分の面積を求めよ。

【条件】点 P を通って、Q の面積 4 を 1 と 3 に切り分けるような直線を引くことができない。

出典:1990年 東京大学 後期・理科I類 第1問

「引くことができない」。今回は、直線が通る場所ではなく、通り損ねる場所がお目当てです。まず面積を1と3に分ける直線を動かし、真ん中に何が取り残されるかを見てみましょう。

角 O を三角形として切り取る直線を考えます。座標軸との交点を (t,0)、(0,s) とすると、切り取る面積は

ts2=1.

したがって s=2/t。両交点が正方形の辺上にあるので 1≤t≤2 です。直線の式は

xt+y2/t=1y=−2t2x+2t

切片が一方では増え、もう一方では減り、その積は一定。双曲線の接線を疑ってみましょう。まず y=k/x の x=a における接線を計算すると

y−ka=−ka2(x−a)y=−ka2x+2ka

元の直線に合わせるには k/a2=2/t2、2k/a=2/t。二つを見比べると a=t/2、k=1/2 と決まります。したがって、切断する直線は

y=12x

の x=t/2 における接線でした。1≤t≤2 なので、接点は 1/2≤x≤1 の弧を動きます。今回は双曲線でした。放物線の専属契約ではなかったようです。角を変えれば、この弧が正方形の中心 (1,1) のまわりに四つ並びます。

ただし、ここで終了のベルを鳴らすのは少し早い。正方形を切る直線は、隣り合う辺だけでなく、向かい合う辺を横切ることもあります。この選手を置き去りにしないでおきましょう。

左右の辺との交点を (0,s)、(2,r) とし、下側の台形の面積が1になる場合を考えます。その面積は s+r なので、r=1−s。したがって直線は

y=x2+(1−x)s(0≤s≤1).

これらはすべて (1,1/2) を通る直線です。図で動かすと、こちらも中央の領域には入り込まないことが見えます。ほかの向きも同じです。

したがって、答えは四つの双曲線の弧に囲まれた中央部分。外周には面積1を切り取る接線が通るので、外周は含みません。

下の図では、三角形を切り取る直線と台形を切り取る直線を切り替えられます。どちらも青い部分の面積は1。「答えの領域」を表示して、中央に直線が入り込めないことを確かめてください。破線の外周は答えに含みません。

[図:面積1を切り取りながら、直線を動かす]

角の三角形の面積が1なら切片の積は2。切断直線の包絡線はxy=1/2の弧で、これを正方形の中心のまわりに四つ並べると、通過できない中央領域の外周になります。向かい合う辺を切る台形の場合も中央領域には入りません。答えは四つの弧の内側(外周を除く)で、面積は2(1−log 2)です。

あとは面積。図形を4等分し、左下の部分を積分すれば

S=4∫1/21(1−12x)dx=4[x−12log⁡x]1/21=2(1−log⁡2)

ここで log は自然対数です。

この問題で包絡線が教えてくれたのは、「直線が届かなくなる境目」です。そこを先に見つければ、残りは図形の対称性と面積の計算に戻れます。問題の肩書きは東大後期でも、直線まで偉そうになったわけではありません。

第2問

問題

オリジナル

xy 平面上に直線

l:xt+yt(1−t)=1

がある。t が 0<t<1 の範囲を動くとき、l の通りうる範囲を図示せよ。

出典:『考え抜く数学 学コンに挑戦』p.29、問題2(2005年4月号)

分母に文字が並ぶと、いかにも面倒そうです。しかし、見た目の威圧感まで計算に付き合う必要はありません。まず分母を払います。

(1−t)x+y=t(1−t)y=(t−1)x−t2+t=(t−1)(x−1)−(t−1)2

傾きの二乗が出てきました。前に見た放物線の接線と似ていますね。今回は x−1 があるので、y=a(x−1)2 を試してみましょう。接点の横座標を 1+s とすると、接線は

y−as2=2as(x−1−s)y=2as(x−1)−as2

傾きを合わせて 2as=t−1。すると定数項は −as2=−(t−1)2/(4a) なので、a=1/4 にすれば元の式と一致します。見た目が似ているだけで採用せず、ちゃんと式の面接もしておきました。したがって、探していた放物線は

y=(x−1)24.

s=2(t−1) だから、接点の横座標は 1+s=2t−1。これで、元の直線がこの放物線の接線だと確かめられました。

今回は 0<t<1 なので、接点の横座標は

−1<2t−1<1.

つまり、同じ放物線の −1<x<1 の部分で接線を動かしたときの通過範囲です。端に近づいたときの直線は y=−x と y=0。この二本と放物線の位置を見ながら、接線の通った部分を塗ればよいわけです。

下の図で接線を動かしてみてください。青い部分が答えです。実線の外周は含み、破線の外周と白丸は含みません。本文では場合分けを並べず、この図で領域を示しておきます。

[図:放物線の一部分で、接線を動かす]

直線はy=(x−1)²/4のx=2t−1における接線。0<t<1なので、接点の横座標−1<x<1の部分の接線が通過する範囲を示します。含む外周は実線、含まない外周は破線、除く点は白丸です。

同じ放物線でも、接点を動かす範囲が変われば、接線の届く範囲も変わる。包絡線を見つけたあとに見るべきものは、結局、最初から問題文に書いてあった t の範囲なのでした。

第3問:2021年 東京大学 第1問より

問題

オリジナル

a,b を実数とする。座標平面上の放物線

C:y=x2+ax+b

は放物線 y=−x2 と2つの共有点を持ち、一方の共有点の x 座標は −1<x<0 を満たし、他方の共有点の x 座標は 0<x<1 を満たす。

放物線 C の通りうる範囲を座標平面上に図示せよ。

出典:2021年 東京大学 第1問(2)

まずは、何を動かしているのかを見える形にしましょう。

二つの共有点の横座標を u,v と置きます。条件は

−1<u<0,0<v<1.

共有点では x2+ax+b=−x2 なので、2x2+ax+b=0 の解が u,v。したがって

2x2+ax+b=2(x−u)(x−v).

これを使うと、動く放物線は

y=x2−2(u+v)x+2uv

と書けます。係数 a,b の代わりに、図の上で位置がわかる u,v を動かすわけです。

ここで、いったん横座標 x を決めて眺めます。式は u だけを動かせば一次式、v だけを動かしても一次式。途中で急に折り返して、最高記録を更新することはありません。上下の限界は、u,v をそれぞれの範囲の端へ近づけたところにあります。

そこで、(u,v) を (−1,0),(0,0),(−1,1),(0,1) に近づけるときの放物線を描いてみましょう。

y=x2+2x,y=x2y=x2−2,y=x2−2x

この四つが、上下の境目の候補です。各 x で一番上にある曲線と、一番下にある曲線の間を塗ればよい。u,v を連続的に動かせば、その間の高さはすべて通れます。

y=x2 は残りの三つの間に収まるので、外周には現れません。したがって、答えは y=x2+2x、y=x2−2、y=x2−2x を描いてできる、下の図の青い部分です。境目の切り替わりは x=−1,0,1 で見て取れます。

端の値 u=−1,0、v=0,1 は取れないので、外周は含みません。「限りなく近づける」と「そこに着ける」は別の話です。待ち合わせでやられたら困りますね。

下の図で二つの共有点を動かしてみてください。橙色の放物線が青い範囲を動きます。「境目の候補」を表示すると、どの曲線が上端・下端になっているかも見比べられます。

[図:二つの共有点から、放物線を動かす]

共有点の横座標u,vを−1<u<0、0<v<1で動かすと、Cはy=x²−2(u+v)x+2uv。端に近づけたときの四つの候補y=x²+2x,x²,x²−2,x²−2xのうち、一番上と一番下の間が通過領域です。外周は含みません。

今回は、接線の包絡線ではなく、動かせる範囲の端が通過領域を決めました。動く図形を式にして、どこまで届くかを見る。この視点は同じです。

04おわりに

いかがでしたか? 少しでも軌跡や領域の問題に対する苦手意識が薄れたなら、僕としては嬉しい限りです。

「包絡線は、ありとあらゆる軌跡や領域の問題を解く方法だ!」などと豪語するつもりはありません。というか、何でもかんでも一般化して豪語するような人は、あまり信用しないほうがよいでしょう。もちろん、この記事の書き手も含めてです。

ただ、今回見たような、媒介変数で表された図形が動く入試問題では、包絡線が頼もしい道具になることも伝わったのではないかと思います。とくに、動く直線を曲線の接線として見直すだけで、計算の向こうに図形が見えてくる。その感覚を持ち帰ってもらえたら嬉しいです。

いずれは、順像法・逆像法についての記事もしたためる予定です。どうぞ気長にお待ちください。

では、これにて。

イラスト:東北きりたん(アジサバ作)