問いしるべ
問いから始める物理 力と運動の法則

力と運動の法則

空気抵抗と微分方程式

著者:柚木芹香

速さによって変わる力を受ける運動を解くために,指数関数と対数の微分・積分,そして1階の微分方程式を学びます.前の節で結果だけを示した線形抵抗の落下は,この道具で導けます.そのあと例題に進みます.

数学の道具

運動方程式を解く2つの道具を用意します.

定理 数学の道具:指数関数と対数の微分・積分

定数 a (≠0) に対して

ddxeax=aeax,∫eaxdx=1aeax+C

がなりたつ.また,ln⁡x(ey=x を満たす実数 y)は正の数 x>0 に対してだけ定まり,

ddxln⁡x=1x(x>0),∫dxx=ln⁡|x|+C(x≠0)

がなりたつ(積分は 0 をまたがない区間で考える).

導出. 正の数 b を底とする bx の変化率は bx+h−bxh=bx⋅bh−1h である.h→0 のとき bh−1h がちょうど1に近づく底 b を e(=2.718⋯) と決める.すると (ex)′=ex で,合成関数の微分から (eax)′=aeax である.y=ln⁡x は ey=x と同じ意味なので,両辺を x で微分して eyy′=1,y′=1/ey=1/x を得る.

性質:ln⁡ex=x,eln⁡x=x(x>0),ln⁡(AB)=ln⁡A+ln⁡B,ln⁡1A=−ln⁡A(A,B>0).また,b≠0 のとき,a−bx≠0 の範囲で,微分して確かめればわかるように

∫dxa−bx=−1bln⁡|a−bx|+C

である.

練習 1. 次を計算せよ.(1) ddte−3t (2) ∫02e−t/2dt (3) ∫dx5−2x (4) ln⁡8(ln⁡2≈0.693 を使う) (5) ddtln⁡(1+2t)(t>−12) (6) e−0.20t=0.50 となる t

答え:(1) −3e−3t (2) [−2e−t/2]02=2(1−e−1)≈1.26 (3) −12ln⁡|5−2x|+C (4) ln⁡23=3ln⁡2≈2.08 (5) 連鎖律で 21+2t (6) 両辺の ln をとって −0.20t=−ln⁡2,t=ln⁡2/0.20≈3.5

定理 数学の道具:1階の微分方程式(変数分離)

未知の関数 y(t) とその1階の導関数 dydt だけを含む等式を,1階の微分方程式という.基本の形は

dydt=−λy(λ>0 は定数)

である.y≠0 の範囲で両辺を y で割り,dt を右辺へ移す(変数分離).

dyy=−λdt

両辺を積分して ln⁡|y|=−λt+C,よって y=y0e−λt(y0 は t=0 での値).割ることで除いた y=0 も,y≡0 が元の式を満たすので,y0=0 の場合としてこの式に含まれる.

別の形:dydt=−λ(y−ys)(ys は定数).u=y−ys とおくと dudt=−λu なので

y=ys+(y0−ys)e−λt

である.はじめから y0=ys(u≡0)なら y は ys のまま一定で,これもこの式に含まれる.y は ys に,差が指数関数的に縮みながら近づく.

練習 2. (1) dydt=−2y,y(0)=5.(2) dydt=3−y,y(0)=0.それぞれ y(t) を求めよ.

  1. dvdt=9.8−0.50v,v(0)=0(単位は SI)の解を求め,t=2.0 での v を求めよ.

答え:(1) y=5e−2t (2) y=3(1−e−t) (3) dvdt=−0.50(v−19.6) なので v=19.6(1−e−0.50t).t=2.0 で 19.6(1−e−1)≈12ms−1

ポイント 数学の道具:e−x の振る舞い

e−x は x=0 で 1 で,x が増えると単調に,しかも急速に 0 に近づく.

x

0

0.5

1

2

3

5

10

e−x

1

0.61

0.37

0.14

0.050

0.0067

4.5×10−5

  • e−x は x=1 で約 37 %,x=ln⁡2≈0.69 で半分,x=3 で 5 % になる.

  • 1−e−x は 0 から 1 に近づき,x=1 で 63 %,x=3 で 95 %,x=ln⁡100≈4.6 で 99 % に達する.

練習 3. (1) e−x=0.10 となる x を求めよ(ln⁡10≈2.30).(2) y=y0e−t/τ で,t=4τ のとき y は y0 の何 % か.

答え:(1) x=ln⁡10≈2.3.(2) e−4≈0.018 なので約 1.8 %.

線形抵抗の落下を導く

前の節の運動方程式は dvdt=v∞−vτ でした.これは dydt=−λ(y−ys) の形(λ=1/τ,ys=v∞)なので,練習 2 の (2) と同じ解き方ができます.u=v∞−v とおくと dudt=−uτ,u(0)=v∞ なので u=v∞e−t/τ,すなわち

v(t)=v∞(1−e−t/τ)

が得られます.前の節で示した v-t グラフの形は,この式から読み取れます.

例題

例題 1

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の小球を速さに比例する抵抗 F=kv のある液体中で静かに放す.落下を始めた点から測った落下距離 x(t) を求め,t が十分小さいときに自由落下 x=12gt2 に一致することを確かめよ.また t が十分大きいときの様子を述べよ.|s| が1より十分小さいとき,e−s≈1−s+12s2 と近似してよい.

液体中の小球に下向きのmgと上向きのkvが働く.落下距離xは放した位置から下向きに測る. 液体中の小球に下向きのmgと上向きのkvが働く.落下距離xは放した位置から下向きに測る.
解答を見る

考え方 速さ v(t) はすでに求めてある.距離はそれを時間で積分すれば得られる.

x(0)=0 として

x(t)=∫0tv∞(1−e−t′/τ)dt′=v∞[t−τ(1−e−t/τ)]

である.τ≫t のとき,s=t/τ として e−s≈1−s+12s2 を使うと 1−e−s≈s−12s2 なので

x≈v∞[t−τ(tτ−t22τ2)]=v∞2τt2=12gt2

となる(v∞/τ=g を用いた).最初のうちは自由落下と一致する.

t≫τ のとき e−t/τ→0 なので x≈v∞(t−τ).これは速さ v∞ の等速運動で,出発が時間 τ だけ遅れたものに等しい.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 2.0g の小球が粘い液体の中を落下する.抵抗は F=kv,k=0.040kgs−1 とする.静かに放してから,終端速度の 95 % に達するまでの時間と,その間に落ちる距離を求めよ.

速さが終端速度に近づく様子を示す.95%に達する時刻は未知の時刻として記し,数値や式は示さない. 速さが終端速度に近づく様子を示す.95%に達する時刻は未知の時刻として記し,数値や式は示さない.
解答を見る

考え方 まず v∞ と τ を出す.1−e−t/τ=0.95 から時間が決まり,その時刻を例題 1 の x(t) に入れる.

v∞=mgk=2.0×10−3×9.80.040=0.49ms−1,τ=mk=2.0×10−30.040=0.050s

である.1−e−t/τ=0.95 より e−t/τ=0.05=1/20,両辺の対数をとって

t=τln⁡20=0.050×3.00=0.15s

このときの距離は

x=v∞[t−τ(1−0.05)]=0.49×[0.150−0.0475]≈0.050m

より,約 0.15 秒で約 5.0cm 落ちる.

ポイント ここまでのまとめ

  • (eax)′=aeax,(ln⁡x)′=1/x.dydt=−λ(y−ys) の解は y=ys+(y0−ys)e−λt で,差が指数関数的に縮んでいく.

  • 線形抵抗の落下は,u=v∞−v とおいて変数分離すると v=v∞(1−e−t/τ) が導ける.

  • 距離は x=v∞[t−τ(1−e−t/τ)].t が τ より十分小さいときは自由落下 12gt2,十分大きいときは v∞ の等速運動になる.