問いしるべ
問いから始める物理 マクスウェル方程式

マクスウェル方程式

第24章の章末問題

著者:柚木芹香

変位電流による電荷の収支と,場に蓄えられるエネルギーの収支を結びつけてください.真空では u=ε0E2/2+B2/(2μ0),S=E×B/μ0,c=1/ε0μ0 とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

面積 A と 2A,間隔がともに d の真空平行板コンデンサーを理想導線で直列につなぎ,理想電源でゆっくり充電します.初めは無帯電で,中間の導体部分は孤立しています.ある瞬間,各コンデンサーの正極板の電荷は Q>0 で,電源からの充電電流は I>0 です.縁の効果と磁場エネルギーを無視します.

  1. 各極板間の電場と,極板全面を貫く変位電流を求めよ.

  2. 各極板間に蓄えられる電気エネルギーと,その増加率の比を求めよ.電源の仕事率との関係も示せ.

極板面積 A と 2A,間隔 d の二つのコンデンサーを直列につなぐ.電源からの充電電流 I と各正極板の電荷 Q を示す.中間導体は橙色で示し,電源の端子から孤立している. 極板面積 A と 2A,間隔 d の二つのコンデンサーを直列につなぐ.電源からの充電電流 I と各正極板の電荷 Q を示す.中間導体は橙色で示し,電源の端子から孤立している.
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考え方
孤立した中間導体の全電荷が0なので,両コンデンサーに蓄積する電荷は等しい.電場の大きさと変位電流の大きさは別々に調べる.

  1. ガウスの法則から E1=Q/(ε0A),E2=Q/(2ε0A) である.正極板から負極板へ向かう法線を各面の正方向とすると,dQdt=I より

Id1=ε0AdE1dt=I,Id2=2ε0AdE2dt=I.

電場は異なるが,全面の変位電流は等しい.

  1. 密度を体積に掛けると U1=ε0E12Ad/2=Q2d/(2ε0A),U2=Q2d/(4ε0A).したがって U1:U2=2:1.微分して dU1dt=QId/(ε0A),dU2dt=QId/(2ε0A) なので,増加率も 2:1 である.各電圧 V1=E1d,V2=E2d を使えば,和は (V1+V2)I となり,理想電源の仕事率に等しい.配線での損失は理想導線の仮定により0である.縁の効果と極板間の磁場エネルギーを小さくするには,d/A と装置の大きさを c と変化時間の積で割った比が十分小さいことが必要である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

一様な静電場 E=E0ex と静磁場 B=B0ey が重なる直方体領域を考えます.ex,ey,ez は右手系の単位ベクトルです.z に垂直な断面積は A=2.0×10−4m2,長さは ℓ=2.0×10−2m とします.場を作る電荷と電流は領域の外にあります.E0=2.0×104Vm−1,B0=3.0×10−5T,ε0=8.85×10−12Fm−1,μ0=4π×10−7Hm−1 とします.

  1. 領域に蓄えられる全エネルギーと,z に垂直な一断面を通る電力を求めよ.

  2. 領域の全境界から外へ出る正味の電力を求め,場が静的であることと矛盾しないか説明せよ.

直方体の z に垂直な断面積 A と長さ ℓ を示す.右手系の座標軸に沿って,電場 E₀ は +x 向き,磁場 B₀ は +y 向きに重なる. 直方体の z に垂直な断面積 A と長さ ℓ を示す.右手系の座標軸に沿って,電場 E₀ は +x 向き,磁場 B₀ は +y 向きに重なる.
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考え方
エネルギー密度は場の大きさから,流れは外積から求める.一断面の電力と,閉じた境界の正味の電力を区別する.

  1. uE=ε0E02/2=1.77×10−3Jm−3,uB=B02/(2μ0)=3.58×10−4Jm−3.体積は Aℓ=4.0×10−6m3 だから U=(uE+uB)Aℓ=8.5×10−9J.外積より S=E0B0ez/μ0,したがって +z 向きの断面電力は P=AE0B0/μ0=9.5×101W である.

  2. +z 側の端面から出る電力が P,反対の端面から出る電力が −P,側面からは0なので,正味は0である.流入と流出が等しく,内部で発熱もないため dUdt=0 と整合する.確認すると,E0B0/μ0 の単位は Wm−2 であり,静的な場でも一断面を通る流れは0とは限らない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

半径 a,正電荷 Q が未知の細い絶縁リングを,軸上の観測点Pへ一定の速さ v で近づけます.リングの面は軸に垂直で,中心からPまでの距離を x>0 とします.Pでの電場の正方向はリングからPへ向かう方向です.準静的な電場として

E(x)=Qx4πε0(x2+a2)3/2

を使ってよいとします.変位電流密度 jd=ε0dEdt の符号を測ると,次の結果でした.零点の距離は x∗=(2.00±0.05)cm,そこでの電場は E∗=1.00×104Vm−1 です.電場の不確かさは無視し,ε0=8.85×10−12Fm−1 とします.

x

3.0cm

2.0cm

1.0cm

jd の符号

正

0

負

  1. jd(x) を導き,a,Q を推定せよ.

  2. a,Q の相対不確かさを1次の近似で求めよ.また,Pでの電気エネルギー密度が最大になる距離を求めよ.

軸に垂直な半径 a の絶縁リングと軸上の観測点 P.中心から P までの距離 x と,P に向かう速さ v を示す.リングには未知の正電荷 Q が固定されている. 軸に垂直な半径 a の絶縁リングと軸上の観測点 P.中心から P までの距離 x と,P に向かう速さ v を示す.リングには未知の正電荷 Q が固定されている.
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考え方
空間微分に dxdt=−v を掛けて時間変化を求める.零点が未知の長さを決め,そこでの電場が電荷を決める.

  1. 微分すると

dEdx=Q(a2−2x2)4πε0(x2+a2)5/2,jd=Qv(2x2−a2)4π(x2+a2)5/2.

零点は a=2x∗ で,符号の順序も測定と一致する.よって a=2.83cm.この関係を電場へ代入すると E∗=Q/(123πε0x∗2),したがって Q=123πε0x∗2E∗=2.31×10−9C である.

  1. a は x∗ に比例するので δa/a=δx∗/x∗=0.025.Q は x∗2 に比例するので δQ/Q≈2δx∗/x∗=0.050.絶対幅は約 0.07cm,0.12×10−9C となる.E>0 の範囲では uE=ε0E2/2 の極大と E の極大が一致するため,最大は x=a/2=x∗.確認すると,x→0 と x→∞ で電場は0になり,極大の存在と整合する.準静的な式には v/c,不確かさの1次近似には δx∗/x∗ の小ささが必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

半径 a,間隔 d,容量 C=ε0πa2/d の真空円板コンデンサーに,理想電源で V(t)=V0cos⁡ωt を加えます.極板は固定され,極板間の場は軸対称で,電場の正方向を +z とします.d/a と ωa/c は十分小さく,電場は Ez=V/d と近似します.

  1. 複素インピーダンスから電流を求め,r=a の側面での磁場とポインティングベクトルを求めよ.

  2. 側面から内側へ入る符号つきの電力と,t=0 から π/(2ω) までの流入エネルギーを求めよ.一周期の平均電力も求めよ.

交流電源と容量 C の円板コンデンサー.極板半径 a,間隔 d,電場の正方向である +z 軸と極板間の円筒側面を示す.電源電圧は V(t) = V₀ cos ωt である. 交流電源と容量 C の円板コンデンサー.極板半径 a,間隔 d,電場の正方向である +z 軸と極板間の円筒側面を示す.電源電圧は V(t) = V₀ cos ωt である.
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考え方
まず複素振幅で回路を解き,実際の電流へ戻す.電場と磁場の積が,蓄積と返還を交互に表す.

  1. 複素数の電圧振幅を V^=V0 とすると,ZC=1/(iωC) より I^=iωCV0.実部を取って I(t)=−ωCV0sin⁡ωt となる.+z 側から見て反時計回りの磁場成分を Bϕ とすれば,閉じた円周に沿って一周するアンペール・マクスウェルの法則は 2πaBϕ=μ0I である.ez×eϕ=−er なので

Bϕ(a,t)=−μ0ωCV02πasin⁡ωt,Sr(a,t)=ωCV022πadsin⁡ωtcos⁡ωt.
  1. 内向きを正に取ると Pin=−2πadSr=−ωCV02sin⁡ωtcos⁡ωt.これは UE=CV02cos2⁡ωt/2 の微分に等しい.指定した四分の一周期には

∫0π/(2ω)Pindt=UE(π2ω)−UE(0)=−12CV02.

初めのエネルギーが電源へ戻る.一周期ではエネルギーが初期値に戻るので平均電力は0である.確認すると,この一致は d/a と ωa/c が十分小さい範囲の先頭の近似であり,極板間の磁場エネルギーは一周期の最大電気エネルギーに対して (ωa/c)2 程度の補正になる.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

内半径 a,外半径 b,軸方向の高さ h の長方形断面をもつ真空トロイドに,導線を N 回均等に巻きます.巻線が十分密な理想模型で,内部の磁場は円周方向,外部の磁場は0とします.初め電流は I0 で,電源を外して全抵抗 R の閉回路に切り替えます.巻線自身の電場エネルギーは無視します.

  1. 磁場エネルギーの積分から自己インダクタンス L を求めよ.b−a が a に比べて小さい場合の式も求めよ.

  2. 電流の時間変化,時刻 t までの発熱量,磁場に残るエネルギーを求めよ.

トロイドの内半径 a,外半径 b,高さ h,巻数 N と切り替え回路.図のスイッチは電源側の接点から離れ,抵抗 R と巻線の閉回路側につながっている. トロイドの内半径 a,外半径 b,高さ h,巻数 N と切り替え回路.図のスイッチは電源側の接点から離れ,抵抗 R と巻線の閉回路側につながっている.
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考え方
磁場が半径で変わるため,密度を一点で代表させずに積分する.切り替え後は減少した磁場エネルギーが発熱になる.

  1. 半径 r の閉じた道に沿って一周すると 2πrBϕ=μ0NI なので Bϕ=μ0NI/(2πr).体積要素 2πrhdr を使って

UB=∫abBϕ22μ02πrhdr=μ0N2hI24πln⁡(ba)=12LI2.

よって L=μ0N2hln⁡(b/a)/(2π).δ=(b−a)/a が十分小さいとき,ln⁡(1+δ)≈δ より L≈μ0N2h(b−a)/(2πa) である.

  1. LdIdt+RI=0 に I∝est を代入すると s=−R/L.τ=L/R として I=I0e−t/τ,UB(t)=LI02e−2t/τ/2.発熱量は

WR=∫0tRI02e−2t′/τdt′=12LI02(1−e−2t/τ).

確認すると WR+UB(t)=LI02/2 である.細い断面の式には (b−a)/a の小ささが必要であり,集中定数回路には装置の最大寸法を cτ で割った比の小ささも必要である.

演習 6

オリジナル ★★☆☆☆

面積 A,間隔 d(t) の真空平行板コンデンサーを,電圧 V>0 を保つ理想電源につなぎます.極板を平行に保ったまま外力でゆっくり引き離し,dddt=v>0 とします.正極板へ流れ込む電流を正とし,縁の効果と磁場エネルギーを無視します.

  1. 電源の電流と,極板面積 A に対応する極板間の固定した平面を貫く変位電流を求めよ.その面は考える短い時間区間を通して極板間にあり,正法線を電場の向きとする.

  2. 電源の仕事率,電気エネルギーの変化率,外力の仕事率を求め,極板間の引力を導け.

電圧 V を保つ電源につないだ面積 A の極板.上側の極板を速さ v で動かし,間隔 d(t) を増やす.極板間に固定した積分面を破線で示し,正法線を正極板から負極板へ向ける. 電圧 V を保つ電源につないだ面積 A の極板.上側の極板を速さ v で動かし,間隔 d(t) を増やす.極板間に固定した積分面を破線で示し,正法線を正極板から負極板へ向ける.
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考え方
電圧一定では,引き離すと容量が減り,電荷が電源へ戻る.エネルギーの微分だけで力を決めず,電源の仕事を収支に入れる.

  1. C=ε0A/d,Q=CV より I=dQdt=−ε0AVv/d2.固定面の電束は ΦE=AV/d なので Id=ε0dΦEdt=−ε0AVv/d2=I.電場の向きが変わらなくても変位電流は負になる.

  2. 電源が外へする仕事率は Psrc=VI=−ε0AV2v/d2.負なので電源がエネルギーを受け取る.一方 UE=ε0AV2/(2d) より dUEdt=−ε0AV2v/(2d2).準静的な収支 dUEdt=Psrc+Pext から Pext=ε0AV2v/(2d2).Pext=Fv より,引力の大きさは F=ε0AV2/(2d2) である.確認すると,電源が受け取る電力は場の減少率と外力の仕事率の和に等しい.必要な小さい比は d/A,v/c,および装置の寸法を電場の変化時間 d/v と c の積で割った比である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

半径 a の軸対称なコンデンサーで,極板を中央面の上下に対称に曲げ,局所的な間隔を d(r)=d0(1+αr2/a2) とします.α>0 は1程度の定数です.d0(1+α)/a が十分小さく,各半径で平行板として扱います.ゆっくり変わる電圧 V(t) により,中央面では Ez(r,t)=V(t)/d(r) と近似し,Er=0 です.変化時間を τ とし,a/(cτ) は十分小さいとします.

  1. 半径 r<a の円内の変位電流と,円周上の Bϕ を求めよ.全容量も求めよ.

  2. 半径 r の円筒側面から内側へ入る電力を,局所平行板の精度で求め,円筒内の電気エネルギーの変化率と比べよ.α→0 の極限を確かめよ.

半径 a の極板を中央面の上下に対称に曲げる.中心の間隔 d₀,半径 r での間隔 d(r),中央面と半径 r の円筒側面を示す. 半径 a の極板を中央面の上下に対称に曲げる.中心の間隔 d₀,半径 r での間隔 d(r),中央面と半径 r の円筒側面を示す.
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考え方
変位電流は電場を面積で積分して求める.同じ積分が電気容量とエネルギーにも現れる.

  1. V˙=dVdt と書く.中央面を貫く変位電流は

Id(r)=2πε0V˙d0∫0rsds1+αs2/a2=πε0a2V˙αd0ln⁡(1+αr2a2).

閉じた円周に沿って一周して 2πrBϕ=μ0Id(r) より Bϕ=μ0ε0a2V˙ln⁡(1+αr2/a2)/(2αd0r).全面の電荷は Q=ε0∫EzdA なので C=πε0a2ln⁡(1+α)/(αd0) である.

  1. 磁場と電場を厚み内で中央面の値で代表させると,Sr=−EzBϕ/μ0.したがって

Pin(r)=−2πrd(r)Sr=VId(r)=πε0a2VV˙αd0ln⁡(1+αr2a2).

円筒内では dUE=ε0[V/d(s)]2d(s)2πsds/2 なので,積分して UE(r)=πε0a2V2ln⁡(1+αr2/a2)/(2αd0).その微分は流入電力に等しい.確認すると,ln⁡(1+αr2/a2)/α→r2/a2 より,一様な間隔の容量と磁場に戻る.捨てた縁・傾斜・磁場エネルギーの補正を小さくする条件は,指定した d0(1+α)/a と a/(cτ) の小ささである.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

半径 a,b の同心導体球の間を真空とし,内球に +Q(t),外球に −Q(t) を蓄えます.外力で駆動される電荷の輸送装置が,球間を球対称な電流密度 j=−I(t)er/(4πr2) で電荷を内球へ運び,dQdt=I>0 とします.輸送中の正負の電荷は体積電荷密度を打ち消す理想模型です.球対称性により磁場は0とし,外力の仕事以外の損失と運動エネルギーの変化を無視します.

  1. 球間の電場と,外向き法線の球面を貫く伝導電流・変位電流を求め,磁場が0であることとの整合を説明せよ.

  2. 場のエネルギーの増加率を積分で求めよ.ポインティングベクトルが0であるにもかかわらず,エネルギーが増える理由を ∫j⋅EdV から説明せよ.dV は体積要素を表す.

同心導体球の半径 a,b と内球の電荷 +Q,外球の電荷 −Q.球間の積分領域を薄く塗り,電荷の輸送装置による内向き電流密度 j を示す. 同心導体球の半径 a,b と内球の電荷 +Q,外球の電荷 −Q.球間の積分領域を薄く塗り,電荷の輸送装置による内向き電流密度 j を示す.
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考え方
変位電流と伝導電流の和を調べ,エネルギー保存には電場が電荷へする仕事も入れる.

  1. ガウスの法則より E=Qer/(4πε0r2).外向きの伝導電流は −I,電束は ΦE=Q/ε0 なので変位電流は +I である.両者は球間の各点でも j+ε0∂E∂t=0 と打ち消すため,アンペール・マクスウェルの法則と磁場0は整合する.

  2. 場のエネルギーは

UE=∫abε02(Q4πε0r2)24πr2dr=Q28πε0(1a−1b).

よって dUEdt=QI(1/a−1/b)/(4πε0).一方,電場が輸送電荷へする仕事率は

∫j⋅EdV=−QI4πε0∫abdrr2=−QI4πε0(1a−1b).

電荷は電場に逆らって運ばれるので,外力がこの負の仕事を補い,そのエネルギーが場に蓄積する.S=0 でも,dUEdt=−∫j⋅EdV は成り立つ.確認すると,球間電圧 V=Q(1/a−1/b)/(4πε0) に対して増加率は VI となる.指定された球対称な電流密度の下では,この場は時間変化が速くてもマクスウェル方程式を満たす.実際の輸送装置を準静的に扱う場合は b/(cτ) が十分小さいことを確かめる.τ は電荷の変化時間である.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

容量 C と 2C の固定された真空円板コンデンサーを,初めそれぞれ 3V0 と V0 に充電します.負極板を理想導線でつなぎ,時刻0に正極板同士を抵抗 R でつなぎます.電源はなく,配線のインダクタンスは無視します.共通の負極板の電位を0とし,第1から第2へ流れる電流を I>0,各正極板の電位を V1,V2 とします.極板半径と間隔は a1,d1 と a2,d2 です.各極板間の場は軸対称で,電場は一様と近似します.

  1. 電荷保存と回路の式から V1(t),V2(t),I(t) を求めよ.

  2. 各極板間の側面から内側へ入る電力を求め,抵抗の発熱率との収支を示せ.全発熱量も求めよ.

容量 C と 2C の円板コンデンサーの初期電圧は 3V₀ と V₀.正極板間に抵抗 R とスイッチを置き,負極板を共通の導線でつなぐ.第1から第2への電流の正方向 I と極板半径 a₁,a₂,間隔 d₁,d₂ を示す. 容量 C と 2C の円板コンデンサーの初期電圧は 3V₀ と V₀.正極板間に抵抗 R とスイッチを置き,負極板を共通の導線でつなぐ.第1から第2への電流の正方向 I と極板半径 a₁,a₂,間隔 d₁,d₂ を示す.
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考え方
全電荷と電位差を別々に追う.各コンデンサーの流入電力を加えると,抵抗へ渡る電力が現れる.

  1. 全正電荷は CV1+2CV2=5CV0.各正極板について CdV1dt=−I,2CdV2dt=I,抵抗について I=(V1−V2)/R.D=V1−V2 とすれば dDdt=−3D/(2RC).D(0)=2V0,τ=2RC/3 より D=2V0e−t/τ.電荷保存と組み合わせて

V1=53V0+43V0e−t/τ,V2=53V0−23V0e−t/τ,I=2V0Re−t/τ.
  1. 各電場の向きを正法線とすると,変位電流は Id1=−I,Id2=I.閉じた円周に沿って一周する法則から Bϕk(ak)=μ0Idk/(2πak).Ek=Vk/dk を使うと,側面からの流入電力は Pk=−2πakdkSrk=VkIdk.したがって P1=−V1I,P2=V2I である.和は −(V1−V2)I=−RI2 で,全電気エネルギーの減少率に等しい.全発熱量は

WR=∫0∞RI2dt=4V02Rτ2=43CV02.

確認すると,初期エネルギー 11CV02/2 と最終エネルギー 25CV02/6 の差も同じになる.近似には dk/ak,配線を含む寸法を cτ で割った比,および無視したインダクタンス L に対する L/(Rτ) の小ささが必要であり,切り替え直後の短い過渡は除く.