問いしるべ
問いから始める物理 電荷と電場

電荷と電場

導体とコンデンサー

著者:柚木芹香

問い

雷が自動車に落ちても,窓を閉めて中に座っている人はふつう無事です.雷の電流は数万アンペア,雲と地面の電位差は1億ボルトにもなります.金属は電気をよく通すのに,なぜ金属の車体に囲まれた人は守られるのでしょうか.

考えてみる

「ゴムのタイヤが電気を止めるから」と考えたくなりますが,1億ボルトの前では数センチのゴムは役に立ちません.かといって,金属が電気をよく通すなら,中の人にも電気が回ってきそうです.鍵は,金属の中の電子が自由に動けることにあります.電子は,金属の中に電場がある限り動き続け,電場が消えるように並び直します.すると,金属に囲まれた空間にも電場が入ってこられなくなります.この題材ではまず止まった電荷(静電平衡)で考え,そのあと,蓄える電荷とエネルギーを数える道具としてコンデンサーを扱います.

導体の中に電場はない

導体を電場の中に置くと,自由電子が電場と逆向きに動き,表面の一方に負,反対側に正の電荷が現れます(静電誘導).この電荷の作る電場が外からの電場を打ち消すまで,電子の移動は続きます.金属ではこの並び直しはきわめて短い時間で終わります.

定理 静電平衡の導体

  1. 導体の内部では E=0.

  2. 導体全体が等電位で,表面は等電位面.電場は表面に垂直に出入りする.

  3. 電荷は表面にだけ分布する(内部では ρ=ε0∇⋅E=0).

  4. 面電荷密度 σ の所のすぐ外の電場は E=σ/ε0.

4 は,表面をまたぐ薄い箱にガウスの法則を使うと出ます.中の電場は0なので,流束は外側の底面からだけ出て ES=σS/ε0 です.1枚の平面電荷の σ/(2ε0) と違うのは,電気力線が片側にしか出ないからです.

表面の電荷は一様とは限りません.半径 r1,r2 の2つの導体球を遠く離して細い導線でつなぐと,両方の電位 kQ1/r1=kQ2/r2 が等しくなるので Q∝r,面電荷密度は σ∝Q/r2∝1/r です.小さい球ほど表面の電場が強くなります.1つの導体でも,曲がり方の急な,とがった所に電荷が集まり,電場が強くなります.避雷針はとがった先で空気を電離させ,雷を自分の所へ導きます.

[図:導体のとがった先端と表面電荷]

初期状態では涙のしずく形の導体の先端に正の表面電荷と青の電気力線が集まる.スライダーで先端をとがらせると集中が強まる.外側の灰色の実線は等電位線で,力線に直交する.

静電遮蔽

導体の中にある空洞を考えます.

空洞に電荷がない場合 空洞の中の電場は0です.空洞の壁は1つの導体の表面なので等電位で,空洞の中には電荷がありません.前の題材で見たように,電荷の無い所の電位には極大も極小もないので,壁の上で一定の電位は,空洞の中でもその値のままです.外にどんな電荷があっても,空洞の中には電場が入りません.これを静電遮蔽といいます.

空洞に電荷 q を置いた場合 空洞を囲むガウス面を導体の中にとると,その上で E=0 なので,中の電荷の和は0です.空洞の壁(内表面)には −q が誘導されます.導体がもともと中性なら,電荷の保存から外表面に +q が現れます.外表面の電荷の分布は外表面の形だけで決まり,空洞の中のどこに q があるかによりません.このとき外には電場が出ます.導体を接地すると,外表面の +q は地面へ流れて外の電場は消えますが,空洞の中の電場は残ります.空洞の中の q は内表面の −q から力を受け,空洞が球形で q が中心からずれていれば,近い壁へ引かれます.

左は外の正電荷による誘導で,空の空洞には電場が入らない.右はもともと中性の導体の空洞に正の q を置いた場合で,内表面に −q,外表面に +q が現れる. 左は外の正電荷による誘導で,空の空洞には電場が入らない.右はもともと中性の導体の空洞に正の q を置いた場合で,内表面に −q,外表面に +q が現れる.

解は1つに決まる

導体の表面の電位と,空間にある電荷を決めると,電位は1つに決まります.2つの解 V1,V2 があったとすると,差 V1−V2 は空間の電荷が打ち消し合った,電荷の無い場合の電位で(各点の形ではラプラス方程式の解),境界ではどこでも0です.電荷の無い所の電位には極大も極小もないので,差は至る所で0です.

これを使うと,うまく見つけた解は正しいと言えます.接地した広い導体平面から高さ a に点電荷 q を置くと,平面の反対側の対称な点に −q を置いた2つの点電荷の電位は,平面の上でちょうど0になり,平面より上にある電荷は q だけです.したがって,これが平面より上の本当の電位です(鏡像法).q は平面に 14πε0q2(2a)2 の力で引かれます.くわしくは例題の節で扱います.

コンデンサー

2つの導体に +Q と −Q の電荷を与えると,間に電位差 V が生じ,V は Q に比例します.Q=CV の C を電気容量といい,単位は F=CV−1(ファラド)です.

面積 S の2枚の極板を間隔 d で向かい合わせた平行板コンデンサーでは,極板の間の電場は E=σ/ε0=Q/(ε0S),電位差は V=Ed なので

C=ε0Sd

です.縁で電場がはみ出す効果を無視したので,d が S よりずっと小さいことが条件です.d=1mm で 1F を作るには,一辺が約 10km の極板が要ります.半径 a の導体球を半径 b の導体球殻で同心に囲んだ球形コンデンサーでは,間の電位差が Q4πε0(1a−1b) なので C=4πε0abb−a です.

コンデンサーを並列につなぐと電圧が共通で電荷が足し合わされ C=C1+C2,直列につなぐと間の孤立した部分の電荷が +Q と −Q に分かれて電圧が足し合わされ 1C=1C1+1C2 です.

ポイント 孤立した導体部分ごとに電荷を数える

  1. 導線でつながった導体をまとめて1つの部分とし,各部分の電位を未知数にする.

  2. 向かい合う極板の面の電荷を,符号をつけて「容量 ×(自分の電位 − 相手の電位)」と書く.

  3. 電源や接地につながっていない部分では,面の電荷の和が初めの値のまま保存される.電源や接地につながった部分では,電荷の代わりに電位が決まる.

極板の電荷を初めから +Q,−Q と決めつけてはいけません.たとえば,帯電した金属板を2つの極板の間に入れると,その板の両面の電荷の大きさは一般に違います.

蓄えるエネルギーと極板の間の力

電荷 q のコンデンサーに dq を運ぶ仕事は Vdq=(q/C)dq です.0から Q まで積分すると,蓄えられるエネルギーは

U=Q22C=12CV2=12QV

です.平行板では U=12ε0E2⋅Sd と書けるので,エネルギーは電場のある体積に 12ε0E2 の密度で蓄えられていると見ることもできます(第24章でこの見方が正しいことを確かめます).

極板の間の力を,間隔 x を変えたときのエネルギーの変化から求めます.

電荷一定(電源から切り離す).U=Q2x2ε0S なので,力は F=−dU/dx=−Q22ε0S で,引力です.QE=Q2ε0S の半分なのは,極板の電荷を押すのは相手の極板の電場 σ/(2ε0) だけで,自分の電荷の電場は自分を押さないからです.

電圧一定(電源につないだまま).x を dx 変えると容量が dC 変わり,電荷が dQ=VdC 流れ込み,電源が VdQ=V2dC の仕事をします.そのうち dU=12V2dC がエネルギーの増加で,残りが電気の力のする仕事 Fdx です.

F=12V2dCdx=−ε0SV22x2=−Q22ε0S

で,電荷一定のときと同じ力になります.力は極板の電荷とその場所の電場で決まり,電源の有無によりません.電圧一定で −dU/dx を計算すると符号が逆になってしまうのは,電源の仕事を数え忘れたからです.

問いに戻る

車体は金属の殻です.静電平衡では導体の中の電場は0で,中に電荷のない空洞の中にも,外からの電場は入りません.雷の電荷は外表面を伝わって地面へ逃げ,中の人には電位差がかかりません.ただし,これは静電気の話です.雷の電流は100万分の1秒ほどで大きく変わりますが,速く変わる場でも金属の表面を流れる電流が中を守ることを,第23章で見ます.窓が開いていたり,車体が金属でない(樹脂の屋根の)車では,この守りは弱くなります.

ポイント ここまでのまとめ

  • 静電平衡の導体:内部の電場は0,全体が等電位,電荷は表面に,すぐ外の電場は σ/ε0.とがった所に電荷が集まる.

  • 空の空洞には外の電場が入らない(静電遮蔽).空洞に q を置くと内表面に −q,外表面に +q.

  • 境界の電位と電荷を決めると電位は1つに決まる.鏡像法はこれを使う.

  • 平行板 C=ε0S/d,球形 C=4πε0ab/(b−a).孤立した部分ごとに符号つきの電荷の和を保存させる.

  • U=12CV2,場のエネルギー密度 12ε0E2.極板の間の力 Q2/(2ε0S) は,電圧一定でも電源の仕事を入れると同じ.