問いしるべ
問いから始める物理 電荷と電場

電荷と電場

電位と静電エネルギーの演習

著者:柚木芹香

電場のする仕事と外力のする仕事の符号を区別してください.以下では k=1/(4πε0) とし,点電荷の電位は無限遠を0とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

電位が x だけで変わる領域で,次の測定値を得た.測定点間を直線で結ぶ模型を使う.

x/cm

0

1.0

3.0

V/V

80

50

10

  1. 各区間で電場の成分 Ex を求めよ.

  2. 電荷 q=2.0×10−9C を左端から右端へゆっくり運ぶ外力の仕事を求めよ.電位の全測定値に同じ定数を加えると,答えは変わるか.

表の3測定点をVとxの平面に描き,点間を直線で結ぶ.電場の値は記さない. 表の3測定点をVとxの平面に描き,点間を直線で結ぶ.電場の値は記さない.
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考え方
電場は電位の傾きの負であり,仕事は端点間の電位差で決まる.

  1. Ex=−dVdx.最初の区間は −(50−80)/0.010=3.0×103Vm−1,次は −(10−50)/0.020=2.0×103Vm−1.ともに右向きである.

  2. Wext=qΔV=(2.0×10−9)(10−80)=−1.4×10−7J.電場は正の仕事をし,外力はエネルギーを取り出す.基準を変えても差と傾きは変わらない.ただし点間の直線性は測定だけから確定せず,模型の仮定である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

電子を電位 −40.0V の点Aから静かに放すと,電位 110V の点Bへ達した.電気力以外を無視する.e=1.60×10−19C,m=9.11×10−31kg,c=3.00×108ms−1 とする.Bでの運動エネルギーをジュールと電子ボルトで,速さを古典的な運動方程式の範囲で求めよ.電子ボルトは電気素量に 1V を掛けたエネルギーである.

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考え方
電子の電荷は負なので,高い電位へ動くと位置エネルギーが減る.

ΔU=−e(VB−VA)=−150eV.エネルギー保存から K=−ΔU=2.40×10−17J=150eV.mv2/2=K より v=2K/m=7.26×106ms−1.v/c=0.0242,その2乗は 5.85×10−4 で十分小さく,古典的な計算の適用条件を満たす.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

正電荷 Q を原点に固定する.質量 m,正電荷 q の粒子が,無限遠で速さ u をもち,入射直線と原点の距離が b>0 となるように近づく.電気力以外を無視する.
粒子の速さは光速より十分小さいとする.

  1. 原点からの最接近距離 rmin を求めよ.

  2. b→0 と Q→0 の極限を説明せよ.

原点の電荷Q,遠方の入射直線と速度u,原点から直線への垂線bを描く.軌道と最接近点は描かない. 原点の電荷Q,遠方の入射直線と速度u,原点から直線への垂線bを描く.軌道と最接近点は描かない.
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考え方
中心力なので角運動量も保存する.最接近点で消えるのは半径方向の速度である.

  1. 無限遠のエネルギーは mu2/2,角運動量は mub.最接近点の接線速度を vt とすると mrminvt=mub,従って vt=ub/rmin.電位 V=kQ/r を使うと

mu22=mu2b22rmin2+kQqrmin.

α=kQq/(mu2) と置けば rmin2−2αrmin−b2=0.負の根は距離にならず,rmin=α+α2+b2.

  1. 正面から近づく極限は rmin=2kQq/(mu2) で,初期の運動エネルギーがすべて位置エネルギーになる.Q→0 では rmin→b となり,直進の最短距離に戻る.α は長さの次元をもつ.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

直角二等辺三角形の頂点 A=(0,0),B=(a,0),C=(0,a) に,順に電荷 +Q,+Q,−2Q を置く.a,Q>0 とする.

  1. 無限遠からA,B,Cの順にゆっくり運んで組み立てるとき,各段階の外力の仕事と全静電エネルギーを求めよ.

  2. A,Bを固定してCの電荷だけを無限遠へ運ぶ外力の仕事を求めよ.各電荷は一定とする.

三角形ABCと辺a,a,各電荷を示す.Cの電荷を取り去る操作を矢印で描く. 三角形ABCと辺a,a,各電荷を示す.Cの電荷を取り去る操作を矢印で描く.
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考え方
運び込む電荷には,先に置いた電荷による電位だけを使う.各組の相互作用を1回ずつ数える.

  1. 最初の仕事は0.Bを運ぶ仕事は WB=Q(kQ/a)=kQ2/a.Cでは VC=kQ/a+kQ/(2a) なので WC=(−2Q)VC=−(2+2)kQ2/a.合計は U=−(1+2)kQ2/a である.

  2. Cが無限遠にある終状態ではA,Bの相互作用だけが残り,Uf=kQ2/a.よって Wext=Uf−U=(2+2)kQ2/a>0.固定されたA,Bの支持力は変位がないので仕事をしない.a→∞ で両方のエネルギーと仕事は0に近づく.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

線電荷密度 λ>0 の無限に長い糸から距離 r0 の位置に,長さ ℓ の軽い剛い棒の中心を固定する.棒の両端の粒子は各質量 m,電荷は +q,−q(q>0)で,p=qℓ とする.棒は糸に垂直な平面内で回り,双極子モーメントと外向き半径方向の角を θ とする.q,λ は一定である.

  1. θ=0 付近の小振動の角振動数を求めよ.

  2. θ=0 の向きで棒を静止させ,中心の固定を外す瞬間の,棒全体への半径方向の力を求めよ.両小問で ℓ/r0 が十分小さい近似を使い,重力を無視する.

糸の断面と中心までの距離r₀,長さℓの棒,各端の電荷,外向き半径との角θを示す. 糸の断面と中心までの距離r₀,長さℓの棒,各端の電荷,外向き半径との角θを示す.
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考え方
向きによるエネルギーの変化はトルク,位置による変化は力を与える.双極子の電荷を一定として微分する.

  1. 糸の場は E(r)=λ/(2πε0r).中心付近で一様とみなし,U=−pE(r0)cos⁡θ.トルクは −dUdθ=−pE(r0)sin⁡θ≈−pE(r0)θ.慣性モーメントは 2m(ℓ/2)2=mℓ2/2 なので

mℓ22d2θdt2=−pE(r0)θ,ω=pλπε0mℓ2r0.
  1. θ=0 を保つと U(r)=−pλ/(2πε0r).従って Fr=−dUdr=−pλ/(2πε0r02) で糸へ向かう.近い側の負電荷への内向きの力が強いこととも合う.近似条件は ℓ/r0 と角振幅が十分小さいことである.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

ある領域の電位は V=V0+α(x2+y2)+βz2 である.α>0,β は定数で,単位はともに Vm−2 とする.

  1. 勾配で電場を求め,この領域に電荷がないための β の条件をラプラス方程式で求めよ.

  2. その条件で等電位面 V=V0 の形を述べ,原点の正電荷 q のつり合いが3次元で安定か判定せよ.

原点Oとx,y,zの座標軸,原点の正電荷qを描く.等電位面と力は描かない. 原点Oとx,y,zの座標軸,原点の正電荷qを描く.等電位面と力は描かない.
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考え方
各方向の曲率の和が0でも,個々の方向の曲率は0とは限らない.安定性は方向ごとに調べる.

  1. E=−∇⁡V より Ex=−2αx,Ey=−2αy,Ez=−2βz.∇2⁡V=∂2V∂x2+∂2V∂y2+∂2V∂z2=4α+2β だから,電荷のない条件は β=−2α.

  2. x2+y2=2z2 となり,z軸を軸とする上下の円すい面である.原点の場は0だが,Fz=4qαz は変位と同じ向きなので不安定である.x,y 方向には復元力がある.微小な立方体で流束を数えると,x,y方向の寄与 −2α,−2α とz方向の 4α が相殺され,電荷のない条件とも一致する.

ポイント 教える人へ

  • 電位の基準を変えても電場と仕事が変わらない理由を説明させる.

  • 負電荷の位置エネルギーと電位の増減を混同させない.

  • 最接近点で接線方向の速度が残ること,静電エネルギーで組を二重に数えないことを問う.

  • 双極子近似と小角近似の条件を別々に述べさせ,静電場のつり合いを各方向で確かめる.