問いしるべ
問いから始める物理 外部運動と内部運動

外部運動と内部運動

動く点のまわりの計算と例題

著者:柚木芹香

前の節の式を導き,3つの例で確かめます.重心の位置は前の節と同じく rG と書きます.

定理 数学の道具:動く点のまわりで微分する

変化率の式. ddt(ri−rA)=vi−vA だから,外積の積の微分で

dLA∗dt=∑(vi−vA)×mi(vi−vA)+∑(ri−rA)×mi(ai−aA)

である.第1項は同じベクトルどうしの外積で0.第2項の ai の分は,内力のトルクが打ち消し合って τA.aA の分は −(∑mi(ri−rA))×aA=−M(rG−rA)×aA である.

接点の点の加速度. 半径 R の縁が水平な床を滑らずに転がるとき,接点 P にある点の加速度を,縁の中心 O を基準にして第8章の式(接線の項と向心の項)で求める.進む向きを正とすると,O の加速度は Rα.P は O の真下 R にあるので,O に対する接線の項は後ろ向きに Rα,向心の項は O へ向かって Rω2 である.前後の成分は打ち消し合い,aP は O へ向かう大きさ Rω2 の加速度になる.質量の分布は入らない.

エネルギーの式. 瞬間回転中心 Q から G までの距離を d とすると,運動エネルギーは K=12IQω2,IQ=IG+Md2.Q から見た位置を (xi,yi) とすると vi=ω(−yi,xi) なので,外力の仕事率は ∑Fi⋅vi=ω∑(xiFiy−yiFix)=ωτQ.剛体では内力の仕事の和は0だから dKdt=IQωα+Mdd˙ω2=ωτQ(d˙=dddt).ω≠0 で割ると

IQα=τQ−Mdd˙ω

練習 1. 半径 0.30m の円板が,水平な床の上を,中心の速さ 1.5ms−1,中心の加速度 0.60ms−2 で滑らずに転がっている.接点にある円板の点の速度と加速度を求めよ.

答え:速度は0.加速度は鉛直上向き(中心向き)に v2R=1.520.30=7.5ms−2.中心の加速度は答えに入らない.

練習 2. 同じ円板の最上点の速度と加速度を求めよ(進む向きを x,鉛直上向きを y とする).

答え:速度は 2×1.5=3.0ms−1(進む向き).角加速度は 0.60/0.30=2.0rads−2 で,最上点の接線加速度は進む向きに 2.0×0.30=0.60ms−2,中心向きは下向きに 7.5ms−2.中心の加速度を足して (0.60+0.60,−7.5)=(1.2,−7.5)ms−2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 3.0kg,半径 0.10m の一様な円柱が,傾き 30∘ の斜面を滑らずに転がり降りる.g=9.8ms−2 とする.

斜面を転がる一様な円柱を示す模式図. 斜面を転がる一様な円柱を示す模式図.
  1. 中心の速さが 1.0ms−1 の瞬間に,接点にある円柱の点の加速度の大きさと向きを求めよ.また,接点のまわりで IPα=τP を使ってよい理由を述べよ.

  2. 接点のまわりの式から,重心の加速度の大きさを求めよ.

解答を見る

考え方 接点の点の加速度が P から G へ向かう直線に沿えば,余分な項は0になる.

  1. ω=vR=10rads−1 で,加速度は斜面に垂直に G へ向かう向きに Rω2=10ms−2.rG−rP も同じ向きなので外積は0である.

  2. IP=12MR2+MR2=0.045kgm2.τP=MgRsin⁡30∘=1.47Nm.α≈32.7rads−2,a=Rα≈3.3ms−2 で,23gsin⁡30∘ と一致する.摩擦力を求めるには重心の運動方程式が要る.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

縁が半径 R=0.20m の円で,重心 G が縁の中心 O から b=0.10m ずれた偏心円板がある.質量は M=2.0kg,G のまわりの慣性モーメントは IG=0.030kgm2 である.この円板が水平な床の上を滑らずに転がり,G が O の真横(右)に来た瞬間に,角速度の大きさが ω=5.0rads−1 であった.g=9.8ms−2 とする.

偏心円板に働く力を示す模式図. 偏心円板に働く力を示す模式図.
  1. 接点のまわりで IPα=τP とした場合の角加速度の大きさを求めよ.

  2. 重心の運動方程式と G のまわりの回転の運動方程式から,角加速度,摩擦力,垂直抗力を求めよ.

    1. と (2) の差が,余分な項 M[(rG−rP)×aP]z で説明できることを確かめよ.

解答を見る

考え方 (2) の連立が正しい答えである.接点の点の加速度は G を向かないので,余分な項が残る.

  1. 時計回りを正とする.IP=IG+M(b2+R2)=0.130kgm2,τP=Mgb=1.96Nm で,α=1.960.130≈15.1rads−2.

  2. 右と上を正,回転は時計回りを正とする.O の加速度は右へ Rα.O の右 b にある G は,O に対して下へ αb,左へ ω2b の加速度をもつ.P は G の左 b,下 R にあるので

f=M(Rα−ω2b),N−Mg=−Mαb,IGα=bN−Rf

第1式と第2式を第3式に入れると [IG+M(b2+R2)]α=Mgb+MRbω2 となり,α=1.96+1.000.130≈22.8rads−2.このとき f≈4.1N(右向き),N≈15N.

  1. rG−rP=(b,R),aP=(0,Rω2) の外積の z 成分は bRω2(反時計回り)なので,余分な項は時計回りに MbRω2=1.00Nm で,IPα=τP+MbRω2 は (2) の式と同じである.ω=0 の瞬間だけ (1) と (2) は一致する.エネルギーの式でも,OG が水平な位置から時計回りに角 ψ だけ回ると d2=PG2=R2+b2−2Rbsin⁡ψ なので,この瞬間(ψ=0)dd˙=−Rbω となり,−Mdd˙ω=MbRω2 が同じ差を与える.

例題 3

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様なはしごを,なめらかな鉛直の壁となめらかな水平の床の間に,床と 60∘ の角をなすように立てかけ,静かに放した.壁と床が交わる点を C,はしごが床となす角を θ とし,はしごが壁から離れるまでを考える.

壁と床に接するはしごの基準点を示す模式図. 壁と床に接するはしごの基準点を示す模式図.
  1. 瞬間回転中心 Q を求め,Q のまわりで IQα=τQ を使ってよいことを示せ.

  2. 角加速度の大きさと,角速度の2乗を θ で表せ.

  3. 壁がはしごを押す力を θ で表し,はしごが壁から離れるときの sin⁡θ を求めよ.

解答を見る

考え方 上端の速度は鉛直,下端の速度は水平で,それぞれに垂直な直線の交点が Q である.

  1. T を通る水平線と B を通る鉛直線の交点が Q で,C,B,Q,T は長方形をなす.G は対角線 BT の中点だから対角線 CQ の中点でもあり,d=l2 は一定で d˙=0.壁と床の垂直抗力は Q を通り,トルクは重力の分だけになる.

  2. IQ=Ml212+M(l2)2=Ml23,τQ=Mgl2cos⁡θ.倒れる向きの角速度を ω=−θ˙ とすると α=3g2lcos⁡θ.エネルギー保存 12IQω2=Mgl2(sin⁡60∘−sin⁡θ) から ω2=3gl(sin⁡60∘−sin⁡θ)(時間で微分すると α の式に戻る).

  3. 水平に働く力は壁の力 N2 だけである.xG=l2cos⁡θ(C から)を2回微分して x¨G=l2(αsin⁡θ−ω2cos⁡θ) だから

N2=Mx¨G=3Mg4cos⁡θ(3sin⁡θ−2sin⁡60∘)

放した直後は N2≈0.32Mg>0 で,N2=0 となる sin⁡θ=23sin⁡60∘=33(θ≈35∘)ではしごは壁から離れる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 変化率の式は,外積の積の微分と ∑mi(ri−rA)=M(rG−rA) から出る.

  • 転がる縁の接点の点は,速度0で O へ向かう加速度 Rω2 をもつ.

  • 瞬間回転中心では IQα=τQ−Mdd˙ω.円柱(d=R)とはしご(d=l/2)では余分な項が0,偏心円板では MbRω2 が残る.