問いしるべ
問いから始める物理 対称性から組み立てる力学(発展)

対称性から組み立てる力学(発展)

停留作用の原理の演習

著者:柚木芹香

与えられた関数 L から経路を選びます.両端の固定と,任意の変化に対する停留を確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

L=Ae2λtq˙2/2 とします.q は長さ,A>0 は質量,λ>0 は時間の逆数の次元を持ちます.

  1. オイラー=ラグランジュ方程式を求めてください.

  2. q˙>0 のとき q¨ の符号はどうなりますか.L が q を含まなければ,速度は一定と言えますか.

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考え方 時間微分では,時刻を含む係数も微分する.

  1. ∂L/∂q=0,∂L/∂q˙=Ae2λtq˙ より

Ae2λt(q¨+2λq˙)=0

なので,q¨=−2λq˙.

  1. q˙>0 なら q¨<0.一定なのは Ae2λtq˙ で,速度そのものではない.

確かめ:q˙=Ce−2λt(C は定数)は方程式を満たす.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

L=Aq˙2/2+Cq とします.q は長さ,A>0 は質量,C はエネルギーを長さで割った次元を持つ定数です.q(0)=0,q(T)=d(T>0)を固定し,

qε=dtT+εtT(1−tT)

を考えます.ε は長さです.

  1. S(ε) と,停留する ε を求めてください.

  2. 得た経路がオイラー=ラグランジュ方程式を満たすかを確かめてください.

[図:両端を固定した候補の経路]

両端を固定した3本の候補を描く.初期状態では青い候補は中ほどが少し上へ膨らむ.スライダーは青い候補の膨らみだけを変え,停留経路や作用の値は表示しない.

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考え方 候補を作用に代入して積分し,停留値を微分で求める.

  1. q˙ε=d/T+(ε/T)(1−2t/T).交差項の積分は0で,∫0T(1−2t/T)2dt=T/3 だから

S=Ad22T+Aε26T+CdT2+CεT6

となる.dS/dε=Aε/(3T)+CT/6=0 より ε∗=−CT2/(2A).

  1. 停留経路は q∗=(d/T−CT/(2A))t+Ct2/(2A).方程式は Aq¨−C=0 で,この経路は両端と方程式を満たす.

確かめ:2次の係数が正なので,この族では最小になる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

L0=Aq˙2/2 に F=Btq2 の全微分を足し,L1=L0+dF/dt とします.A>0,B は定数で,Bq2 はエネルギーです.両端は q(0)=a,q(T)=b と固定します.

  1. L1 の運動方程式を求めてください.

  2. 同じ経路での作用の差と,停留経路が変わらない理由を答えてください.

3本の候補の両端は (0,a),(T,b) で共通である.どれを選ぶかの答えは示さない. 3本の候補の両端は (0,a),(T,b) で共通である.どれを選ぶかの答えは示さない.
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考え方 全微分を積分すると境界項になる.

  1. L1=Aq˙2/2+Bq2+2Btqq˙ より,

∂L1∂q˙=Aq˙+2Btq,∂L1∂q=2Bq+2Btq˙

前者の時間微分から後者を引くと Aq¨=0.L0 と同じ方程式になる.

  1. S1−S0=F(b,T)−F(a,0)=BTb2.両端を固定した経路の変化によらないので δS1=δS0.

確かめ:a が差に出ないのは F(a,0)=0 だからである.作用の数値が同じになるわけではない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

L=Aq˙2/2(A>0),q(0)=q(T)=0 とし,候補 qa=asin⁡(2πt/T)(a≠0)を考えます.

  1. δq=εsin⁡(πt/T) に変化を限って作用を計算すると,ε の1次の項はありますか.

  2. δq=εsin⁡(2πt/T) に替えて調べ,qa が停留作用の原理を満たすかを答えてください.

左に正負の山を持つ候補 qₐ,右に最初に試す正の山の変化 δq を別々に示す.両方とも時刻0と T で0になる. 左に正負の山を持つ候補 qₐ,右に最初に試す正の山の変化 δq を別々に示す.両方とも時刻0と T で0になる.
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考え方 すべての変化を検査する必要がある.

  1. ∫0Tcos⁡(2πt/T)cos⁡(πt/T)dt=0 なので交差項が消える.各余弦の2乗の積分は T/2 で,

S[qa+δq]=Aπ2a2T+Aπ2ε24T

となる.1次の項はなく,最小に見える.

  1. 経路の振幅が a+ε になるので,作用は Aπ2(a+ε)2/T.1次の係数は 2Aπ2a/T≠0 であり,qa は停留しない.

確かめ:方程式は q¨=0 で,両端が0なら解は q=0 だけ.qa は方程式も満たさない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

x>0 に対して L=Ax˙2/2(A>0)とします.長さ a>0 を使い,x=q3/a2,q>0 に座標を替えます.両端は q(0)=a,q(T)=2a です.

  1. L を q,q˙ で書き,運動方程式を求めてください.

  2. 両端を満たす停留経路を求めてください.

  3. x で書いた任意の変化 δx(0)=δx(T)=0 を使い,作用が最小でもあることを示してください.

q=a と2a の端点を,x=q³/a² により x=a と8a の端点へ対応させる.途中の時間変化は示さない. q=a と2a の端点を,x=q³/a² により x=a と8a の端点へ対応させる.途中の時間変化は示さない.
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考え方 座標変換を微分し,元の L に代入する.

  1. x˙=3q2q˙/a2 より L=9Aq4q˙2/(2a4).∂L/∂q˙=9Aq4q˙/a4,∂L/∂q=18Aq3q˙2/a4 なので,方程式は q4q¨+2q3q˙2=0.q>0 より d(q2q˙)/dt=0 と書ける.

  2. q2q˙ は一定で,q3 は時刻の1次関数.両端から

q=a(1+7t/T)1/3,x∗=a+7at/T

を得る.

  1. x=x∗+δx を代入すると

S[x]−S[x∗]=7AaT∫0Tδx˙dt+A2∫0T(δx˙)2dt=A2∫0T(δx˙)2dt≥0

である.境界項は0.最小で,等号は同じ経路に限る.

確かめ:得た q を戻すと x¨=0.x では等速となる.

ポイント 教える人へ

偏微分と時間微分を区別し,全微分を境界項と対応させます.演習4で「どんな変化でも」の役割を問い,候補内の停留だけで結論していないか確認してください.