ここからは問題演習です。最初の相手は、1990年の東大後期。名前だけで鉛筆を置かないでください。まずは、動いている直線を一つ捕まえましょう。
第1問:1990年 東京大学 後期・理科I類
𝑥𝑦 平面上の4点 𝑂(0,0), 𝐴(2,0), 𝐵(2,2), 𝐶(0,2) を頂点とする正方形を 𝑄 とする。このとき、次の条件を満たす 𝑥𝑦 平面上の点 𝑃 の存在する範囲を図示し、その部分の面積を求めよ。
【条件】点 𝑃 を通って、𝑄 の面積 4 を 1 と 3 に切り分けるような直線を引くことができない。
出典:1990年 東京大学 後期・理科I類 第1問
「引くことができない」。今回は、直線が通る場所ではなく、通り損ねる場所がお目当てです。まず面積を1と3に分ける直線を動かし、真ん中に何が取り残されるかを見てみましょう。
角 𝑂 を三角形として切り取る直線を考えます。座標軸との交点を (𝑡,0)、(0,𝑠) とすると、切り取る面積は
𝑡𝑠2=1.
したがって 𝑠 =2/𝑡。両交点が正方形の辺上にあるので 1 ≤𝑡 ≤2 です。直線の式は
𝑥𝑡+𝑦2/𝑡=1𝑦=−2𝑡2𝑥+2𝑡
切片が一方では増え、もう一方では減り、その積は一定。双曲線の接線を疑ってみましょう。まず 𝑦 =𝑘/𝑥 の 𝑥 =𝑎 における接線を計算すると
𝑦−𝑘𝑎=−𝑘𝑎2(𝑥−𝑎)𝑦=−𝑘𝑎2𝑥+2𝑘𝑎
元の直線に合わせるには 𝑘/𝑎2 =2/𝑡2、2𝑘/𝑎 =2/𝑡。二つを見比べると 𝑎 =𝑡/2、𝑘 =1/2 と決まります。したがって、切断する直線は
𝑦=12𝑥
の 𝑥 =𝑡/2 における接線でした。1 ≤𝑡 ≤2 なので、接点は 1/2 ≤𝑥 ≤1 の弧を動きます。今回は双曲線でした。放物線の専属契約ではなかったようです。角を変えれば、この弧が正方形の中心 (1,1) のまわりに四つ並びます。
ただし、ここで終了のベルを鳴らすのは少し早い。正方形を切る直線は、隣り合う辺だけでなく、向かい合う辺を横切ることもあります。この選手を置き去りにしないでおきましょう。
左右の辺との交点を (0,𝑠)、(2,𝑟) とし、下側の台形の面積が1になる場合を考えます。その面積は 𝑠 +𝑟 なので、𝑟 =1 −𝑠。したがって直線は
𝑦=𝑥2+(1−𝑥)𝑠(0≤𝑠≤1).
これらはすべて (1,1/2) を通る直線です。図で動かすと、こちらも中央の領域には入り込まないことが見えます。ほかの向きも同じです。
したがって、答えは四つの双曲線の弧に囲まれた中央部分。外周には面積1を切り取る接線が通るので、外周は含みません。
下の図では、三角形を切り取る直線と台形を切り取る直線を切り替えられます。どちらも青い部分の面積は1。「答えの領域」を表示して、中央に直線が入り込めないことを確かめてください。破線の外周は答えに含みません。
[図:面積1を切り取りながら、直線を動かす]角の三角形の面積が1なら切片の積は2。切断直線の包絡線はxy=1/2の弧で、これを正方形の中心のまわりに四つ並べると、通過できない中央領域の外周になります。向かい合う辺を切る台形の場合も中央領域には入りません。答えは四つの弧の内側(外周を除く)で、面積は2(1−log 2)です。
角の三角形の面積が1なら切片の積は2。切断直線の包絡線はxy=1/2の弧で、これを正方形の中心のまわりに四つ並べると、通過できない中央領域の外周になります。向かい合う辺を切る台形の場合も中央領域には入りません。答えは四つの弧の内側(外周を除く)で、面積は2(1−log 2)です。
あとは面積。図形を4等分し、左下の部分を積分すれば
𝑆=4∫11/2(1−12𝑥)𝑑𝑥=4[𝑥−12log𝑥]11/2=2(1−log2)
ここで log は自然対数です。
この問題で包絡線が教えてくれたのは、「直線が届かなくなる境目」です。そこを先に見つければ、残りは図形の対称性と面積の計算に戻れます。問題の肩書きは東大後期でも、直線まで偉そうになったわけではありません。
第2問
𝑥𝑦 平面上に直線
𝑙:𝑥𝑡+𝑦𝑡(1−𝑡)=1
がある。𝑡 が 0 <𝑡 <1 の範囲を動くとき、𝑙 の通りうる範囲を図示せよ。
出典:『考え抜く数学 学コンに挑戦』p.29、問題2(2005年4月号)
分母に文字が並ぶと、いかにも面倒そうです。しかし、見た目の威圧感まで計算に付き合う必要はありません。まず分母を払います。
(1−𝑡)𝑥+𝑦=𝑡(1−𝑡)𝑦=(𝑡−1)𝑥−𝑡2+𝑡=(𝑡−1)(𝑥−1)−(𝑡−1)2
傾きの二乗が出てきました。前に見た放物線の接線と似ていますね。今回は 𝑥 −1 があるので、𝑦 =𝑎(𝑥 −1)2 を試してみましょう。接点の横座標を 1 +𝑠 とすると、接線は
𝑦−𝑎𝑠2=2𝑎𝑠(𝑥−1−𝑠)𝑦=2𝑎𝑠(𝑥−1)−𝑎𝑠2
傾きを合わせて 2𝑎𝑠 =𝑡 −1。すると定数項は −𝑎𝑠2 = −(𝑡 −1)2/(4𝑎) なので、𝑎 =1/4 にすれば元の式と一致します。見た目が似ているだけで採用せず、ちゃんと式の面接もしておきました。したがって、探していた放物線は
𝑦=(𝑥−1)24.
𝑠 =2(𝑡 −1) だから、接点の横座標は 1 +𝑠 =2𝑡 −1。これで、元の直線がこの放物線の接線だと確かめられました。
今回は 0 <𝑡 <1 なので、接点の横座標は
−1<2𝑡−1<1.
つまり、同じ放物線の −1 <𝑥 <1 の部分で接線を動かしたときの通過範囲です。端に近づいたときの直線は 𝑦 = −𝑥 と 𝑦 =0。この二本と放物線の位置を見ながら、接線の通った部分を塗ればよいわけです。
下の図で接線を動かしてみてください。青い部分が答えです。実線の外周は含み、破線の外周と白丸は含みません。本文では場合分けを並べず、この図で領域を示しておきます。
[図:放物線の一部分で、接線を動かす]直線はy=(x−1)²/4のx=2t−1における接線。0<t<1なので、接点の横座標−1<x<1の部分の接線が通過する範囲を示します。含む外周は実線、含まない外周は破線、除く点は白丸です。
直線はy=(x−1)²/4のx=2t−1における接線。0<t<1なので、接点の横座標−1<x<1の部分の接線が通過する範囲を示します。含む外周は実線、含まない外周は破線、除く点は白丸です。
同じ放物線でも、接点を動かす範囲が変われば、接線の届く範囲も変わる。包絡線を見つけたあとに見るべきものは、結局、最初から問題文に書いてあった 𝑡 の範囲なのでした。
第3問:2021年 東京大学 第1問より
𝑎,𝑏 を実数とする。座標平面上の放物線
𝐶:𝑦=𝑥2+𝑎𝑥+𝑏
は放物線 𝑦 = −𝑥2 と2つの共有点を持ち、一方の共有点の 𝑥 座標は −1 <𝑥 <0 を満たし、他方の共有点の 𝑥 座標は 0 <𝑥 <1 を満たす。
放物線 𝐶 の通りうる範囲を座標平面上に図示せよ。
出典:2021年 東京大学 第1問(2)
まずは、何を動かしているのかを見える形にしましょう。
二つの共有点の横座標を 𝑢,𝑣 と置きます。条件は
−1<𝑢<0,0<𝑣<1.
共有点では 𝑥2 +𝑎𝑥 +𝑏 = −𝑥2 なので、2𝑥2 +𝑎𝑥 +𝑏 =0 の解が 𝑢,𝑣。したがって
2𝑥2+𝑎𝑥+𝑏=2(𝑥−𝑢)(𝑥−𝑣).
これを使うと、動く放物線は
𝑦=𝑥2−2(𝑢+𝑣)𝑥+2𝑢𝑣
と書けます。係数 𝑎,𝑏 の代わりに、図の上で位置がわかる 𝑢,𝑣 を動かすわけです。
ここで、いったん横座標 𝑥 を決めて眺めます。式は 𝑢 だけを動かせば一次式、𝑣 だけを動かしても一次式。途中で急に折り返して、最高記録を更新することはありません。上下の限界は、𝑢,𝑣 をそれぞれの範囲の端へ近づけたところにあります。
そこで、(𝑢,𝑣) を ( −1,0),(0,0),( −1,1),(0,1) に近づけるときの放物線を描いてみましょう。
𝑦=𝑥2+2𝑥,𝑦=𝑥2𝑦=𝑥2−2,𝑦=𝑥2−2𝑥
この四つが、上下の境目の候補です。各 𝑥 で一番上にある曲線と、一番下にある曲線の間を塗ればよい。𝑢,𝑣 を連続的に動かせば、その間の高さはすべて通れます。
𝑦 =𝑥2 は残りの三つの間に収まるので、外周には現れません。したがって、答えは 𝑦 =𝑥2 +2𝑥、𝑦 =𝑥2 −2、𝑦 =𝑥2 −2𝑥 を描いてできる、下の図の青い部分です。境目の切り替わりは 𝑥 = −1,0,1 で見て取れます。
端の値 𝑢 = −1,0、𝑣 =0,1 は取れないので、外周は含みません。「限りなく近づける」と「そこに着ける」は別の話です。待ち合わせでやられたら困りますね。
下の図で二つの共有点を動かしてみてください。橙色の放物線が青い範囲を動きます。「境目の候補」を表示すると、どの曲線が上端・下端になっているかも見比べられます。
[図:二つの共有点から、放物線を動かす]共有点の横座標u,vを−1<u<0、0<v<1で動かすと、Cはy=x²−2(u+v)x+2uv。端に近づけたときの四つの候補y=x²+2x,x²,x²−2,x²−2xのうち、一番上と一番下の間が通過領域です。外周は含みません。
共有点の横座標u,vを−1<u<0、0<v<1で動かすと、Cはy=x²−2(u+v)x+2uv。端に近づけたときの四つの候補y=x²+2x,x²,x²−2,x²−2xのうち、一番上と一番下の間が通過領域です。外周は含みません。
今回は、接線の包絡線ではなく、動かせる範囲の端が通過領域を決めました。動く図形を式にして、どこまで届くかを見る。この視点は同じです。