問いしるべ
問いから始める物理 運動を記述する

運動を記述する

加速度と微分の道具

著者:柚木芹香

微分のさらなる道具

位置が sin⁡ωt のような形で書ける運動を扱うために,2つの道具を用意します.

定理 数学の道具:合成関数の微分と三角関数の微分

連鎖律 y=f(u),u=g(t) のとき,

dydt=dydu⋅dudt

導出 t が Δt 変わったとき u が Δu,y が Δy 変わるとすると,ΔyΔt=ΔyΔu⋅ΔuΔt.Δt→0 で Δu→0 なので,右辺は f′(u)g′(t) に近づく(ここでは Δu≠0 の場合を示した.u が定数のときは y も定数で,両辺とも 0 なので公式は成り立つ). たとえば x=(3t+1)2 は u=3t+1 として 2u⋅3=6(3t+1).展開して x=9t2+6t+1 を微分した 18t+6 と一致する.

三角関数の微分(角はラジアンで測る)

(sin⁡θ)′=cos⁡θ,(cos⁡θ)′=−sin⁡θ

導出 高校で学ぶ加法定理 sin⁡(α+β)=sin⁡αcos⁡β+cos⁡αsin⁡β(放物運動の節で復習します.まだ習っていなければ,ここでは認めて進んでください)で α=θ,β=h とおくと sin⁡(θ+h)−sin⁡θ=sin⁡θ(cos⁡h−1)+cos⁡θsin⁡h.両辺を h で割り,次の2つの極限を使う.

単位円の第1象限に角h(ラジアン)の扇形を描き,同じ弧を持つ3つの図形を並べる.左は扇形に内接する三角形で面積は½sin h,中央は扇形で面積は½h,右は外接する三角形で面積は½tan h.面積の大小は½sin h<½h<½tan h. 単位円の第1象限に角h(ラジアン)の扇形を描き,同じ弧を持つ3つの図形を並べる.左は扇形に内接する三角形で面積は½sin h,中央は扇形で面積は½h,右は外接する三角形で面積は½tan h.面積の大小は½sin h<½h<½tan h.
  • limh→0sin⁡hh=1(図の面積の大小 sin⁡h<h<tan⁡h より cos⁡h<sin⁡hh<1,h→0 で cos⁡h→1 から,挟み込みで従う.)

  • cos⁡h−1h=−sin⁡hh⋅sin⁡h1+cos⁡h→−1⋅0=0

よって (sin⁡θ)′=cos⁡θ.また cos⁡θ=sin(θ+π2) に連鎖律を使うと (cos⁡θ)′=cos(θ+π2)=−sin⁡θ.

角速度を含む形 ω を,角が時間とともに増える割合を表す定数とします(くわしい定義はこの章の最後の円運動の節で扱います).u=ωt として連鎖律を使うと

ddtsin⁡ωt=ωcos⁡ωt,ddtcos⁡ωt=−ωsin⁡ωt

練習.

  1. ddtsin⁡3t,ddtcos⁡(2t+1) を求めよ.

  2. ddt(sin⁡t)2 を求めよ.

  3. ddt(2t2+1)3 と ddt(tsin⁡t) を求めよ.

  4. 位置が x=0.20sin⁡(5.0t)[m](t は秒)の運動について,速度 v と加速度 a を求め,速さの最大値と加速度の大きさの最大値を答えよ.

答え:(1) 3cos⁡3t,−2sin⁡(2t+1). (2) u=sin⁡t とすると u2 の微分は 2u で dudt=cos⁡t なので,2sin⁡tcos⁡t. (3) u=2t2+1 として 3u2⋅4t=12t(2t2+1)2.積の微分で sin⁡t+tcos⁡t. (4) v=0.20×5.0cos⁡(5.0t)=1.0cos⁡(5.0t)ms−1,a=−5.0sin⁡(5.0t)ms−2.速さの最大値は 1.0ms−1,加速度の大きさの最大値は 5.0ms−2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

直線上を動く物体の v-t グラフが,次の折れ線である.t=0 で v=0,t=2s で v=4ms−1,t=6s で v=4ms−1,t=10s で v=0(各区間は直線).t=0 の位置を x=0 として,a-t グラフと x-t グラフの形を求めよ.

解答を見る

考え方 加速度は v-t グラフの傾き.位置は,傾きが速度になるように x-t を作る(面積の考え方は「速度から位置へ」で学ぶ).

加速度(v-t の傾き):0〜2 s は 4−02=2ms−2,2〜6 s は 0,6〜10 s は 0−44=−1ms−2.

位置:0〜2 s は v=2t なので x=t2(微分すると 2t,x(0)=0).x(2)=4m.2〜6 s は等速で x=4+4(t−2),x(6)=20m.6〜10 s は v=4−(t−6) なので,x=20+4(t−6)−12(t−6)2(微分すると 4−(t−6) になる).x(10)=20+16−8=28m.

x-t は,0〜2 s で下に凸,2〜6 s で直線,6〜10 s で上に凸になり,つなぎ目で傾きがなめらかに接続する.最後は傾きが 0 になる(停止).a-t は v の傾きが急に変わるところで,値が飛ぶ.

既知の速度と時刻の関係だけを示す.加速度と位置のグラフは設問で求める. 既知の速度と時刻の関係だけを示す.加速度と位置のグラフは設問で求める.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

速さ 20ms−1 で東へ走る車が,交差点で曲がり,5.0 s 後には速さ 20ms−1 で北へ走っていた.この間の平均加速度ベクトルの大きさと向きを求めよ.速さは変わっていないのに,加速度は0か.

東向きと北向きの速度を共通の始点から描く.両方の速さは20 m s⁻¹で,時間差は5.0 s. 東向きと北向きの速度を共通の始点から描く.両方の速さは20 m s⁻¹で,時間差は5.0 s.
解答を見る

考え方 平均加速度は速度ベクトルの差を時間で割る.差はベクトルとして計算する.

東を x,北を y の正の向きとすると,v1=(20,0)ms−1,v2=(0,20)ms−1.

Δv=v2−v1=(−20, 20)ms−1,a¯=Δv5.0s=(−4.0, 4.0)ms−2

大きさは 4.02≈5.7ms−2,向きは北西(x 軸から 135∘).

速さは同じでも,向きが変わったので Δv≠0 であり,加速度は0でない.北西は,東から北へ曲がる車の曲がる側(内側)にあたる.

ポイント ここまでのまとめ

  • 連鎖律:y=f(u),u=g(t) のとき dydt=dydu⋅dudt.

  • 三角関数の微分(角はラジアン):(sin⁡θ)′=cos⁡θ,(cos⁡θ)′=−sin⁡θ.角速度を含む形は ddtsin⁡ωt=ωcos⁡ωt,ddtcos⁡ωt=−ωsin⁡ωt.

  • v-tグラフの傾きから a-t グラフができ,x-tグラフは傾きが v になるようにつないで描く.

  • 平面運動の平均加速度は,速度の差をベクトルとして計算して Δt で割る.速さが同じでも0とは限らない.