問いしるべ
問いから始める物理 確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

確率振幅の積と和の演習

著者:柚木芹香

連続する過程では振幅を掛け,区別できない経路ではその積を足してください.損失がある場合は,何を条件にした確率かも確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

粒子源の状態を |s⟩,中間経路を |1⟩,|2⟩,最終出力を D とする.振幅は ⟨1|s⟩=3/2,⟨2|s⟩=i/2,⟨D|1⟩=1/2,⟨D|2⟩=i3/2 である.

  1. ⟨D|s⟩ と出力 D の確率を求めよ.

  2. 中間経路の完全な記録を残すと,確率はいくらになるか.経路1をたどる確率と,経路1を経て D に達する確率も区別して求めよ.

粒子源sから中間経路1,2を経てDへ至る.sから1は√3/2,sから2はi/2,1からDは1/2,2からDはi√3/2の振幅を持つ. 粒子源sから中間経路1,2を経てDへ至る.sから1は√3/2,sから2はi/2,1からDは1/2,2からDはi√3/2の振幅を持つ.
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考え方
1本の経路の寄与は2区間の振幅の積であり,記録のない場合はその積どうしが干渉する.

  1. ⟨D|s⟩=⟨D|1⟩⟨1|s⟩+⟨D|2⟩⟨2|s⟩=3/4+i23/4=0.したがって PD=0.確率の積を足しても,この打ち消しを表せない.

  2. 記録がある場合は PD=|3/4|2+|−3/4|2=3/8.経路1をたどる確率は 3/4,経路1を経て D に達する確率は (3/4)(1/4)=3/16 である.位相を含む振幅は無次元であり,求めた確率も無次元になる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

粒子を等しい振幅 1/2 で2経路に分ける.経路1はそのまま進み,経路2は振幅を geiδ 倍する透過部を通る.0≤g≤1 とし,吸収された粒子は戻らない.再結合部から出力 D,E へ至る振幅は,経路1から順に 1/2,1/2,経路2から順に 1/2,−1/2 である.透過した粒子に経路の記録は残らない.

  1. PD,PE と吸収確率を求め,和を確かめよ.

  2. g=1/2,δ=0 の場合,透過した粒子だけを選んだときの D の確率を求めよ.また,δ を変えた際に PD が完全に0になる g を求めよ.

等しい振幅1/√2で分岐した経路2に透過係数g e^{iδ}の透過部を置く.吸収先,再結合部,出力D,Eを示す. 等しい振幅1/√2で分岐した経路2に透過係数g e^{iδ}の透過部を置く.吸収先,再結合部,出力D,Eを示す.
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考え方
入射粒子あたりの確率を先に求め,透過を条件とする場合だけ透過確率で割る.

  1. ⟨D|s⟩=(1+geiδ)/2,⟨E|s⟩=(1−geiδ)/2 より

PD=1+g2+2gcos⁡δ4,PE=1+g2−2gcos⁡δ4.

透過確率は (1+g2)/2,吸収確率は (1−g2)/2 なので和は1である.

  1. PD=9/16,透過確率は 5/8 より,条件つき確率は (9/16)/(5/8)=9/10.最小値は δ=π で (1−g)2/4 だから,0になるのは g=1 だけである.位相調整だけでは振幅の大きさの不一致を補えない.g=0 では出力は各 1/4,吸収は 1/2 となり,片経路だけの結果と一致する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

等間隔の散乱中心 N 個を含む試料を比較する.ある検出方向では,記録を残さない散乱は全中心から同位相となる.各中心で別々の直交する内部記録が残る散乱もある.後者の記録は読み出さない.入射粒子数と検出条件をそろえて,次の計数を得た.

N

記録なし

中心ごとの記録あり

10

240

30

20

960

60

30

2160

90

  1. 各列を AN2,BN のどちらで表せるか決め,係数を求めよ.N=25 の期待計数も求めよ.

  2. 記録なしの列だけを N2 で割って一定になる理由と,記録ありで振幅を足せない理由を述べよ.

等間隔に並ぶN個の散乱中心について,指定方向で同位相となる記録なしの散乱と,中心ごとに異なる内部記録が残る散乱を並べる. 等間隔に並ぶN個の散乱中心について,指定方向で同位相となる記録なしの散乱と,中心ごとに異なる内部記録が残る散乱を並べる.
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考え方
同位相の N 個の振幅は N 倍になるが,区別できる N 個の過程の確率は N 倍になる.

  1. 記録なしは A=240/102=2.4,記録ありは B=30/10=3.0.他の2行にも同じ係数が当てはまる.N=25 では順に 2.4×252=1500,3.0×25=75 である.

  2. 各中心の振幅を ϕ とすれば,記録なしは |Nϕ|2=N2|ϕ|2,記録ありは ∑j=1N|ϕ|2=N|ϕ|2 である.記録を読まなくても最終状態が異なるので干渉しない.N2 則は指定方向の狭い検出領域での弱い散乱の模型であり,全方向の確率を N2 倍する主張ではない.多重散乱を無視するには,全散乱確率が1より十分小さい必要がある.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

一列の散乱中心 N=Mq 個を,隣り合う q 個ずつの M 組に分ける.中心番号は j=0,1,…,N−1,検出領域への各振幅は ϕeijα である.記録には散乱した組だけが残り,組の中の中心は区別できない.

  1. 検出確率を M,q,ϕ,α で表し,α=0 の値も求めよ.

  2. N=12,q=3 とする.全く記録のない場合と比較し,α=0 および α=π/6 での確率を求めよ.

N=Mq個の散乱中心を隣接するq個ずつM組に分ける.組の番号だけを記録し,隣り合う中心の位相差αを示す. N=Mq個の散乱中心を隣接するq個ずつM組に分ける.組の番号だけを記録し,隣り合う中心の位相差αを示す.
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考え方
組の内部では振幅を足し,組どうしは確率を足す.組の先頭までの位相は絶対値の2乗では消える.

  1. 組 r の振幅は ϕeirqα∑k=0q−1eikα.α が 2π の整数倍でないとき,和は (1−eiqα)/(1−eiα) なので

P=M|ϕ|2sin2⁡(qα/2)sin2⁡(α/2).

α=0 では直接足して P=Mq2|ϕ|2=Nq|ϕ|2.

  1. M=4 なので同位相で P=36|ϕ|2,記録なしでは 144|ϕ|2.α=π/6 では組の和が 1+eiπ/6+eiπ/3=eiπ/6(1+3) より,P=4(4+23)|ϕ|2.記録なしでは ei12α=1 で幾何級数の和が0だから P=0.組間の打ち消しが失われる.検出領域への確率として扱うには N2|ϕ|2 が1より十分小さい範囲を選ぶ.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

3経路の振幅は検出領域 D に対して ϕ,ϕeiα,ϕe2iα で,ϕ≠0 とする.経路の記録はない.検出確率を0にした後,第3経路だけを遮断する場合と,その経路の完全な記録を残す場合を比較する.操作は他経路の振幅を変えない.

  1. 0≤α<2π の範囲で初めの検出確率が0となる α をすべて求めよ.

  2. 求めた位相で2つの操作後の検出確率をそれぞれ求め,なぜ同じにならないか説明せよ.入射粒子あたりの確率で比較すること.

3経路が共通の検出領域Dへ至る.位相は順に0,α,2αで,第3経路に遮断板または記録装置を置く. 3経路が共通の検出領域Dへ至る.位相は順に0,α,2αで,第3経路に遮断板または記録装置を置く.
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考え方
遮断は振幅をなくし,記録は他経路との干渉をなくす.

  1. 全振幅は ϕeiα(e−iα+1+eiα)=ϕeiα(1+2cos⁡α).cos⁡α=−1/2 より α=2π/3,4π/3.

  2. 遮断後は Pblock=|ϕ|2|1+eiα|2=|ϕ|2(2+2cos⁡α)=|ϕ|2.記録後は経路1,2の和と経路3の確率を足すので Precord=|ϕ|2+|ϕe2iα|2=2|ϕ|2.記録の場合には第3経路の粒子も検出されるため,遮断の2倍になる.全経路の最大値 9|ϕ|2 が1以下になる振幅なら確率として矛盾しない.

ポイント 教える人へ

  • ブラケットの右側を出発状態,左側を到着状態として読み取らせる.

  • 吸収がある場合,入射粒子あたりと透過粒子あたりの確率を区別させる.

  • 記録が区別する範囲を囲ませ,囲みの内外で足す量を説明させる.

  • 指定方向の散乱強度と,全散乱確率の規格化を混同させない.