問いしるべ
問いから始める物理 回転と剛体

回転と剛体

外積

著者:柚木芹香

前の節で先に使った外積を,この節で定義し,その微分を導きます.

定理 数学の道具:外積

定義 空間のベクトル a,b の外積 a×b は,次のベクトルである.

  • 大きさは |a||b|sin⁡θ(θ は2つのなす角,0≤θ≤π).a,b を2辺とする平行四辺形の面積に等しい.

  • 向きは a にも b にも垂直で,a から b へ右ねじを回すとき,ねじの進む向き.

右手座標系で,xy 平面上の \vec{a},\vec{b} と平行四辺形に斜線を引く.\vec{a}\times\vec{b} を垂直な矢印で描き,右ねじの回転を曲線の矢印で添える. 右手座標系で,xy 平面上の \vec{a},\vec{b} と平行四辺形に斜線を引く.\vec{a}\times\vec{b} を垂直な矢印で描き,右ねじの回転を曲線の矢印で添える.

成分表示

a×b=(aybz−azby,  azbx−axbz,  axby−aybx)

x,y,z を順に回して覚える.xy 平面内のベクトルでは z 成分 axby−aybx だけが残り,これが前の節の L=xpy−ypx である.

性質 b×a=−a×b.平行なベクトルの外積は 0.和と実数倍は普通に分配できる.

外積の微分 積の微分と同じ形で,順序を保って

ddt(a×b)=a˙×b+a×b˙

である.L=r×p に使うと,v×mv=0 と p˙=F から

dLdt=v×mv+r×p˙=r×F=τ

となる.前の節の結果の導出である.

練習 1.

  1. a=(1,2,0),b=(3,−1,0) のとき,a×b と,2つを2辺とする平行四辺形の面積を求めよ.

  2. a=(2,0,1),b=(0,3,0) の外積を求め,a に垂直なことを確かめよ.

答え:(1) a×b=(0,0,1×(−1)−2×3)=(0,0,−7).面積は 7.(2) (0×0−1×3, 1×0−2×0, 2×3−0×0)=(−3,0,6).a との内積は 2×(−3)+1×6=0 で,垂直である.

練習 2. (1) ex×ey,ey×ex,a×a を求めよ.(2) 位置 r=(2.0,0,0)m,運動量 p=(0,3.0,0)kgms−1 の質点の r×p を求めよ.(3) a=(1,1,0),b=(1,−1,0) の外積と,2つを2辺とする平行四辺形の面積を求めよ.

答え:(1) ez,−ez,0.(2) (0,0,2.0×3.0−0)=(0,0,6.0)kgm2s−1.(3) (0,0,1×(−1)−1×1)=(0,0,−2),面積は 2.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

質量 0.50kg の質点が,原点 O を中心とする半径 2.0m の円周上を,反時計回りに速さ 3.0ms−1 で等速円運動している.

原点を中心とする円と,円上の2点 (2.0,\,0),(0,\,2.0) での位置ベクトルと速度の矢印を描く. 原点を中心とする円と,円上の2点 (2.0,\,0),(0,\,2.0) での位置ベクトルと速度の矢印を描く.
  1. 質点が (2.0,0)m にあるときと (0,2.0)m にあるときの,O のまわりの角運動量の z 成分を求めよ.

  2. 質点に速度と同じ向きの一定の力 1.5N を加え始めた.O のまわりのトルクと,角運動量の変化の割合を求めよ.

  3. 力を加え始めて 2.0s 後の速さを,角運動量から求めよ.ただし,この間も質点は同じ円周上を動くものとする.

解答を見る

考え方 外積の z 成分 xpy−ypx を使う.円運動では速度が位置ベクトルに垂直.

  1. (2.0,0) では p=(0, 1.5)kgms−1 なので L=2.0×1.5−0=3.0kgm2s−1.(0,2.0) では p=(−1.5, 0) なので L=0−2.0×(−1.5)=3.0kgm2s−1.どちらも mrv に等しい.

  2. 力は接線方向なので,トルクは τ=rF=2.0×1.5=3.0Nm.よって dLdt=τ=3.0kgm2s−2.

  3. 一定のトルクなので L=3.0+3.0×2.0=9.0kgm2s−1.L=mrv より v=9.00.50×2.0=9.0ms−1.運動方程式 v=3.0+1.50.50×2.0=9.0ms−1 とも一致する.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平の板に穴があり,質量 0.20kg の小球が,穴を通した糸の先につながれている.初め,小球は穴を中心とする半径 0.60m の円周上を速さ 1.2ms−1 で等速円運動している.糸をゆっくり引いて,半径を 0.20m にした.

板を真上から見て,初めの円と引いた後の円を同心円で描く.糸は穴へ向かい,手が下に引く向きを添える. 板を真上から見て,初めの円と引いた後の円を同心円で描く.糸は穴へ向かい,手が下に引く向きを添える.
  1. 引いた後の小球の速さと角速度を求めよ.

  2. 引く前と後の糸の張力を求めよ.

  3. 運動エネルギーの増加と,その由来を答えよ.

解答を見る

考え方 糸の力は穴を向く中心力なので,穴のまわりの角運動量が保存する.張力は向心力として円運動の式から求める.

  1. mrv が一定なので 0.60×1.2=0.20v.v=3.6ms−1.角速度は,初め 1.2/0.60=2.0rads−1,後は 3.6/0.20=18rads−1.

  2. T=mv2/r より,初めは 0.20×1.220.60=0.48N,後は 0.20×3.620.20≈13N.

  3. 運動エネルギーは,初め 12×0.20×1.22=0.144J,後は 12×0.20×3.62=1.296J.増加は約 1.15J.

増えた分は,糸を引いた手がした仕事である.

ポイント ここまでのまとめ

  • 外積 a×b は,大きさ |a||b|sin⁡θ(平行四辺形の面積),向きは a から b への右ねじの向き.成分は (aybz−azby, azbx−axbz, axby−aybx).

  • 順序を入れ替えると符号が変わり,平行なら 0.xy 平面内なら z 成分 axby−aybx だけが残る.

  • 外積の微分は,積の微分の形で順序を保つ.これで dLdt=r×F が出る.

  • 円運動では L=mrv.中心力で半径が変わるときは,速度の接線成分 v⟂ を使った L=mrv⟂ が一定.