問いしるべ
問いから始める物理 物理の見方

物理の見方

原子の見方の例題

著者:柚木芹香

前の節で,砂糖の分子の個数と大きさを,質量と密度から求められそうだと見通しをつけました.この節では,それを数にします.原子の世界では 10−10 や 1023 のような数が普通に出てくるので,まず扱いの道具を整えます.

定理 数学の道具:桁(10の冪)と有効数字

科学的記数法.数を a×10n(1≤a<10,n は整数)の形に書きます.n を桁(オーダー)といいます.

10m×10n=10m+n,10m10n=10m−n,(10m)n=10mn

掛け算では指数を足し,割り算では引きます.たとえば (3×108)×(2×10−3)=6×105 です.数の大きさを比べるには,まず桁を比べます.

接頭語.k(キロ)=103,M(メガ)=106,G(ギガ)=109,m(ミリ)=10−3,μ(マイクロ)=10−6,n(ナノ)=10−9.

有効数字.意味のある桁を有効数字といいます.0.0030 は2桁です.1200 は桁数がはっきりしないので,1.2×103(2桁)や 1.20×103(3桁)と書き分けます.

  • 掛け算・割り算:結果の桁数を,入力のうち桁数の最も少ないものに合わせる.

  • 足し算・引き算:結果の最後の桁の位置を,入力のうち最も粗いものに合わせる.

  • 途中の計算は1桁多く保ち,最後に丸める.

練習. (1) (4.0×105)÷(8×10−2) を計算せよ.(2) 12.3+0.47 を有効数字を考えて計算せよ.(3) (2.0×10−3)3 と 9.0×10−8 を計算せよ.(4) (2.7×10−29)1/3 を計算せよ(指数が3で割り切れるように,27×10−30 と書き直す).(5) 4.56×2.1 を有効数字を考えて計算せよ.

答え:(1) 0.5×107=5×106.(2) 12.77 を,粗い 12.3 の小数第1位に合わせて 12.8.(3) 8.0×10−9,9.0×10−4=3.0×10−4.(4) 271/3×10−10=3.0×10−10.(5) 9.576 を2桁に合わせて 9.6.

例題

例題 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水1滴の体積を 0.050mL(質量 0.050g)とする.水のモル質量を 18gmol−1,NA=6.0×1023mol−1 とする.

水1滴に含まれる水分子の個数を求めよ.

解答を見る

考え方 質量を物質量に直し,NA を掛ければ個数になる.

物質量は 0.050/18=2.8×10−3mol である.個数は 2.8×10−3×6.0×1023≈1.7×1021 個である(入力は2桁なので2桁で答える).地球の人口 8×109 人の約 2×1011 倍にあたる.

例題 2

オリジナル ★★☆☆☆

角砂糖1個を砂糖(ショ糖)3.0g の結晶とみなす.ショ糖のモル質量は 342gmol−1,結晶の密度は 1.6gcm−3,NA=6.0×1023mol−1 とする.

  1. 角砂糖1個に含まれる砂糖分子の個数を求めよ.

  2. 砂糖分子1個が占める体積と,それを立方体とみなしたときの一辺を求めよ.この一辺は可視光の波長 400nm の何分の1か.

  3. 内径 6.0cm のコップの水に溶かしたときの水面の上昇は何 mm か.溶液の体積は,水の体積と砂糖結晶の体積の和に等しいとする.

内径6.0 cmのコップで,溶かす前の水面と溶かした後の水面の差Δhを示す. 内径6.0 cmのコップで,溶かす前の水面と溶かした後の水面の差Δhを示す.
解答を見る

考え方 (1) は質量から個数へ.(2) は結晶の体積を個数で割る.(3) は体積が足し算なら,上昇した部分の体積は結晶の体積に等しい.

  1. 物質量は 3.0/342=8.8×10−3mol.個数は 8.8×10−3×6.0×1023≈5.3×1021 である.

  2. 結晶の体積は V=3.0/1.6=1.9cm3=1.9×10−6m3.1個あたり

v=1.9×10−65.3×1021≈3.6×10−28m3

一辺は (360×10−30)1/3≈7.1×10−10m=0.71nm である.波長との比は 400/0.71≈560 であるから,波長の約 1/560 である.

  1. 断面積は S=π×(3.0cm)2=28cm2.上昇した部分の体積が V=1.9cm3 であるから

Δh=VS=1.928cm≈0.068cm≈0.7mm

ポイント ここまでのまとめ

  • 原子の世界の数は a×10n の形で書き,掛け算では指数を足し,割り算では引く.

  • 有効数字は,掛け算・割り算では桁数の少ないほうに,足し算・引き算では粗いほうの位置に合わせる.

  • 質量 → 物質量 → 個数と順に進めば,目に見えない粒の数も大きさも,ふつうの測定値から求められる.

  • 角砂糖1個の分子の数は約 5×1021,分子1個の一辺は約 0.7nm だった.