問いしるべ
問いから始める物理 物理の見方

物理の見方

原子の見方の演習

著者:柚木芹香

個数・体積・長さのつながりを,自分の手で確かめる演習です.答えを見る前に,式の形と桁の見当を書いてください.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

金の原子を,一辺 0.26nm の立方体が隙間なく並んだものとみなす.金の密度は 19.3gcm−3 である.

  1. 金原子1個の質量を,立方体の体積と密度から求めよ.

  2. 金のモル質量 197gmol−1 と NA=6.02×1023mol−1 から1個の質量を求め,(1) と比べよ.

一辺0.26 nmの立方体を並べ,中央の区画の金原子を球で示す. 一辺0.26 nmの立方体を並べ,中央の区画の金原子を球で示す.
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考え方 1個の質量は「密度×1個の体積」でも「モル質量÷NA」でも求まる.2通りが一致するかを見る.

  1. 体積は (0.26×10−9m)3=1.76×10−29m3,密度は 1.93×104kgm−3 であるから m=1.93×104×1.76×10−29≈3.4×10−25kg である.

  2. m=0.197/(6.02×1023)≈3.3×10−25kg である.(1) との差は約4 %で,よく一致する.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

標準状態(0∘C,1気圧)の気体 1mol の体積は 22.4L である.

  1. 標準状態の空気 1L に含まれる分子の個数を求めよ.

  2. 分子1個が占める空間を立方体とみなして,分子の間隔を求めよ.分子の大きさ 0.3nm の約何倍か.

分子間隔dと分子の直径0.3 nmを区別した模型.立方体は分子1個あたりの空間を表す. 分子間隔dと分子の直径0.3 nmを区別した模型.立方体は分子1個あたりの空間を表す.
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考え方 (1) は 1L の物質量に NA を掛ける.(2) は 1L を個数で割る.

  1. 物質量は 1/22.4=4.46×10−2mol.個数は 4.46×10−2×6.02×1023≈2.7×1022 個である.

  2. 1個あたりの体積は 1.0×10−3m3/2.7×1022=3.7×10−26m3.一辺は (37×10−27)1/3≈3.3×10−9m=3.3nm である.分子の大きさの約 3.3/0.3≈11 倍,およそ10倍である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

コップ1杯の水(200g)の分子すべてに印をつけて海に流し,海全体によく混ざるまで待つ.そのあと同じコップで海から 200g の水をくみ上げたとき,その中に印をつけた分子はおよそ何個入っているか.海水の総質量は 1.4×1021kg で,水とみなす.NA=6.0×1023mol−1,水のモル質量は 18gmol−1 である.

印つき分子を含む水を海に混ぜ,再びコップでくむ操作を示す.点の数は実際の分子数を表さない. 印つき分子を含む水を海に混ぜ,再びコップでくむ操作を示す.点の数は実際の分子数を表さない.
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考え方 混ざったあとは,印つきの分子はどこにも同じ割合で存在する.くみ上げた中の個数は,(印つきの総数)×(くみ上げた量が海全体に占める割合)である.

コップ1杯の分子数は Nc=20018×6.0×1023≈6.7×1024 個である.くみ上げた量が海全体に占める割合は,質量の比で f=200g/(1.4×1024g)≈1.4×10−22 である.求める個数は

Nc×f≈6.7×1024×1.4×10−22≈9.5×102

すなわち約 103 個である.分子の数は巨大(1024)だが,海に対する割合は小さく(10−22),打ち消し合って「千個ほど」が残る.完全に混ざるには長い年月が要るので,理想化した値である.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

塩化ナトリウム NaCl の結晶では,NaA+ と ClA− が交互に,間隔 d=0.282nm の立方格子の格子点に並んでいる.つまり,イオン1個は一辺 d の立方体を占める.結晶の密度を 2.16gcm−3,NaCl のモル質量を 58.4gmol−1 として,アボガドロ定数を求めよ.

Na⁺とCl⁻が交互に並ぶ格子の断面と,イオン1個あたりの立方体を示す. Na⁺とCl⁻が交互に並ぶ格子の断面と,イオン1個あたりの立方体を示す.
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考え方 NaCl 1組(イオン2個)の質量が分かれば,モル質量をそれで割ると 1mol 中の組の数,すなわち NA が出る.

1組はイオン2個なので,占める体積は 2d3=2×(0.282×10−9m)3=4.49×10−29m3 である.密度 2.16×103kgm−3 から,1組の質量は 2.16×103×4.49×10−29≈9.69×10−26kg である.よって

NA=58.4×10−3kgmol−19.69×10−26kg≈6.03×1023mol−1

となり,知られた値 6.02×1023mol−1 とよく一致する.

ポイント 教える人へ

  • 答えを先に言わず,予想を書いてもらう.「水面は上がる」と答える人は多いが,「どれだけ」と聞くと止まる.分子の大きさ,個数,断面積をどう結ぶかが入り口である.

  • つまずきやすいのは 10 の冪の扱いである.10−10 と 1010 が逆数であることを,具体的な数で何度も確かめさせる.

  • mol は「ダース」と同じ個数の単位だと強調する.6.02×1023 を覚えさせるのではなく,質量から個数を求める橋渡しとして使えればよい.

  • 確かめ:「1滴の水の分子数は地球の人口より多いか少ないか」「結晶の原子の間隔と密度から,なぜ原子の個数が分かるのか」と問う.答えられれば,個数・体積・長さのつながりが分かっている.