光子と電子の波
水素原子のスペクトルの例題
著者:柚木芹香
前の
例題
例題 1
水素原子の
バルマー系列(
から への遷移)の 線の うち,波長の 長い 方から4本の 波長を 求めよ. バルマー系列の
最短波長(系列の 限界)を 求めよ.可視光の 範囲に 入るのは 何本か. ライマン系列(
へ)の最長波長と,パッシェン系列( へ)の最短波長を 求め,可視光の 線が バルマー系列から しか 出ない ことを 示せ.
水素のn=1から6とn=∞の準位を示す.n=3,4,5,6からn=2への4本の下向き矢印と,n=∞からn=2への破線の矢印を示す.下の波長軸には問題で与えられた可視光400〜700 nmの帯を示す.求める波長とスペクトル線の位置は示さない.準位図の軸の切れ目はエネルギー範囲の省略を表す.
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考え方 光子の
解答
では で, .同じように
である.それぞれ赤,青緑,青紫,紫に
で だから,限界の波長は である. では , ですでに より短い. が大きい ほど 波長は 短くなるので,可視光に 入るのは(1)の4本だけである. ライマン系列で
一番 エネルギーの 小さい 遷移は で, , .これが最長なので,ライマン系列は 全部 紫外線である.パッシェン系列で 一番 エネルギーの 大きい 遷移は で, , .これが最短なので,全部 赤外線である. の系列は さらに エネルギーが 小さく 赤外線に なる.よって 可視光の 線は バルマー系列だけから 出る.
確かめ (1)の656 nm と 486 nm は,問いの
例題 2
1896年,ピッカリングは
基底状態の
の電離エネルギーと,軌道半径を 求めよ.ボーア半径を とする. の の遷移の 光子の エネルギーを と で表せ. が偶数 のとき,水素の の線と 同じ 波長に なる ことを 示し, の線の 波長を 求めよ. 実際には
原子核も 動く.換算質量を 使うと, の の線と 水素の の線の 波長は,どちらが どれだけ 長いか.陽子の 質量を ,ヘリウムの原子核の 質量を ( は電子の 質量),水素の 線の 波長を とする.
原子核を固定した水素のn=1,2,3とHe⁺のn=1から6の準位を,同じエネルギー軸で比較する.水素のn=1,2,3はHe⁺のn=2,4,6と同じ高さで,破線で対応づける.密集した準位を読みやすくするため,He⁺のn=1とn=2の間の範囲は共通の軸で省略する.電離エネルギー,軌道半径,求める波長と換算質量の補正値は示さない.
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考え方
解答
電離エネルギーは
である.軌道半径は で,水素の半分である. 光子の
エネルギーは
である.
で,バルマー系列の 656 nm と 486 nm の
準位は
に比例するので,同じ形の 遷移の 光子の エネルギーの 比は 換算質量の 比に なる.
波長は
である.ここで
確かめ 原子核が
例題 3
水銀の
山 | 1 | 2 | 3 | 4 |
|---|---|---|---|---|
山を
過ぎると 電流が 減る 理由を 説明せよ. この
実験で 水銀原子に 与えられる 励起エネルギーと,この とき 蒸気が 出す光の 波長を 求めよ.最初の 山が でなく に現れる ことは,結果に 影響するか. 励起エネルギーに
届かない 電子が 水銀原子(質量は 電子の 倍)と弾性衝突する とき,1回の 衝突で 失う 運動エネルギーの 割合は 最大で いくらか.水銀原子は 衝突前に 静止しているとする.これが 小さい ことが,この 実験で 大切な 理由を 述べよ.
左は陰極からグリッドまで加速電圧Vをかけ,グリッドより陽極の電位を0.5 V低くした水銀蒸気の管である.電子は右向きに進み,陽極に届いた電子を電流計で測る.右はVを横軸,Iを縦軸とした模式グラフで,問題で与えられた7.0,11.9,16.8,21.7 Vに4つの山を示す.求める山の間隔,励起エネルギー,光の波長は示さない.
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考え方 水銀原子は
解答
電子の
運動エネルギーが 水銀原子の 励起エネルギーに 届くと,グリッドの 手前で 原子と 非弾性衝突し,その エネルギーを 原子に 渡して ほぼ止まる.すると の逆向きの 電圧を 越えられず,陽極に 届く 電子が 減る. をさらに 上げると,衝突の 後に もう 一度 加速されて 逆向きの 電圧を 越えられるようになり,電流が 再び増える.励起エネルギーの2倍に 達すると2回衝突し,また 電流が 減る. 山の
間隔は である.1回の非弾性衝突ごとに を失うので,励起エネルギーは である.励起した原子が 元に 戻る ときの 光の 波長は
で,紫外線である.最初の
質量
の電子が,止まっている 質量 の原子に 正面から 弾性衝突すると,第5章の1次元の 弾性衝突の 式から,原子が 得る 速さは である.原子が受け取る 運動エネルギーの 割合は
で,正面衝突でない
確かめ 実際の
ポイント ここまでの
線の
波長は,準位図で 始めと 終わりの 準位を 決め, から求める. を使うと 速い. 可視光の
線は 水素では バルマー系列の4本だけ.ライマン系列は 紫外線,パッシェン系列は 赤外線である. 水素型イオンは
で, なら を2倍にすると 水素の 準位と 重なる.原子核の 運動は,準位に を掛けて 補正する. フランク・ヘルツの
実験では,電流の 山の 間隔が 励起エネルギーを 与える.山の 位置の 一様なずれは 間隔に 効かない.