ゆらぎと拡散(発展)
ブラウン運動とランダムウォークの演習
著者:柚木芹香
平均変位,平均2乗変位,分散を
演習 1
歩幅
64歩後の
平均変位,平均2乗変位,その 平方根を 求めてください. 進んだ
道のりを 求め,(1)との 違いを 説明してください.
直線上を6歩往復する一例を,上から順に段をずらして描いた.各矢印の長さは歩幅 l である.道のりはすべての歩幅の和で,変位 x は出発点から終点までの符号付きの差である.問題の64歩でも,同じ区別を用いる.
解答を見る
考え方 変位は
1歩の
平均が0なので .独立な歩の 分散を 足すと ,平方根は である.道のりは
.2乗平均平方根は広がりの 目安で,各粒の 到達距離ではない.
演習 2
歩幅
原点に
戻る 確率を 求めてください. 独立な
個の粒の 最終位置の 平均を とします.その標準偏差を 以下にする ための 最小の を求めてください.
上段は6歩後に可能な7つの位置で,棒の高さと数は64通りの歩みの内訳 1,6,15,20,15,6,1 を表す.下段は独立な複数の粒の終点と,それらを平均した位置 x̄ の例である.標本平均は必ず原点になるわけではなく,終点の格子の間にもなりうる.
解答を見る
考え方 平均の
右へ
回進むと .原点は なので確率は .各粒の
分散は ,独立な和の 分散は .したがって平均の 標準偏差は であり, より最小は150個である.標準偏差は 和では 倍,平均では 倍となる.
演習 3
温度
質量
と,等分配則から速さの2乗平均平方根を 求めてください. を保って 半径を 半分に すると,速さと 同じ 時間の1方向の 広がりは 何倍に なるでしょうか.
同じ温度 T,液体の粘性率 η,粒の密度 ρ で,半径 a と a/2 の球を比べる.上段の青い矢印は瞬間の速度の一例で,その向きと大きさはゆらぐ.下段は同じ長い時間 t の1方向の終点の散らばりで,原点から片側への寸法線は広がり √⟨x²⟩ の目安を示す.瞬間の速さと長時間の広がりを区別する.
解答を見る
考え方 速さは
.等分配則 より .これは平均の 速さ とは異なる. 質量は
倍なので速さは 倍. は2倍となり, も2倍,広がりの平方根は 倍である.
演習 4
静かな液体中の
記録間の
平均2乗変位と,推定する を比較してください. 同じ
時間の 記録点を 結ぶ 道のりと 見かけの 速度に,間 引きが 与える 影響を 説明してください.
青いAは間隔 Δt ごとの1方向の位置 x の記録で,橙色のBはAの点を4区間ごとに残して結んだもの.共通の点を橙色の輪で示した.道のりは各区間の |Δx| の和であり,時間軸を含む図上の折れ線の長さではない.Bは記録点の間の往復を省く.
解答を見る
考え方 平均2乗変位は
より,Bの値はAの4倍.時間間隔も4倍なので,両者の は等しい. 三角不等式から,Bの
道のりはA以下である.Bの 変位の2乗平均平方根は2倍なので,見かけの 速度の2乗平均平方根は 半分に なる.記録間の 往復は 省かれ,この 速度は 瞬間の 速さではない.速度の 記憶が 残る 短時間では,拡散の 式も 使えない.
演習 5
各歩が
1歩の
変位 の平均と 分散から,最終位置の 平均と 分散を 求めてください. 2乗平均平方根と
標準偏差を 求め, を使えない 理由を 説明してください.
1歩で右へ l 進む確率は3/5,左へ l 進む確率は2/5である.100歩後の終点分布の中心 ⟨x⟩ は原点Oより右に移る.標準偏差 σ_x は分布の中心を基準にした幅で,原点を基準にした2乗平均平方根とは異なる.⟨x²⟩ は分散と平均の2乗の和になる.
解答を見る
考え方 分散を
, より,1歩の分散は .したがって ,分散は . .2乗平均平方根は ,標準偏差は .異なる歩でも で0ではない.独立性だけでは交差項は 消えない.
演習 6
ペランに
1方向の
値に 直し, とアボガドロ数 を推定してください. 式に
半径の 代わりに 直径を 入れると,推定値は 何倍に なるでしょうか.
左は観測面の x 軸と y 軸,出発点Oから終点への1粒の変位の例である.点線で変位の成分 x,y を示す.問題の ⟨x²+y²⟩=8.8 μm² は多数の粒の平均で,この1粒の値ではない.右は中心から表面までの半径 a と,全幅の直径 2a を示す.
解答を見る
考え方 成分を
等方
性より . なので
である.気体定数
は に比例し, は反比例する.直径を 入れると は2倍, は半分と なる.
ポイント 教える
「平均変位0なら
静止か」と 問い,道のりと 広がりを 区別させる. 標準偏差を
足すつまずきには,和と 平均の 分散を 計算させる. 観測の
間隔で 見かけの 速度が 変わる 理由を 説明させる. 偏りの
交差項と,平面の 測定値を2で 割る 理由で 理解を 確かめる.