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問いから始める物理 ボルツマン分布と等分配則(発展)

ボルツマン分布と等分配則(発展)

ボルツマン分布の演習

著者:柚木芹香

状態の数をボルツマン因子に掛け,変数変換と成立条件を確かめましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

等温大気で,高さ h=2.4km の圧力は地表の 3/4 です.分子質量 m=4.8×10−26kg,g=9.8ms−2,kB=1.38×10−23JK−1,ln⁡(4/3)=0.288 とします.

  1. スケールハイト H と温度 T を求めてください.

  2. 高さ 2h の圧力比と,ln⁡[p(h)/p(0)] 対 h の傾きを求めてください.

  3. モル質量 M=0.029kgmol−1,R=8.3Jmol−1K−1 で,T=280K の H を求めてください.

大気の柱に高さ0,h,2hを示し,h=2.4 kmでp(h)/p(0)=3/4となる条件を記す.右の片対数グラフでは,等間隔の高さに対して気圧の対数が同じ量だけ減る. 大気の柱に高さ0,h,2hを示し,h=2.4 kmでp(h)/p(0)=3/4となる条件を記す.右の片対数グラフでは,等間隔の高さに対して気圧の対数が同じ量だけ減る.
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考え方 圧力比は e−h/H であり,対数をとると高さに比例する.

  1. h/H=ln⁡(4/3) より H=2400/0.288≈8.3km.T=mgH/kB≈280K.

  2. 圧力比は (3/4)2=9/16.対数 −h/H の傾きは −1/H=−1.2×10−4m−1.

  3. M=NAm,R=NAkB より H=RT/(Mg)≈8.2km である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

等体積の小室A,B,Cが細い通路でつながり,希薄な理想気体が温度 T で熱平衡にあります.各室の位置エネルギーは 0,Δ,2Δ,kBT=Δ/ln⁡2 です.通路の分子数は無視します.
分子1個が各室にいる確率と平均位置エネルギーを求めてください.

同じ体積の小室A,B,Cを細い通路でつなぐ.各室の位置エネルギーは0,Δ,2Δで,温度Tは共通である.k_BT=Δ/ln2の条件で各室の確率を比べる. 同じ体積の小室A,B,Cを細い通路でつなぐ.各室の位置エネルギーは0,Δ,2Δで,温度Tは共通である.k_BT=Δ/ln2の条件で各室の確率を比べる.
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考え方 等体積の重みはボルツマン因子の比になる.

重みは 1:1/2:1/4,和は 7/4.確率は 4/7,2/7,1/7,平均は Δ×2/7+2Δ×1/7=4Δ/7.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

反応速度を Aexp⁡[−Ea/(kBT)] と見積もり,A は温度によらず,Ea/kB=6000K とします.温度を 300K から 330K に上げます.

  1. 反応速度は何倍ですか.e1.82=6.2 とします.

  2. 分子の vrms の変化と比べてください.

反応速度A exp[−E_a/(k_BT)]を300 Kでの値で割った曲線を描き,300 Kと330 Kの位置を示す.E_a/k_B=6000 Kの条件で,指数関数による反応速度の変化と√Tに比例するv_rmsの変化を比べる. 反応速度A exp[−E_a/(k_BT)]を300 Kでの値で割った曲線を描き,300 Kと330 Kの位置を示す.E_a/k_B=6000 Kの条件で,指数関数による反応速度の変化と√Tに比例するv_rmsの変化を比べる.
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考え方 比をとり,指数の差を計算する.

  1. 比は exp⁡[6000(1/300−1/330)]=e20/11≈6.2.

  2. 速さは 330/300≈1.05 倍である.温度上昇は,高エネルギーの状態の割合に強く効く.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

速度成分の確率密度は ϕ(vx)=Cxe−avx2,速さの確率密度は f(v)=Cv2e−av2 です.a=m/(2kBT),Cx,C は規格化定数です.

  1. 両分布の山の位置を求め,違いの理由を説明してください.

  2. 運動エネルギー E=mv2/2 の確率密度 PE(E) を求めてください.その山は mvmp2/2 にありますか.

左は速度のx成分v_xの釣鐘形の分布と幅dv_xの微小区間である.右は速度空間で半径v,厚さdvの球殻で,全方向を集めると体積4πv²dvの因子が加わる. 左は速度のx成分v_xの釣鐘形の分布と幅dv_xの微小区間である.右は速度空間で半径v,厚さdvの球殻で,全方向を集めると体積4πv²dvの因子が加わる.
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考え方 速さでは全方向を集めるので,状態の数の因子 4πv2 が加わる.

  1. ϕ の山は vx=0.dfdv=2Cv(1−av2)e−av2 より,f の山は vmp=1/a である.

  2. PEdE=f(v)dv,dE=mvdv より

PE(E)=f(v)mv=Cm2Eme−E/(kBT)

である.状態数の因子は E となる.対数の微分 1/(2E)−1/(kBT)=0 より山は E=kBT/2.mvmp2/2=kBT と一致しない.確率は保たれるが,幅が変わるので密度の山は変わる.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

高さ L,断面積一定の鉛直容器に,温度 T の希薄な気体があります.スケールハイトは H,高さの確率密度は P(z)=Ae−z/H(0≤z≤L)です.

  1. A を求めてください.

  2. L=H で上半分にいる確率を求め,中央と底の密度比と比べてください.

鉛直容器の底をz=0,中央をL/2,天井をLとし,上半分L/2≤z≤Lを塗る.高さの確率密度P(z)=A exp(−z/H)を塗った範囲で積分すると,上半分にいる確率が得られる. 鉛直容器の底をz=0,中央をL/2,天井をLとし,上半分L/2≤z≤Lを塗る.高さの確率密度P(z)=A exp(−z/H)を塗った範囲で積分すると,上半分にいる確率が得られる.
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考え方 密度を積分して確率を求める.

  1. 1=∫0LAe−z/Hdz=AH(1−e−L/H) より A=1/[H(1−e−L/H)].

  2. 積分すると (e−1/2−e−1)/(1−e−1)=1/(e1/2+1)≈0.38.中央と底の密度比 e−1/2≈0.61 とは異なる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

固定体積・分子数の小系と熱浴が弱く接し,熱平衡にあります.全体は孤立し,エネルギー E全 が一定です.

  1. 全体の等重率から,小系も等確率でエネルギーが一定といえますか.

  2. 小系の微視状態 i のエネルギーを Ei,熱浴の基準温度を T,熱容量を C浴>0 とします.2次近似

S浴(E全−Ei)≃S0−EiT−Ei22C浴T2

から確率の重みと,正準分布に近づく条件を求めてください.

外枠は小系と熱浴を合わせた孤立系で,全エネルギーE_全は一定である.左の小系は体積Vと分子数Nを固定したまま,右の熱浴と弱く接し,エネルギーを交換する.小系のエネルギーE_iはゆらぎ,熱浴のエネルギーはE_全−E_iとなる.熱浴の基準温度はT,熱容量は有限のC_浴>0である.矢印は両方向のエネルギー交換を表し,分子の出入りはない. 外枠は小系と熱浴を合わせた孤立系で,全エネルギーE_全は一定である.左の小系は体積Vと分子数Nを固定したまま,右の熱浴と弱く接し,エネルギーを交換する.小系のエネルギーE_iはゆらぎ,熱浴のエネルギーはE_全−E_iとなる.熱浴の基準温度はT,熱容量は有限のC_浴>0である.矢印は両方向のエネルギー交換を表し,分子の出入りはない.
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考え方 等重率と S=kBln⁡Ω を使う.

  1. いえない.確率は熱浴の状態数 Ω浴(E全−Ei) に比例する.小系は熱浴と交換し,エネルギーがゆらぐ.

  2. 共通因子を除く重みは

Pi∝exp⁡(−EikBT−Ei22kBC浴T2)

である.寄与する状態で指数の第2項が十分小さければ正準分布に近づく.熱容量が大きいほど温度変化は小さい.有限なら補正が無視できない場合がある.弱い相互作用,熱平衡,分子の出入りがないことも必要である.

ポイント 教える人へ

  • 片対数の傾きが何を表すか問いかけてください.

  • 状態数を忘れるつまずきには,球殻を描かせてください.

  • 密度と確率の違いを,変数変換で確かめてください.

  • 孤立した全体の中で,小系のエネルギーがゆらぐ理由を説明させてください.