問いしるべ
問いから始める物理 運動量と質点系

運動量と質点系

重心と質点系の演習

著者:柚木芹香

まず重心の位置を求め,次に重心の運動を追ってみましょう.重心が動かないと言えるのは,外力だけでなく初めの速度も条件を満たす場合です.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

一直線上の x=0,a,3a に,それぞれ質量 m,2m,m の質点を置く.a>0 とする.

  1. 重心の位置を求めよ.

  2. すべての質点を右へ b だけ移すと重心はどうなるか.また中央の質点だけを取り除いた場合の重心を求めよ.

x軸上の0,a,3aに質量m,2m,mの質点を描く.重心は描かない. x軸上の0,a,3aに質量m,2m,mの質点を描く.重心は描かない.
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考え方 質量を重みとした平均をとる.座標の平均と一致するのは,質量がすべて等しい場合に限られる.

  1. 全質量は 4m であるから,xG={m⋅0+2m⋅a+m⋅3a}/(4m)=5a/4.中央の質点が重いので,両端だけの重心 3a/2 より中央の a に寄る.

  2. 分子に加わる量は mb+2mb+mb=4mb なので,xG′=5a/4+b となる.重心も物体と同じだけ移る.中央を取り除けば残る全質量は 2m となり,xG″=(0+3ma)/(2m)=3a/2 である.取り除く前の分母 4m を使い続けてはいけない.重心は選んだ物体の集まりに対して定義される量である.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

一様な細い針金を直角に曲げ,原点Oから x 軸に沿う長さ 2a の部分と,y 軸に沿う長さ a の部分を作る.線密度はどちらも同じである.

  1. 針金全体の重心を求めよ.

  2. 短い部分の自由端に,短い部分と同じ質量の小球を付けると,重心はどこに移るか.

直角に曲げた針金をx,y軸上に描き,横の長さ2a,縦の長さaと,小球を付ける上端を示す. 直角に曲げた針金をx,y軸上に描き,横の長さ2a,縦の長さaと,小球を付ける上端を示す.
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考え方 各直線部分の重心を中点に置き,各部分を質点としてまとめる.一様な針金の質量は長さに比例する.

  1. 短い部分の質量を m とおけば,長い部分は 2m.重心はそれぞれ (a,0),(0,a/2) にあるので

xG=2ma3m=2a3,yG=m(a/2)3m=a6

となる.重心が針金そのものの上に無くても矛盾しない.

  1. 小球の位置は (0,a),全質量は 4m である.したがって xG′=2ma/(4m)=a/2,yG′={ma/2+ma}/(4m)=3a/8.追加した小球の方へ重心が移る.2つの部分の中点を単純に平均する方法では長さの違いを反映できず,(1)から誤った位置になる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M,長さ L の一様な板が,滑らかな水平面上で静止している.質量 m の人が左端から板の中央まで歩き,そこで止まる.人の大きさは無視する.

  1. 板と人の地面に対する変位を求めよ.

  2. 歩行中のある瞬間,人の板に対する速度が右向きに w であるとき,板と人の地面に対する速度を求めよ.

初めに板の左端にいる人と,歩行の目的地である中央を示す.長さLのみ寸法を入れる. 初めに板の左端にいる人と,歩行の目的地である中央を示す.長さLのみ寸法を入れる.
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考え方 水平外力が0で,全体は初め静止しているので,水平の重心位置は一定である.人が歩く距離は板に対する距離である.

  1. 板の変位を X,人の変位を x とする.重心一定から MX+mx=0,相対変位から x−X=L/2.後者を前者に入れると (M+m)X=−mL/2 なので

X=−mL2(M+m),x=ML2(M+m)

である.板は左へ動くため,人が地面に対して進む距離は L/2 より短い.

  1. 板の速度を V,人の速度を v とすると,MV+mv=0,v−V=w.よって V=−mw/(M+m),v=Mw/(M+m).歩き出しや停止のときには内力で互いの速度が変わるが,この2式はその瞬間にも成り立つ.最後に人が板上で止まれば両者の速度は共通になり,全運動量0から地面に対しても止まる.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

一辺 2a の一様な正方形の薄板から,右上の一辺 a の正方形を切り取る.元の板の左下を原点とし,右を x,上を y とする.

  1. 残るL字形の板の重心を求めよ.

  2. 切り取った小板を回転させず,その重心が (−a/2,3a/2) に来るように左側へ接合したとき,全体の重心を求めよ.

元の正方形と右上の切り取り部を破線で示し,左側の接合位置も別の破線で示す.座標原点とaの寸法を入れる. 元の正方形と右上の切り取り部を破線で示し,左側の接合位置も別の破線で示す.座標原点とaの寸法を入れる.
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考え方 切り取る操作は元の板から小板の質量と位置の積を引く計算で表せる.接合後はそれを新しい位置で足し戻す.

  1. 一辺 a の小板の質量を m とする.元の板は質量 4m,重心 (a,a).穴に相当する部分は重心 (3a/2,3a/2) なので,残る質量 3m の重心は

xG=yG=4ma−m(3a/2)3m=5a6

である.穴を負の質量として計算しても,実際に残る物体の質量は正である.

  1. 質量は 4m に戻る.xG′={3m(5a/6)−ma/2}/(4m)=a/2,yG′={3m(5a/6)+3ma/2}/(4m)=a.小板を水平方向に −2a 移したので,全体の重心の変位は (m/4m)(−2a)=−a/2 であり,元の x=a からの変化とも一致する.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 m のAと質量 2m のBが,滑らかな水平面上で相互作用しながら動く.時刻0で重心は原点にあり,全運動量は 3mV で右向きである.時刻0以降,Aにだけ右向きの一定の外力 F を加える.

  1. 時刻 t の重心位置と全運動量を求めよ.

  2. その時刻にAの位置が xA=Vt+Ft2/(2m) と測定されたとき,Bの位置を求めよ.

  3. 内力が不明でも(1)が解ける理由と,重心を静止と置けない理由を述べよ.

水平面上のAとBを描き,Aにだけ右向きの外力Fを赤い矢印で示す. 水平面上のAとBを描き,Aにだけ右向きの外力Fを赤い矢印で示す.
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考え方 2物体の運動方程式を足せば内力が消える.ただし外力は消えず,初めの重心速度も残る.

  1. 3maG=F で加速度は一定である.初期速度は全運動量を全質量で割った V なので,xG=Vt+Ft2/(6m).全運動量は P=3mx˙G=3mV+Ft で,外力の力積 Ft だけ増える.

  2. 重心の定義から 3mxG=mxA+2mxB.したがって

xB=3xG−xA2=Vt

となる.この観測時刻の位置関係を求めるのに,相互作用の詳しい時間変化は不要である.一時刻の位置だけから途中の内力が常に0だったとは断定できない.

  1. 内力は等大逆向きなので和が0となるが,Aに加わる F は外力であり打ち消す相手が系内にない.また F=0 としても,V≠0 なら重心は等速で動く.外力0だけから重心静止とは言えない.

ポイント 教える人へ

  • 重心の定義の分子と分母を別々に書かせ,物体を除いたときの全質量に注意させる.

  • 板上の距離と地面に対する距離を,別の記号で説明させることが有効である.

  • 重心が物体の外に出てもよいことを,曲がった針金で確かめる.

  • 外力0なら等速,さらに初期運動量0なら静止,という条件の順序を確認させる.