問いしるべ
問いから始める物理 非慣性系

非慣性系

遠心力の演習

著者:柚木芹香

回転系で静止している物体には,遠心力を加えたつり合いの式を使えます.回転軸からの距離と,実在する力を及ぼす相手を確かめながら解きましょう.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

水平な円盤が一定角速度 ω=3.0rads−1 で回っている.質量 m=0.20kg の小物体が中心から r=0.40m の場所で円盤に対して静止している.

  1. 円盤の系での遠心力の大きさと向きを求めよ.

  2. 地上と円盤の両方で水平な力の式を書き,摩擦力と遠心力が作用反作用の対でない理由を述べよ.

円盤上で静止する物体の二つの見方.図中の記号と条件は「地上 S」「r」「O」「ω」「円盤 S'」である. 円盤上で静止する物体の二つの見方.図中の記号と条件は「地上 S」「r」「O」「ω」「円盤 S'」である.
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考え方 地上では円運動の加速度があり,円盤では相対加速度が0である.同じ接触力を,異なる運動方程式で表す.

  1. mω2r=0.20×3.02×0.40=0.72N で,回転軸から外向きである.この距離は円周に沿う長さではなく,軸へ下ろした垂線の長さである.

  2. 外向きを正とし,内向き摩擦の大きさを f とすれば,地上では −mω2r=−f,円盤では 0=−f+mω2r.どちらも f=0.72N を与える.摩擦力の反作用は物体が円盤へ及ぼす外向きの力で,円盤に作用する.遠心力は同じ物体に加える見かけの力であり,相互作用の相手を持たない.つり合う二力だからといって作用反作用とは限らない.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

水平円盤と小物体の静止摩擦係数は μ=0.36,g=10ms−2 とする.一定角速度で回る円盤の中心から 0.25m に物体を置き,円盤に対して静止させたい.

  1. 滑らない角速度の最大値を求めよ.

  2. ω=4.0rads−1 のときに静止できる最大半径と,質量を2倍にした場合の変化を求めよ.角速度を変える途中の運動は扱わない.

静止摩擦のある円盤.図中の記号と条件は「r」「O」「ω」「接触面:μ」である. 静止摩擦のある円盤.図中の記号と条件は「r」「O」「ω」「接触面:μ」である.
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考え方 回転系で必要な摩擦は遠心力と同じ大きさだが,静止摩擦には上限がある.

  1. 鉛直方向では N=mg.水平のつり合いに必要な摩擦は mω2r なので,mω2r≤μmg.したがって ωmax=μg/r=14.4≈3.8rads−1 である.限界より小さな角速度では摩擦は最大値に達していない.

  2. rmax=μg/ω2=3.6/16=0.225m≈0.23m.質量が2倍なら遠心力と最大摩擦力がともに2倍となり,半径の限界は変わらない.回転数を増やしている最中には接線方向にも摩擦が必要なので,この定常状態の条件だけでは判定できない.また滑り始めた後には相対速度が生じ,遠心力だけのつり合いの式を使い続けることはできない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

鉛直軸のまわりを一定角速度 ω で回る円筒の内壁に,質量 m の物体が接触している.内半径は R,静止摩擦係数は μ>0 で,物体は円筒に対して静止している.床による支えはない.

  1. 壁からの垂直抗力と摩擦力を求めよ.

  2. 物体がずり落ちない最小角速度を求めよ.R=2.0m,μ=0.50,g=9.8ms−2 のとき数値を示せ.

回転円筒の内壁の物体.図中の記号と条件は「mg」「R」「ω」「鉛直断面:床の支えなし」である. 回転円筒の内壁の物体.図中の記号と条件は「mg」「R」「ω」「鉛直断面:床の支えなし」である.
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考え方 垂直抗力という名称の垂直は,重力に対してではなく接触面に対してである.この問題では水平内向きに働く.

  1. 回転系で半径方向のつり合いから N=mω2R.鉛直方向では摩擦が重力を支えるので,上向きに f=mg である.地上で見ても,内向きの N が円運動の向心力を担い,鉛直加速度は0なので同じ結果となる.

  2. mg≤μN=μmω2R より ω≥g/(μR).最小値は 9.8≈3.1rads−1 である.回転を速めるほど抗力が増え,摩擦の上限が増すため支えられる.水平円盤では摩擦が円運動を担ったが,ここでは抗力が円運動を担う.同じ mω2r が現れても,力の役割は接触面の向きによって違う.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の円筒容器に初め深さ h0 の水を入れ,一定角速度 ω で鉛直軸のまわりに回す.水が容器とともに回り,底全体を覆い,あふれない状態を考える.底からの高さを z とする.

  1. 水面が z=z0+ω2r2/(2g) となることを示せ.

  2. 体積保存から z0 を求め,底全体が水で覆われる角速度の条件を求めよ.

回転前後の液面を調べる.図中の記号と条件は「回転軸」「ω」「静止時の水面」「静止時」「」「回転後:形は未知」「h₀」「r,z」「容器の半径 R,水量は一定」である. 回転前後の液面を調べる.図中の記号と条件は「回転軸」「ω」「静止時の水面」「静止時」「」「回転後:形は未知」「h₀」「r,z」「容器の半径 R,水量は一定」である.
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考え方 自由表面は圧力が一定なので,回転系での有効ポテンシャルも一定となる.高さの定数は水量から決まる.

  1. 単位質量当たりの有効ポテンシャルは Φ=gz−ω2r2/2.表面で Φ=gz0 と置けば指定の式を得る.遠心力のポテンシャルは外側ほど低くなるので負号であり,水面は外側ほど高くなる.圧力が一定という条件は自由表面に対する条件で,水中のすべての点が等ポテンシャルという意味ではない.

  2. 半径 r から r+dr の輪の面積は 2πrdr なので,水の体積は

∫0R2πr(z0+ω2r22g)dr=πR2z0+πω2R44g=πR2h0

である.よって z0=h0−ω2R2/(4g).中心にも正の水深がある条件は ω<2gh0/R で,等号は中心が初めて底に触れる境界である.これ以上では中央に乾いた領域ができるため,同じ積分範囲と式を使い続けることはできない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

地球を半径 R の球とし,万有引力による加速度は中心向きに g0 とする.自転角速度を ω,北緯を λ とする.ω2R/g0 は1より十分小さい.

  1. 地表で静止する物体の遠心加速度を,球面の外向き法線と赤道向き接線に分解せよ.

  2. 有効重力の大きさと,つり下げた糸の中心方向からのずれ角 δ を1次まで求めよ.R=6.38×106m,ω=7.29×10−5rads−1,g0=9.8ms−2,λ=45∘ で評価せよ.

地球表面での成分の向き.図中の記号と条件は「自転軸」「P」「λ」「R」「R cos λ」「外向き法線」「赤道向き」である. 地球表面での成分の向き.図中の記号と条件は「自転軸」「P」「λ」「R」「R cos λ」「外向き法線」「赤道向き」である.
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考え方 遠心力は地球の中心ではなく自転軸から遠ざかる向きである.小さい横成分は,重力の大きさより向きに1次で効く.

  1. 軸からの距離は Rcos⁡λ.遠心加速度の法線成分は cn=ω2Rcos2⁡λ,接線成分は ct=ω2Rsin⁡λcos⁡λ である.後者は北半球では赤道へ向かう.極では軸からの距離が0となり,両成分とも消える.

  2. g′=(g0−cn)2+ct2≈g0−cn,tan⁡δ=ct/(g0−cn) より δ≈ct/g0.ω2R≈0.0339ms−2 なので,重力の減少は約 0.0170ms−2,δ≈1.73×10−3rad≈0.099∘ である.糸は中心方向から赤道側へ傾く.この見積もりは球形モデルに対する結果であり,実際の地球の形や内部の密度分布の効果を含めてはいない.

ポイント 教える人へ

  • 遠心力の距離は軸からの距離であり,球の中心からの距離と区別させる.

  • 向心力という名前を新しい独立した力として追加させない.

  • 摩擦が支える方向と抗力が支える方向を接触面から判断させる.

  • 液面の積分定数と適用範囲を,体積保存と底への接触から確認させる.