問いしるべ
問いから始める物理 非慣性系

非慣性系

回転座標系での時間微分

著者:柚木芹香

回転する座標系での微分の方法を作り,遠心力の式とそのポテンシャルを導きます.

定理 数学の道具:回転する基底ベクトルと時間微分

xy 平面で,原点のまわりを一定の角速度 ω(反時計回りが正)で回る座標系の基底ベクトルは,t=0 に慣性系の軸と重なっていたとして

e1′=(cos⁡ωt, sin⁡ωt),e2′=(−sin⁡ωt, cos⁡ωt)

である.微分すると e˙1′=ωe2′,e˙2′=−ωe1′.角速度ベクトル ω=(0,0,ω) を使えば1つにまとまる:

e˙i′=ω×ei′(i=1,2)
回転する基底とその微分.図中の記号と条件は「x」「y」「O」「e₁'」「e₂'」「de₁'/dt=ωe₂'」「ωt」である. 回転する基底とその微分.図中の記号と条件は「x」「y」「O」「e₁'」「e₂'」「de₁'/dt=ωe₂'」「ωt」である.

原点を共通にとるので,位置ベクトルは慣性系でも回る系でも同じ r′ です.回る系の成分で r′=x′e1′+y′e2′ と書き,積の微分をすると

dr′dt=(x˙′e1′+y˙′e2′)+(x′e˙1′+y′e˙2′)=v′+ω×r′

である.v′ は回る系の中の人が測る速度,左辺は慣性系での速度 v なので

v=v′+ω×r′

となる.第2項は回る系が回ることによる速度(大きさ ωr,接線方向)である.同じ計算は任意のベクトル B で成り立ち,回る系の中で成分だけを微分したものを d′Bdt と書けば

dBdt=d′Bdt+ω×B

である.

練習 1. ω=2.0rads−1 で回る系の r′=(3.0,0)m の位置で,回る系に対する速度が v′=(0,1.0)ms−1 の物体の,慣性系での速度を求めよ(基底ベクトルは慣性系の軸と重なっている).

答え:ω×r′=(0, 6.0, 0) なので v=(0,7.0)ms−1.

練習 2. ω=3.0rads−1 で反時計回りに回る系の r′=(0,2.0)m の位置で,v′=(1.0,0)ms−1 の物体の慣性系での速度を求めよ(基底ベクトルは慣性系の軸と重なっている).

答え:ω×r′=3.0×(−2.0,0)=(−6.0,0) なので v=(−5.0,0)ms−1.

遠心力とそのポテンシャル

回る系で止まっている物体は v=ω×r′ で,ω が一定なので a=ω×(ω×r′) です.ω⟂r′ では −ω2r′ になり,円運動の加速度に一致します.運動方程式 ma=F と a′=0 から ma′=F+mω2r′ となり,遠心力が得られます.動く物体の場合は,コリオリ力の節で導きます.

遠心力 (mω2x′, mω2y′) は位置だけで決まり,U=−12mω2(x′2+y′2) から fx=−∂U∂x′,fy=−∂U∂y′ と得られます.

ポイント 遠心力のポテンシャル

回転軸からの距離を r として U遠心=−12mω2r2.回る系で静止した液体の自由表面(外圧は一定とする)は,(重力などのポテンシャル)+ U遠心 が一定の面になる.表面の圧力が一定なので,表面に沿った方向の力の成分は0でなければならないからである.拘束のない質点が1点でつり合う条件は,ポテンシャルの勾配が0になることで,等ポテンシャル面の条件とは別である.

例題

例題 1

オリジナル ★★☆☆☆

水平な円板が,中心を通る鉛直な軸のまわりに角速度 ω で回っている.円板の上に質量 0.20kg の小物体を置いた.静止摩擦係数は 0.50,重力加速度の大きさは 9.8ms−2 とする.

回転円盤上の小物体.図中の記号と条件は「r」「O」「ω」「f」「mω²r」である. 回転円盤上の小物体.図中の記号と条件は「r」「O」「ω」「f」「mω²r」である.
  1. 中心から 0.30m の位置で,物体が滑らずにいられる最大の ω を求めよ.

  2. ω=4.0rads−1 のとき,滑らずにいられる中心からの最大の距離を求めよ.質量を 0.40kg に替えると変わるか.

解答を見る

考え方 円板とともに回る系では物体は止まっている.遠心力 mrω2(外向き)と摩擦力がつり合い,限界は摩擦力が最大摩擦力 μmg に達するとき.

  1. mrω2=μmg より ω=μgr=0.50×9.80.30≈4.0rads−1.

  2. r≤μgω2=0.50×9.84.02≈0.31m.式に質量が入らないので,0.40kg に替えても変わらない.

例題 2

オリジナル ★★★☆☆

内側の半径 0.10m の円筒形の容器に深さ 0.10m まで水を入れ,軸のまわりに毎秒1.5回転で回した.十分時間がたち,水は容器とともに回っている.重力加速度の大きさは 9.8ms−2.

回転容器の水量と高さ.図中の記号と条件は「回転軸」「ω」「静止時の水面」「R=0.10 m」「回転後の水面と高さを求める」である. 回転容器の水量と高さ.図中の記号と条件は「回転軸」「ω」「静止時の水面」「R=0.10 m」「回転後の水面と高さを求める」である.
  1. 重力と遠心力のポテンシャルから,水面の式を求めよ.

  2. 縁と中心の水面の高さの差 Δh を求めよ.

  3. 水の体積は変わらないとして,中心での水面の高さを求めよ.

解答を見る

考え方 回る系で止まった水の表面は,ポテンシャル(重力の mgz と遠心力の −12mω2r2 の和)が一定の面になる.

  1. 水面上で mgz−12mω2r2=一定 なので z=z0+ω22gr2(z0 は中心の高さ).

  2. ω=2π×1.5≈9.42rads−1.縁(R=0.10m)との差は Δh=ω2R22g≈4.5×10−2m,約 4.5cm.

  3. z=z0+Δh(r/R)2.底面の円で r2 の平均は R2/2 だから,平均の高さは z0+Δh2.体積不変より,これが初めの深さ 0.10m に等しく,z0≈0.077m.縁の高さは約 0.12m.

ポイント ここまでのまとめ

  • 基底ベクトルは e˙i′=ω×ei′ を満たし,任意のベクトルで「慣性系での微分 = 回る系での微分 + ω×」となる.

  • 速度は v=v′+ω×r′.止まっている物体の加速度 −ω2r′ から遠心力 mω2r′ が出る.

  • 遠心力のポテンシャルは −12mω2r2.静止した液面は,重力のポテンシャルとの和が一定の面になる.