問いしるべ
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物理の見方

第2章の発展問題

著者:柚木芹香

この節は第2章の発展問題です.次元解析で現象の形を作る問題と,桁を押さえて量を見積もる問題を,★4 と★5 で並べました.前の節の「第2章の章末問題」を解いてから挑戦するとよいでしょう.まず自分で「図・原理・式・検算」の順に考え,詰まったときは解答の最初の数行だけを読んで,続きを自分で書いてみてください.必要な定数は問題文に与えてあります.

演習

演習 1

オリジナル ★★★★☆

光速 c=3.0×108ms−1,万有引力定数 G=6.7×10−11m3kg−1s−2,換算プランク定数(ディラック定数)ℏ=h/(2π)=1.05×10−34Js から,長さの次元をもつ量(プランク長さ)を作れ.また,それを c で割った時間(プランク時間)を求め,陽子の半径(8×10−16m)との比も答えよ.

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考え方 ℓ=Gaℏbcd とおく.ℏ は(エネルギー)×(時間)なので,次元は ML2T−1 である.

M: −a+b=0,L: 3a+2b+d=1,T: −2a−b−d=0

第 1 式から b=a.第 3 式から d=−3a.第 2 式に入れて 5a−3a=1,よって a=b=12,d=−32.したがって

ℓP=Gℏc3

である.数値は Gℏ=6.7×10−11×1.05×10−34=7.0×10−45,c3=2.7×1025 より Gℏ/c3=2.6×10−70,平方根をとって

ℓP≈1.6×10−35m

である.プランク時間は tP=ℓP/c=1.6×10−35/(3.0×108)≈5.4×10−44s.陽子の半径との比は 1.6×10−35/(8×10−16)≈2×10−20 で,原子核の大きさに比べて 20 桁も小さい.量子力学,相対性理論,重力が同時に効く長さと考えられている.

答え:ℓP=Gℏ/c3≈1.6×10−35m,tP≈5.4×10−44s,陽子半径の約 2×10−20 倍.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

球形の液滴を少しゆがめて離すと,表面張力で振動する.表面張力 σ(単位 Nm−1)が復元の原因だとし,周期 T が半径 R,密度 ρ,σ だけで決まるとして次元解析で T の形を求めよ.半径 1mm の水滴(σ=0.072Nm−1,ρ=1.0×103kgm−3)の周期を見積もり,半径を 2 倍にしたら周期が何倍になるかを答えよ.また,重力を無視してよい理由を,圧力の大きさを比べて述べよ(g=9.8ms−2).

半径Rの液滴と,少しゆがめた液滴を並べる.密度ρと表面張力σを示す. 半径Rの液滴と,少しゆがめた液滴を並べる.密度ρと表面張力σを示す.
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考え方 T=ρaσbRc.σ の次元は Nm−1=MT−2 であることに注意する.

ρ は ML−3 なので

M: a+b=0,L: −3a+c=0,T: −2b=1

第 3 式から b=−12,第 1 式から a=12,第 2 式から c=32.よって

T∼ρR3σ

である.水滴では ρR3/σ=103×10−9/0.072=1.4×10−5s2 で,T∼3.7×10−3s.数 ms の速い振動である.詳しい理論の係数は約 2.2 で,8ms ほどになる.

T∝R3/2 なので,半径が 2 倍なら 23/2≈2.8 倍である.

重力の影響は,表面張力による圧力 σ/R(=72Pa)と,重力による圧力変化 ρgR(=9.8Pa)の比で決まる.比は ρgR2/σ で,これが 1 より十分小さければ重力は無視できる.R=1mm では約 0.14 である.境目は R∼σ/(ρg)≈2.7mm である.

答え:T∼ρR3/σ,約 4ms(係数を含めて約 8ms),23/2≈2.8 倍.重力による圧力変化は表面張力による圧力の約 0.14 倍と小さいので,重力は無視してよい.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

ある大きな爆発を高速度カメラで撮影すると,爆発から t=0.020s 後の火球が半径 R=120m になっていた.火球の大きさは,放出エネルギー E,周りの空気の密度 ρ=1.2kgm−3,時間 t だけで決まるとする.(1) 次元解析で R の形を求め,R∝(Et2/ρ)1/5 と次元が合うことを確かめよ.(2) 無次元の係数を 1 として E を見積もれ.TNT 換算(1t で 4.2×109J)も答えよ.(3) 係数が 1 でなく 1.5 だったとき,E は何倍変わるか.(4) この時刻の火球の膨張の速さを求めよ.必要なら,次の事実を使ってよい:R=Atn(A,n は定数)のとき,短い時間 Δt の間の R の増加は ΔR≈nRΔtt である(一次近似 (1+x)n≈1+nx から出る.第3章で学ぶ微分の公式 (tn)′=ntn−1 と同じ内容).

爆発後の時刻tにおける半径Rの火球と,周囲の空気を示す. 爆発後の時刻tにおける半径Rの火球と,周囲の空気を示す.
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考え方 R=Eaρbtc とおく.E の次元は ML2T−2 である.

  1. 次元を比べて

M: a+b=0,L: 2a−3b=1,T: −2a+c=0

b=−a を第 2 式に入れて 5a=1,a=15,b=−15,c=25.よって

R∼(Et2ρ)1/5

である.確認すると [Et2/ρ]=(ML2T−2)(T2)/(ML−3)=L5 で,5 乗根が長さになる.

  1. 両辺を 5 乗して E=ρR5/t2.数値を入れて

E=1.2×(120)5(0.020)2=1.2×2.5×10104.0×10−4≈7.5×1013J

で,1014J の桁である.TNT に直すと 7.5×1013/(4.2×109)≈1.8×104t,約 18 キロトンに相当する.

  1. 係数 C があれば R=C(Et2/ρ)1/5 で,E=ρR5/(C5t2) となる.C=1.5 なら E は 1.5−5≈0.13 倍,約 1/8 になる.測った R には 5 乗で効くため,係数のわずかなずれが E の大きな不確かさになる.Taylor は流体の方程式を解いて係数を精密に求めた.

  2. R=At2/5 と書ける.時刻が t から t+Δt に進むと,R は (1+Δtt)2/5≈1+25Δtt 倍になる(一次近似).よって ΔR≈25RΔtt で,膨張の速さは

ΔRΔt≈25Rt=0.4×1200.020=2.4×103ms−1

である(第3章の微分を使えば dRdt=25Rt と同じ結果が出る).音速(約 340ms−1)の約 7 倍で,衝撃波として合う.

答え:(1) 次元は合う,(2) E≈7.5×1013J(約 18 キロトン),(3) 約 1/8 倍,(4) 約 2.4×103ms−1.

演習 4

オリジナル ★★★★☆

自動車が時速 100km で走るときの燃費を見積もる.(1) 空気抵抗 F が,空気の密度 ρ,速さ v,車の代表の長さ ℓ だけで決まるとして,次元解析で F の形を求めよ.(2) 断面積 A=2.2m2,係数 C=0.3 として F=12CρAv2 を計算し,転がり抵抗 0.010mg(m=1.3×103kg)を加えて,1 km 走るのに必要なエネルギーを求めよ.(3) ガソリン 1L の熱量を 3.4×107J,エンジンが仕事に変える割合を 25 % として,燃費(km/L)を求めよ.(4) 時速 50km では,空気抵抗がどう変わるか.

自動車の進行方向,空気抵抗F,代表長さℓと断面積Aを示す. 自動車の進行方向,空気抵抗F,代表長さℓと断面積Aを示す.
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  1. F=ρavbℓc とおくと,F の次元は MLT−2 なので

M: a=1,L: −3a+b+c=1,T: −b=−2

より a=1,b=2,c=2.よって F∼ρv2ℓ2.ℓ2 を断面積 A に置き換えたものが問題文の式の形である.

  1. 時速 100km は 27.8ms−1 で,空気抵抗は

F=12×0.3×1.2×2.2×(27.8)2≈3.1×102N

転がり抵抗は 0.010×1.3×103×9.8≈1.3×102N.合計は約 4.3×102N で,1 km 走る仕事は 4.3×102×103=4.3×105J である.

  1. ガソリン 1L から得られる仕事は 3.4×107×0.25=8.5×106J.よって 1km あたり 4.3×105/(8.5×106)≈0.051L,燃費は約 20km/L である.実際の乗用車の高速走行の燃費と同じ桁で妥当である.

  2. 空気抵抗は v2 に比例するので,速さが半分なら 1/4 の約 76N になる.転がり抵抗は速さによらないので合計は約 2.0×102N で,エンジンの効率が同じなら燃費は約 2 倍の 40km/L 余りになる.実際は低負荷で効率が下がり,ここまでは伸びない.

答え:(1) F∼ρv2ℓ2,(2) 約 4.3×105Jkm−1,(3) 約 20km/L,(4) 空気抵抗は 1/4.

演習 5

オリジナル ★★★★★

水面の波では,波長が長いと重力が,短いと表面張力が復元力として効く.この境目の波長を求めたい.水は十分深いとし,水の密度 ρ=1.0×103kgm−3,表面張力 σ=0.072Nm−1,g=9.8ms−2 とする.(1) 重力が復元力の波の速さ v が g と波長 λ だけで決まるとして,次元解析で v の形を求めよ.(2) 表面張力が復元力の波の速さが σ,ρ,λ だけで決まるとして,同様に v の形を求めよ.(3) 両者の速さが等しくなる波長を見積もれ.(4) 詳しい理論では,波数 k=2π/λ を用いて v2=gk+σkρ となる.相加平均と相乗平均の関係から,v の最小値とそのときの波長を求めよ.(5) 水面を一定の速さで動く細い棒が,波を出し続けるために必要な速さの条件を述べよ.

水面の山の間隔λと波の進行方向を示す.水は十分深い. 水面の山の間隔λと波の進行方向を示す.水は十分深い.
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  1. v=gaλb.L:a+b=1,T:−2a=−1 より a=b=12.v∼gλ.

  2. v=σaρbλc.M:a+b=0,L:−3b+c=1,T:−2a=−1 より a=12,b=−12,c=−12.v∼σ/(ρλ).

  3. 等しいとおくと gλ=σ/(ρλ),λ∼σ/(ρg)=7.3×10−6≈2.7×10−3m.この長さを毛管長という.係数を含めた厳密な境目は (4) で求める.

  4. g/k と σk/ρ はどちらも正なので,相加平均と相乗平均(幾何平均)の関係より

v2=gk+σkρ ≥ 2gk⋅σkρ=2gσρ

等号は g/k=σk/ρ,すなわち k=ρg/σ≈3.7×102m−1 のときで,波長は λ=2π/k≈1.7×10−2m,約 1.7cm である.この波長より長い波は重力波,短い波は毛管波として振る舞う.最小の速さは

vmin=(4gσρ)1/4=(4×9.8×0.0721.0×103)1/4≈0.23ms−1

である.(3) の見積もりに 2π を掛けた値が (4) の波長と一致しており,次元解析が桁と形を正しく与えている.

  1. 棒が速さ V で動くとき,棒に静止して見える定常な波ができるには,波の位相速度が V に等しい必要がある.どの波長でも v≥vmin なので,V<0.23ms−1 では定常な波は出ず,遠くへ波が伝わらない.V>0.23ms−1 では波が出て,棒の前方に毛管波,後方に重力波ができる.

答え:(1) gλ,(2) σ/(ρλ),(3) 約 3mm,(4) 0.23ms−1,1.7cm,(5) V>0.23ms−1.