問いしるべ
問いから始める物理 物理の見方

物理の見方

第2章のまとめ

著者:柚木芹香

第2章「物理の見方」では,物理を始める前に身につけておく道具を学びました.原子の見方,単位と次元,見積もり,モデルと問題の解き方の4つです.ここでは,定義・法則・手順を一覧にし,各節の問いに短く答えます.

定義

定義 第2章の用語

  • 原子・分子:元素ごとの化学的な性質を担う基本単位の粒が原子(内部構造はあるが,ここでは一つの粒として扱う).いくつかの原子が結びついたものが分子.

  • 熱運動:原子や分子の絶え間ない不規則な運動.温度が高いほど激しい.

  • 物質量(mol):粒子 6.02214076×1023 個のまとまりを 1mol とする量.1 mol あたりの個数 NA=6.02214076×1023mol−1≈6.02×1023mol−1 をアボガドロ定数という.

  • モル質量:粒子 1mol の質量.原子量・分子量に gmol−1 をつけた値.

  • 組立単位:基本単位(m,kg,s など)の積と商で作る単位.1N=1kgms−2,1J=1kgm2s−2.

  • 次元:単位を取り去った量の種類.[x]=LaMbTc と書き,指数がすべて 0 の量を無次元量という.

  • フェルミ問題:知っている数字だけで量の桁を求める問題.

  • モデル:目的に関係する性質だけを取り出し,ほかを無視した理想的な対象.質点と剛体が代表.

法則・公式

公式 質量から個数へ

質量 m,モル質量 M の物質の粒子数 N,および密度 ρ の物質で粒子 1 個が占める体積 v は

N=mMNA,v=MρNA

法則 次元のきまり

  • 足し算・引き算・等号は,同じ次元の量どうしでしか成り立たない.

  • 掛け算・割り算では,次元の指数が足し引きされる.

  • 指数関数・対数・三角関数の中身は無次元.

基本の次元

量

次元

速さ

LT−1

加速度(g も同じ)

LT−2

力

MLT−2

エネルギー

ML2T−2

圧力

ML−1T−2

公式 数学の道具

  • 科学的記数法:a×10n(1≤a<10).掛け算では指数を足し,割り算では引く.

  • 有効数字:掛け算・割り算は桁数の最も少ないものに,足し算・引き算は最後の桁の位置が最も粗いものに合わせる.

  • 幾何平均:下限 a,上限 b の中心値は ab.2≈100.3,3≈100.5,5≈100.7.

  • 一次近似:指数 n を固定して 1≫|x| のとき (1+x)n≈1+nx.

手順

ポイント 次元解析の手順

  1. 求めたい量が関係しそうな量を挙げる.

  2. 求めたい量を Cx1ax2b⋯ とおく(C は無次元の定数).

  3. L,M,T の指数を別々に比べ,連立方程式を解く.係数 C は決まらない.

ポイント 見積もりの三つの作法

分解する,桁で押さえる,上下の限界をとる.結果が結論を変えないなら,細かい数字は要らない.

ポイント 図・原理・式・検算

  1. 図:状況を図にし,既知と未知に文字を付け,座標軸と向きを決める.

  2. 原理:使う法則・関係を一言で言う.

  3. 式:文字のまま式を立て,文字のまま解く.数値は最後に入れる.

  4. 検算:次元,極端な場合,数値の桁を確かめる.

各節の問いに戻る

原子の見方.角砂糖を溶かすと水面はどうなるか.砂糖は消えたのではなく,約 0.7nm の分子がばらばらに散らばって見えなくなっただけです.液体の中では分子が接して詰まっているので,結晶の体積を使う概算では,水面は約 0.7mm 上がります.

単位と次元解析.振り子の周期は何で決まるか.質量は次元から消せないので周期に入らず,T=Cl/g の形になります.振れの角度をそろえれば,糸が4倍で周期は2倍です.係数 C は次元解析では決まりません(微小な振れでは 2π).

見積もり.教室の空気は人より重いか.9×7×3m3 の教室なら空気の質量は約 2×102kg で,人ひとり(60kg)の数倍です.感じないことと,質量がないことは別です.

モデルと問題の解き方.広げた紙と丸めた紙は同時に落ちるか.空気がなければ同じ加速度で落ちますが,現実では,空気がないときの速さで評価した抵抗と重力の比 r=CρAh/m で決まります.広げた紙は r≈30 で空気がないモデルが成り立たず,終端速度に近づいて漂い,丸めた紙は r≈0.3 で抵抗が小さめです.無視してよいかは,感覚ではなく比で判断します.

第3章へ

第3章では,ここで身につけた次元と検算の道具を使いながら,物体の運動を位置・速度・加速度で記述していきます.