問いしるべ
問いから始める物理 運動を記述する

運動を記述する

第3章の章末問題

著者:柚木芹香

この章で学んだ,位置・速度・加速度,微分と積分,放物運動,相対運動,円運動を総動員する問題です.どれも1つの公式に当てはめるだけでは解けないので,どの系で見るか,どの量を未知数にするかを最初に決めてから取りかかってください.難しい問題は,まず特別な場合(速さが極端に大きい,角度が0 など)で答えの見当をつけると,解いた後の確かめにも使えます.

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

長さ 180m の列車Aと長さ 240m の列車Bが,平行な線路を一定の速さで走る.列車Aの乗客(質点とみなす)から見て,Bが反対向きにすれ違うとき,Bの先頭が乗客に並んでから末尾が通り過ぎるまでに 6.0s かかった.Bが同じ向きに走って後ろからAを追い越すときには,同じ区間に 30s かかった.各列車の速さは2つの場合で同じとする.

列車AとBの長さを示し,Bが反対向きの場合と同じ向きの場合を分けて描く. 列車AとBの長さを示し,Bが反対向きの場合と同じ向きの場合を分けて描く.
  1. A,Bの速さを求めよ.

  2. 反対向きにすれ違うとき,両列車の先頭が並んでから,末尾が互いに通り過ぎ終わるまでの時間を求めよ.

  3. 同じ向きに走るとき,Bの先頭がAの末尾に並んでから,Bの末尾がAの先頭を通り過ぎるまでの時間を求めよ.

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考え方 相手の列車に乗って見れば,片方が止まり,もう片方が相対速度で動く問題になる.通り過ぎるべき長さを相対速度で割ればよい.

A,Bの速さを vA,vB とする.

  1. 反対向きのとき,Aから見たBの速さは vA+vB で,長さ 240m を 6.0s で通り過ぎるから vA+vB=240/6.0=40ms−1.同じ向きのときは vB−vA=240/30=8.0ms−1.連立して vB=24ms−1,vA=16ms−1.

  2. 先頭が並んでから末尾同士が離れ終わるまでに,Bの先頭はAに対して 180+240=420m 進む.よって 420/40=10.5s.

  3. 同様に相対的に 420m 進み,相対速度は 8.0ms−1 だから 420/8.0=52.5s.

演習 2

オリジナル ★★★☆☆

まっすぐな道路上の点Aから,道路から垂直に l=900m 離れた野原の点Bへ,できるだけ早く車で行きたい.Bから道路に下ろした垂線の足をCとし,Cは道路に沿ってAから D=2000m の位置にあるとする.車の速さは道路上で 20ms−1,野原の中で 12ms−1 である.道路上でAから x の位置の点Pで道路を離れ,野原をPからBまで直進するとする.

道路上のA,P,Cと野原のBを示す.AP=x,AC=D,BC=lである. 道路上のA,P,Cと野原のBを示す.AP=x,AC=D,BC=lである.
  1. 所要時間 T(x) を表せ.

  2. T を最小にする x と,そのときの最小時間を求めよ.必要なら,(w)′=12w((tn)′=ntn−1 の n=12 の場合)と連鎖律を使ってよい.

  3. AからBまで野原を直進する場合,およびCまで道路を走ってから野原を垂直に進む場合と比較せよ.

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考え方 T(x) は道路を走る時間と野原を走る時間の和である.x で微分して0とおく.野原での進路の向きに注目すると見通しがよい.

道路上の速さを v1=20,野原での速さを v2=12ms−1 とする.

  1. 野原での道のりは l2+(D−x)2 だから

T(x)=xv1+l2+(D−x)2v2
  1. 微分して,

dTdx=1v1−D−xv2l2+(D−x)2=0

野原での進路が道路への垂線となす角を φ とすると,sin⁡φ=D−xl2+(D−x)2 だから,条件は sin⁡φ=v2/v1=0.60.tan⁡φ=0.75 より D−x=ltan⁡φ=675m,x=1325m.野原での道のりは l/cos⁡φ=900/0.80=1125m.最小時間は

T=132520+112512=66.25+93.75=160s

T(x) の第2項は x について下に凸だから,この停留点が最小である.

  1. 野原を直進すると 9002+20002/12≈183s.Cまで道路を走る場合は 2000/20+900/12=175s.最小の 160s が最も短い.なお,この最小条件 sin⁡φ=v2/v1 は,光の屈折の法則と同じ形をしている.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

直線上を運動する質点の,速さ v に対する減速度の大きさが a=kv(k は正の定数)で与えられる.時刻0の速さを v0=9.0ms−1,k=1.5m1/2s−3/2 とする.

進行方向と反対向きに,問題で与えられた減速度が働く状況を示す. 進行方向と反対向きに,問題で与えられた減速度が働く状況を示す.
  1. 質点が止まるまでの時間を求めよ.

  2. 止まるまでに進む距離を求めよ.

  3. 減速度が a=kv の場合には,質点は有限の時間で止まるか.また,進む距離の上限はあるか.

必要なら次の公式を使ってよい:(tn)′=ntn−1 は n が分数でも成り立つ(たとえば (v)′=12v,(v3/2)′=32v).また (ekt)′=kekt なので,v=v0e−kt は dvdt=−kv と v(0)=v0 を満たす.

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考え方 式は dvdt=−kv.v の関数を時間で微分すると dvdt が出てくることを使う.距離は,連鎖律で dvdt=vdvdx と直して求める.

  1. 連鎖律より ddt(2v)=1vdvdt=−k なので,2v=2v0−kt.v=0 となる時刻は T=2v0k=2×3.01.5=4.0s.

  2. 連鎖律より dvdt=dvdxdxdt=vdvdx と書けるから,vdvdx=−kv,すなわち vdvdx=−k.左辺は ddx(23v3/2) なので 23(v03/2−v3/2)=kx.止まる位置は x=2v03/23k=2×273×1.5=12m.確認として v(t)=(v0−k2t)2 を 0≤t≤T で積分しても 12m が得られる.

  3. 問題文の公式より,dvdt=−kv,v(0)=v0 を満たすのは v=v0e−kt である(この形の方程式の解が1つに決まることは,空気抵抗の章で扱う).これはどんな有限の t でも0にならないので,有限の時間では止まらない.距離は ∫0∞v0e−ktdt=v0/k と有限で,これが進む距離の上限になる(v と x の関係は v=v0−kx).

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

水平な地面の上を,台車が右向きに一定の速さ V で走っている.台車の上の点から,台車に対して速さ v0,水平となす角 θ(0<θ<90∘)の向きに,台車の進む向きの前方へボールを投げ出す.空気の抵抗は無視する.台車の上面は水平で十分に長く,ボールが投げた点の高さまで戻ったときを落下とみなす.

水平な地面の上を,台車が右向きに一定の速さVで走っている.台車の上の点から,台車に対する速さv0で,水平となす角θの向きにボールを投げ出す.台車に対する初速度の矢印と角θ,台車の速度Vの矢印を示す.ボールの軌道と着地点は描かない. 水平な地面の上を,台車が右向きに一定の速さVで走っている.台車の上の点から,台車に対する速さv0で,水平となす角θの向きにボールを投げ出す.台車に対する初速度の矢印と角θ,台車の速度Vの矢印を示す.ボールの軌道と着地点は描かない.
  1. 台車から見たボールの運動を述べ,ボールが台車のどこに落ちるか答えよ.

  2. 地面から見た初速度の成分を書き,投げた点から落下点までの,地面に対する水平距離 R を v0,V,θ,g で表せ.

  3. R を最大にする θ について cos⁡θ=−V+V2+8v024v0 であることを示せ.必要なら,(sin⁡θ)′=cos⁡θ,(cos⁡θ)′=−sin⁡θ,2倍角の公式 cos⁡2θ=2cos2⁡θ−1 を使ってよい.

  4. v0=10ms−1,V=5.0ms−1 のとき,R を最大にする θ と,そのときの R を求め,θ=45∘ で投げた場合と比べよ.

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考え方 台車は等速なので,台車から見ても加速度は −g(鉛直下向き)のままである.地面から見た初速度は,台車に対する初速度に台車の速度を足したもの(速度の合成)である.

  1. 台車は等速なので,台車から見てもボールの加速度は鉛直下向きに g である.したがって台車から見ると,初速 v0,角 θ のふつうの放物運動になる.滞空時間 T=2v0sin⁡θg の後,ボールは台車の上の,投げた点から前方へ v02sin⁡2θg の点に落ちる.この結果は V によらない.

  2. 地面から見た初速度は (v0cos⁡θ+V, v0sin⁡θ).滞空時間は同じ T なので

R=(v0cos⁡θ+V)2v0sin⁡θg
  1. R は f(θ)=(v0cos⁡θ+V)sin⁡θ=v02sin⁡2θ+Vsin⁡θ に比例する.連鎖律で

f′(θ)=v0cos⁡2θ+Vcos⁡θ=2v0cos2⁡θ+Vcos⁡θ−v0

f′=0 を c=cos⁡θ の2次方程式 2v0c2+Vc−v0=0 とみて,c>0 の解をとると c=−V+V2+8v024v0.c がこれより大きい(θ が小さい)と f′>0,小さいと f′<0 なので,ここで最大である.V=0 なら c=12,すなわち θ=45∘ に戻る.

  1. cos⁡θ=−5.0+25+80040=−5.0+28.740≈0.593 より θ≈54∘.sin⁡θ≈0.805 で,R=(5.93+5.0)×2×10×0.8059.8≈18.0m.θ=45∘ では R=(7.07+5.0)×2×10×0.7079.8≈17.4m で,少し短い.前へ走りながら投げるときは,45∘ より高めに投げるのがよい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の車輪が,水平な地面を滑らずに右向きに一定の速さ v で転がる.車輪は中心のまわりを時計まわりに角速度 v/R で回る.縁の点の位置を,中心から見て水平右向きから反時計まわりに測った角 θ で表す.

水平な地面を右へ滑らずに転がる半径Rの車輪.中心から右向きに速度v(青)を描き,車輪は時計まわりに角速度v/Rで回る.縁の点は,中心から見て水平右向きから反時計まわりに角θの位置にある. 水平な地面を右へ滑らずに転がる半径Rの車輪.中心から右向きに速度v(青)を描き,車輪は時計まわりに角速度v/Rで回る.縁の点は,中心から見て水平右向きから反時計まわりに角θの位置にある.
  1. 縁の点の地面に対する速度の成分と,速さを θ で表せ.速さが最大,最小になる点はどこか.

  2. 車輪の後ろ側(cos⁡θ<0)で縁の点から泥が離れ,その後は空中を放物運動する.泥が離れる角 θ を変えるとき,泥の最高点の高さ H の最大値を R,v,g で表せ(v2>gR とする).R=0.30m,v=5.0ms−1 では何 m か.

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考え方 地面から見た速度は,中心の速度と,中心に対する縁の点の速度の和である.

  1. 中心に対する速度は v(sin⁡θ,−cos⁡θ).中心の速度 (v,0) を加えて (v(1+sin⁡θ),−vcos⁡θ).速さは v2(1+sin⁡θ) で,最上点(θ=90∘)で最大の 2v,地面に接する点(θ=−90∘)で最小の 0 である.

  2. 離れる位置の高さは R(1+sin⁡θ),上向きの速度成分は −vcos⁡θ.よって s=sin⁡θ として

H=R(1+s)+v2cos2⁡θ2g=R(1+s)+v2(1−s2)2g

dHds=R−v2s/g=0 から s=gR/v2 で最大となり,Hmax=R+v22g+gR22v2.数値は 0.30+1.276+0.018≈1.6m.車輪の上端(0.60m)よりかなり高い.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

1 辺 L=12m の正三角形ABCの頂点に虫がいる.時刻 0 から,AはBへ,BはCへ,CはAへ,常に相手の方向へ一定の速さ v=0.50ms−1 で動く.

1辺Lの正三角形ABC(Aが左下,Bが右下,Cが上).AはBへ,BはCへ,CはAへ,それぞれ一定の速さvで進む(青い矢印).3匹は対称に,中心Oのまわりを反時計まわりに回りながらOへ近づく軌跡(渦巻き)を描く.Oから頂点までの初めの距離をr0とする. 1辺Lの正三角形ABC(Aが左下,Bが右下,Cが上).AはBへ,BはCへ,CはAへ,それぞれ一定の速さvで進む(青い矢印).3匹は対称に,中心Oのまわりを反時計まわりに回りながらOへ近づく軌跡(渦巻き)を描く.Oから頂点までの初めの距離をr0とする.
  1. 3 匹が出会うまでの時間と,各虫の道のりを求めよ.

  2. 中心Oからの距離が r0 から r まで縮む間に,Oのまわりに回る角 φ を求めよ.出会うまでの回転数は有限か.必要なら,r>0 で ∫drr=ln⁡r+C を使ってよい(ln は e を底とする対数で,(ln⁡r)′=1r である.∫tndt の公式で除いた n=−1 の場合にあたる).

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考え方 対称性から,3 匹は常に正三角形の頂点にいる.速度を,Oに向かう成分とOのまわりを回る成分に分ける.

  1. 虫の進む向きと,虫からOへの向きは 30∘ をなす.Oに向かう速さは vcos⁡30∘=32v,初めの距離は r0=L3.よって時間は

T=r0(3/2)v=2L3v=2×123×0.50=16s

道のりは vT=8.0m.

  1. Oのまわりを回る速さは vsin⁡30∘=v2.dφdt=v2r,drdt=−32v を割り算して dφ=−dr3r.r0 から r まで積分し,∫drr=ln⁡r を使うと

φ=13ln⁡r0r

r→0 で φ→∞ なので,道のりは有限でも,虫は無限回転しながらOに近づく.ただし r が r0 の百万分の 1 でも約 1.3 回転である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

岸壁の滑車(水面から高さ h=3.0m)に通した綱の端を,一定の速さ u=1.5ms−1 で引いて,水面の小舟を引き寄せる.綱はたるまない.滑車の真下の水面の点をOとし,舟は大きさの無い点とみなす.必要なら (1x)′=−1x2((tn)′=ntn−1 の n=−1 の場合)を使ってよい.

水面から高さhの岸壁の滑車に綱を通し,綱の一端を一定の速さuで引く(青い矢印).綱のもう一端は水面の小舟につながる.滑車の真下の水面の点Oから舟までの距離をxとする. 水面から高さhの岸壁の滑車に綱を通し,綱の一端を一定の速さuで引く(青い矢印).綱のもう一端は水面の小舟につながる.滑車の真下の水面の点Oから舟までの距離をxとする.
  1. 舟のOからの距離が x のときの舟の速さ v と加速度の大きさ a を,x で表せ.

  2. x=4.0m での v と a を求めよ.また,a が g に達する x を求めよ.

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考え方 滑車から舟までの綱の長さ l は l2=x2+h2 を満たし,一定の割合 u で減る.x の 1 階微分が速さ,2 階微分が加速度である.

  1. l2=x2+h2 の両辺を微分し,dldt=−u を使うと −lu=xdxdt.舟の速さは

v=−dxdt=lux=ux2+h2x

さらに微分すると,dldt=−u,dxdt=−v より

a=dvdt=u(−ux+lvx2)=u2(l2−x2)x3=u2h2x3
  1. l=5.0m なので v=1.5×5.0/4.0≈1.9ms−1,a=1.52×3.02/4.03≈0.32ms−2.a=g は x=(u2h2/g)1/3≈1.3m.x→0 で速さも加速度も限りなく大きくなる.