問いしるべ
問いから始める物理 回転と剛体

回転と剛体

第8章の章末問題

著者:柚木芹香

力のつり合い,並進と回転の運動方程式,保存則を組み合わせ,車輪や質量分布,滑りと転がりの問題に取り組みます.未知量と拘束条件を整理し,接点の相対速度と支持力を調べて,運動の切替条件を確かめてください.

演習 1

オリジナル ★★☆☆☆

同じ速さ v=6.0ms−1 で走る自転車の車輪を比べる.車輪Aは半径 R=0.34m,質量 M=1.2kg,車輪Bは R=0.20m,M=0.90kg である.質量の割合 f が薄いリムに,残りが半径 a=0.030m の一様な円板状ハブに集まり,スポークの質量は無視する.両輪とも 0.70≤f≤0.90 とする.

大小の車輪と,リム半径R,ハブ半径a,進行速度vを示す. 大小の車輪と,リム半径R,ハブ半径a,進行速度vを示す.
  1. 滑らずに転がる車輪の,車軸まわりの角運動量を求めよ.

  2. A,Bそれぞれの角運動量の範囲を数値で評価し,小径車輪は角速度が大きいから角運動量も大きい,という説明を検討せよ.

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考え方 質量の位置から慣性モーメントを求め,転がりの条件で角速度を消す.

  1. I=fMR2+(1−f)Ma2/2,ω=v/R より,

L=Mv(fR+(1−f)a22R).

これは重心を通る車軸まわりの値であり,道路上の任意の原点まわりの角運動量ではない.

  1. R>a なので L は f とともに増える.Aは 1.7〜2.2kgm2s−1,Bは 0.76〜0.97kgm2s−1 である.Bの角速度は 30rads−1,Aは約 18rads−1 だが,慣性モーメントの減少の方が効く.f=1 なら L=MRv となり,次元も質量×長さ²÷時間で正しい.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

質量 M,長さ l の一様な細い棒の上端Oを水平軸で支え,下端に質量 m の小球を固定する.小球の大きさは無視でき,棒は鉛直面内で摩擦なく回る.

  1. 鉛直下向きの安定位置のまわりの微小振動の周期を求めよ.

  2. 棒を水平にして静かに放したとき,鉛直下向きを通過する角速度を求めよ.

Oを支点とする棒M,lと下端の小球m.水平の初期位置を破線,鉛直下向きの位置を実線で示す. Oを支点とする棒M,lと下端の小球m.水平の初期位置を破線,鉛直下向きの位置を実線で示す.
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考え方 慣性モーメントと重力のモーメントを,棒と小球についてそれぞれ足す.小球を付けた系の重心を新しく計算しなくてもよい.

  1. 軸のまわりの I=(M/3+m)l2.鉛直からの角を θ とすると Iθ¨=−(M/2+m)glsin⁡θ.微小角で線形化して T=2π(M/3+m)l/{(M/2+m)g}.m→0 では一様棒,m/M→∞ では長さ l の単振り子の周期へ近づく.

  2. 棒の重心は l/2,小球は l 下がる.したがって (M/2+m)gl=Iω2/2 より ω=2(M/2+m)g/{(M/3+m)l}.この計算は大角度でも成り立ち,微小振動の近似を使っていない.軸の反力の作用点は動かず,仕事は0である.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

滑らかな水平面上で,質量 m の小球を長さ r の軽い糸で固定点Oにつなぎ,速さ v0 で円運動させる.糸の破断張力は T∗ で,初め mv02/r<T∗ である.小球に常に接線方向へ一定の力 F>0 を加える.

  1. 破断までの時間と回転角を求めよ.

  2. 破断までに力 F がした仕事を求め,運動エネルギーの変化と比べよ.

Oを中心とする半径rの円,小球m,接線方向の力Fと初速度v₀を描く. Oを中心とする半径rの円,小球m,接線方向の力Fと初速度v₀を描く.
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考え方 接線方向の力が角運動量を増し,増した速さに応じて糸の張力も増える.糸は半径方向なので接線方向の運動を妨げない.

  1. d(mrv)dt=rF から v=v0+Ft/m.半径方向では T=mv2/r なので,破断時の速さは v∗=T∗r/m.よって t∗=m(v∗−v0)/F.回転角は θ∗=(v0+v∗)t∗/(2r)=m(v∗2−v02)/(2Fr) である.与えられた初期条件により時間と角度は正になる.

  2. 力は移動方向に沿うので W=Frθ∗=m(v∗2−v02)/2.運動エネルギーの増加と一致する.破断前の張力は変位に垂直で仕事をしない.破断した後は円軌道の拘束が消えるので,この式をそのまま使って円運動を延長してはいけない.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様なはしごを,滑らかな壁に床と角 θ をなして立てかける.床の静止摩擦係数は μ.質量 2M の人が下端から距離 s の位置に立つ.0<θ<π/2 とする.

  1. 床と壁から受ける力を求めよ.

  2. 許される s の範囲を求め,人が下端にいても立てかけられない条件,上端まで登れる条件を分けて述べよ.

壁と床にはしごを立てかけ,下端Aからsの位置に人2Mを置く.全長lと角θを示す. 壁と床にはしごを立てかけ,下端Aからsの位置に人2Mを置く.全長lと角θを示す.
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考え方 下端Aのまわりでモーメントをとり,必要な摩擦力を求めた後に最大静止摩擦力と比較する.

  1. 床の垂直抗力は N1=3Mg.壁の力を N2 とすると,N2lsin⁡θ=Mg(l/2)cos⁡θ+2Mgscos⁡θ だから N2=Mg(1/2+2s/l)cot⁡θ.床の摩擦力は壁へ向かい,大きさ f=N2 である.

  2. f≤3μMg より s≤l(3μtan⁡θ−1/2)/2.これと 0≤s≤l の共通範囲が答えである.μtan⁡θ<1/6 なら下端でも不可能,1/6≤μtan⁡θ<5/6 なら右辺が登れる限界,μtan⁡θ≥5/6 なら上端まで可能である.等号の状態は滑り出す直前の限界を含む.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,慣性モーメント I の水平な円板が,鉛直固定軸のまわりに角速度 ω0>0 で回っている.質量 m の小さな粘土を円板の縁へ真上から落とし,付着させる.衝突前の粘土の水平速度は0である.軸の摩擦はない.

  1. 付着直後の角速度を求めよ.

  2. 水平運動と回転に関する運動エネルギーの損失を求めよ.鉛直方向の衝突損失は数えない.

回転する水平円板を上から見た図と,縁へ鉛直に落ちる粘土mの側面小図を示す. 回転する水平円板を上から見た図と,縁へ鉛直に落ちる粘土mの側面小図を示す.
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考え方 保存するのは固定軸方向の角運動量である.粘土は付着後に半径 R で回るため,慣性モーメントに mR2 が加わる.

  1. 軸の反力と鉛直力は軸まわりのトルクを与えない.したがって Iω0=(I+mR2)ω より ω=Iω0/(I+mR2).軸には外力の力積が働くので,全水平運動量の保存を仮定する必要はない.

  2. 初めの対象エネルギーは Iω02/2,最後は (I+mR2)ω2/2.差は Q=ImR2ω02/{2(I+mR2)}>0 である.付着の過程は非弾性であり,角運動量が保存しても運動エネルギーは保存しない.落下高さが与えられていないため,鉛直運動の損失まで含む総損失は決められない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,質量 M の回転対称な車輪について IG=kMR2 とする.静止から角 θ の斜面を滑らずに転がし,斜面に沿う距離 s を進む時間が t と測定された.

  1. k を s,t,θ,g で表せ.

  2. 質量がすべて軸から距離 R 以下にある場合,測定値が満たすべき範囲と,必要な静止摩擦係数を求めよ.

傾きθの斜面に車輪M,Rを描き,静止から測る走行距離sを寸法線で示す. 傾きθの斜面に車輪M,Rを描き,静止から測る走行距離sを寸法線で示す.
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考え方 加速度は a=gsin⁡θ/(1+k) で一定である.測定から a を決め,次に k を逆算する.

  1. s=at2/2 と合わせて k=gt2sin⁡θ/(2s)−1.質量と半径の絶対値を知らなくても,質量分布を表す無次元量 k が求まる.

  2. 0≤IG≤MR2 より 0≤k≤1.したがって 2s/(gsin⁡θ)≤t2≤4s/(gsin⁡θ).下限は質量が軸に集中する理想的な極限である.必要な摩擦は f=kMgsin⁡θ/(1+k),N=Mgcos⁡θ より μ≥{k/(1+k)}tan⁡θ.測定が範囲外なら,滑り,転がり抵抗,初速度などの仮定を見直すべきであり,負の k を物性として採用してはいけない.

演習 7

東京大 2002 前期(改題) ★★★☆☆

長さ L=1.0m の軽い不透明な管に,質量 m と 3m の小球が固定されている.左端Aからの位置を x1<x2 とする.水平な管を両端の支持具で支え,左右の支持具を互いに近づける.管の水平移動は無視でき,滑っている支持具の動摩擦力が,止まっている支持具の最大静止摩擦力に達した瞬間に,滑る側が交代する模型を使う.静止摩擦係数を μ,動摩擦係数を μ′ とする.

右支持具が最初に止まったCについて AC=d1=0.90m,続いて左支持具が止まったDについて DC=d2=0.54m であった.次にAを摩擦のない固定軸にし,管を鉛直上向きからごくわずかに傾けて静かに放すと,鉛直下向きでBの速さが v=215ms−1 であった.g=9.8ms−2 とする.

水平な管のA,D,重心G,C,Bと支持具,およびAを軸に回す実験を示す. 水平な管のA,D,重心G,C,Bと支持具,およびAを軸に回す実験を示す.
  1. q=μ′/μ と重心位置 b を測定距離から求めよ.

  2. Aまわりの慣性モーメントを全質量で割った量 S=IA/(4m) を求め,小球の位置を復元せよ.

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考え方 支持具の交代は摩擦力の比,落下回転は質量分布の2乗平均を測っている.

  1. 最初の交代時に μNA=μ′NC で,モーメントのつり合いから NA/NC=(d1−b)/b である.したがって d1=(1+q)b.次の交代時には NC/ND=q だから,C−G=d1−b=qd2/(1+q).両式より

q=d2d1=0.60,b=d12d1+d2=0.5625m.

後の復元で丸め誤差を増やさないよう,ここでは桁を残した.

  1. 重心の落下距離は 2b なので 4mg(2b)=IA(v/L)2/2.よって S=4gbL2/v2=0.3675m2.x1+3x2=4b と x12+3x22=4S を使い,δ=x2−x1>0 とおけば,

S−b2=316δ2,x1=b−34δ,x2=b+14δ.

計算すると δ=0.5220…m,x1=0.17m,x2=0.69m となる.ともに管内にあり,S≥b2 も満たす.S=b2 の極限では2球が重心に重なる.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,質量 M の一様な球殻状ステーションが,鉛直な z 軸まわりに角速度 Ω で回っている.球殻の慣性モーメントは I=2MR2/3 である.外力のトルクを無視できる短時間に,北緯 λ の地点から小荷物を東向きに射出する.射出装置が荷物に与える追加の力積の大きさを J とし,その反作用を球殻が受ける.荷物の質量と射出前の慣性モーメントへの寄与は無視する.射出地点は xz 面内,東向きは +y である.

球殻の子午面と緯度λ,射出地点の位置ベクトル,紙面に垂直な東向きの力積を示す. 球殻の子午面と緯度λ,射出地点の位置ベクトル,紙面に垂直な東向きの力積を示す.
  1. 射出直後の球殻の角運動量の x,z 成分と,回転軸の傾き β を求めよ.IΩ>RJcos⁡λ とする.

  2. M=2.0×104kg,R=8.0m,Ω=0.20rads−1,J=100kgms−1,λ=60∘ で評価し,赤道と北極から射出する場合と比較せよ.

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考え方 追加の角運動量は位置と力積の外積である.球殻ではどの軸でも慣性モーメントが等しく,角運動量と回転軸が平行になる.

  1. r=R(cos⁡λ,0,sin⁡λ),荷物への力積は (0,J,0) なので,球殻への角力積は (RJsin⁡λ,0,−RJcos⁡λ).したがって

Lx=RJsin⁡λ,Lz=IΩ−RJcos⁡λ,tan⁡β=RJsin⁡λIΩ−RJcos⁡λ.
  1. I=8.53…×105kgm2,β=4.1×10−3rad=0.23∘.赤道では傾きは0で自転が遅くなる.北極では tan⁡β=RJ/(IΩ),β=0.27∘ となる.J→0 なら傾きも0であり,正接の分子・分母はいずれも角運動量の次元をもつ.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

車体の質量を M,前後の車軸間隔を d,重心をその中央の地上高 h に置く.前進中に一定の大きさ a で減速し,車体の上下運動と傾きの過渡的な振動が収まった状態を考える.前後のサスペンションのばね定数の合計はそれぞれ kf,kr で,車輪の質量は無視する.傾きは小さく,重心位置の変化は荷重計算で無視する.

前進する車体の重心高h,車軸間隔d,前後ばねと路面からの力を側面図に示す. 前進する車体の重心高h,車軸間隔d,前後ばねと路面からの力を側面図に示す.
  1. 地上の慣性系で並進と回転の式を立て,前後の荷重 Nf,Nr を求めよ.

  2. 制動前からの前下がり角の増分 Δθ と,後輪が浮かない条件を求めよ.M=900kg,d=2.4m,h=0.48m,a=3.0ms−2,kf=3.6×104Nm−1,kr=2.4×104Nm−1,g=9.8ms−2 で評価せよ.

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考え方 水平力はつり合っていない.重心の加速度と,重心まわりの角加速度0を区別する.

  1. 路面の制動力の合計は −Ma,鉛直方向は Nf+Nr=Mg.重心まわりでは (d/2)(Nf−Nr)=Mah だから,

Nf=Mg2+Mahd,Nr=Mg2−Mahd.
  1. 荷重増分 ΔN=Mah/d により,前は ΔN/kf 沈み,後ろは ΔN/kr 上がる.したがって

Δθ=Mahd2(1kf+1kr),a≤gd2h.

数値は ΔN=540N,Nf=4.95×103N,Nr=3.87×103N,Δθ=0.016rad(約 0.90∘).浮き上がりの閾値は 24.5ms−2 で,今回の荷重は正である.実際にはこれより先にタイヤが滑ることもある.kf,kr→∞ なら傾きは0でも荷重移動は残る.

演習 10

オリジナル ★★★☆☆

摩擦なく鉛直軸まわりに回る台(慣性モーメント I0)に,同軸の円板(慣性モーメント I)をねじりばねで取り付ける.円板と台の相対角を θ とすると,円板へのトルクは −κθ である.全体の角運動量は初め0で,外力のトルクはない.

台と円板の絶対角α,β,両者の差θを上から見て示す. 台と円板の絶対角α,β,両者の差θを上から見て示す.
  1. 円板と台の絶対角を α,β として,相対角 θ=α−β の運動方程式と周期を求めよ.

  2. 台を固定した周期を T0=1.20s,I0=24I としたとき,自由な台での周期と,固定台用の目盛りで実時間1時間を測った表示を求めよ.

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考え方 2つの回転の運動方程式を引き,相対角の方程式を作る.

  1. Iα¨=−κθ,I0β¨=+κθ より

θ¨=−κ(1I+1I0)θ,T=2πII0κ(I+I0).

また Iα˙+I0β˙=0 で,台も逆向きに動くため相対角は速く戻る.

  1. T/T0=24/25,T=1.18s.表示は周期の個数に比例するので,3600T0/T=3674…s,約74秒進む.I0→∞ なら T→T0.κ の次元はトルクであり,I/κ は時間²になる.

演習 11

オリジナル ★★★☆☆

人とブランコを,支点からの距離を変えられる質点で近似する.初め距離 l,小さな角振幅 θ0 で揺れている.最下点で距離を瞬時に s=l−h へ縮め,次の折返点で l に戻する.操作中の重力の角力積は無視し,操作終了時の半径方向速度は0とする.

最下点でのlからsへの短縮と,折返点での復元を,支点を共通にして示す. 最下点でのlからsへの短縮と,折返点での復元を,支点を共通にして示す.
  1. 一連の操作後の角振幅を求めよ.

  2. 逆に,初め距離 s で最下点で l へ伸ばし,折返点で s へ戻す場合を比較せよ.l=2.0m,h=0.20m,θ0=6.0∘ として数値を求めよ.

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考え方 操作中は角運動量,長さ一定の区間は力学的エネルギーを使う.操作する人の仕事があるので,全行程でエネルギーを保存させない.

  1. 最下点で l2ω−=s2ω+.小振動では ω−=g/lθ0,短縮後の振幅は ω+s/g だから,

θ1=(ls)3/2θ0.

折返点では角速度が0なので,半径方向の復元で角度は変わらない.有限角なら 1−cos⁡θ1=(l/s)3(1−cos⁡θ0) で小角近似を点検できる.

  1. 逆操作では θ1=(s/l)3/2θ0.倍率はそれぞれ 1.171…,0.8538…,角振幅は 7.0∘,5.1∘.h→0 ならどちらも倍率1で,倍率が無次元であることも確かめられる.

演習 12

オリジナル ★★★☆☆

半径 R,質量 M,車軸まわりの慣性モーメント I=kMR2 の車輪を粗い水平面に置き,右向きの初速 v0>0 と,右向きの転がりとは逆向きの角速度の大きさ Ω0>0 を与える.動摩擦係数は μ′ で,車輪は鉛直面内に保たれ,転がり抵抗はない.角速度 ω の正は右向きに転がる回転とする.

右へ動く車輪と逆回転,接点の滑り,左向きの摩擦力を示す. 右へ動く車輪と逆回転,接点の滑り,左向きの摩擦力を示す.
  1. 滑り停止時刻とそのときの速度を求め,前進・静止・後退の条件を分類せよ.

  2. k=0.50,R=0.20m,v0=1.0ms−1,Ω0=15rads−1,μ′=0.20,g=9.8ms−2 で評価せよ.

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考え方 摩擦の向きは重心速度ではなく,接点の速度 u=v−Rω で決まる.

  1. 初め u0=v0+RΩ0>0 なので摩擦は左向き.滑り中は v˙=−μ′g,ω˙=μ′g/(kR) である.よって

ts=k(v0+RΩ0)(1+k)μ′g,vs=v0−kRΩ01+k,ωs=vsR.

kRΩ0<v0 なら前進,等しければ静止,大きければ後退する.重心が止まっても接点が滑る間は摩擦の向きは変わらない.

  1. ts=0.68s,vs=−0.33ms−1,ωs=−1.7rads−1 で後退する.失われるエネルギーは Q=Mk(v0+RΩ0)2/[2(1+k)]≥0.速度の結果に μ′ がないのは,摩擦力が弱いほど長く作用するためである.ただし μ′=0 では滑りは止まらない.

演習 13

オリジナル ★★★☆☆

水平面で静止する半径 R,質量 M,慣性モーメント I=kMR2 の物体に,中心より高さ b の位置で右向きの水平力積 J を与える.打撃中の床からの水平力積は無視する.一様な球では k=2/5,一様な円柱では k=1/2 である.

球の中心から高さbの打点へ水平力積Jを加える様子を示す. 球の中心から高さbの打点へ水平力積Jを加える様子を示す.
  1. 打撃直後に滑らず転がる打点を,球と円柱について求めよ.

  2. その打点での並進・回転の運動エネルギーを求め,M=0.60kg,R=0.10m,J=0.90kgms−1 で両者を比較せよ.

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考え方 並進への力積は J,中心まわりの角力積は Jb である.

  1. v=J/M,ω=Jb/I より v=Rω は b=kR.球は中心の 0.040m 上,円柱は 0.050m 上である.いずれも表面上で実現できる高さである.

  2. Ktr=J2/(2M),Krot=J2b2/(2I).指定の打点では Krot=kJ2/(2M) となる.v=1.5ms−1,ω=15rads−1,並進エネルギーは両者とも 0.68J,回転エネルギーは球 0.27J,円柱 0.34J.同じ力積でも仕事は同じとは限らない.b=0 なら回転エネルギーは0であり,J2/M の次元はエネルギーである.

演習 14

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,1辺 a の一様な正方形板を,水平面内で動かす.対角の頂点AとBをそれぞれ水平な直線レールと鉛直な直線レールにはめる.ある瞬間,Aは (0,0),Bは (a,a) にあり,Aは右向きの一定速度 u>0 で駆動される.Bのレールは x=a,Aのレールは y=0 である.Gまわりの慣性モーメントは IG=Ma2/6 とする.

  1. この瞬間のBとGの速度,板の角速度を求めよ.

  2. Bの加速度と板の角加速度を求めよ.

  3. 板の全運動エネルギーを求めよ.Bの速度を u と得ても,Bの加速度を0とできない理由を説明せよ.

2本のレールに拘束された正方形板を示す模式図. 2本のレールに拘束された正方形板を示す模式図.
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考え方 2点の速度と加速度を,Aを基準にした剛体の式で関係づける.角速度は反時計回りを正とする.

  1. Bの速度を (0,w) とすると (0,w)=(u,0)+ω(−a,a).したがって ω=u/a,w=u.中点Gは vG=(u/2,u/2).瞬間回転中心は (0,a) で,A,Bの速度の垂線の交点にもなる.

  2. Aの加速度は0.Bの x 加速度もレールのため0だから 0=−αa−ω2a,α=−u2/a2.y 成分は aB,y=αa−ω2a=−2u2/a.Bは上へ動いているが,下向きに加速する.

  3. VG2=u2/2 より K=MVG2/2+IGω2/2=Mu2/4+Mu2/12=Mu2/3.Bの速さがAの速さに等しいのは,ABが45°をなすこの瞬間だけである.次の瞬間には配置が変わり,同じ等式を微分できない.u2/a は加速度,Mu2 はエネルギーの次元である.u→0 では速度,加速度,エネルギーがすべて0へ近づく.