問いしるべ
問いから始める物理 回転と剛体

回転と剛体

第8章の発展問題

著者:柚木芹香

★4・★5の発展問題で,動く支持点,衝突,歳差や回転する装置を扱います.並進と回転,衝突中と衝突の間を分けて使える保存則を選び,得られた解が接触条件と近似の範囲を満たすかまで調べてください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

質量 M,半径 R の一様な円柱が粗い水平床を右向きに速さ v0 で滑らずに転がり,滑らかな鉛直壁に正面衝突する.壁との反発係数は 0≤e≤1.衝突中の床の水平力積は無視でき,壁の力積は中心を通る.衝突後の床との動摩擦係数は μ′>0 とする.

  1. 衝突直後の重心速度と角速度を求めよ.

  2. 壁から離れた後に再衝突が起きないと仮定して,滑りが止まるまでの時間と速度を求めよ.この仮定が滑り終了まで成り立つ範囲と,再衝突の有無を判定せよ.

水平床を右へ転がる円柱と右側の鉛直壁.衝突前のv₀,時計回りのω₀を描き,衝突後の向きは示さない. 水平床を右へ転がる円柱と右側の鉛直壁.衝突前のv₀,時計回りのω₀を描き,衝突後の向きは示さない.
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考え方 壁は並進速度を反転させるが,重心まわりの角運動量を変えない.衝突直後に転がり条件を課してはいけない.

  1. 右向きと時計回りを正とする.反発係数より v(0)=−ev0.壁の力積のトルクは0なので ω(0)=v0/R.接点の速度は v−Rω=−(1+e)v0<0 であり,床の摩擦力は右向きである.

  2. 滑り中は v=−ev0+μ′gt,ω=v0/R−2μ′gt/R.したがって ts=(1+e)v0/(3μ′g),vs=(1−2e)v0/3,ωs=vs/R.e>1/2 なら左へ転がり去り,e=1/2 なら停止する.0<e<1/2 なら最終的には右へ戻るが,再衝突が滑り終了前かも調べる必要がある.壁からの変位は x=−ev0t+μ′gt2/2 で,帰着時刻は tr=2ev0/(μ′g).tr<ts は e<1/5 に相当する.よって 0<e<1/5 では上の ts,vs は壁がなければ得る値であり,実際にはその前に再衝突する.e=1/5 は滑り終了と帰着が同時,1/5<e<1/2 は転がりに移ってから再衝突する.e=0 では壁から離れず,単独の自由な滑り区間は存在しない.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 M,外半径 R,巻き芯の半径 r<R,慣性モーメント I=kMR2 の糸巻きを粗い水平床に置く.糸は巻き芯の下側から接線方向に出て,右斜め上へ水平と角 β(0≤β<π/2) をなす一定の力 F で引く.初め静止し,床から離れず滑らないとする.

  1. 重心の右向き加速度と,右向きを正とした摩擦力を求めよ.

  2. 静止摩擦係数 μ で仮定の成立条件を表し,時間 t までに力 F がした仕事を求めよ.

外半径R,芯半径rの糸巻き.芯の右下の接点から右上へ出る糸と角β,力Fを描く. 外半径R,芯半径rの糸巻き.芯の右下の接点から右上へ出る糸と角β,力Fを描く.
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考え方 糸の張力は反時計回りのトルク Fr を与える.右へ転がる時計回りを正とし,摩擦の符号を未知として連立する.

  1. Ma=Fcos⁡β+f,Iα=−Fr−fR,a=Rα である.よって

a=F(cos⁡β−r/R)M(1+k),f=−F(kcos⁡β+r/R)1+k

となる.摩擦は左向きだが,加速度は cos⁡β=r/R を境に向きが変わる.境界では重心も回転も加速しない.

  1. N=Mg−Fsin⁡β>0 と F(kcos⁡β+r/R)/(1+k)≤μ(Mg−Fsin⁡β) が条件である.接線方向の糸の速度は,重心の寄与 vcos⁡β と回転の寄与 −rω の和だから u=v(cos⁡β−r/R).v=at を積分して

W=F2(cos⁡β−r/R)2t22M(1+k)

を得る.これは M(1+k)(at)2/2 に等しい.左へ動く場合でも糸端は力の向きへ動き,仕事は非負である.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

質量 M の軸対称なコマが固定支点Oのまわりに回る.Oから重心までの距離は r,対称軸まわりの慣性モーメントは I,自転角速度は ω>0.軸は鉛直上向きから角 φ(0<φ<π/2) を保ってゆっくり歳差し,角運動量は自転による L≈Iωn が支配的とする.n は支点から重心へ向く単位ベクトルである.

  1. 歳差角速度 Ω とその向きを求めよ.

  2. 支点を通り対称軸に垂直な軸の慣性モーメントを I⟂ とする.歳差による角運動量を無視する近似の目安を示し,自転が遅くなったときの式の限界を述べよ.

固定支点Oから傾いたコマの軸,重心G,距離r,鉛直との角φ,自転ωの向きを描く.歳差の向きは示さない. 固定支点Oから傾いたコマの軸,重心G,距離r,鉛直との角φ,自転ωの向きを描く.歳差の向きは示さない.
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考え方 一定の傾きを保つ角運動量の先端は,半径 Lsin⁡φ の円を描く.トルクと比べるべき変化率は ΩLsin⁡φ である.

  1. 鉛直上向きの単位ベクトルを ez とすると τ=rn×(−Mgez)=Mgrez×n.一方,正の鉛直軸まわりの歳差では dLdt=ΩIωez×n.したがって Ω=Mgr/(Iω).上から見て反時計回りである.大きさだけで計算しても,両辺の sin⁡φ が消える.

  2. 歳差による対称軸に垂直な角速度は Ωsin⁡φ 程度である.よって I⟂Ωsin⁡φ/(Iω) が1より十分小さいことが目安になる.角度によらず十分な条件は I⟂Mgr/(I2ω2) が1より十分小さいことである.自転が遅くなるとこの比が大きくなり,角運動量を対称軸方向だけに置く近似が破れる.Ω∝1/ω を ω→0 まで延長してはいけない.また任意の初期条件で傾き一定になるわけではなく,この問題はゆっくりした定常歳差を仮定している.

演習 4

東京大 1998 後期(改題) ★★★★☆

固定された2つのローラーの接点が x=−a,+a にある.薄い一様な長板(質量 M)を水平に載せ,重心を x=A に置いて静かに放する.0<A<a である.左のローラー上面は右向き,右の上面は左向きに,板の最大速さより十分速く動く.動摩擦係数を μ′ とし,板の厚さと接点の高さの差は無視する.板は全過程で両ローラーに届く長さをもつ.

[図:問題9の模式図]

間隔2aのローラーと長板,重心位置x,内向きの表面速度を示す.初期状態で上面速度の向きが分かり,再生するとローラーの回転方向を確認できます.板の軌跡は表示しません.

  1. 接点の垂直抗力を N−,N+ として求め,板の運動 x(t) と角振動数 ω を求めよ.

  2. ωt=ψ,0≤ψ≤π の瞬間に両ローラーを停止・固定する.停止操作は板に水平な力積を与えないとする.その後の滑走距離 s と最終位置 xf を求めよ.

  3. a=0.60m,A=0.18m,μ′=0.15,g=9.8ms−2 として,ψ=π/3 と π/2 を比較せよ.全位相で板が転倒しないことも確かめよ.

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考え方 回転しない板でも,抗力の配分にはモーメントの式が必要である.ローラーを止めると,左右逆向きだった摩擦が同じ向きになる.

  1. 鉛直方向の加速度と角加速度は0なので,N−+N+=Mg,重心まわりで (a−x)N+=(a+x)N−.よって

N−=Mg(a−x)2a,N+=Mg(a+x)2a.

ローラーの回転中は Mx¨=μ′N−−μ′N+=−μ′Mgx/a.初期条件は x(0)=A,x˙(0)=0 だから,

ω=μ′ga,x=Acos⁡ωt,x˙=−Aωsin⁡ωt.

摩擦はエネルギーを常に減らすとは限らない.ここではローラーを回す装置が仕事をするため,振幅一定の運動が続く.

  1. 0<ψ<π では板は左向きであり,固定された両接点から右向きの摩擦を受ける.合力は μ′(N−+N+)=μ′Mg なので減速度の大きさは一定である.停止直前の速さ Aωsin⁡ψ から

s=A2ω2sin2⁡ψ2μ′g=A22asin2⁡ψ,xf=Acos⁡ψ−A22asin2⁡ψ.

ψ=0,π では初めから速度0であり,ローラー固定後は水平に動かす力がないためその場に止まる.上式も s=0 を与える.

  1. ω=1.57rads−1,周期は 4.01s.ψ=π/3 では s=0.020m,xf=0.070m.ψ=π/2 では s=0.027m,xf=−0.027m である.滑走距離は中央通過時が最大となる.

支持条件は N±>0,すなわち −a<x<a.c=cos⁡ψ とおくと xf=Ac−A2(1−c2)/(2a) で,dxfdc=A+(A2/a)c>0.したがって −A≤xf≤A,滑走途中も出発位置と最終位置の間にあり,A<a なら支持は失われない.s の次元は長さで,A→0 なら0になる.

演習 5

東京大 2007 後期(改題) ★★★★☆

頂点Oを下にした滑らかな円錐の内面を,高さ z=h と z=3h で切り取る.軸は鉛直,母線と軸の角は α=30∘ である.下端で質点に円周接線方向の速さ u を与える.縁には段差がなく,面の範囲外では重力だけが働く.境界で母線方向の速度が0の場合は,接触を保って折り返す理想的な縁とする.

円錐の断面と上下端h,3h,下端の接線方向初速u,上端の母線方向を示す. 円錐の断面と上下端h,3h,下端の接線方向初速u,上端の母線方向を示す.
  1. 高さ z での水平円運動の速さと抗力を求めよ.

  2. 一般の運動で円周方向速度を vφ,母線方向速度を w とし,それぞれを z,u,h で表せ.下端から落ちず,上端からも出ない u の範囲を求めよ.

  3. 上端から飛び出すときの,接線と速度のなす角 γ および自由飛行の最高点 H を求めよ.h=0.40m,g=9.8ms−2 として,H=4h を実現する u を逆算せよ.

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考え方 軸まわりの角運動量とエネルギーを保存させ,母線方向に動ける範囲を調べる.天体運動の知識は必要ない.

  1. 円の半径は r=ztan⁡α.抗力の水平成分と鉛直成分から mv2/r=Ncos⁡α,Nsin⁡α=mg であり,v=gz,N=mg/sin⁡α=2mg となる.

  2. 重力も抗力も鉛直軸まわりのトルクをもたない.したがって mrvφ=mhtan⁡αu,すなわち vφ=hu/z.抗力は仕事をしないので

w2=u2(1−h2z2)−2g(z−h).

下端で母線上向きに加速する条件は u2≥gh.等号なら下端の水平円運動となる.u2<gh なら直ちに下端の外へ向かう.下端以外の折返し高さは w2=0 を因数分解して得る 2gz2−u2z−u2h=0 の正の根である.この根が h 以上 3h 以下になる条件は,

gh≤u≤92gh.

上限では上端に速度の母線成分0で達し,仮定に従い折り返す.途中で面から離れないことも確認する.内向き・上向きの法線方向の運動方程式から

N=m(gsin⁡α+vφ2rcos⁡α)>0.

したがって離脱は縁でのみ起こる.

  1. 上端で vφ=u/3,w2=8u2/9−4gh>0,全速さは u2−4gh.ゆえに

cos⁡γ=u3u2−4gh,H=3h+cos2⁡α2g(89u2−4gh).

母線の鉛直成分が wcos⁡α であることに注意する.H=4h を代入すると u2=15gh/2,u=5.42ms−1.上端到達の閾値 4.20ms−1 を超え,γ=60.8∘,最高点は 1.60m となる.射出後は半径が増して円錐の外へ出るため,最高点まで縁に再衝突しない.上限速度に近づければ w→0,H→3h となり,式の次元も長さで一致する.

演習 6

オリジナル ★★★★☆

軽い鉛直軸に軽い棒を固定し,固定点Oから両側へ距離 l の位置に質量 m の質点を付ける.棒と鉛直軸の角は ϕ で,軸は一定角速度 ω で回る.軸受はOより上に a,下に b 離れている.重力は別のスラスト軸受が受け持つものとし,ここでは2つの軸受の水平力だけを求める.

傾いた棒の両端質点と,鉛直軸上の上下の軸受を示す. 傾いた棒の両端質点と,鉛直軸上の上下の軸受を示す.
  1. 上側質点が +x 側にある瞬間の各質点の水平力と,Oまわりの合トルクを求めよ.

  2. 上下の軸受が軸に及ぼす水平力を求め,m=0.40kg,l=0.30m,ϕ=35∘,ω=12rads−1,a+b=0.50m で評価せよ.

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考え方 地上から見た各質点の向心力を足せば,合力0でも偶力が必要なことが分かる.

  1. 上下の質点の x 方向の力はそれぞれ −mlsin⁡ϕω2,+mlsin⁡ϕω2.高さは ±lcos⁡ϕ なので,合トルクは y 方向に

τy=−2ml2ω2sin⁡ϕcos⁡ϕ=−ml2ω2sin⁡2ϕ.
  1. 上下の軸受の x 成分を FA,FB とすると,FA+FB=0,aFA−bFB=τy.よって FA=−ml2ω2sin⁡2ϕ/(a+b),FB=−FA.各力の大きさは 9.7N であり,軸受が受ける力はそれぞれ逆向きである.ϕ=0 でも ϕ=90∘ でもこの偶力は消える.ml2ω2/(a+b) の次元は力になる.

演習 7

オリジナル ★★★★☆

椅子を剛体の枠に置き換える.質量は M,重心まわりの慣性モーメントは IG=Mρ2.倒れる間は床の脚Pを固定軸とし,重心が h 下がると別の脚が床に着く.着地直前の重心のPに対する座標は (b,c) で,時計回りに回っている.着地時にはPの固定が外れ,水平力積はなく,鉛直速度と回転だけが非弾性的な緩衝機構で止まるとする.その後は姿勢を保ち,動摩擦係数 μ′ の床を滑る.

枠の固定脚Pと重心G,着地姿勢での距離b,c,その後の水平滑走を示す. 枠の固定脚Pと重心G,着地姿勢での距離b,c,その後の水平滑走を示す.
  1. 着地直前の角速度と,着地後の水平速度を求めよ.

  2. 着地後の滑走距離を求め,ρ=0.30m,b=0.30m,c=0.40m,h=0.050m,μ′=0.25,g=9.8ms−2 で評価せよ.

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考え方 落下中の位置エネルギーは並進だけでなく回転にも移る.着地の損失を経て残った水平運動だけが滑走を決める.

  1. IP=M(ρ2+b2+c2) だから,Mgh=IPω2/2,ω=2gh/(ρ2+b2+c2).重心の水平速度は V=cω.着地時の水平力積が0なので,この成分だけがそのまま残る.

  2. MV2/2=μ′Mgs より

s=hc2μ′(ρ2+b2+c2).

数値は ω=1.7rads−1,V=0.68ms−1,s=0.094m.着地前の水平重心移動は含めていない.s≤h/μ′ であり,h→0 なら0になる.実際の椅子では着地時の水平力積にも依存するため,この距離をそのまま使えるとは限らない.

演習 8

オリジナル ★★★★☆

半径 r,質量 M の薄い輪が,重心の水平軌道半径 R の円に沿い,速さ v で滑らずに転がっている.輪の面は鉛直から円の内側へ角 θ だけ傾き,一定の姿勢で旋回する.R は r より十分大きく,θ は極端に大きくないとする.車軸まわりの自転角速度を v/r,重心まわりの角運動量を大きさ L=Mrv の自転成分だけで近似する.歳差そのものの角運動量は無視する.

旋回する輪を進行方向から見て,内向きの傾きθと接点,重心,軸の向きを示す. 旋回する輪を進行方向から見て,内向きの傾きθと接点,重心,軸の向きを示す.
  1. 地面からの力の鉛直・水平成分を求め,重心まわりのトルクと dLdt を等置して傾きを求めよ.

  2. r=0.15m,R=12m,v=3.0ms−1,g=9.8ms−2 で評価し,R を2倍にした場合と比べよ.

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考え方 力の合力が向心加速度を作るだけでなく,そのトルクが自転軸の向きを変える.トルクを0にすると歳差の効果を失う.

  1. 地面の力は上向き Mg,内向き Mv2/R.重心から接点へのベクトルは外向き成分 rsin⁡θ,下向き成分 rcos⁡θ をもつ.角運動量が向きを変える方向を正にとると,トルクは Mgrsin⁡θ−Mrv2cos⁡θ/R となる.角運動量の水平成分 Lcos⁡θ が角速度 v/R で向きを変えるから,

Mgrsin⁡θ−Mrv2Rcos⁡θ=vRMrvcos⁡θ,tan⁡θ=2v2gR.

係数2の一方は重心の円運動,他方は自転角運動量の向きの変化に由来する.

  1. θ=8.7∘,半径を2倍にすれば 4.4∘.r/R=0.0125 で,歳差の角速度と自転角速度の比もこの程度である.R→∞ なら傾きは0に近づく.ここで v は既に転がっている輪の速さであり,滑りながら着地したときの初速からエネルギー保存で求めてはいけない.

演習 9

オリジナル ★★★★☆

高速回転子の自転慣性モーメントは I,自転角速度は一定の ω である.2つの軸受の間隔を d とし,自転軸を含む台を ϕ(t)=ϕ0sin⁡(2πt/T) の角度で揺らする.揺動軸は自転軸に垂直で,回転子の重心を通る.自転以外の角運動量と静的荷重は無視し,ジャイロ効果による軸受の付加荷重だけを考える.

回転子と間隔dの軸受,自転軸に垂直な揺動軸と平行な揺動軸を示す. 回転子と間隔dの軸受,自転軸に垂直な揺動軸と平行な揺動軸を示す.
  1. 軸受が作る偶力のモーメントと,各軸受の付加荷重の最大値を求めよ.

  2. I=0.80kgm2,毎分 2400 回転,d=0.40m,ϕ0=6.0∘,T=4.0s で数値を求めよ.揺動軸を自転軸と平行にした場合も比較せよ.

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考え方 一定なのは角運動量の大きさであって,ベクトル全体ではない.

  1. L=Iω(cos⁡ϕ,sin⁡ϕ,0) と置けば,|dLdt|=Iω|ϕ˙|.したがって偶力のモーメントの大きさは τ=Iω|ϕ˙|,各軸受の最大荷重は

Fmax=Iωd2πϕ0T.

最大になるのは台が中央を通る瞬間で,角度の折返点では付加荷重は0になる.

  1. ω=2π(2400/60)=80πrads−1,ϕ0=π/30rad.τmax=33Nm,Fmax=83N.揺動軸が自転軸と平行なら自転角運動量の向きは変わらず,このジャイロ荷重は0である.その場合に自転速度を変えるための駆動トルクは,ここでの付加荷重とは別である.T→∞ なら付加荷重は0で,式の次元は力になる.

演習 10

オリジナル ★★★★☆

鉛直な円筒の内壁を,小さな台車が水平に走る.重心の円軌道半径は R,重心から壁までの距離は b,全質量は M,車輪半径は r である.台車には慣性モーメント I の高速回転子があり,その軸は水平な半径方向を向く.車輪の角速度を v/r,回転子の角速度を kv/r とする.回転の向きは,壁からの上向き摩擦力が作るトルクと,回転子の角運動量の変化が一致する向きに選ぶ.車輪自体と台車の旋回による角運動量は無視する.壁との静止摩擦係数は μ である.

円筒内壁を走る台車の平面図と,重心から壁までb離れた側面図を示す. 円筒内壁を走る台車の平面図と,重心から壁までb離れた側面図を示す.
  1. 水平走行する速さ v と比 k の関係を求めよ.

  2. 滑り落ちないための k の範囲を求めよ.M=12kg,b=0.10m,r=0.050m,I=0.020kgm2,μ=0.50,R=5.0m,g=9.8ms−2 とし,k=1.0 のときの速さと,回転子を増速する倍率 k>1 に許される範囲を求めよ.

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考え方 重力を支える摩擦は,重心まわりのトルクも作る.そのトルクが回転子の角運動量を円周方向に曲げる.

  1. 鉛直方向のつり合いから摩擦力は Mg,法線力は向心力 N=Mv2/R.重心まわりのトルクは Mgb である.回転子の角運動量 Ikv/r が角速度 v/R で向きを変えるので,

Mgb=Ikv2rR,v2=MgbrRIk.
  1. Mg≤μMv2/R に代入すると

0<k≤μMbrI=1.5.

k=1.0 では v=12ms−1(丸め前は 12.12…).滑り落ちない最低速度は gR/μ=9.9ms−1 なので条件を満たす.増速するなら 1<k≤1.5.k が大きすぎると姿勢保持に必要な速度が低くなり,摩擦が不足する.この模型では速度を無限に上げられると仮定したため下限が0になったのであり,実機の出力限界を意味しない.Mbr/I は無次元である.

演習 11

オリジナル ★★★★☆

長さ 2a の一様な棒を,水平となす角 ϕ=60∘ で,回転させずに静かに落とする.最初は左端Aが低く,Aが滑らかな水平床と弾性衝突する.その後,右端Bが初めて床に当たる瞬間の棒の角度を −ϕ にしたいとする.衝突時間中の重力の力積は無視するが,衝突と衝突の間には重力が働く.放したときの重心の高さを H0,最初の衝突までの落下距離を h=H0−asin⁡ϕ とする.重心まわりの慣性モーメントは I=Ma2/3 である.

最初に左端Aが当たる姿勢φと,次に右端Bが当たる姿勢−φ,重心の高さの基準を示す. 最初に左端Aが当たる姿勢φと,次に右端Bが当たる姿勢−φ,重心の高さの基準を示す.
  1. 最初の衝突直前の重心の下降速度を u,床の力積を J として,衝突直後の上向き重心速度 V と時計回り角速度 ω を求めよ.

  2. 必要な h,H0 を求め,a=0.30m,g=9.8ms−2 で評価せよ.2度目までに別の接触がないことも確認せよ.

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考え方 反発係数1は重心ではなく,衝突する端の鉛直速度に適用する.自由飛行中の重心は放物運動,回転は等角速度である.

  1. MV=J−Mu,Iω=Jacos⁡ϕ.Aの衝突後の上向き速度は V+aωcos⁡ϕ であり,反発条件はこれが u に等しいことである.したがって

J=2Mu1+3cos2⁡ϕ,V=u1−3cos2⁡ϕ1+3cos2⁡ϕ,ω=6ucos⁡ϕa(1+3cos2⁡ϕ).

ϕ=π/3 では V=u/7,ω=12u/(7a).この値を MV2/2+Iω2/2 に代入すると Mu2/2 に戻り,弾性衝突のエネルギー保存も満たす.

  1. 姿勢が +ϕ から −ϕ になる時間は t∗=2ϕ/ω=7πa/(18u).両衝突で重心高は asin⁡ϕ なので,Vt∗−gt∗2/2=0,すなわち t∗=2u/(7g).両式と u2=2gh から

u2=49πga36,h=49πa72,H0=asin⁡π3+49πa72.

数値は u=3.5ms−1,h=0.64m,H0=0.90m,t∗=0.10s.0<t<t∗ では重心が asin⁡ϕ より高く,棒の角度 θ は −ϕ<θ<ϕ なので a|sin⁡θ|≤asin⁡ϕ.したがって棒全体は床より上にあり,Bが次の接点になる.落下距離は a に比例し,次元も長さである.

演習 12

オリジナル ★★★★☆

半径 R の一様な球(I=2MR2/5)を,重心速度0で粗い水平面上に置く.初期角速度は ω0=(0,ω0sin⁡ϕ,ω0cos⁡ϕ) である.z 軸は鉛直上向き,x,y 軸は水平とする.点接触の摩擦だけを考え,接触面積による自転抵抗は無視する.動摩擦係数は μ′ である.

初期回転軸と鉛直の角φ,球の接点,水平・鉛直の角速度成分を示す. 初期回転軸と鉛直の角φ,球の接点,水平・鉛直の角速度成分を示す.
  1. 滑り停止時の速度,角速度の各成分と大きさを求めよ.

  2. R=0.060m,ω0=50rads−1,μ′=0.20,g=9.8ms−2 として,ϕ=30∘ と 60∘ を比較せよ.滑り停止までの時間も求めよ.

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考え方 接点の速度を作るのは水平な角速度成分だけである.摩擦のトルクには鉛直成分がない.

  1. 初めの接点速度は −Rω0sin⁡ϕ の x 成分をもつので,摩擦は +x 向き.力積を J とすれば vx=J/M,ωy=ω0sin⁡ϕ−RJ/I,ωz=ω0cos⁡ϕ.停止条件 vx=Rωy から

vx=27Rω0sin⁡ϕ,ωy=27ω0sin⁡ϕ,ωz=ω0cos⁡ϕ,|ω|=ω0449sin2⁡ϕ+cos2⁡ϕ.

ほかの速度成分と ωx は0である.

  1. 30∘ では vx=0.43ms−1,ωy=7.1rads−1,ωz=43rads−1,角速度の大きさは 44rads−1.60∘ ではそれぞれ 0.74ms−1,12rads−1,25rads−1,28rads−1.ts=vx/(μ′g) なので停止時間は 0.22s,0.38s となる.ϕ=0 なら初めから接点は滑らず,球はその場で自転し続ける.垂直成分が残っても点接触での滑りなし条件と矛盾しない.

演習 13

オリジナル ★★★★☆

球が水平床上を速さ v0 で滑らず転がり,鉛直な壁に正面から衝突する.壁へ向かう方向を +x,上向きを +z とし,初期角速度は +y 向きの v0/R である.I=kMR2 とする.衝突中の重力と床の力積を無視し,壁の法線方向の反発係数は1とする.壁との滑り摩擦係数は f.壁の接点の鉛直相対速度が0になった後は接線力積が増えない,接線方向の弾性復元をもたない模型を使う.

壁に正面入射する球と,壁の接点の下向き速度,上向きの摩擦力積を示す. 壁に正面入射する球と,壁の接点の下向き速度,上向きの摩擦力積を示す.
  1. 跳ね返り速度の水平・鉛直成分と,水平からの跳ね上がり角 η を求めよ.

  2. 一様な球 k=2/5,v0=2.0ms−1 について,f=0.080 と 0.25 を比較せよ.薄い球殻 k=2/3 にすると,角度が飽和する摩擦係数はどう変わるか.

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考え方 法線方向の力積は反発条件で決まる.接線方向は,滑りが衝突終了まで続く場合と途中で止まる場合を分ける.

  1. 法線方向の力積の大きさは 2Mv0,反発後の水平速度は −v0.上向き力積を P とすると vz=P/M,ωy=v0/R−RP/I.壁の接点の鉛直速度は

uz=vz−Rωy=−v0+PM(1+1k).

これが0になる力積は P∗=Mv0k/(1+k).滑りが続く場合は P=2fMv0 であり,途中で止まれば仮定により P=P∗.よって

vz=v0min(2f,k1+k),tan⁡η=min(2f,k1+k).

飽和の閾値は f∗=k/[2(1+k)] である.法線方向が弾性的でも,接線の滑りによって運動エネルギーは失われる.

  1. 一様な球では f∗=1/7.f=0.080 なら vz=0.32ms−1,η=9.1∘.f=0.25 なら vz=0.57ms−1,η=15.9∘ で飽和する.薄い球殻では f∗=0.20,飽和角は arctan⁡(2/5)=21.8∘ となる.f=0 なら鉛直速度0で正面へ戻る.正接と閾値はともに無次元である.

演習 14

オリジナル ★★★★★

質量 M,長さ l の一様な細い棒を,鉛直上向きから角 θ0(0<θ0<π/2) だけ右へ傾け,静かに放す.Aでは下端を床に固定した自由なちょうつがいで支え,Bでは下端を滑らかな水平床に置くだけとする.棒が水平になる直前まで考える.

  1. Aで角 θ に達したときの角速度を求めよ.

  2. Bで同じ角に達したときの角速度と重心速度を求めよ.

  3. Bで下端が床を離れないことを確かめ,水平になる直前の上端の速さをA,Bで比較せよ.

左に下端固定の棒A,右に滑らかな床へ下端を置いた棒B.鉛直からの初期角θ₀と途中の角θを示す. 左に下端固定の棒A,右に滑らかな床へ下端を置いた棒B.鉛直からの初期角θ₀と途中の角θを示す.
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考え方 Aは固定軸回転,Bは重心の並進と重心まわりの回転である.Bの下端を固定軸とみなすと,運動エネルギーを誤る.

  1. c0=cos⁡θ0,c=cos⁡θ とおく.失われた位置エネルギーは Mgl(c0−c)/2.Aでは端のまわりの慣性モーメントが Ml2/3 なので θ˙A2=3g(c0−c)/l となる.

  2. Bには水平外力がなく,初め静止していたので重心の水平速度は常に0である.yG=lcos⁡θ/2 より vGy=−(l/2)sin⁡θθ˙B.全運動エネルギーは Ml2(1+3sin2⁡θ)θ˙B2/24 だから

θ˙B2=12g(c0−c)l(4−3c2),vG=(0,−l2sin⁡θθ˙B)

である.角速度は正の平方根をとる.下端は左へ動き,その速度は −(l/2)cos⁡θθ˙B である.

  1. D=1+3sin2⁡θ とし,(2)のエネルギー式を時間微分すると Dθ¨B+3sin⁡θcos⁡θθ˙B2=6gsin⁡θ/l.これを N−Mg=My¨G に代入すると

N=Mg4+3c2−6c0c(4−3c2)2

となる.分子は 4−3c02+3(c−c0)2>0 なので,接触は維持される.水平直前には両者の角速度が 3gc0/l になるが,上端の速さはAが 3glc0 である.Bの上端の位置は (xG+lsin⁡θ/2,lcos⁡θ) なので,水平直前の鉛直速度は −lθ˙B となり,Bも 3glc0 である.したがって両者の上端の速さは等しい.重心速度と上端速度を混同しないことが比較の要点である.

演習 15

オリジナル ★★★★★

慣性モーメント I の水平円板に,中心Oから外向きの滑らかな直線溝を設ける.円板は鉛直固定軸のまわりに摩擦なく回る.質量 m の小球を半径 a>0 の位置に止め,円板とともに角速度 ω0>0 で回してから,半径方向の留め具だけを外す.溝は b>a まで続く.

  1. 小球が半径 r に来たときの円板の角速度を求めよ.

  2. 半径 b に達する直前の半径方向速度と,溝が小球に及ぼす接線方向の力を求めよ.必要なら,回転する半径に沿って動く質点の加速度の,半径方向成分が r¨−rω2,それに垂直な成分が rω˙+2r˙ω であることを使ってよい.

水平円板を上から見て,Oからの直線溝,初期半径aの小球m,外側の位置b,初期回転ω₀を描く. 水平円板を上から見て,Oからの直線溝,初期半径aの小球m,外側の位置b,初期回転ω₀を描く.
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考え方 溝は小球の角運動量を変えるが,円板と小球の全角運動量は保存する.円板の角速度は一定ではない.

  1. 小球の接線速度は rω なので,全角運動量は (I+mr2)ω.初期値を L0=(I+ma2)ω0 とすれば ω=L0/(I+mr2).軸の反力は軸まわりのトルクを持たない.

  2. 半径方向速度を u=r˙ とする.溝の力は接触する両物体間でエネルギーを移すだけなので,系全体では

12mu2+L022(I+mr2)=12(I+ma2)ω02

である.したがって ub=ω0(I+ma2)(b2−a2)/(I+mb2).溝の角を φ,φ˙=ω とする.x=rcos⁡φ,y=rsin⁡φ を2回微分して溝方向へ射影すると,加速度のその成分は r¨−rω2.溝方向には力がないから r¨=rω2,初めは r¨=aω02>0 である.またエネルギー式の右辺から回転の項を引いた値は r>a で正なので,いったん外へ動けば途中で反転せず,外向きの正の根を選ぶ.接線力を回転方向に Q とする.小球だけのOまわりの角運動量は mr2ω なので,トルクの式 ddt(mr2ω)=rQ を積の微分で展開すると m(2rr˙ω+r2ω˙)=rQ,すなわち Q=m(rω˙+2r˙ω) となる.(1)を微分して ω˙=−2mrr˙ω/(I+mr2) を代入すれば Qb=2mIubωb/(I+mb2),ただし ωb=L0/(I+mb2).円板には反対向きのトルク −bQb が働く.

演習 16

オリジナル ★★★★★

質量 M,長さ l の一様棒を上端Oでつり,鉛直下向きに静止させる.質量 m の粘土が右向きに速さ u で飛来し,Oから距離 b(0<b≤l) の位置に付着する.衝突は瞬間的で,重力の力積は無視する.

  1. 直後の角速度と,軸から系への水平力積を求めよ.

  2. 軸の水平力積が0となる b を求めよ.

  3. 付着後の最大振れ角 ϕ<π を決める式と,その範囲内で折り返す条件を求めよ.

上端Oでつった棒M,lと,Oからbの点へ水平速度uで衝突する粘土mを描く. 上端Oでつった棒M,lと,Oからbの点へ水平速度uで衝突する粘土mを描く.
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考え方 衝突中はOのまわりの角運動量を保存し,直後の全運動量との差から軸の力積を求める.衝突後の振り上がりにはエネルギー保存を使う.

  1. IO=Ml2/3+mb2 とおくと mub=IOω,つまり ω=mub/IO.直後の棒の重心速度は右向き lω/2,粘土は右向き bω である.したがって軸の右向き力積は Jx=(Ml/2+mb)ω−mu.鉛直速度は衝突前後とも0なので,この近似での軸の鉛直力積は0である.

  2. Jx=0 に代入すると b(Ml/2+mb)=Ml2/3+mb2.粘土に関する項が消え,b=2l/3 を得る.この位置でのみ,軸で支えられた系でも衝突中の全水平運動量が保存する.一般の位置では,軸の力積を落とした運動量保存式は使えない.

  3. 衝突直後のエネルギーは K+=m2u2b2/(2IO).角 ϕ まで上がる位置エネルギーは g(Ml/2+mb)(1−cos⁡ϕ) なので,両者を等置する.有限時間で ϕ<π に折り返す条件は K+<2g(Ml/2+mb) である.等号では理想的には真上へ漸近し,それより大きければ真上を通過する.衝突時の損失は mu2/2−K+ であり,衝突前から振り上がりまで一括してエネルギー保存としてはいけない.