問いしるべ
問いから始める物理 万有引力と天体

万有引力と天体

第10章の発展問題

著者:柚木芹香

★4・★5の発展問題で,衝突や噴射による軌道変更,推進中の運動,軌道や重力のわずかな変化を扱います.保存則を使う時間区間と座標系を明示し,先に厳密な式を立ててから,どの小さい量について近似するかを決めてください.数値計算では G=6.67×10−11m3kg−1s−2 を用い,特に断らない限り天体の自転と大気を無視し,中心天体を回る探査機の質量は中心天体に比べて無視できるものとします.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

質量 M,半径 R の天体の外側で,質量がともに m の2衛星が半径 r>R の円軌道を進む.軌道面は異なり,交点で2つの速度がなす角は β(0<β<π) である.交点で完全非弾性衝突して合体する.衝突中の重力の力積と衛星間の引力は無視する.

  1. 合体直後の速さと失われる運動エネルギーを求めよ.

  2. 合体後の軌道の近点距離を求め,地表と接触しない条件を示せ.

同じ円速度をもつ2つの速度ベクトルが角βをなす.合体後の速度は示さない. 同じ円速度をもつ2つの速度ベクトルが角βをなす.合体後の速度は示さない.
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考え方 衝突では運動量をベクトルとして足す.その後は合体物体のエネルギーと角運動量を用いる.衝突の前後で力学的エネルギーは保存しない.

  1. 円速度を vc=GM/r,c=cos⁡(β/2) とする.対称な2速度の平均は角の二等分線を向き,大きさは v′=vcc.初めの運動エネルギーの和は mvc2,合体後は mvc2c2 なので,損失は mvc2(1−c2)=GMmsin2⁡(β/2)/r.

  2. 両速度はともに衝突点の半径に垂直で,平均も垂直である.v′<vc だから衝突点は新軌道の遠点.単位質量当たりのエネルギーは GM(c2/2−1)/r=−GM/(2a) より a=r/(2−c2).したがって rp=2a−r=rc2/(2−c2).接触しない条件は rp>R,すなわち c2>2R/(r+R).等号は地表に接する場合である.β→π では合体速度と角運動量が0へ近づき,直線落下の極限となる.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 M1,M2 の2恒星が,共通の重心のまわりを周期 T で円運動する.両者の距離は一定の d で,速さの比は v1/v2=2 と測定された.他の天体の引力は無視する.

  1. 重心からの距離と,T と全質量の関係を求めよ.

  2. d,T,G から各質量を求めよ.距離 d を片方の軌道半径としてよいか.

重心Cの両側に2恒星を置く.星間距離dは両者の軌道半径の和である.比の解答は描かない. 重心Cの両側に2恒星を置く.星間距離dは両者の軌道半径の和である.比の解答は描かない.
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考え方 両星が動くので,一方を固定した衛星公式へ単独の質量を代入してはいけない.重心条件と共通の角速度を使う.

  1. M1r1=M2r2,r1+r2=d より r1=M2d/(M1+M2),r2=M1d/(M1+M2).角速度 ω=2π/T として,星1の運動方程式は M1ω2r1=GM1M2/d2.代入して ω2=G(M1+M2)/d3,すなわち T2=4π2d3/[G(M1+M2)].

  2. v1/v2=r1/r2=M2/M1=2 なので,M2=2M1.全質量 S=4π2d3/(GT2) とおけば M1=S/3,M2=2S/3.それぞれの半径は 2d/3,d/3 であり,d ではない.d は相対運動の円の半径で,その運動に対して全質量を用いたケプラー則が成り立つ.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

恒星の慣性系で,惑星が短い遭遇の間ほぼ一定の速度 V=(V,0) で動く.探査機の質量は惑星に比べて無視でき,惑星系で十分遠方の入射速度は uin=(0,−u) である.重力によって偏向した後の遠方速度を uout=(usin⁡δ,−ucos⁡δ) とする.0≤δ≤π で,選ぶ衝突径数によってこの範囲の偏向が可能と仮定する.

  1. 恒星系での単位質量当たりのエネルギー増加を求めよ.

  2. それを最大にする δ と,そのときの出射速度を求めよ.エネルギーの供給源を説明せよ.

惑星系で同じ速さの入射・出射速度と,恒星系への変換に加える惑星速度を示す. 惑星系で同じ速さの入射・出射速度と,恒星系への変換に加える惑星速度を示す.
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考え方 惑星系では入射と出射の速さは等しいが,恒星系へ戻すと惑星の速度との内積が変わる.両端では惑星のポテンシャルを同じ0の極限として比べる.

  1. 恒星系の速度は v=V+u.したがって Δε=(|V+uout|2−|V+uin|2)/2=V⋅(uout−uin)=Vusin⁡δ.

  2. 最大は δ=π/2 で Δεmax=Vu.出射速度は (V+u,0),入射の速さは V2+u2 である.探査機が得たエネルギーは惑星の公転のエネルギーに由来し,有限の探査機質量を考えれば惑星がごくわずかに減速する.惑星速度一定という近似は,その微小変化を無視したものである.実際に可能な偏向角には惑星半径などの制限があり,この最大値は問題で指定した理想的な範囲内の結論である.

演習 4

東京大 1991 後期(改題) ★★★★☆

半径 R,質量 Mc の小惑星を,母船と子機が一体となって半径 r0=λR,λ>1 の円軌道で回っています.全質量を M,子機の質量を αM,0<α<1 とします.子機を接線前方へ放出し,放出直後の子機と母船の相対速度を w>0 とします.放出は瞬間的で,互いの引力は無視します.円軌道速度を v0,s=w/v0 と書きます.

  1. v0 と,放出直後の両機の速度を求めてください.

  2. 子機が脱出するための s の下限を求めてください.

  3. 母船が逆行せず,小惑星表面にも接しない条件を (α,s) 平面の領域として表してください.この条件と(2)が両立する α の範囲を示してください.

  4. λ=2.00,α=0.200,R=5.00×105m,GMc=1.00×1011m3s−2 で,最小脱出放出時の w と母船の近点高度を求めてください.

円軌道上の放出点で接線方向へ分かれる母船と子機.横軸α,縦軸sの空の座標枠も添え,安全領域を記入できるようにする. 円軌道上の放出点で接線方向へ分かれる母船と子機.横軸α,縦軸sの空の座標枠も添え,安全領域を記入できるようにする.
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考え方 放出の短い間は2機の運動量を保存させる.その後は各々の軌道エネルギーと角運動量を使う.全質量 M と中心天体の質量 Mc を区別する.

  1. 円運動より v0=GMc/r0.子機と母船の速度を vs,vb とすれば αvs+(1−α)vb=v0,vs−vb=w.したがって

vs=v0[1+(1−α)s],vb=v0(1−αs).
  1. 子機の単位質量当たりのエネルギーは vs2/2−GMc/r0.これが0以上なら脱出するので s≥(2−1)/(1−α).等号は無限遠で速さが0となる放物線である.母船の反跳があるため,子機だけを固定台から打ち出す計算とは異なる.

  2. β=vb/v0=1−αs とおく.逆行しない枝 0<β<1 では放出点が遠点である.近点を rp,近点速度を vp とすると,r0βv0=rpvp と

β2v022−GMcr0=vp22−GMcrp

を連立し,放出点とは異なる根を取って rp/r0=β2/(2−β2) を得る.表面に接しない条件 rp>R は β>c,c=2/(λ+1) である.求める領域は

2−11−α≤s<1−cα.

横軸 α,縦軸 s に,下側の曲線を実線,上側を境界を含まない破線で描き,その間を塗る.両曲線が交わるより左側に限られ,

0<α<1−c2−c

が両立条件である.接触を許す模型なら上側と質量比の境界も含むが,本問では除く.

  1. v0=316ms−1,c=0.816497…,質量比の上限は 0.307007… なので可能である.smin=0.517767…,w=164ms−1,β=0.896447….rp=6.72×105m より高度は 1.72×105m となる.s→0 では rp→r0,λ→1 では安全な放出余地が消えるという極限も合う.

演習 5

東京大 2001 後期(改題) ★★★★☆

自転しない球形天体の半径は R=1.00×106m,重力定数と質量の積は GM=8.00×1011m3s−2 です.質量 m=300kg の探査機を表面から鉛直に打ち出し,中心距離 r0=2.00×106m で静止した瞬間に接線方向へ加速して円軌道へ入れます.噴射燃料の質量はここでは無視します.その後,進行方向と逆向きに速さ u=200ms−1 で来た岩石を中心で捕獲しました.捕獲後も順行し,軌道の近点距離は b=1.50×106m と測定されました.

  1. 最初の打上げ速度と円軌道速度 v0 を求めてください.

  2. 捕獲直後の速さ V と,近点での速さ W を求め,W=(2v02−V2)/V を示してください.

  3. 岩石の質量を逆算し,捕獲で熱や変形に変わったエネルギーも求めてください.

  4. 船内で岩石をばねにつけて質量を確かめる方法と,主な誤差要因を説明してください.

円軌道上のPに逆向きから近づく岩石と,捕獲後の遠点P・近点Q.添図に岩石とばねを描く. 円軌道上のPに逆向きから近づく岩石と,捕獲後の遠点P・近点Q.添図に岩石とばねを描く.
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考え方 打上げ,短い捕獲,捕獲後の周回は別の過程である.捕獲で力学的エネルギーは保存しないが,衝突時間中の運動量は保存する.

  1. 鉛直上昇のエネルギー保存から vlaunch=2GM(1/R−1/r0)=894ms−1.最高点では速度0であり,接線方向へ v0=GM/r0=632ms−1 を与える.

  2. 逆向きの岩石の捕獲で速さが下がるため,Pが遠点となる.r0V=bW と,単位質量当たりのエネルギー保存

V22−GMr0=W22−GMb

を使う.b=r0V/W を代入して整理すると (W−V)[W+V−2v02/V]=0.今回は円ではないため W≠V であり,指定された式が得られる.また

V=2GMbr0(r0+b)=586ms−1,W=r0bV=781ms−1.

ここで左辺は近点速度 W であり,捕獲前の円軌道速度とは違う.

  1. 岩石の質量を md とすれば mv0−mdu=(m+md)V.よって

md=mv0−Vu+V=17.9kg.

捕獲前後で位置エネルギーは変わらない.相対運動の運動エネルギーが失われるので,Q=12mmdm+md(v0+u)2=5.86×106J.これは重心運動と内部運動の分解を使った結果でもある.b→r0 なら V→v0,推定岩石質量も0へ近づく.

  1. 校正済みのばね定数 k のばねに岩石をつけ,小振幅で振動させて周期 Ts を測る.船体を十分重い固定端とみなせれば md=k(Ts/2π)2 で,重さを量る必要はない.支持側の質量が無視できなければ測れるのは換算質量なので補正する.ばね自体の有効質量,ばね定数の校正,周期の読取り,空気抵抗,船体の振動が主な誤差となる.軌道の潮汐の影響を無視できるほど短い周期の装置を選ぶ.

演習 6

オリジナル ★★★★☆

半径 R=1.00×103m,密度 ρ=3.00×103kgm−3 の同じ小天体が,数密度 n=1.00×10−18m−3 でまばらに分布しています.衝突に至るまで変形せず,互いに接触したら衝突と数えます.各対の十分遠方での相対速度を u とし,他の天体からの引力は無視します.

  1. 遠方での相対軌道のずれを b とし,接触できる最大値 bmax を2体問題から求めてください.

  2. 1個に注目した衝突率が nπbmax2u となる理由を説明し,平均待ち時間を u=1.00ms−1 と u=10.0ms−1 で求めてください.

相対軌道の遠方のずれbと,接触時の中心間距離2R. 相対軌道の遠方のずれbと,接触時の中心間距離2R.
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考え方 重力が軌道を曲げるため,衝突断面積は幾何学的な面積より大きくなる.各天体の質量を m=4πρR3/3 とする.

  1. 換算質量は m/2.すれすれ接触時の相対速さを vc とすると,エネルギー保存から vc2=u2+2Gm/R,角運動量保存から bmaxu=2Rvc.したがって

σ=πbmax2=4πR2(1+2GmRu2).

u が大きければ 4πR2,小さければ σ∝u−2 である.

  1. 時間 Δt に相対運動が掃く体積は σuΔt なので,そこにある相手の平均個数は nσuΔt.遭遇が独立で率が一定という模型では平均待ち時間は τ=1/(nσu) となる.全体の対の数を数えるのではないので,ここに 1/2 は付けない.m=1.26×1013kg,2Gm/R=1.68m2s−2 より,低速の場合 σ=3.36×107m2,τ=2.97×1010s.高速の場合 σ=1.28×107m2,τ=7.83×109s.nσu の単位は s−1 である.低速極限の増大は孤立した2体近似の範囲での結果である.

演習 7

オリジナル ★★★★☆

半径 r0=1.00×107m,GM=1.00×1014m3s−2 の同じ円軌道をA,Bが順行しています.初めにBはAより ϕ=0.100rad 前方にいます.Aだけが接線方向に2回噴射し,一時的な楕円軌道を整数 k 周した後,最初の噴射位置で元の円軌道に復帰してBと同じ位置・速度になります.天体半径は 2.00×106m.1回の速度変更の上限は 10.0ms−1 です.

  1. Bが k 周に少し足りない角度を進む間に会う「内側の楕円」の周期と長半径を求めてください.

  2. Aが1周だけ余計に遅れる「外側の楕円」では,Bが k+1 周に少し足りない角度を進んで会います.その周期と長半径を求めてください.

  3. 各計画で上限を守る最小の整数 k と会合時間を求め,比較してください.

同一円上のAと前方のB,位相差φ,Aの位置における接線方向の噴射. 同一円上のAと前方のB,位相差φ,Aの位置における接線方向の噴射.
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考え方 位置だけでなく周期を合わせる.最後の逆向き噴射で速度も円軌道の値へ戻す.T0=2πr03/(GM),v0=GM/r0,q=ϕ/(2π) とする.

  1. Bの位相条件 ϕ+2πkT−/T0=2πk より T−/T0=1−q/k,a−/r0=(1−q/k)2/3.最初に減速すると噴射点が遠点となる.

  2. 同様に ϕ+2πkT+/T0=2π(k+1) より T+/T0=1+(1−q)/k,a+/r0=[1+(1−q)/k]2/3.こちらは最初に加速し,噴射点が近点となる.

  3. 噴射点速度は v±/v0=2−r0/a± なので,各噴射量は Δv±=|v±−v0|.帰還時の速さも同じで,2回の噴射量の大きさは等しい.内側は k=1 で 17.0ms−1 と上限を超え,k=2 なら 8.46ms−1 で足りる.会合時間は (2−q)T0=3.94×104s.近点は 2a−−r0=9.89×106m で衝突しない.

外側では k=102 の 10.1ms−1 は丸め前には 10.072… で不可,k=103 の 9.98ms−1 が最初に可能となる.会合時間は (104−q)T0=2.07×106s.どちらも k を増すほど噴射量は単調に減るので,直前の整数との比較で最小性を確かめられる.この2計画では内側が大幅に早い.ϕ→0 なら内側計画の噴射量は0に近づき,位相を詰める必要がなくなる.

演習 8

オリジナル ★★★★☆

中心天体の表面直上,中心距離 r=4.00×105m を一定に保って,ロケットが静止状態から接線方向に加速します.この位置の重力加速度は g=0.250ms−2 です.排気は機体に対して速さ u=1.00×103ms−1,後方水平線から内向きに角 ϕ,0<ϕ<π/2 をなします.したがって推力は前方・外向きです.燃料は必要なだけ積めるとし,質量を m(t),初期質量を m0 とします.

  1. 推力の大きさ F と速度の微分方程式を求めてください.

  2. 円軌道速度 vc=gr への到達時間と,速度 v までに残る質量の割合を求めてください.積分 ∫0zdx/(1−x2)=12ln⁡[(1+z)/(1−z)] を使えます.

  3. ϕ=0.200rad のとき,v=0.990vc までの時間と残存質量割合を求めてください.乗員が受ける座席からの力を乗員質量で割った荷重加速度の最大値と,それを 1.00ms−2 以下にする角度条件も求めてください.

一定半径を進むロケット,前方外向きの推力と後方内向きの排気,角φ. 一定半径を進むロケット,前方外向きの推力と後方内向きの排気,角φ.
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考え方 半径一定でも動径加速度は0ではなく,内向きに v2/r ある.動径方向の式で推力を決め,接線方向の式で加速を求める.

  1. mg−Fsin⁡ϕ=mv2/r,mv˙=Fcos⁡ϕ なので

Fm=g−v2/rsin⁡ϕ,v˙=gcot⁡ϕ(1−v2vc2).

F=−um˙ とも表せる.

  1. 変数分離して

t=vctan⁡ϕ2gln⁡1+v/vc1−v/vc.

v→vc では対数が発散するため,厳密な到達には無限の時間がかかる.一方,mdv=−ucos⁡ϕdm より m/m0=exp⁡[−v/(ucos⁡ϕ)].したがって

v(t)=vcexp⁡(2t/τ)−1exp⁡(2t/τ)+1,m(t)=m0exp⁡[−v(t)ucos⁡ϕ],τ=vctan⁡ϕg.

時間は発散しても,漸近的な残存質量割合は正である.

  1. vc=316ms−1,所要時間は 679s,残存割合は 0.727.荷重加速度は重力を除いた加速度 F/m であり,始動時に最大の g/sin⁡ϕ=1.26ms−2 となる.上限条件は sin⁡ϕ≥0.250,すなわち ϕ≥0.253rad.ϕ→0 では必要荷重が発散し,v→vc では推力が0になる.vc/g が時間,v/u が無次元という次元も合う.

演習 9

オリジナル ★★★★☆

質量 m=100kg の衛星が,GM=4.00×1014m3s−2 の天体を半径 r0=8.00×106m の円軌道で回っています.質量 md=0.0200kg の粒が,半径内向きに速さ u=2.00×104ms−1 で中心に衝突して付着しました.衛星の自転は生じません.ϵ=md/m,v0=GM/r0,q=u/v0 とします.

  1. 衝突後の速度の接線成分と動径成分を求めてください.

  2. 束縛軌道について遠点と近点の差を厳密に求め,ϵ の一次近似を導いてください.q は固定して展開します.

  3. 数値を比較してください.天体の半径は 6.00×106m とし,衝突後の周回軌道は天体を横切らないものとします.

円軌道の衛星に半径内向きの粒が付着する直前の速度ベクトル. 円軌道の衛星に半径内向きの粒が付着する直前の速度ベクトル.
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考え方 衝突点は新軌道の近点でも遠点でもない.半径方向の速度が生まれるため,エネルギーと角運動量から軌道全体を復元する.

  1. 運動量の成分保存より vt=v0/(1+ϵ),vr=−ϵu/(1+ϵ).

  2. A=vt/v0=1/(1+ϵ),B=vr/v0=−ϵq/(1+ϵ),D=2−A2−B2 とおく.エネルギーは −Dv02/2 なので D>0 が束縛条件で,a=r0/D.単位質量当たりの角運動量は h=r0v0A.転回点では動径速度0だから,ε=h2/(2r2)−GM/r を解くと

e=1−DA2=(1−A2)2+A2B2,ra−rp=2r0D1−DA2.

1−A2≈2ϵ,B≈−ϵq より e≈ϵ4+q2,したがって ra−rp≈2r0ϵ4+q2.動径速度だけでなく,付着に伴う接線速度の低下も同じ一次の寄与をもつ.

  1. ϵ=2.00×10−4,q=2.83.厳密式は 1.10766×104m,一次式は 1.10851×104m で,一次式が約0.077 %大きい.比較用に桁を多く残したが,入力の精度ではどちらも 1.11×104m である.近点は約 7.991×106m で天体の外にある.ϵ→0 で差は0となり,u=0 でも接線速度低下による楕円化は残る.

演習 10

オリジナル ★★★★☆

半径 R,質量 Mc の小天体のまわりを,発射台と子機が半径 r0=λR の円軌道で回っています.放出前の円軌道速度を v0,全質量に占める子機の割合を α とします.子機を前方へ,相対速度 sv0 で放出します.発射台の放出後の速度比 β=1−αs は 0<β<1 とします.

  1. 発射台が表面に到達する条件を求めてください.

  2. 到達するときの速度と,局所水平面に対して下向きになす角 γ を求めてください.

  3. λ=2.00,α=1/3,s=1.00,R=5.00×105m,GMc=1.00×1011m3s−2 で計算し,子機割合を α=1/6 に変えると衝突するかを比較してください.

発射台の放出点と表面到達点,局所水平線から下向きに測る入射角γ.軌道は模式的に描く. 発射台の放出点と表面到達点,局所水平線から下向きに測る入射角γ.軌道は模式的に描く.
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考え方 エネルギーで速さ全体を,角運動量で接線成分を求める.両者の比から入射角が決まる.

  1. 放出点が遠点で,エネルギーと角運動量から近点は rp=r0β2/(2−β2).したがって rp≤R,すなわち β2≤2/(λ+1) が表面到達の条件である.等号は接するだけで,真に内向きに衝突する条件は不等号を厳しくしたものとなる.

  2. 表面速度を vR とすると

vR=v0β2+2λ−2,vtR=λβv0,cos⁡γ=λββ2+2λ−2.

動径成分は衝突する枝で vrR=−vR2−vtR2.到達条件はこの平方根が実数である条件とも一致する.

  1. β=2/3 では rp/R=4/7<1 で衝突する.v0=316ms−1,vR=494ms−1,γ=31.5∘.α=1/6 なら β=5/6,rp/R=50/47>1 となり衝突しない.後者に入射角の式だけを代入しても実在する角は得られない.境界では γ=0,β→0 ならほぼ鉛直に落ち,γ→90∘ となる.

演習 11

オリジナル ★★★★☆

水平な長い円柱状の坑道が,地表の振り子時計の真下を通っています.坑道半径は a=4.00m,軸の深さは h=20.0m,除去した岩石の密度は ρ=2.40×103kgm−3 です.掘削前の重力加速度を g=9.80ms−2 とし,地表の変形を無視します.坑道は無限に長いと近似します.

  1. 線密度 Λ の無限直線から距離 h の点の重力を,軸方向の座標 x に関する積分で導いてください.断面内の線を重ね合わせると,一様円柱の外部重力は中心軸に Λ=πa2ρ を集めた場合と等しくなる結果を使えます.

  2. 掘削による周期の相対変化を求めてください.

  3. 掘削前に正しく動いていた時計が,実時間 86400s の間に何秒進むか,または遅れるかを評価してください.

地表の振り子と深さhの坑道断面,半径a.添図で軸方向の微小線要素と距離を示す. 地表の振り子と深さhの坑道断面,半径a.添図で軸方向の微小線要素と距離を示す.
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考え方 穴の重力を新たに加えるのではなく,取り除いた岩石が以前に及ぼしていた引力を差し引く.

  1. 対称な軸方向成分は相殺され,線へ向かう成分は

gline=GΛ∫−∞∞hdx(x2+h2)3/2=GΛh[xx2+h2]−∞∞=2GΛh.

与えられた円柱外部の関係を使うと,失われた下向き重力は Δg=2πGρa2/h=8.05×10−7ms−2.したがって現在の重力は g−Δg である.Gρa2/h の単位は加速度になる.

  1. 振り子の長さが同じなら T′/T=g/(g−Δg).Δg/g が小さいので (T′−T)/T≈Δg/(2g)=4.11×10−8.周期は長くなる.

  2. 実時間 t に時計が示す時間は tT/T′ だから,遅れは t(1−T/T′)≈tΔg/(2g)=3.55×10−3s.1日に約3.55ミリ秒遅れる.a→0 や h→∞ で影響が消える.有限長の坑道なら端の効果を考慮する必要があり,この数値は無限円柱模型での評価である.

演習 12

オリジナル ★★★★☆

動かない天体(質量 M,半径 R)へ,小天体が十分遠方から速さ v∞>0 で近づく.重力がなければ通る直線と中心Oとの距離 b>0 を衝突径数という.入射速度と出射速度の方向がなす角を偏向角 δ(0<δ<π) とする.小天体は質点とみなし,接触しない限り外部の重力は −GMm/r2 である.

  1. 双曲線軌道の離心率 e,近点距離 rp,偏向角 δ を b,v∞,GM で表せ.

  2. GM=8.0×1012m3s−2,v∞=2.0×103ms−1,b=2.0×106m,R=5.0×105m のとき,偏向角と近点での速さを求め,天体へ衝突しないことを確かめよ.

遠方の入射直線から中心Oまでの距離bと,入射方向と出射方向の間の角δを示す.縮尺は模式的. 遠方の入射直線から中心Oまでの距離bと,入射方向と出射方向の間の角δを示す.縮尺は模式的.
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考え方 遠方でエネルギーと角運動量を決め,軌道の遠方の向きを求める.位置ベクトルの方向と入射速度の方向は逆である.

  1. E=mv∞2/2,|L|=mbv∞,ℓ=b2v∞2/(GM).軌道の式から e=1+b2v∞4/(GM)2>1,rp=ℓ/(1+e).a∞=GM/v∞2 とおけば rp=a∞[1+(b/a∞)2−1] である.近点方向から測る角を ψ とすれば,遠方では cos⁡ψ∞=−1/e.入射速度は遠方の位置ベクトルと反対を向くので,δ=2ψ∞−π,sin⁡(δ/2)=1/e.よって

δ=2arctan⁡GMbv∞2.
  1. a∞=2.0×106m,e=2,δ=90∘.rp=2.0×106(2−1)≈8.3×105m>R なので衝突しない.エネルギー保存より vp=v∞2+2GM/rp≈4.8×103ms−1.rpvp=bv∞ でも確かめられる.GM/(bv∞2) は無次元で,b→∞ では δ→0.小さい b での δ→π は,中心天体の表面に当たらないという条件内でのみ意味をもつ.

演習 13

オリジナル ★★★★☆

質量 m の粒子に,原点Oへ向く大きさ κ/r の力が働く.κ>0 の単位は Nm,角運動量は L>0.円軌道の半径を r0 とし,そこからごくわずかにずれた軌道を考える.

  1. r0 と,u=1/r=u0+w,u0=1/r0 としたときの w の軌道の方程式を一次近似で求めよ.

  2. 連続する2つの近点の間の角 Δθ を求め,近点の向きが1動径周期ごとに進むか戻るか答えよ.ずれの角を度で計算せよ.

逆二乗でない中心力の近点を示す模式図. 逆二乗でない中心力の近点を示す模式図.
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考え方 軌道の形を角の関数として調べる.w が最大になる点が,r が最小の近点である.

  1. 円運動の式 L2/(mr03)=κ/r0 より r0=L/mκ.軌道の式へ F=−κu を入れると u″+u=mκ/(L2u)(プライムは θ 微分).mκ/L2=u02 であり,u02/(u0+w)≈u0−w だから w″+2w=0.よって w=Acos⁡[2(θ−θ0)].

  2. 連続する最大値の間は Δθ=2π/2.1周の 2π との差は 2π(1/2−1)≈−1.8403rad≈−105.4∘ で,近点は戻る向きに移る.ここで比較しているのは1動径周期ごとの近点で,1周する間の振動数は 2 である.一次近似の 2 は有理数でないので,この近似の軌道は有限回の動径周期で閉じない.有限の振幅まで厳密に同じずれとは主張していない.L/mκ は長さの次元で,角の周期は無次元になる.

演習 14

オリジナル ★★★★★

半径 r の円軌道から半径 16r の同一平面・同方向の円軌道へ移る.次の2方式だけを比較する.Aは通常のホーマン遷移,Bは共通の遠点 b≥16r をもつ2つの楕円をつなぐ3回噴射の遷移である.Bでは r から b へ上がり,そこで近点を 16r に上げ,戻った近点で円軌道に合わせる.噴射は接線方向に瞬間的に行う.同じ一定排気速度で質量比が exp⁡(∑|Δv|/u) となる理想ロケットとする.

  1. Aの総速度増分を vc=GM/r で表せ.

  2. Bの総速度増分を x=b/r の関数で表し,x→∞ の極限をAと比較せよ.有限時間の燃料最小解まで証明したことになるか.

Aは近点rと遠点16rの楕円.Bは同じ焦点と共通遠点bをもつ2楕円.各パネル内では同じ縮尺で描く. Aは近点rと遠点16rの楕円.Bは同じ焦点と共通遠点bをもつ2楕円.各パネル内では同じ縮尺で描く.
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考え方 同じ排気速度では総速度増分が小さいほど燃料の割合も小さい.ただし許した軌道の種類と飛行時間の制約を明示しなければ,大域的な最小燃料とは言えない.

  1. 第1の楕円の長半径は 17r/2.近点速度は vc32/17,遠点速度はその16分の1,外円速度は vc/4 である.よって

ΔvAvc=32/17−1+14−1/136≈0.5362

となる.

  1. 最初の噴射は vc(2x/(1+x)−1).共通遠点で,第1楕円の速度は vc2/[x(1+x)],第2楕円では vc32/[x(x+16)] であり,差だけ加速する.第2楕円の近点速度は vcx/[8(x+16)] で,最後はこれを vc/4 に減速する.したがって

ΔvBvc=2x1+x−1+32x(x+16)−2x(1+x)+x8(x+16)−14

である.極限は (2−1)(1+1/4)≈0.5178 でAより小さい.連続性により十分大きい有限の b でもAより燃料を減らせるが,極限では飛行時間が発散する.ここでは有限時間の最適な b や,任意の噴射方式を含む大域的な最小値は証明していない.ホーマン遷移を条件なしに最小燃料と呼べないことが結論である.

演習 15

オリジナル ★★★★★

質量 M と μM(0<μ<1) の2天体が,距離 D を保って円運動する.ここで μ は1より十分小さいとする.軽い天体から重い天体側へ距離 s の点に試験粒子を置き,2天体と同じ角速度で回転させたい.

  1. 重心を原点にした回転座標で,つり合いの正確な式を書け.

  2. s/D と μ が小さいとして,主要項から s を求めよ.この点は単に2つの重力が打ち消す点か.

重い天体と軽い天体の間に試験粒子Pがあり,軽い天体からの距離をsとする. 重い天体と軽い天体の間に試験粒子Pがあり,軽い天体からの距離をsとする.
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考え方 ラグランジュ点では重力が0になるのではなく,共通の円運動に必要な加速度が得られる.回転系では遠心加速度を含める.

  1. 重い天体は x=−μD/(1+μ),軽い天体は x=D/(1+μ) にあり,ω2=GM(1+μ)/D3.粒子の位置は x=D/(1+μ)−s なので,右向きを正として

−GM(D−s)2+GμMs2+ω2(D1+μ−s)=0

となる.静止している回転系ではコリオリ力は0である.

  1. 第1項を −GM/D2−2GMs/D3 まで展開すると,定数項は遠心項の GM/D2 と消える.残りは GμM/s2−GM(3+μ)s/D3≈0.主要項では s≈D(μ/3)1/3.この結果から s/D が小さいという仮定も確かめられる.重力の単純なつり合いなら s は概ね Dμ となり,別の点である.また,この式はつり合い位置の計算であって,そこからずれた軌道の安定性の証明ではない.

演習 16

オリジナル ★★★★★

半径 R の球対称な天体の密度は ρ(r)=ρ0(1−r/R)(0≤r≤R) である.

  1. 全質量 M と内部の重力加速度 g(r) を求め,g(r) が最大となる半径を求めよ.

  2. 無限遠基準の内部ポテンシャル Φ(r) を求め,中心を通る細いトンネルで地表から静かに放した物体の中心での速さを求めよ.

密度ρ/ρ₀はr/Rに対して1から0へ直線的に減る.重力の分布は解答として求める. 密度ρ/ρ₀はr/Rに対して1から0へ直線的に減る.重力の分布は解答として求める.
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考え方 まず密度を球殻ごとに積分して内包質量を求める.ポテンシャルは表面の外部解につながるように積分定数を決める.

  1. M(r)=4πρ0∫0r(1−s/R)s2ds=4πρ0(r3/3−r4/(4R)).よって M=πρ0R3/3,g(r)=4πGρ0(r/3−r2/(4R)).微分して g′(r)=4πGρ0(1/3−r/(2R))=0 より最大は r=2R/3.その値は 4πGρ0R/9,表面値 GM/R2=πGρ0R/3 の 4/3 倍である.

  2. dΦdr=g(r) と Φ(R)=−GM/R=−πGρ0R2/3 を用いる.

Φ(r)=Φ(R)−∫rRg(s)ds=−2πGρ0R23+2πGρ0r23−πGρ0r33R

となり,表面値と表面での傾きが外部の −GM/r に一致する.エネルギー保存より vO2/2=Φ(R)−Φ(0)=πGρ0R2/3=GM/R だから vO=2GM/R.内部の重力は r に比例するだけではないため,全振幅の運動を単振動として周期を計算することはできない.

演習 17

オリジナル ★★★★★

質量 m の粒子に,F(r)=−κ/r2−η/r3(外向きが正,κ,η>0)の中心力が働く.角運動量は L>0.q=1−mη/L2 とする.

  1. q>0 の場合の軌道を u=1/r で解き,束縛された軌道の連続する近点の角度差を求めよ.積分定数を使ってよい.

  2. q=0.96 のとき,1動径周期ごとの近点の進む角を度で求めよ.

  3. 無限遠を基準とする実効ポテンシャルを求め,q≤0 で安定な円軌道がない理由を説明せよ.

逆二乗でない中心力の近点を示す模式図. 逆二乗でない中心力の近点を示す模式図.
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考え方 距離の3乗に反比例する力の項は,u の軌道方程式で u に比例する項になる.小振幅近似を使わず解ける.

  1. −(L2/m)u2(u″+u)=−κu2−ηu3 より u″+qu=mκ/L2.q>0 なら

u=mκqL2{1+ecos⁡[q(θ−θ0)]}.

束縛された非円軌道は 0<e<1.連続する近点の角度差は Δθ=2π/q,1周からのずれは 2π(1/q−1)>0 で,運動と同じ向きに進む.e=0 では円となり,近点の向き自体を定義しない.

  1. 360∘(1/0.96−1)≈7.4∘.η→0 では q→1,ずれが消え,逆二乗の力の楕円軌道へ戻る.

  2. U(r)=−κ/r−η/(2r2) だから Ueff=qL2/(2mr2)−κ/r.q>0 では r0=qL2/(mκ) に極小がある.q≤0 なら Ueff′=−qL2/(mr3)+κ/r2>0 で停留点がなく,r→0 で Ueff→−∞.遠心項が引力の 1/r2 の位置エネルギーを上回れず,安定な円軌道を作れない.η と L2/m はともに kgm4s−2 の次元をもち,q は無次元である.原点付近の特異性まで現実の物体を表すとは限らない.