問いしるべ
問いから始める物理 確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

第30章の章末問題

著者:柚木芹香

振幅の規則を,スピンの測定,時間発展,同種粒子の占有へ結びつけましょう.途中で記録や選別を行う場合には,どの集団に対する確率かを確かめてください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

スピン1/2のビームAは,すべての粒子を |ψ⟩=(|+⟩+i|−⟩)/2 に準備したものです.ビームBは,半数を |+⟩,半数を |−⟩ に別々に準備して混ぜたものです.|+⟩,|−⟩ は z 方向の基底であり,y 方向の正の状態を |+y⟩=(|+⟩+i|−⟩)/2 とします.

  1. 各ビームを z 方向に分析したときの2出口の確率を求めよ.この測定だけで準備法を区別できるか.

  2. y 方向の正の出口の確率を求めよ.Aの2成分を両方とも −1 倍する場合と,|−⟩ の成分だけを −1 倍する場合も比較せよ.

Aは(|+⟩+i|−⟩)/√2への重ね合わせの準備,Bは|+⟩と|−⟩を半数ずつ別々に準備した混合である.各ビームでzまたはyを分析軸に選ぶ.出口には状態名だけを示す. Aは(|+⟩+i|−⟩)/√2への重ね合わせの準備,Bは|+⟩と|−⟩を半数ずつ別々に準備した混合である.各ビームでzまたはyを分析軸に選ぶ.出口には状態名だけを示す.
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考え方
重ね合わせでは射影した振幅を足し,混合では各準備法の確率を割合で重み付けする.

  1. Aでは ⟨+|ψ⟩=1/2,⟨−|ψ⟩=i/2 なので両出口とも 1/2.Bでも各準備の半数ずつが対応する出口へ行き,両方 1/2 である.この測定だけでは区別できない.

  2. Aでは ⟨+y|ψ⟩=[1+(−i)i]/2=1 より確率は1.Bでは |⟨+y|+⟩|2=|⟨+y|−⟩|2=1/2 だから,平均も 1/2 である.A全体を −1 倍すると射影振幅も −1 倍となり,確率は1のまま.第2成分だけを反転すると ⟨+y|ψ′⟩=[1+(−i)(−i)]/2=0 となる.直交する2出口の確率の和は常に1であり,全体の位相と相対位相の違いを確かめられる.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

経路 |1⟩,|2⟩ の直交する2本を持つ干渉計に,粒子を1個ずつ送ります.再結合直前の状態は

|ψ⟩=|1⟩|+⟩+eiϕ|2⟩|−⟩2

です.スピン以外に経路の記録はありません.再結合器は,経路1を (|D⟩+|E⟩)/2,経路2を (|D⟩−|E⟩)/2 に変えます.各出口で |+θ⟩=cos⁡(θ/2)|+⟩+sin⁡(θ/2)|−⟩ と,これに直交する |−θ⟩=−sin⁡(θ/2)|+⟩+cos⁡(θ/2)|−⟩ を分析します.0≤θ≤π とします.

  1. スピンを区別せずに数えた PD,PE を求めよ.

  2. D かつ +θ の同時確率と,+θ の粒子だけを選んだときの D の確率を求めよ.後者の最大値と最小値から,縞の鮮明度 V=(Pmax−Pmin)/(Pmax+Pmin) を求めよ.反対のスピンの組も合わせると縞が消える理由を述べよ.

経路1に|+⟩,経路2に|−⟩が付いた干渉計を示す.第2経路に位相φを挿入し,再結合後のD,Eをそれぞれ角θのスピン分析器へ送る. 経路1に|+⟩,経路2に|−⟩が付いた干渉計を示す.第2経路に位相φを挿入し,再結合後のD,Eをそれぞれ角θのスピン分析器へ送る.
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考え方
同じ出口でも直交するスピンの確率は足す.スピンを別の基底で選別すると,各選別結果には両経路の振幅が寄与する.

  1. D の規格化前のスピン状態は (|+⟩+eiϕ|−⟩)/2,E は (|+⟩−eiϕ|−⟩)/2.したがって PD=PE=1/4+1/4=1/2 で,位相に依存しない.

  2. c=cos⁡(θ/2),s=sin⁡(θ/2) とおく.同時振幅は (c+seiϕ)/2 だから

PD,+θ=1+sin⁡θcos⁡ϕ4,PE,+θ=1−sin⁡θcos⁡ϕ4

となる.和から P+θ=1/2 なので,条件付き確率は PD∣+θ=(1+sin⁡θcos⁡ϕ)/2.最大・最小は (1±sin⁡θ)/2,よって V=sin⁡θ.一方,D,−θ の振幅は (−s+ceiϕ)/2,確率は (1−sin⁡θcos⁡ϕ)/4 である.両スピンを足すと干渉項が相殺する.θ=π/2 で選別した組の鮮明度は1になるが,全粒子の PD=1/2 は変わらず,確率保存と整合する.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

|+x⟩=(|+⟩+|−⟩)/2 のビームを,エネルギー E+=−Δ/2,E−=Δ/2 の領域に入れます.Δ は粒子ごとには一定ですが,ビーム内では未知の分布を持ちます.時間 t1 の後に,測定も選別もせず,X|+⟩=|−⟩,X|−⟩=|+⟩ という瞬間的な操作を行います.同じ領域でさらに時間 t2 を過ごしてから,x 方向を分析します.

  1. 1粒子の最終状態と P+x を求めよ.すべての粒子で P+x=1 とする時間の条件を求めよ.

  2. 操作前と操作後の準位差がそれぞれ Δ1,Δ2 で,t1=t2=τ の場合の P+x を求めよ.2つの操作区間の間にエネルギーの共通の定数が変わるだけなら,結果は変わるか.

x方向の正の状態の準備,自由発展時間t₁,交換操作X,自由発展時間t₂,x方向の分析を時間順に示す.t₁とt₂の関係や最終状態は示さない. x方向の正の状態の準備,自由発展時間t₁,交換操作X,自由発展時間t₂,x方向の分析を時間順に示す.t₁とt₂の関係や最終状態は示さない.
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考え方
途中で基底を交換すると,初めに高いエネルギーを持った成分が後半では低いエネルギーを持つ.蓄積した相対位相を前後で比較する.

  1. 操作直前は (eiΔt1/(2ℏ)|+⟩+e−iΔt1/(2ℏ)|−⟩)/2.交換後にさらに発展させると

|ψf⟩=eiΔ(t2−t1)/(2ℏ)|+⟩+e−iΔ(t2−t1)/(2ℏ)|−⟩2

だから,P+x=cos2⁡[Δ(t2−t1)/(2ℏ)].未知の分布に対して確実に1とするには t1=t2 とする.このとき粒子間で準位差が異なっていても位相がそろう.

  1. 最終的な相対位相に関係する量は Δ2τ−Δ1τ なので,P+x=cos2⁡[(Δ2−Δ1)τ/(2ℏ)].共通エネルギーの変更は全体の位相しか変えず,確率は変わらない.理想的な交換操作の近似には,操作時間 tp に対して |Δj|tp/ℏ が十分小さいことが必要であり,準位差の時間変動まで常に打ち消せるわけではない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

損失のないスピン分析装置の出口 D を校正します.入力が a|+⟩+b|−⟩ なら,D への振幅は Xa+Yb です.装置は直交する2出口を持ち,|X|2+|Y|2=1 とします.入力状態を変えて次の検出確率を得ました.誤差は無視します.

入力状態

|+⟩

|−⟩

(|+⟩+|−⟩)/2

(|+⟩+i|−⟩)/2

PD

0.360

0.640

0.788

0.116

  1. 全体の位相を選んで X を正の実数とし,X,Y を復元せよ.第3列だけでは何が決まらないか.

  2. 必ず出口 D に来る規格化した入力状態を求めよ.第1,2列の確率だけを使って「入力の +,− を確率で混ぜる」模型を作ると,第3,4列を説明できるか.

4種類の既知入力を切り替えて未知の分析装置へ送る.重ね合わせ入力の負の成分には×1または×iを与える.分析装置の2出口D,Eを示す. 4種類の既知入力を切り替えて未知の分析装置へ送る.重ね合わせ入力の負の成分には×1または×iを与える.分析装置の2出口D,Eを示す.
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考え方
位相をそろえた2つの試験入力は,未知の振幅の積の実部と虚部を別々に測る.

  1. 最初の2列から X=0.600,|Y|=0.800.z=X∗Y とおけば,第3列は PD=|X+Y|2/2=1/2+Re⁡z,第4列は |X+iY|2/2=1/2−Im⁡z である.したがって Re⁡z=0.288,Im⁡z=0.384,Y=z/X=0.480+0.640i.0.4802+0.6402=0.800 と一致する.第3列だけでは虚部の符号が決まらず,互いに複素共役な2つの候補が残る.

  2. |χ⟩=X∗|+⟩+Y∗|−⟩=0.600|+⟩+(0.480−0.640i)|−⟩ とすれば,振幅は XX∗+YY∗=1,確率も1である.確率で混ぜる模型はどちらの試験入力にも (0.360+0.640)/2=0.500 を予測し,表と合わない.復元には入力の相対位相が既知であることが必要であり,復元した状態の規格化も 0.360+0.640=1 で確かめられる.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

直交する2状態 |1⟩,|2⟩ に対し,短い操作の行列を

U=12(1−111)

とします.|1⟩ に U を作用させた後,H=(−Δ/200Δ/2),Δ>0 のもとで時間 T だけ発展させ,さらに |2⟩ の振幅だけを eiϕ 倍します.最後に同じ U を作用させて状態を測ります.途中で記録は残しません.

  1. 最終的な P1,P2 を求め,P2=1 とする ϕ の条件を述べよ.

  2. (1)で P2=1 となる ϕ に固定したまま,発展時間が T+δT にずれた場合,1−P2 の先頭の項を求めよ.最初の U の直後に 1,2 の記録を残す場合には,位相を調整して P2=1 にできるか.

初期状態|1⟩にUを作用させ,時間Tの領域で発展させる.状態2の振幅に位相φを挿入し,同じUをもう一度作用させた後に1,2を測定する. 初期状態|1⟩にUを作用させ,時間Tの領域で発展させる.状態2の振幅に位相φを挿入し,同じUをもう一度作用させた後に1,2を測定する.
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考え方
2つの短い操作の間で相対位相を蓄積する.操作は行列の積,途中の自由発展は各エネルギーの位相で表す.

  1. a=ΔT/(2ℏ) とおく.1回目の出力は (11)/2,位相挿入後は (eiaeiϕe−ia)/2.最後の出力は (eia−eiϕe−iaeia+eiϕe−ia)/2 である.χ=ϕ−ΔT/ℏ とすれば,P1=(1−cos⁡χ)/2,P2=(1+cos⁡χ)/2.ϕ=ΔT/ℏ+2πn,n は整数,とすれば P2=1 になる.

  2. 位相挿入を固定したまま時間がずれると χ=−ΔδT/ℏ になる.cos⁡χ≈1−χ2/2 より 1−P2≈(ΔδT/ℏ)2/4.記録が残る場合,最初の各状態の確率は 1/2,そこから最後に2へ行く確率も 1/2 なので,P2=1/4+1/4=1/2 である.位相では変えられない.小さな時間ずれの近似には |ΔδT|/ℏ が十分小さいことが必要で,厳密な式では P1+P2=1 である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

相互作用を無視した2電子を,左右の局在基底 |L⟩,|R⟩ で表す装置に入れます.軌道の行列は Horb=(E0−A−AE0),A>0 です.一様磁場 B≥0 は軌道に影響せず,スピン |+⟩,|−⟩ のエネルギーをそれぞれ −m0B,+m0B だけ変えます.m0>0 は磁気モーメントの大きさです.各電子の完全な状態は,軌道とスピンの組で指定します.

  1. 4つの1電子状態のエネルギーを求め,2電子の基底状態の占有を B によって場合分けせよ.切り替わる磁場も求めよ.

  2. 全エネルギー U と全磁気モーメント M=−dUdB を求めよ.切り替わりの前後で,左側にある電子数の期待値は変わるか.

左右の局在基底|L⟩,|R⟩の対角成分E₀と結合−Aを示す.共通の一様磁場Bを緑で示し,各局在基底で選べる2つのスピン状態を示す.電子の占有と固有準位の大小は描かない. 左右の局在基底|L⟩,|R⟩の対角成分E₀と結合−Aを示す.共通の一様磁場Bを緑で示し,各局在基底で選べる2つのスピン状態を示す.電子の占有と固有準位の大小は描かない.
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考え方
軌道の固有状態を先に求め,スピンによるずれを加える.排他律は軌道とスピンを合わせた状態に適用する.

  1. 対称軌道 |s⟩=(|L⟩+|R⟩)/2 は E0−A,反対称軌道 |a⟩=(|L⟩−|R⟩)/2 は E0+A である.スピンも含めたエネルギーは Es,+=E0−A−m0B,Es,−=E0−A+m0B,Ea,+=E0+A−m0B,Ea,−=E0+A+m0B.最も低い s,+ に1電子を入れる.第2電子は Es,−−Ea,+=2(m0B−A) の符号から,B<A/m0 では s,−,B>A/m0 では a,+ に入る.Bc=A/m0 で両配置が縮退する.

  2. B<Bc では U=2E0−2A,M=0.B>Bc では U=2E0−2m0B,M=2m0.境界でエネルギーは連続だが微分は一意でなく,縮退状態の準備によって磁気モーメントが変わる.どちらの軌道も左側の確率は 1/2 なので,左側の電子数の期待値は両配置とも1である.同じ軌道に反対スピンを入れることは排他律に反しない.Bc の次元は磁場であり,温度0で相互作用を無視した模型の結論である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

2状態系を H0=(0−A−A0),A>0 の下の定常状態 |s⟩=(|1⟩+|2⟩)/2 に準備します.時刻0に外場を短時間で切り替えて H1=(δ−A−A−δ),δ>0 に変えます.切り替え直後の状態は |s⟩ のままとし,その後は H1 が一定です.平均エネルギーは E―=C∗HC とし,行ベクトルの C∗ は列ベクトル C の複素共役を横に並べたものです.切り替え時の平均の仕事は,前後の平均エネルギーの差で定義します.

  1. D=A2+δ2 とおき,切り替え後のエネルギー測定で −D,+D を得る確率を求めよ.

  2. 外場がする平均の仕事と,新しい最低エネルギーから測った平均の余剰エネルギーを求めよ.δ/A が十分小さいとき,余剰エネルギーと上準位の確率を先頭の次数まで求めよ.

切り替え前の対角成分0,0と切り替え後のδ,−δを並べる.結合はともに−Aである.切り替え直後も準備した|s⟩=(|1⟩+|2⟩)/√2のままであることを示す. 切り替え前の対角成分0,0と切り替え後のδ,−δを並べる.結合はともに−Aである.切り替え直後も準備した|s⟩=(|1⟩+|2⟩)/√2のままであることを示す.
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考え方
急な切り替えは状態を保つが,定常状態の基底は変わる.測定確率は規格化と平均エネルギーから求められる.

  1. 行列式は E2−A2−δ2 だから,新しいエネルギーは ±D.初期列 C=(11)/2 を代入すると H1C=(δ−A−A−δ)/2,したがって E―1=−A である.測定確率を pl,pu とすれば,pl+pu=1,−Dpl+Dpu=−A より

pl=1+A/D2,pu=1−A/D2

となる.一定の H1 の下では各定常状態に位相が付くだけなので,このエネルギー測定の確率は以後も変わらない.

  1. 切り替え前のエネルギーも −A なので,平均の仕事は0.ただし新しい最低エネルギーは −D に下がり,余剰エネルギーは E―1−(−D)=D−A=2Dpu である.x=δ/A とおけば,D=A1+x2≈A+δ2/(2A),A/D≈1−x2/2 だから,余剰エネルギーは δ2/(2A),pu≈δ2/(4A2).近似条件は 1≫δ/A であり,急な切り替えには切り替え時間 ts に対して Dts/ℏ も十分小さいことが必要である.δ→0 で余剰も上準位の確率も0に戻る.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

同じ |1⟩ から出発する分子の半数は Ha=(0−[A+b]−[A+b]0),残りは Hb=(0−[A−b]−[A−b]0) に従います.A>b>0 とし,所属する組は各分子で時間とともに変わりません.組の記録を読まずに,状態2で見つかる確率 P2(t) を全体で測ります.

  1. 各組の振幅を求め,全体の P2(t) を速い振動と遅い因子の積で表せ.振動の振幅が初めて消える時刻と,初めて元の大きさに戻る時刻を求めよ.

  2. A=20b とするとき,(1)の2つの時刻で P2 を求めよ.最初の時刻以後,振動の振幅が永久に0になるという模型と区別する測定を提案せよ.

各分子を|1⟩に準備し,半数ずつを結合−(A+b),−(A−b)の一定環境へ送る.所属する環境は途中で変わらず,全体で共通の状態2の検出を行う. 各分子を|1⟩に準備し,半数ずつを結合−(A+b),−(A−b)の一定環境へ送る.所属する環境は途中で変わらず,全体で共通の状態2の検出を行う.
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考え方
別々に準備された2集団には確率の平均を使う.各集団の中では2つの定常状態の位相が干渉する.

  1. 結合を −G と書けば,方程式は iℏdC1dt=−GC2,iℏdC2dt=−GC1.初期条件 C1(0)=1,C2(0)=0 を満たす解は C1=cos⁡(Gt/ℏ),C2=isin⁡(Gt/ℏ) である.G=A+b,A−b を代入し,2集団を平均すると

P2=sin2⁡[(A+b)t/ℏ]+sin2⁡[(A−b)t/ℏ]2=1−cos⁡(2At/ℏ)cos⁡(2bt/ℏ)2

となる.速い振動の振幅の大きさは |cos⁡(2bt/ℏ)|/2.最初の消失は t0=πℏ/(4b),最初の復元は tr=πℏ/(2b) である.

  1. t0 では遅い因子が0なので P2=1/2.tr では遅い因子が −1,速い因子が cos⁡(20π)=1 なので P2=1 である.tr 付近で計数の時間変化を調べ,振動の復元を確かめれば永久消失の模型を排除できる.所属の違いを読まないことは,各分子の時間発展が失われたことを意味しない.b/A=1/20 が小さいので速い振動と包絡の区別ができるが,求めた確率の式自体はこの小ささを使わず,b→0 で単一の振動に戻る.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

質量 m の粒子を,位置エネルギー Kx2/2,K>0 の機械的な拘束で1次元に閉じ込めます.内部の2状態の行列は H(x)=(αx−A−A−αx),A>0,α>0 です.粒子は移動中も内部の下の定常状態に保たれると仮定します.位置 x の全ポテンシャルは,機械的な位置エネルギーと内部の最低エネルギーの和とします.

  1. 全ポテンシャル U(x) と力を求め,x=0 の安定性が変わる Kc を求めよ.

  2. K<Kc の安定な平衡位置を求めよ.K>Kc における原点のまわりの小振動の角振動数を求め,K=Kc でも復元力が残るか調べよ.1+z=1+z/2−z2/8+⋯ を使ってよい.

機械的な拘束に沿うx軸と原点0を示す.位置xにある質量mの粒子の内部状態の対角成分αx,−αxと一定の結合−Aを示す.機械的な位置エネルギーはKx²/2である. 機械的な拘束に沿うx軸と原点0を示す.位置xにある質量mの粒子の内部状態の対角成分αx,−αxと一定の結合−Aを示す.機械的な位置エネルギーはKx²/2である.
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考え方
行列の固有値を位置の関数として求める.全ポテンシャルの曲率で安定性を決め,曲率が0なら次の項を調べる.

  1. 行列式 E2−A2−α2x2=0 より下のエネルギーは −D(x),D(x)=A2+α2x2.したがって

U=Kx22−D(x),F=−dUdx=−Kx+α2xD(x)

である.原点の曲率は d2Udx2(0)=K−α2/A だから,Kc=α2/A.K>Kc では安定,K<Kc では不安定となる.

  1. 原点以外の停留点では D=α2/K なので,xe=±α2/K2−A2/α2.実数となる条件は K<Kc である.d2Udx2=K−α2/D+α4x2/D3 より,ここでは d2Udx2(xe)=α4xe2/D3>0,よって安定.K>Kc では md2xdt2=−(K−Kc)x と近似でき,ω=(K−Kc)/m.一方,原点の近くで展開すると

U=−A+K−Kc2x2+α48A3x4+⋯

なので,K=Kc では F≈−α4x3/(2A3) という復元力が残る.展開には振幅 a に対して αa/A が十分小さいことが必要であり,K>Kc の線形近似にはさらに α4a2/[2A3(K−Kc)] が十分小さいことが必要になる.内部状態を下の準位に保つ仮定には ℏα|dxdt|/A2 が十分小さいことも必要で,Kc はばね定数の次元を持つ.