問いしるべ
問いから始める物理 確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

確率振幅から組み立てる量子力学(発展)

第30章の発展問題

著者:柚木芹香

2状態系の考え方を,粒子の振動,繰り返す測定,光の増幅,分子の準位へ広げます.与えた模型を解くとともに,近似の条件と測定で確かめられる予測を調べてください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

2種類のニュートリノを,直交する質量の定常状態 |1⟩,|2⟩ の重ね合わせとして扱います.検出される種類の基底を

|a⟩=cos⁡θ|1⟩+sin⁡θ|2⟩,|b⟩=−sin⁡θ|1⟩+cos⁡θ|2⟩

とし,0<θ<π/2 とします.質量は m2>m1 です.時刻0,位置0で |a⟩ を準備し,各成分は同じ全エネルギー E と,pjc=E2−mj2c4 の運動量を持ちます.距離 L の検出器への位相因子は ei(pjL−Et)/ℏ です.E は両静止エネルギーより十分大きく,検出器は質量成分を区別しません.

  1. b を検出する確率を求め,Q=(m22−m12)c4 とおいて超相対論的な近似で表せ.最初の最大となる距離も求めよ.

  2. θ=π/6,E=1.0×106eV,Q=4.0×10−3eV2,ℏc=1.97×10−7eVm のとき,最大確率と最初の最大の距離を評価せよ.

  3. 各成分は長さ σx の波束で,vj=pjc2/E とします.分散による波束の広がりは無視し,飛行時間を L/c と近似します.波束の分離が無視できる条件と,エネルギー幅 δE による位相の幅が無視できる条件を導け.(2)の距離で σx=1.0×10−9m,δE/E=0.020 とすると,それぞれの条件を満たすか.

時刻0,位置0に種類aを準備する.質量成分1,2の初期波束は同じ位置にあり,それぞれの初期長さはσ_xである.2成分を区別しない検出器を距離Lに置く.波束の成分は説明のため上下に分けて示す. 時刻0,位置0に種類aを準備する.質量成分1,2の初期波束は同じ位置にあり,それぞれの初期長さはσ_xである.2成分を区別しない検出器を距離Lに置く.波束の成分は説明のため上下に分けて示す.
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考え方
定常状態の位相を進め,検出の基底へ戻す.振動には,検出時に2つの波束が重なり,相対位相が集団内でそろうことも必要である.

  1. 共通の時間の位相を除いた検出振幅は

⟨b|ψ(L)⟩=sin⁡θcos⁡θ(eip2L/ℏ−eip1L/ℏ)

だから,Pb=sin2⁡(2θ)sin2⁡[(p2−p1)L/(2ℏ)].1−z≈1−z/2 より pj≈E/c−mj2c3/(2E) で,p2−p1≈−Q/(2Ec).よって

Pb≈sin2⁡(2θ)sin2⁡(QL4ℏcE),Lm=2πℏcEQ

となる.共通エネルギーの位相は検出確率から消える.

  1. sin2⁡(π/3)=3/4 だから最大確率は 0.75.Lm=2π×1.97×10−7×1.0×106/(4.0×10−3)m≈3.1×102m である.

  2. vj≈c[1−mj2c4/(2E2)] より,分離距離は d=|v2−v1|L/c≈QL/(2E2).したがって d/σx=QL/(2E2σx) が十分小さいことが必要である.相対位相の大きさを Φ=QL/(2ℏcE) とすれば,|dΦdE|δE=ΦδE/E も十分小さくなければならない.最初の最大では Φ=π なので,位相幅は 0.063.分離は 6.2×10−13m,長さに対する比は 6.2×10−4 で,両方とも小さい.運動量の展開には各 mj2c4/E2 が十分小さいという別の前提が必要であり,質量差だけからこの前提を検証することはできない.Q→0 で振動が消え,位相の引数も無次元である.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

H=(0−A−A0),A>0 の2状態系を |1⟩ から出発させます.全時間を T=πℏ/(2A) に固定し,等間隔で N 回,最後の時刻も含めて状態1か2かを理想的に測定します.測定結果が1なら直後の状態は |1⟩ です.すべての測定で1と判定された履歴だけを採用します.さらに,各測定には状態によらない生存効率 η があり,失われた粒子は戻りません.

  1. 測定しない場合の最終状態と,採用される履歴の入射粒子あたりの確率 SN を求めよ.η=1 で N→∞ とする極限を調べよ.

  2. η=1 とし,途中で2と判定された粒子も捨てずに同じ測定を続ける場合,最後に1と判定される確率を求めよ.これが SN と違う理由を述べよ.

  3. η=1−ϵ,0<ϵ<1 とします.ϵ が十分小さい場合,SN を最大にする N と最大確率を近似的に求めよ.ϵ=0.0025 で近似値を求め,近傍の整数を厳密な式で比較せよ.ln⁡(1−x)≈−x,ln⁡cos⁡x≈−x2/2 を使ってよい.

時間0からTまでにN回の測定を等間隔で行い,最後の測定もTに含める.各測定に生存効率ηを付す.すべて状態1となる採用履歴を実線,途中で状態2となる履歴を破線で示す. 時間0からTまでにN回の測定を等間隔で行い,最後の測定もTに含める.各測定に生存効率ηを付す.すべて状態1となる採用履歴を実線,途中で状態2となる履歴を破線で示す.
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考え方
連続した振幅の時間発展と,測定後に状態が準備し直される過程を区別する.採用する履歴の確率には各回の生存効率も掛ける.

  1. 連立方程式から d2C2dt2=−A2C2/ℏ2,C2(0)=0,dC2dt(0)=iA/ℏ となる.したがって C1=cos⁡(At/ℏ),C2=isin⁡(At/ℏ).測定しなければ T で状態は i|2⟩ となる.各間隔 T/N で1を得る確率は cos2⁡[π/(2N)] なので

SN=ηNcos2N⁡(π2N)

である.η=1 なら ln⁡SN≈−π2/(4N)→0,よって SN→1.頻繁な測定が移行を抑える量子ゼノン効果である.

  1. 1回ごとの反転確率を q=sin2⁡[π/(2N)] とする.測定 r 回後の状態1の確率を pr とすれば,pr+1=(1−q)pr+q(1−pr).よって 2pr+1−1=(1−2q)(2pr−1),p0=1 から

pN=1+cosN⁡(π/N)2

となる.途中で状態2へ移り,さらに1へ戻る履歴も含むため,すべて1という履歴の SN と異なる.N→∞ では pN も1へ近づく.

  1. 大きい N で ln⁡SN≈−Nϵ−π2/(4N).連続変数として微分すると −ϵ+π2/(4N2)=0 より

N∗≈π2ϵ,Smax≈e−πϵ

である.指定値では N∗≈31.4,Smax≈0.855.厳密な式では S30≈0.85438,S31≈0.85451,S32≈0.85450 となる.実数 N>1 で x=π/(2N) とおくと,厳密な対数の微分は ln⁡η+2ln⁡cos⁡x+2xtan⁡x であり,その N による微分は −2x2sec2⁡x/N<0.したがって最大は一つで,整数では N=31 が最適である.近似には ϵ と π/(2N∗) が十分小さいことが必要である.固定した η<1 で測定を無限に増やすと SN→0 となり,測定損失も最適条件に含める必要がある.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

中性K中間子の簡略模型として,直交する2状態 |S⟩,|L⟩ のエネルギーを ES,EL,平均寿命を τS<τL とします.崩壊せずに残る振幅は fj(t)=e−iEjt/ℏe−t/(2τj) です.種類を測定する基底は |K⟩=(|S⟩+|L⟩)/2,|K¯⟩=(|S⟩−|L⟩)/2 とします.時刻0に |K⟩ を準備し,ω=(EL−ES)/ℏ≠0 とします.実際のK中間子の細かな非対称性はこの模型では省きます.

  1. 入射粒子あたりの PK(t),PK¯(t),生存確率と崩壊確率を求めよ.崩壊せずに残った粒子だけに対する K の条件付き確率を,[1+V(t)cos⁡ωt]/2 の形にせよ.

  2. V(t)=1/2 になる時刻を求めよ.長時間後の条件付き確率と,粒子が全く失われない2状態系との違いを述べよ.

  3. K,K¯ を等しい微小な率 r で識別できる検出器を置き,全時間の期待計数を NK=r∫0∞PK(t)dt,NK¯=r∫0∞PK¯(t)dt とします.rτL は十分小さく,検出による生存への影響を無視します.計数の非対称度 A=(NK−NK¯)/(NK+NK¯) を求め,寿命が等しい極限も調べよ.∫0∞e−atcos⁡ωtdt=a/(a2+ω2),a>0 を使ってよい.

種類Kを準備し,時間tの伝播中の成分S,Lに寿命τ_S,τ_Lを付す.崩壊せずに残る粒子を種類K,K̄で分析し,崩壊した粒子の行き先も示す. 種類Kを準備し,時間tの伝播中の成分S,Lに寿命τ_S,τ_Lを付す.崩壊せずに残る粒子を種類K,K̄で分析し,崩壊した粒子の行き先も示す.
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考え方
崩壊は振幅の絶対値を減らす.残った2成分を干渉させた後,条件付き確率にするときだけ生存確率で割る.

  1. 状態は (fS|S⟩+fL|L⟩)/2 で,検出振幅は (fS+fL)/2 と (fS−fL)/2.a=(1/τS+1/τL)/2 とおくと

PK=e−t/τS+e−t/τL+2e−atcos⁡ωt4,PK¯=e−t/τS+e−t/τL−2e−atcos⁡ωt4

である.生存確率は Psurv=(e−t/τS+e−t/τL)/2,崩壊確率は 1−Psurv.b=(1/τS−1/τL)/2>0 とおけば,生存確率は e−atcosh⁡(bt) に等しい.ここで cosh⁡x=(ex+e−x)/2 である.したがって

PK∣surv=1+V(t)cos⁡ωt2,V(t)=1cosh⁡(bt)

となる.

  1. cosh⁡(bt)=2 は ebt+e−bt=4 なので,ebt=2+3.よって t1/2=ln⁡(2+3)/b.長時間では S の割合が減り,残った粒子はほぼ L だけになって,条件付き確率は両種類とも 1/2 へ近づく.実際には入射粒子あたりの両確率は0へ減る.粒子が失われない系では振動の振幅が一定だが,ここでは寿命の違いが干渉する2振幅の大きさを不均等にする.

  2. 和と差を先に積分すると,NK+NK¯=r(τS+τL)/2,NK−NK¯=ra/(a2+ω2).したがって

A=2a(τS+τL)(a2+ω2)

である.τS=τL=τ では a=1/τ,A=1/(1+ω2τ2).同じ寿命なら生存粒子の鮮明度は1を保つが,時間を積分した計数の非対称度は振動で小さくなる.非対称度は無次元で,検出器を弱いとした条件 rτL が十分小さいことも確認できる.

演習 4

オリジナル ★★★★★

外から励起された原子が毎秒 R 個,共振器の上準位へ供給されるレーザーの模型を考えます.下準位へ移った原子は速やかに取り除かれ,吸収は無視します.上準位の原子数を N,共振器の平均光子数を n とし,B,γ,κ>0 は s−1 の次元を持つ定数です.選んだモードへの放出率は BN(n+1),それ以外への緩和率は γN,共振器からの光子損失率は κn とします.ゆらぎを無視した平均の模型は

dndt=BN(n+1)−κn,dNdt=R−γN−BN(n+1)

です.光子のエネルギーは hν で,損失光子はすべて出力として利用できます.

  1. R>0 における非負の定常解 n∗,N∗ を求め,定常解が一つであることを示せ.n+1 の1を省いた模型のしきい値 Rc と比べ,厳密な定常解が R<Rc でも n∗>0 になる理由を述べよ.

  2. 出力仕事率を求め,エネルギーの収支を確かめよ.ρ=γ/B が十分大きいとき,R=Rc の光子数と,しきい値の変化が丸くなる励起率の幅の尺度を見積もれ.

  3. 定常解のまわりで n=n∗+x,N=N∗+y とし,1次の方程式を2×2行列で書け.定常解が安定であることを示せ.最後に,n∗ が十分大きい領域で,微小なずれが振動しながら減衰する条件を近似的に求めよ.

率Rで上準位へ原子を供給する.選んだモードへの放出BN(n+1),その他の緩和γN,下準位の原子の取り除き,共振器の光子数nと出力κnを示す.定常値やしきい値は描かない. 率Rで上準位へ原子を供給する.選んだモードへの放出BN(n+1),その他の緩和γN,下準位の原子の取り除き,共振器の光子数nと出力κnを示す.定常値やしきい値は描かない.
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考え方
原子数を固定せず,光によって上準位が減る効果も含める.定常解では生成と損失をつり合わせ,安定性は線形化した2変数の固有値で調べる.

  1. 光子の定常条件から N∗=κn∗/[B(n∗+1)].原子の式に代入すると

Rκ=n∗+ρn∗n∗+1,n∗2+(1+ρ−R/κ)n∗−R/κ=0

となる.s=R/κ とおけば正の解は

n∗=s−1−ρ+(1+ρ−s)2+4s2,N∗=κn∗B(n∗+1)

である.右辺の n+ρn/(n+1) は0から単調に増え,微分は 1+ρ/(n+1)2>0 なので非負の解は一つ.1を省くと,発光する定常解は N=κ/B,n=(R−Rc)/κ,Rc=γκ/B=κρ となり,正になるには R>Rc を要する.元の模型は n=0 でも自発放出 BN が光の種を供給するため,しきい値以下でも正の光子数を持つ.

  1. 出力は P=hνκn∗.定常条件 R=γN∗+κn∗ より hνR=hνγN∗+P で,この準位差について供給と損失がつり合う.R=Rc では n∗2+n∗−ρ=0,よって n∗=(1+4ρ−1)/2≈ρ.δs=(R−Rc)/κ とすれば二次式は n∗2+(1−δs)n∗−(ρ+δs)=0.n∗ が ρ 程度の領域では,δsn∗ が n∗2 と同程度になるのは |δs| も ρ 程度のときである.したがって丸まりの幅の尺度は δR∼κρ,しきい値に対する比は δR/Rc∼1/ρ となる.

  2. n∗=n0 と略記し,BN∗=κn0/(n0+1) を使うと

ddt(xy)=J(xy),J=(−κn0+1B[n0+1]−BN∗−γ−B[n0+1])

である.tr⁡J=−κ/(n0+1)−γ−B(n0+1)<0,det⁡J=κ[γ/(n0+1)+B(n0+1)]>0.固有値は λ2−(tr⁡J)λ+det⁡J=0 を満たし,実数なら両方負,複素数なら実部が負なので安定である.n0 が十分大きく,さらに κ/n0 が γ+Bn0 より十分小さく,γ/(Bn02) も十分小さいとき,跡は −(γ+Bn0),行列式は κBn0 と近似できる.振動する条件は

(γ+Bn0)2<4κBn0

である.u=Bn0 とおけば,κ>γ かつ 2κ−γ−2κ(κ−γ)<u<2κ−γ+2κ(κ−γ) がその範囲となる.近似には 1/n0,κ/[n0(γ+Bn0)],γ/(Bn02) が十分小さいことが必要であり,厳密な判定は (tr⁡J)2−4det⁡J<0 を使う.R→0 で n∗,N∗→0 となり,率の式の次元も整合する.

演習 5

IPhO 2021 第3問(改題) ★★★★★

ベンゼンの6地点を巡る電子の模型を考えます.3組の地点を ar,br,r=0,1,2 とし,添字は3ごとに繰り返します.隣接する ar,br の結合は −A1,br,ar+1 の結合は −A2 です.A1=A(1+ϵ),A2=A(1−ϵ),A>0,|ϵ|<1 とします.各地点の対角エネルギーは E0 です.1電子の振幅は

iℏdCa,rdt=E0Ca,r−A1Cb,r−A2Cb,r−1,iℏdCb,rdt=E0Cb,r−A1Ca,r−A2Ca,r+1

を満たします.電子は6個で,各軌道状態には2つのスピン状態があり,相互作用は無視します.結合の交互の変化に要する機械的なエネルギーは Kϵ2/2,K>6A とします.ここで K はエネルギーの次元を持つ定数です.

  1. 定常状態の振幅を Ca,r(t)=ueiqre−iEt/ℏ/3,Cb,r(t)=veiqre−iEt/ℏ/3,|u|2+|v|2=1 とおき,環を閉じる条件から許される q を求めよ.各 q に対する2×2行列を作り,6つの軌道エネルギーと縮退の数を求めよ.

  2. 6電子を低い準位から詰めた全電子エネルギーと,最低の空の準位までのエネルギー差を求めよ.この模型では最高の占有準位から最低の空の準位への光による遷移が許されるとし,吸収の最長波長を表せ.

  3. 機械的なエネルギーも含め,ϵ=0 が安定となる条件を求めよ.不安定な場合の平衡の ϵ を厳密に求めよ.最後に K=12A(1−δ),0<δ が十分小さい場合の |ϵ| と吸収波長の変化を先頭の次数まで求めよ.実際のベンゼンの構造について,この模型だけからどこまで結論できるかも述べよ.

a₀,b₀,a₁,b₁,a₂,b₂の順に6地点を環状に並べる.−A₁の結合を実線,−A₂を破線で区別する.各地点の対角成分はE₀で,電子の占有と平衡変形は描かない. a₀,b₀,a₁,b₁,a₂,b₂の順に6地点を環状に並べる.−A₁の結合を実線,−A₂を破線で区別する.各地点の対角成分はE₀で,電子の占有と平衡変形は描かない.
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考え方
環の並進対称性で振幅を分け,3つの2状態系として解く.排他律で占有を決め,電子エネルギーの低下と機械的な変形の費用を比較する.

  1. 添字を3進めても同じ地点だから e3iq=1.異なる候補は q=0,2π/3,−2π/3 である.定常状態の共通の時間因子 e−iEt/ℏ を含めて代入すると

E(uv)=Hq(uv),Hq=(E0−A1−A2e−iq−A1−A2eiqE0)

を得る.行列式から (E−E0)2=A12+A22+2A1A2cos⁡q.q=0 では E=E0±2A が各1軌道,q=±2π/3 では E=E0±A1+3ϵ2 が各2軌道である.同じ q の各固有ベクトルを |u|2+|v|2=1 にすれば,3組の地点に広がる状態の全確率は1になる.

  1. D=A1+3ϵ2 とおく.|ϵ|<1 では A≤D<2A なので,最低の E0−2A に2電子,次の2軌道 E0−D に計4電子が入る.したがって

Uel=2(E0−2A)+4(E0−D)=6E0−4A−4D

である.最高の占有準位と最低の空の準位 E0+D の差は 2D.仮定した遷移に対する最長波長は λ=hc/(2D).スピンを含めた6つの完全な状態を占有するため,排他律に反しない.

  1. ϵ=0 からの全エネルギーの変化は

ΔU=Kϵ22−4A(1+3ϵ2−1)

である.微分すると dΔUdϵ=ϵ[K−12A/1+3ϵ2].原点の曲率は K−12A なので,K>12A で安定,6A<K<12A で不安定である.K=12A では展開 ΔU=(K−12A)ϵ2/2+9Aϵ4/2+⋯ の4次項が正なので,原点は安定な極小にとどまる.不安定な範囲では

ϵe=±(12A/K)2−13

となる.K>6A より |ϵe|<1,そこでの曲率は 36Aϵe2/(1+3ϵe2)3/2>0 である.K=12A(1−δ) なら (12A/K)2≈1+2δ だから,|ϵe|≈2δ/3.λ0=hc/(2A) とすれば,平衡で 1+3ϵe2=12A/K より,λe/λ0=K/(12A)=1−δ となり,短波長側へ移る.小変形の近似には δ と |ϵe| が十分小さいことが必要である.実際の構造を判断するには機械的な定数や電子間相互作用が必要で,この独立電子の模型だけでは決定できない.ϵ=0 で準位が E0±2A,E0±A に戻り,波長の次元も整合する.