問いしるべ
問いから始める物理 対称性から組み立てる力学(発展)

対称性から組み立てる力学(発展)

第13章の発展問題

著者:柚木芹香

対称性で相互作用をどこまで絞れるか,変分法を運動以外へどう使うかを考えます.新しく使う近似や数学上の定義は問題中で与えます.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

外から影響を受けない2粒子の位置エネルギーは,位置だけの関数です.全体の平行移動・回転で不変で,さらに U(λr1,λr2)=λ−2U(r1,r2),λ>0 を満たすとします.粒子が重なる配置は除きます.

  1. U の形と,各粒子に働く力を求めてください.

  2. G=∑a=12ra⋅pa とすると G˙=2E となることを示し,新しい保存量を求めてください.

  3. ra→λra,t→λ2t で作用が不変になることを確かめ,(2) と同じ尺度変換の性質が見えることを説明してください.

2粒子の配置と,原点から両位置を同じ倍率λで拡大した配置を並べる.距離rとλrだけを示す. 2粒子の配置と,原点から両位置を同じ倍率λで拡大した配置を並べる.距離rとλrだけを示す.
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考え方 平行移動で相対位置だけに,回転でその大きさだけに依存が絞られる.尺度の条件は,残った1変数の関数を決める.

  1. r=|r1−r2| とすると U=U(r).U(λr)=λ−2U(r) より U=A/r2.定数 A の値や符号は対称性だけでは決まらない.力は F1=2A(r1−r2)/r4,F2=−F1.A>0 なら反発,A<0 なら引力である.

  2. 尺度の条件を λ=1 で微分すると ∑ara⋅∂U/∂ra=−2U.方程式から

G˙=∑a(va⋅pa+ra⋅p˙a)=2K+2U=2E

時間の一様性から E は一定なので,D=G−2Et が保存する.

  1. 速度は λ−1 倍,K,U はともに λ−2 倍,dt は λ2 倍となる.したがって S=∫(K−U)dt は不変.時間も変換するので,本体の節の座標だけのネーターの定理へ直接代入せず,(2) で保存量を確かめた.

確かめ:G と Et の次元はともに作用.λ による厳密な条件がなければ,U は任意の距離の関数のままである.また A<0 で衝突に至る場合は,r>0 の区間に結果を限る.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

線密度 ρ の伸びない柔らかい鎖を,鉛直面内の2点 (−d,h),(d,h) に掛けます.長さは ℓ>2d,高さ y は上向きです.鎖は y(x) のグラフとなり,位置エネルギーが最小の形をとります.y′=dy/dx とします.

  1. 長さの拘束を定数 λ で組み込んだ積分

I=∫−dd(ρgy+λ)1+y′2dx

を停留させます.被積分関数を f とし,f−y′∂f/∂y′ が一定であることを導いてください.

  1. 対称な解が y=b+acosh(x/a),a>0 となることを示し,a,b を決める式を書いてください.ここで coshz=(ez+e−z)/2,sinh⁡z=(ez−e−z)/2 です.

同じ高さの2支点と,間に垂れる鎖の任意の試行曲線を描く.水平距離2d,高さh,全長ℓを示す.懸垂線の式や最下点の高さは描かない. 同じ高さの2支点と,間に垂れる鎖の任意の試行曲線を描く.水平距離2d,高さh,全長ℓを示す.懸垂線の式や最下点の高さは描かない.
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考え方 時刻の一様性でエネルギーが保存したのと同じ計算を,積分変数 x に使う.λ は張力を先に仮定するためではなく,全長を固定するための定数である.

  1. f は x を直接含まないので,df/dx=∂f/∂yy′+∂f/∂y′y″.オイラー=ラグランジュ方程式 ∂f/∂y=ddx∂f/∂y′ を入れると ddx(f−y′∂f/∂y′)=0.したがって

ρgy+λ1+y′2=C

である.

  1. b=−λ/(ρg),a=C/(ρg) とおく.垂れた鎖では a>0 を選び,y−b=a1+y′2.これを微分すると,y′≠0 の所で y″=(y−b)/a2.最下点でも連続性から成り立つ.左右対称で y′(0)=0,元の式で y(0)−b=a だから y=b+acosh(x/a).全長と端点から

ℓ=∫−ddcosh(x/a)dx=2asinh⁡(d/a),b=h−acosh(d/a)

を得る.最下点の高さは b+a である.

確かめ:d/a=z>0 とおくと ℓ/(2d)=sinh⁡z/z.この関数は1から単調に増えるので,ℓ>2d に対して a が1つ決まる.ρ と g は形の式から消え,鎖の形は端点と全長で決まる.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

鉛直面内のなめらかな曲線を,小球がAで静止した状態から滑り降ります.Aを原点,y を鉛直下向きにとり,Bは (πa,2a),a>0 です.位置エネルギーは U=−mgy.曲線はA以外で y>0,右向きに進み,Bまでに高さの折り返しはないものとします.

  1. 降下時間が T=∫0πa(1+y′2)/(2gy)dx になることを示し,停留条件の第1積分を求めてください.

  2. y=a(1−cos⁡ϕ) とおき,停留曲線を x,y の媒介変数表示で求めてください.その降下時間を求め,AとBを結ぶ直線での時間と比べてください.

  3. a=0.50m,g=9.8ms−2 として2つの時間を計算してください.

下向きy軸と右向きx軸,AとBを置き,直線と任意の試行曲線を描く.求める停留曲線の形や降下時間は示さない. 下向きy軸と右向きx軸,AとBを置き,直線と任意の試行曲線を描く.求める停留曲線の形や降下時間は示さない.
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考え方 時間は弧長を速さで割った積分である.被積分関数が x を含まないことを,演習2と同じように使う.

  1. 固定されたなめらかな拘束なので E=K+U=0 が保存し,v=2gy.ds=1+y′2dx より時間の式が出る.f=(1+y′2)/(2gy) に対し f−y′∂f/∂y′ は一定なので,1/2gy(1+y′2) が一定.y(1+y′2)=2A0 と書ける.A0>0 は未定の長さである.

  2. いったん y=A0(1−cos⁡ϕ) とおくと,降下する枝では y′=cot⁡(ϕ/2).よって dx/dϕ=A0(1−cos⁡ϕ),積分して

x=A0(ϕ−sin⁡ϕ),y=A0(1−cos⁡ϕ)

となる.Bまで高さの折り返しがないので 0<ϕB≤π.端点の比 xB/yB=π/2 を満たすのは ϕB=π であり,A0=a となる.この曲線はサイクロイドの半分である.ds=2asin⁡(ϕ/2)dϕ,v=2gasin⁡(ϕ/2) なので,Tc=πa/g.

直線の長さは sB=aπ2+4,y=2as/sB.したがって Tl=∫0sBds/4gas/sB=π2+4a/g.停留曲線のほうが短時間で降りる.

  1. Tc≈0.71s,Tl≈0.84s.

確かめ:Aの近くでは x≈aϕ3/6,y≈aϕ2/2 で,曲線はほぼ鉛直に降りて速さを得る.Aで v=0 でも時間積分は有限になる.ここで示したのは停留曲線の導出と直線との比較であり,任意の試行曲線との大域的な最小性の証明は含めていない.

演習 4

オリジナル ★★★★★

長さ l の軽い棒の先に質量 m の小球をつけ,支点を鉛直に ys=acos⁡Ωt と振動させます.y は上向きで,棒が鉛直上向きとなす角を θ とし,小球の位置を (lsin⁡θ,ys+lcos⁡θ) とします.摩擦はありません.

  1. L と θ の方程式を求めてください.

  2. a/l は1よりずっと小さく,支点の振動は小球のゆっくりした運動よりずっと速いとします.θ=Θ+ξ と分け,1周期の間は Θ を一定とみなします.速い小さな振動 ξ を求め,cos2⁡Ωt の平均が 1/2 であることを使って Θ の平均の方程式を導いてください.

  3. 倒立位置 Θ=0 が安定になる条件と,小さな振動の角振動数を求めてください.a=0.020m,l=0.50m,Ω=200s−1,g=9.8ms−2 で条件と近似の妥当性を確かめてください.

鉛直に振動する支点から上へ伸びる棒と小球,長さl,上向き鉛直からのθ,支点の振幅aを示す.安定条件や平均位置は書かない. 鉛直に振動する支点から上へ伸びる棒と小球,長さl,上向き鉛直からのθ,支点の振幅aを示す.安定条件や平均位置は書かない.
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考え方 重力と見かけの力のつり合いを仮定せず,慣性系での位置から L を作る.速い振動と遅い運動の積に,平均して消えない項がある.

  1. U=mg(ys+lcos⁡θ) なので

L=m2(l2θ˙2−2ly˙sθ˙sin⁡θ+y˙s2)−mg(ys+lcos⁡θ)

方程式は lθ¨=(g+y¨s)sin⁡θ,すなわち θ¨=(g−aΩ2cos⁡Ωt)sin⁡θ/l.

  1. 速い項を取り出すと ξ¨≈−(aΩ2/l)sin⁡Θcos⁡Ωt.平均0の周期解は ξ≈(a/l)sin⁡Θcos⁡Ωt.sin⁡(Θ+ξ)≈sin⁡Θ+ξcos⁡Θ を元の式に入れ,周期平均をとると

Θ¨≈glsin⁡Θ−a2Ω22l2sin⁡Θcos⁡Θ

となる.ξ 自体の平均は0だが,ξcos⁡Ωt の平均は0ではない.

  1. 小さな Θ では Θ¨≈[g/l−a2Ω2/(2l2)]Θ.したがって a2Ω2>2gl のとき安定で,ωslow=a2Ω2/(2l2)−g/l.数値では a2Ω2=16m2s−2,2gl=9.8m2s−2 なので条件を満たし,ωslow=12.4≈3.5s−1.a/l=0.040,Ω/ωslow≈57,g/(lΩ2)=4.9×10−4 で,小振幅・速い支点という近似と整合する.

確かめ:平均の方程式は Ueff=mglcos⁡Θ+ma2Ω2sin2⁡Θ/4 からも得られる.その倒立位置の曲率が正になる条件も同じである.摩擦がないので,安定とは小さなずれが振動することであり,倒立位置へ自然に落ち着くという意味ではない.境目では高次の項が必要になる.

演習 5

オリジナル ★★★★★

質量 m の粒子が,静止した同じ質量 m の標的に衝突し,質量 m の粒子3個を作る反応を考えます.内部の量子数による制限は考えず,エネルギーと運動量の保存だけで可能になる最小の入射エネルギーを求めます.入射粒子の全エネルギーを E,運動量を p>0 とします.

  1. 粒子の E=mc2dt/dτ,px=mdx/dτ とローレンツ変換を使い,E′=γV(E−Vpx),px′=γV(px−VE/c2) を導いてください.全エネルギー・全運動量にも同じ変換が成り立つことを確かめてください.

  2. W2=Etot2−P2c2 が不変であることを示し,生成に必要な最小の E と入射運動エネルギーを求めてください.

  3. しきい値での3粒子の速度を標的の系で求めてください.同じ質量の2粒子を逆向きに同じ速さで衝突させる方式では,必要な運動エネルギーの合計はいくらですか.

上に静止標的へ入射する粒子と反応後の3粒子,下に逆向きの2本の入射ビームを描く.生成粒子の速度としきい値の数値は描かない. 上に静止標的へ入射する粒子と反応後の3粒子,下に逆向きの2本の入射ビームを描く.生成粒子の速度としきい値の数値は描かない.
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考え方 標的の系では,初めの運動量を生成粒子が運び続けなければならない.全運動量が0になる系で,生成に使えるエネルギーを評価する.

  1. 固有時は不変なので,dt′/dτ=γV(dt/dτ−Vdx/dτ/c2),dx′/dτ=γV(dx/dτ−Vdt/dτ).それぞれ mc2,m を掛けると求める変換になる.変換が1次式なので,粒子ごとに足した Etot,P にも同じ式が成り立つ.

  2. 変換式を2乗して引くと,混合項が消え,Etot′2−P′2c2=Etot2−P2c2.V=Pc2/Etot の系では P′=0,全エネルギーは W.生成した3粒子の各エネルギーは mc2 以上なので,W≥3mc2 が必要であり,3粒子すべてがこの系で静止すると等号となる.初めは Etot=E+mc2,P=p,p2c2=E2−m2c4 より

W2=(E+mc2)2−(E2−m2c4)=2mc2(E+mc2)

W=3mc2 から Emin=7mc2/2,Kmin=5mc2/2.

  1. しきい値の pc=35mc2/2,Etot=9mc2/2 から,全運動量が0の系の速度は V=5c/3.3粒子はその系で静止しているため,標的の系では全員が同じ速度 V で進む.逆向きの2ビームなら,全運動量は初めから0.各入射エネルギーを 3mc2/2 にすれば生成でき,運動エネルギーの合計は 2(3mc2/2−mc2)=mc2.

確かめ:固定標的では入射の 5mc2/2 のうち,mc2 が新しい粒子の静止エネルギー,3mc2/2 が生成粒子全体の運動エネルギーになる.実際に γV=3/2 なので,生成後の全エネルギーは 3γVmc2=9mc2/2 で一致する.