問いしるべ
問いから始める物理 対称性から組み立てる力学(発展)

対称性から組み立てる力学(発展)

第13章のまとめ

著者:柚木芹香

この章では,力も運動方程式も使わずに,経験の事実と1つの原理から力学を組み立て直しました.出発点は,決定性,停留作用の原理,時間と空間の対称性の3つで,そこから慣性の法則,運動方程式,作用反作用の法則,保存則が定理として出てきました.対称性をガリレイ変換からローレンツ変換に替えると,同じ道筋で相対論の力学が出てきます.

出発点

出発点

内容

決定性(経験の事実)

状態(一般化座標と一般化速度)を決めると,その後の運動はただ1通りに決まる.だから運動の法則は2階の微分方程式

停留作用の原理(原理)

実際の経路では,両端を固定した小さな変化に対して作用 S=∫L(q,q˙,t)dt が停留する

時間と空間の対称性(経験の事実)

慣性系では空間が一様・等方で,時間が一様.相対性原理(ガリレイ,またはアインシュタイン)

公式

公式 オイラー=ラグランジュ方程式

ddt∂L∂q˙i−∂L∂qi=0

L に定数を掛けても,dF(q,t)/dt を足しても,運動は変わらない.

公式 ラグランジアン

  • 自由な粒子(ガリレイ):L=12mv2

  • 閉じた系:L=∑a12mava2−U(r1,r2,…)

  • 自由な粒子(相対論):L=−mc21−v2/c2

公式 対称性と保存量

  • 一般化運動量 pi=∂L/∂q˙i.循環座標の pi は保存する.

  • ネーターの定理:qi→qi+εηi で L が εdΛ/dt しか変わらなければ,∑ipiηi−Λ が保存する.

  • 時間の一様性 → エネルギー E=∑ipiq˙i−L,空間の一様性 → 運動量,等方性 → 角運動量,ガリレイの相対性 → 重心の等速運動.

公式 相対論

  • γ=1/1−v2/c2,時間の遅れ Δt=γΔτ,間隔 c2Δt2−Δx2−Δy2−Δz2 は不変.

  • ローレンツ変換:x′=γ(x−Vt),t′=γ(t−Vx/c2).速度の合成 u′=(u−V)/(1−uV/c2).

  • p=γmv,E=γmc2,E2=(pc)2+(mc2)2.

各題材の問いへの答え

  • 状態と運動の法則:位置だけでは未来は決まらず,位置と速度で決まる.加速度は位置と速度から決まるので新しい情報ではない.

  • 停留作用の原理:光は,かかる時間が停留する道を通るので,反射の法則が出る.運動も,作用が停留する経路として選ばれる.

  • 空間と時間の対称性:運動エネルギーが v2 に比例するのは,空間と時間の一様性・等方性と,ガリレイの相対性原理のため.v4 では,動く船の中と岸とで法則が変わってしまう.

  • 相互作用と力:影響し合う粒子のラグランジアンは ∑12mv2−U.作用と反作用が等しいのは,空間が一様だから.

  • 対称性と保存則:エネルギー,運動量,角運動量が保存するのは,時間の一様性,空間の一様性,等方性のため.閉じた系の保存量は,重心の運動を含めて10個.

  • 拘束のある運動を解く:拘束を満たす座標で L を書けば,張力を知らずに振り子の運動が求まる.回る輪のビーズは,ω2>g/R で最下点を離れて cos⁡θ0=g/(Rω2) に落ち着く.

  • 光の速さと時空:光の速さがどの慣性系でも同じなら,時間はどの系でも同じには進まない.動く時計は遅れ,慣性系の間はローレンツ変換でつながる.

  • 相対論の力学:対称性をローレンツ変換に替えると,自由な粒子の作用は固有時に比例し,L=−mc21−v2/c2.そこから E=γmc2 と光速の壁が出る.

  • 全体像:法則のほとんどは枠組み(決定性・原理・対称性)から出る.物理の中身として残るのは相互作用の形.停留作用の原理は量子力学の経路積分で説明される.

この章で使った数学

  • 2階の微分方程式と初期条件,オイラー法.

  • 変分法:部分積分と基本補題.

  • 多変数の関数の偏微分,勾配,合成関数の微分.

  • 外積の3つの積の性質.

  • (1+x)n≈1+nx の近似.