問いしるべ
問いから始める物理 電荷と電場

電荷と電場

第20章の章末問題

著者:柚木芹香

電荷の保存,場の重ね合わせ,電位とエネルギーを組み合わせて解いてください.真空の誘電率を ε0,k=1/(4πε0) とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

真空中の x=0 と x=d に,面電荷密度 +σ,−2σ の無限に広い絶縁性の平面を置きます.d,σ>0 で,電荷は固定されています.

  1. 各平面を除く3領域の電場の成分 Ex を求めよ.V(0)=0 としたとき,V(d) はいくらか.

  2. 質量 m,正電荷 q の粒子を x=0 のすぐ右から静かに放す.x=d のすぐ左での速さを求めよ.平面との衝突と重力は考えない.

2枚の平面と面電荷密度,間隔d,右向きのx軸,粒子の出発点を示す. 2枚の平面と面電荷密度,間隔d,右向きのx軸,粒子の出発点を示す.
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考え方
各平面の場を符号つきで足し,その積分を電位差へ結びつける.

  1. 面積 S の薄い箱を平面にまたがせると,対称性から 2ES=|σ|S/ε0.正電荷から離れ,負電荷へ向かう場を重ねると

Ex={σ/(2ε0)(x<0),3σ/(2ε0)(0<x<d),−σ/(2ε0)(x>d).

従って V(d)−V(0)=−∫0dExdx=−3σd/(2ε0).

  1. 電場の仕事は −q[V(d)−V(0)].mv2/2=3qσd/(2ε0) より v=3qσd/(mε0).一定加速度 qEx/m による v2=2qExd/m とも一致する.有限の平面で近似するなら,間隔と粒子の軌道から縁までの距離の比が十分小さいことが必要である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

大きさを無視できる2個の絶縁性粒子A,Bが,真空中で距離 d を隔てて静止しています.質量は m,3m,電荷は +q,+2q です.電荷を一定に保ったまま同時に放します.電気力以外は無視します.

  1. 粒子間距離が r>d になったとき,各粒子の速さを求めよ.

  2. 十分遠く離れたときの運動エネルギーの比と,各速さを求めよ.

初めの粒子A,Bと質量,電荷,距離dを示す.外力のない直線上に配置する. 初めの粒子A,Bと質量,電荷,距離dを示す.外力のない直線上に配置する.
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考え方
電気力は内力なので,全運動量と全エネルギーの両方が保存する.

  1. 互いに反対向きに動く.全運動量0より mvA=3mvB,すなわち vA=3vB.位置エネルギーの減少から

mvA22+3mvB22=2kq2(1d−1r),vB=kq23m(1d−1r),vA=3vB.
  1. KA/KB=mvA2/(3mvB2)=3.r→∞ とすると vA=3kq2/(md),vB=kq2/(3md).運動エネルギーの和は初期の 2kq2/d に戻る.粒子半径と d の比が十分小さい範囲で点電荷の近似を使っている.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

半径 a=2.00×10−2m の導体球を帯電させ,中心からの距離 r における電位を測りました.球の電荷を Q とし,遠くの物体はこの測定領域に一定の背景電位 Vb だけを加える模型を使います.ε0=8.85×10−12Fm−1 とします.

r/m

0.0400

0.0800

0.160

V/V

50.0

32.0

23.0

  1. ガウスの法則から球外の場と電位の模型を導き,直線化によって Q,Vb を求めよ.球表面の電位と面電荷密度も求めよ.

  2. 各電位の誤差限界を 0.20V とする.両端の2点だけで推定する Q の誤差限界を求めよ.距離の誤差は無視する.3点の一致だけで背景の場が厳密に0と証明できるか.

導体球の半径aと,半径方向の3測定点rを示す.球の電荷Qと遠方の物体の存在だけを記す. 導体球の半径aと,半径方向の3測定点rを示す.球の電荷Qと遠方の物体の存在だけを記す.
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考え方
球対称な場を積分し,電位を 1/r の一次式として扱う.

  1. 4πr2Er=Q/ε0 より Er=kQ/r2.背景電位を定数とする模型では V(r)=Vb+∫r∞kQ/s2ds=Vb+kQ/r.横軸 1/r に対する傾きは A=(50.0−23.0)/(25.0−6.25)=1.44Vm だから,Q=4πε0A=1.60×10−10C.切片は Vb=50.0−1.44/0.0400=14.0V.中央の値も 14.0+1.44/0.0800=32.0V となる.表面電位は V(a)=86.0V,面電荷密度は Q/(4πa2)=3.19×10−8Cm−2 である.

  2. 電位差の誤差限界は 0.40V だから,δA=0.40/18.75=2.13×10−2Vm.従って δQ=4πε0δA=2.4×10−12C,相対誤差は約1.5 %である.点間や他の方向の変化は排除できず,背景の一定性は模型の仮定である.この近似には,背景の電位変化が測定領域内で球による電位変化より十分小さいことが必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

端子A,Bの間に,A,M,Bの順に容量 C,2C を直列につないだ枝と,A,N,Bの順に容量 C,C を直列につないだ枝を並列に置きます.M,Nは互いにも外部にもつながらない導体部分で,総電荷は各0です.初めA,Bの電位差を V0>0 にしてから電源を両端で切り離します.その後,A,M間のコンデンサーだけを比誘電率3の誘電体で満たします.全コンデンサーは平行板型で,誘電体挿入中の漏れを無視します.

  1. 挿入後のA,B間の電圧と,VM−VB,VN−VB を求めよ.

  2. Mの両極板の電荷を符号つきで求め,M,N間の電位差も求めよ.MとNは接続しない.

2本の直列枝をA,B間に並べ,M,N,各容量,A,M間に入れる誘電体と切り離す電源を示す. 2本の直列枝をA,B間に並べ,M,N,各容量,A,M間に入れる誘電体と切り離す電源を示す.
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考え方
M,Nの総電荷と,切離し後のAの総電荷を別々に保存する.

  1. 初めの合成容量は Ci=2C/3+C/2=7C/6 なので,Aの総電荷は QA=7CV0/6.挿入後はA,M間が 3C となる.V=VA−VB,vM=VM−VB と置くと,Mの保存則は 3C(vM−V)+2CvM=0,従って vM=3V/5.同様に C(vN−V)+CvN=0 より vN=V/2.Aの保存則は

3C(V−vM)+C(V−vN)=17C10V=7C6V0.

よって V=35V0/51,vM=7V0/17,vN=35V0/102.

  1. MのA側とB側の電荷は順に 3C(vM−V)=−14CV0/17,2CvM=14CV0/17 で,和は0である.VM−VN=7V0/102.途中の導体が中性でも,両面の電荷は0にならない.極板間隔と極板の横の長さの比を十分小さくして,端の効果を無視している.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

半径 R の絶縁性の球に,一様な正の体積電荷密度 ρ を固定します.中心Oからベクトル b だけずれた点Cを中心とする,半径 a の球状部分をくり抜きます.b=|b|>0,a+b<R とします.

  1. 空洞内の電場を求め,任意の2点P,S間の電位差を位置ベクトルで表せ.

  2. 質量 m,正電荷 q の粒子を,Cを通り b に平行な直線の,b と逆側の空洞端から静かに放す.反対側の端に達する直前の速さを求めよ.重力と空洞壁の影響は無視する.

球の断面にO,C,ベクトルb,半径R,a,粒子の出発点と直線を示す.空洞内の電場は描かない. 球の断面にO,C,ベクトルb,半径R,a,粒子の出発点と直線を示す.空洞内の電場は描かない.
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考え方
くり抜いた球を負の電荷密度の球として重ね合わせる.

  1. 一様な球の内部では,半径 r のガウス面から 4πr2Er=4πρr3/(3ε0),従って E=ρr/(3ε0).空洞内の点では,大きい球と密度 −ρ の小さい球を足すと

E=ρ3ε0r−ρ3ε0(r−b)=ρb3ε0.

一様な場なので VS−VP=−∫PSE⋅dr=−ρb⋅(rS−rP)/(3ε0).

  1. 移動距離は場の向きに 2a だから,mv2/2=qE(2a)=2qρba/(3ε0).よって v=4qρba/(3mε0).b→0 では場も得られる速さも0となり,同心の空洞で場が消えることと合う.

演習 6

オリジナル ★★☆☆☆

面積 S の平行な導体板を x=0,3d に置き,両方を接地します.0<x<d を比誘電率2,d<x<3d を比誘電率4の線形誘電体で満たし,境界 x=d に面電荷密度 σ>0 の自由電荷をもつ薄い絶縁性の膜を固定します.端の効果を無視します.

  1. 各層の Ex と膜の電位を求めよ.境界条件を小さな箱の流束から説明せよ.

  2. 両導体板の向かい合う面の自由電荷密度と,膜の位置で重なる2つの誘電体表面の分極電荷密度の和を求めよ.

接地された両極板と,厚さd,2dの誘電体層,比誘電率2,4,境界の自由電荷σ,x軸を示す. 接地された両極板と,厚さd,2dの誘電体層,比誘電率2,4,境界の自由電荷σ,x軸を示す.
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考え方
自由電荷で電束密度が跳ぶ条件と,両板の電位が等しい条件を使う.

  1. 場は各層で一定である.境界をまたぐ底面積 s の薄い箱では (D2x−D1x)s=σs.従って 4ε0E2x−2ε0E1x=σ.一方,両板の電位差0より dE1x+2dE2x=0.これらを解くと E1x=−σ/(4ε0),E2x=σ/(8ε0).膜の電位は V(d)=−dE1x=σd/(4ε0).右側から積分しても V(d)=2dE2x と一致する.

  2. 導体から誘電体へ向く法線をとると,左板の自由電荷密度は D1x=−σ/2,右板は −D2x=−σ/2.分極は P1x=ε0E1x=−σ/4,P2x=3ε0E2x=3σ/8.境界の両面の外向き法線はそれぞれ +x,−x だから,分極電荷の和は P1x−P2x=−5σ/8.自由電荷との和 3σ/8 は ε0(E2x−E1x) に等しく,電場のガウスの法則とも一致する.近似条件は d/S が十分小さいことである.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

半径 R の絶縁性の球に,中心からの距離 r に比例する体積電荷密度 ρ(r)=ρ0r/R を固定します.0≤r≤R,ρ0>0 で,外部は真空です.無限遠を電位0とします.

  1. 総電荷 Q と球内外の電場,電位を求めよ.

  2. 薄い球殻を内側から加えてこの分布を組み立てる外力の仕事を求めよ.同じ Q,R の導体球とどちらが大きいか.

  3. 電荷を一定に保ち,分布の形を相似に保って半径を R から 2R までゆっくり広げる外力の仕事を求めよ.材料の弾性エネルギーは考えない.

半径Rの球と薄い球殻r,厚さの記号を描き,密度ρ₀r/Rと相似に広げる操作を示す.密度に対応する答えの場は描かない. 半径Rの球と薄い球殻r,厚さの記号を描き,密度ρ₀r/Rと相似に広げる操作を示す.密度に対応する答えの場は描かない.
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考え方
ガウス面の内側の電荷を積分し,組み立てでは先に置いた電荷との相互作用だけを数える.

  1. 半径 r≤R に含まれる電荷は Q(r)=∫0r4πs2ρ0s/Rds=πρ0r4/R.総電荷は Q=πρ0R3.4πr2Er=Q(r)/ε0 より球内は Er=kQr2/R4,外部は Er=kQ/r2.外部の電位は V=kQ/r.内部では

V(r)=V(R)+∫rRkQs2R4ds=kQR[43−13(rR)3].

場も電位も r=R で連続である.

  1. 組み立て途中で内側にある電荷は Q(r)=Qr4/R4,追加する電荷は dQ(r)=4Qr3dr/R4.その球殻を運ぶ仕事を足すと

U=∫0RkQ(r)rdQ(r)=4kQ2R8∫0Rr6dr=4kQ27R.

無限に薄い各追加殻自身のエネルギーは微小電荷の2乗なので積分の極限では残らない.導体球では表面電位が kq/R だから,Uc=∫0Q(kq/R)dq=kQ2/(2R).従って U/Uc=8/7>1.

  1. 相似な分布では U は半径の逆数に比例する.Wext=U(2R)−U(R)=−2kQ2/(7R) であり,外力は電気力から仕事を受け取る.仕事の単位は J で,無限に広げる極限では初期の静電エネルギーをすべて取り出せる.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

原点に正電荷 Q を固定し,これに重ねて x 軸の負方向へ一定の電場 E0 を加えます.質量 m,正電荷 q の粒子を,摩擦のない案内で x>0 の x 軸上に拘束します.Q,q,E0>0 で,重力を無視します.

  1. 軸方向のつり合い位置 xe と,その近くの小振動の角振動数を求めよ.

  2. x=xe/2 から静かに放した場合の反対側の転回点と,つり合い位置での速さを求めよ.小振動の近似をこの運動へ使えるか.

原点の電荷Q,負方向の一定電場E₀,正のx軸の案内と粒子qを示す.つり合い位置は描かない. 原点の電荷Q,負方向の一定電場E₀,正のx軸の案内と粒子qを示す.つり合い位置は描かない.
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考え方
つり合いでは力の和,小振動では力の傾き,有限の運動では厳密なエネルギーを使う.

  1. 力は Fx=kQq/x2−qE0.Fx=0 より xe=kQ/E0.ξ=x−xe とすると dFxdx(xe)=−2kQq/xe3=−2qE0/xe だから,md2ξdt2≈−2qE0ξ/xe.従って ω=2qE0/(mxe) で,案内上では安定である.

  2. 一定電場の電位は E0x と選べるので,U(x)=kQq/x+qE0x.s=x/xe とおけば U=qE0xe(s+1/s).初め s=1/2 で全エネルギーは 5qE0xe/2.転回点は s+1/s=5/2,すなわち (2s−1)(s−2)=0 だから,反対側は x=2xe.つり合い位置では U=2qE0xe なので mv2/2=qE0xe/2,v=qE0xe/m.小振動には |ξ|/xe が十分小さいことが必要だが,この運動では最大1に達するため適用できない.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

長さ L の伸びない軽い糸で,質量 m,正電荷 q の小球をつり下げます.支点には正電荷 Q を固定します.小球を最下点から速さ u で水平に発射し,鉛直面内で一周させます.電荷は一定で,重力加速度を g とします.糸と電荷の大きさ,空気抵抗を無視します.f=kQq/L2 とおきます.

  1. 糸が張っている間,最下点からの角度 θ における速さと張力 T を求めよ.電気力は仕事をするか.

  2. 有限の時間で一周し,途中で糸がたるまないための u の条件を,f<mg と f≥mg に分けて求めよ.最高点で張力が0となる瞬間は許します.

支点の電荷Q,長さLの糸,最下点の小球qと水平初速度u,鉛直下向きからの角θを示す. 支点の電荷Q,長さLの糸,最下点の小球qと水平初速度u,鉛直下向きからの角θを示す.
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考え方
一定半径の軌道では電気力が半径方向を向く.エネルギー条件と張力の符号の条件を両方調べる.

  1. kQq/L は一定なので,糸が張っている間は電気力の仕事は0.高さの増加は L(1−cos⁡θ) だから,v2=u2−2gL(1−cos⁡θ).内向きを正とする運動方程式は mv2/L=T−mgcos⁡θ−f.従って

T=mu2L−2mg+3mgcos⁡θ+f.
  1. 張力の最小値は最高点 θ=π で Tmin=mu2/L−5mg+f.従って u2≥5gL−fL/m が必要である.また最高点で正の速さを保つには u2>4gL が必要である.f<mg なら前者が強く,条件は u≥5gL−fL/m.f≥mg なら条件は u>2gL となり,下限に等しい速さでは一周できない.実際,u2=4gL では v2=2gL(1+cos⁡θ) が最高点付近で gL(π−θ)2 となり,∫Ldθ/v は発散する.Q→0 では通常の 5gL に戻る.小球半径と L の比が十分小さいことが点電荷の近似条件である.