問いしるべ
問いから始める物理 電荷と電場

電荷と電場

第20章の発展問題

著者:柚木芹香

対称性と境界条件から場を組み立て,力学とエネルギーの収支へつなげてください.k=1/(4πε0) とし,動く粒子が固定電荷や誘電体の分極を変える効果,放射,電荷の漏れは無視します.

演習 1

IPhO 2021 第2問(改題) ★★★★☆

半径 R の細い絶縁性の輪に,総電荷 Q>0 を一様に固定します.輪の中心を原点とし,軸を z 軸とします.質量 m,電荷 −q(q>0)の粒子を摩擦のない案内で軸上に拘束します.重力を無視し,無限遠を電位0とします.

  1. 軸上の電位と電場を積分または重ね合わせで求めよ.z=A>0 から静かに放した粒子が中心を通るときの速さを求めよ.

  2. 中心にある粒子へ正方向の速度を瞬間的に与える.無限遠へ脱出できる速さの下限を求めよ.

  3. (1)の往復運動の周期を積分で表し,A/R が十分小さいときの周期を (A/R)2 の補正まで求めよ.振幅によらない周期を使うときの相対誤差を δ 以下にする条件を,先頭の補正で見積もれ.

帯電輪の半径R,軸z,電荷Q,案内上の粒子−qと初期位置Aを示す.軌道の速さや場は描かない. 帯電輪の半径R,軸z,電荷Q,案内上の粒子−qと初期位置Aを示す.軌道の速さや場は描かない.
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考え方
輪上の微小電荷から粒子までの距離は等しい.有限振幅では,厳密な電位をエネルギー保存へ代入してから展開する.

  1. 微小電荷 dQ の電位を輪に沿って足すと,V(z)=∫kdQ/R2+z2=kQ/R2+z2.横成分は相殺し,軸成分は Ez=kQz/(R2+z2)3/2.粒子の位置エネルギーは U(z)=−kQq/R2+z2.従って中心で

mvc22=U(A)−U(0)=kQq(1R−1R2+A2),vc=2kQqm(1R−1R2+A2).
  1. 無限遠で U=0 なので,中心での全エネルギーが0以上なら脱出する.mu2/2−kQq/R≥0 より,下限は uesc=2kQq/(mR).等号では無限遠の速さが0へ近づく.

  2. 往復の対称性から

T=4m2∫0AdzU(A)−U(z).

B=kQq とおき,(1+s)−1/2=1−s/2+3s2/8+⋯ を用いると

U(A)−U(z)=B2R3(A2−z2)[1−3(A2+z2)4R2+⋯].

ω0=B/(mR3),z=Asin⁡ϕ と置けば

T≈4ω0∫0π/2[1+3A28R2(1+sin2⁡ϕ)]dϕ=2πω0[1+916(AR)2].

∫0π/2sin2⁡ϕdϕ=π/4 を使った.T0=2π/ω0 を用いた相対誤差は先頭で 9A2/(16R2) だから,A/R≤4δ/3 が目安となる.この見積もり自体にも A/R と δ が十分小さいことが必要で,次の相対補正は (A/R)4 の次数である.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

半径 a の導体球の中心Oから距離 b>a の点Bに,正の点電荷 q を固定します.外部は真空で,無限遠を電位0とします.

  1. 球を接地した場合を考える.直線OB上でOから距離 s<a に置く架空の電荷 q′ によって,球外の電位を表すための s,q′ を求めよ.球面の任意の点Pで電位が0となることを距離の比から示せ.

  2. 接地した球,および孤立した総電荷0の球が点電荷に及ぼす半径方向の力をそれぞれ求めよ.後者では(1)の架空の電荷にOの電荷を追加してよい.

  3. 点電荷を b から無限遠へゆっくり運ぶ外力の仕事を両条件で求めよ.a/b が十分小さいときの力の先頭の項を比較し,孤立した中性球で弱くなる理由を説明せよ.各条件は運ぶ間も保つ.

半径aの導体球,中心O,点電荷qの位置Bと距離b,球面上の任意点Pを示す.架空の電荷の位置や値は描かない. 半径aの導体球,中心O,点電荷qの位置Bと距離b,球面上の任意点Pを示す.架空の電荷の位置や値は描かない.
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考え方
鏡像は球面の境界条件を満たすための道具である.電荷を運ぶと誘導電荷も変わるので,仕事はその瞬間の力を積分する.

  1. s=a2/b,q′=−qa/b と選ぶ.∠BOP=θ とし,d1=PB,d2=Pq′ とおけば

d12=a2+b2−2abcos⁡θ,d22=a2+a4b2−2a3bcos⁡θ=a2b2d12.

従って d2=(a/b)d1 で,kq/d1+kq′/d2=0.球外の電位は実電荷とこの鏡像の電位の和で表され,導体球面と無限遠の境界条件を満たす解の一意性から正しい.

  1. 接地球から受ける力は鏡像による力である.外向きを正とすると

Fg=kqq′(b−s)2=−kq2ab(b2−a2)2.

鏡像の総電荷 q′ は球の誘導総電荷に等しい.これは球を囲みBを含まないガウス面の流束から分かる.中性球では中心に q0=−q′=qa/b を追加する.中心の電荷は球面へ一定電位だけを加え,球面を等電位に保つ.よって

Fn=−kq2ab(b2−a2)2+kq2ab3.

両方とも内向きである.

  1. 外力の仕事は −∫b∞F(s)ds.接地では

Wg=kq2a∫b∞s(s2−a2)2ds=kq2a2(b2−a2).

中性の場合は ∫b∞s−3ds=1/(2b2) を引き,Wn=kq2a3/[2b2(b2−a2)].接地の地面は電位0なので電荷の出入りによる仕事は0である.遠方では (1−a2/b2)−2≈1+2a2/b2 より,Fg≈−kq2a/b3,Fn≈−2kq2a3/b5.中性球には単極子の誘導総電荷がなく,先頭の項が相殺する.展開には a/b が十分小さいことが必要で,いずれの仕事も b→∞ で0に近づく.

演習 3

IPhO 1970 第3問(改題) ★★★★☆

半径 a の導体球を,半径 b>a の薄い導体球殻で同心に囲みます.初め球間は真空で,内球を接地したまま外殻に総電荷 Q>0 を与え,外殻を孤立させます.接地線の細い穴の影響を無視し,無限遠を電位0とします.その後,球間を比誘電率 εr>1 の線形誘電体で準静的に満たします.外殻の総電荷は常に Q です.

  1. 内球の電荷を qi として,球間および球殻外の電場と,各領域に蓄える静電エネルギーを求めよ.球間の容量 Cg と外殻単独の容量 Cb を用いてもよい.

  2. 内球の接地を保って挿入する場合,挿入後の qi,外殻の電位,外力の仕事を求めよ.地面との電荷の出入りも収支に含めよ.

  3. 真空の初期状態で接地線を切ってから挿入する場合,同じ量と内球の電位を求めよ.両条件の終状態のエネルギーを比較し,εr→∞ の極限で外部の場が消えるのはどちらか説明せよ.

同心の内球a,外殻b,外殻の保存電荷Q,内球の接地線と切断箇所,球間に満たす誘電体の比誘電率 \(\varepsilon_r\) を示す. 同心の内球a,外殻b,外殻の保存電荷Q,内球の接地線と切断箇所,球間に満たす誘電体の比誘電率 \(\varepsilon_r\) を示す.
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考え方
内球の電荷と外殻の総電荷を区別する.接地を保つ場合だけ,内球の電荷がエネルギーを最小にする値へ変わる.

  1. 外殻の内面は −qi,外面は Q+qi である.半径 r の球面で電束密度の流束を数えると,球間では Er=kqi/(εrr2),外部では Er=k(Q+qi)/r2.電位差の積分から

Cg=4πε0εrabb−a,Cb=4πε0b.

エネルギー密度 ε0εrE2/2 を積分すると,球間のエネルギーは Ug=kqi2(1/a−1/b)/(2εr)=qi2/(2Cg),外部は Ub=k(Q+qi)2/(2b)=(Q+qi)2/(2Cb).従って

U(qi,εr)=qi22Cg+(Q+qi)22Cb,Vi=qiCg+Q+qiCb,Vo=Q+qiCb.
  1. Vi=0 より qi=−QCg/(Cb+Cg)=−εraQ/(b−a+εra).従って Vo=Q/(Cb+Cg)=kQ(b−a)/[b(b−a+εra)].真空の初期値は qi0=−aQ/b,U0=kQ2(b−a)/(2b2).終状態は

UG=Q22(Cb+Cg)=kQ2(b−a)2b(b−a+εra).

地面から移る電荷は qi−qi0 だが,その仕事は ∫Vidqi=0.収支 UG−U0=Wext+Wground より Wext=UG−U0<0 となる.

  1. 接地を切ると qi=−aQ/b が一定.従って Vo=kQ(b−a)/b2 は変わらず,Vi=Vo(1−1/εr).終状態のエネルギーは

UD=kQ22b3[a(b−a)εr+(b−a)2],Wext=UD−U0=−kQ2a(b−a)2b3(1−1εr).

∂U∂qi=qi/Cg+(Q+qi)/Cb=Vi である.接地の値を qiG とすれば,平方完成によって

UD−UG=12(1Cg+1Cb)(qi0−qiG)2≥0.

接地を保つ方が多くの仕事を取り出せる.εr→∞ では接地の場合だけ qi→−Q,外面の電荷と外部の場が0になる.切断後は外面電荷 Q(b−a)/b が残る.εr→1 では両仕事とも0となる.

演習 4

オリジナル ★★★★☆

長さ L の同軸円筒コンデンサーの内半径を a,外半径を b とし,L は半径より十分長いとします.内電極の電位は V>0,外電極は0です.端を無視します.

  1. まず隙間を真空とする.ガウスの法則と電位差の積分から Er,V(r),C を求めよ.円筒対称な電位について ∇2⁡V=(1/r)ddr(rdVdr) を使い,電荷のない隙間でラプラス方程式を満たすことを確かめよ.

  2. a<r<c を比誘電率4,c<r<b を比誘電率1の線形絶縁体で満たす.境界に自由電荷はなく,両材料の耐えられる電場の大きさの上限を,共通に E∗ とする.b=9a とする.容量と,各材料が破壊しない最大電圧 Vmax(c) を求めよ.

  3. Vmax を最大にする境界半径と最大電圧を求め,隙間全体をどちらか一方の材料で満たした場合と比べよ.(1)の真空の場を,(b−a)/a が十分小さい極限で平行板の場と比較せよ.

同軸円筒の断面にa,c,b,2層の比誘電率4,1,両電極の電位を示す.長さLは別の側面図に記す. 同軸円筒の断面にa,c,b,2層の比誘電率4,1,両電極の電位を示す.長さLは別の側面図に記す.
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考え方
電束密度の流束が自由電荷を数える.絶縁破壊は各層で電場が最も強い場所から始まるので,2つの上限を比較する.

  1. 内電極の単位長さあたりの電荷を λ>0 とする.長さ ℓ,半径 r のガウス面で 2πrℓEr=λℓ/ε0.従って Er=λ/(2πε0r),V=λln⁡(b/a)/(2πε0).よって

V(r)=Vln⁡(b/r)ln⁡(b/a),Er=Vrln⁡(b/a),C=λLV=2πε0Lln⁡(b/a).

rdV(r)dr=−V/ln⁡(b/a) は定数なので,∇2⁡V=0.この確認は積分形から得た解と一致する.

  1. Dr=λ/(2πr) は境界で連続である.h=λ/(2πε0) とおくと,内層で Er=h/(4r),外層で Er=h/r.両層の電位差を足すと

V=h[14ln⁡ca+ln⁡bc],C=2πε0L14ln⁡(c/a)+ln⁡(b/c).

最大の場は内層の r=a と外層の r=c にある.従って h≤4aE∗,h≤cE∗.t=c/a と置くと

Vmax=aE∗min(4,t)(ln⁡9−34ln⁡t),1<t<9.
  1. 1<t<4 では括弧を A(t) とすると,ddt[tA(t)]=ln⁡9−3ln⁡t/4−3/4.これは単調に減少するが,t=4 でも約0.41で正である.4<t<9 では ddt[4A(t)]=−3/t<0.よって最適値は c=4a で,両層が同時に破壊限界へ達する.最大電圧は

Vopt=aE∗(4ln⁡9−3ln⁡4)≈4.63aE∗.

一様な比誘電率では場の形は(1)と同じなので,限界電圧は両材料とも aE∗ln⁡9≈2.20aE∗.2層の最適配置は約2.11倍まで電圧を上げられる.最後に d=b−a,d/a が十分小さいと ln⁡(b/a)≈d/a,隙間内で r≈a だから Er≈V/d,C≈ε0(2πaL)/d.端の近似には b/L が十分小さいことも必要である.

演習 5

オリジナル ★★★★★

幅 w,長さ ℓ,間隔 d の水平平行板コンデンサーに,隙間を満たす厚さの線形誘電体板を横から挿入します.比誘電率は εr>1,挿入長さは 0≤x≤ℓ です.このコンデンサーと固定容量 Cs を直列につなぎ,全電圧を理想電源で V>0 に保ちます.中間の孤立した導体部分の総電荷は0です.C0=ε0wℓ/d,β=εr−1 とします.

板は摩擦なく滑り,装置は一定の大きさ f>0 の力で板を引き出す向きに引きます.運動に伴う装置も含めた有効質量を m とし,端の効果を無視します.電荷の再配置は力学的運動より十分速いとし,電気的な損失も無視します.

  1. 合成容量 Ce(x) と,板を引き込む電気力 F(x) を求めよ.電源の仕事を明示せよ.

  2. F(ℓ)<f<F(0) の場合の平衡位置と安定性を求めよ.

  3. x=0 で板を静かに放す.初めに内向きに動く場合,板が x=ℓ に達するための電圧の条件を求めよ.最後に,内部の平衡位置での小振動の角振動数と近似条件を求めよ.

挿入長xの板,比誘電率,極板のw,ℓ,d,外向きの一定力f,固定容量C_sとの直列接続と電源Vを示す. 挿入長xの板,比誘電率,極板のw,ℓ,d,外向きの一定力f,固定容量C_sとの直列接続と電源Vを示す.
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考え方
誘電体の入った部分と真空部分は並列,その全体と固定容量は直列である.電源を含めて機械的な仕事を取り出す.

  1. 挿入側の容量は C(x)=C0(1+βx/ℓ).A=C0β/ℓ とおけば C=C0+Ax,Ce=CsC/(Cs+C).共通の電荷は Q=CeV,場のエネルギーの和は U=Q2/(2C)+Q2/(2Cs)=CeV2/2.電源の仕事は dWs=VdQ=V2dCe で,dU=V2dCe/2 との差が Fdx.従って

F(x)=V22dCedx=V2ACs22(Cs+C0+Ax)2.

直列の固定容量により,引き込まれるほど電気力は減る.

  1. D=Cs+C0,B=V2ACs2/2 とおけば F=B/(D+Ax)2.つり合い F(xe)=f から

xe=B/f−DA=VCsA/(2f)−DA.

指定の条件は 0<xe<ℓ を保証する.dFdx=−2AB/(D+Ax)3<0 なので,外向きの一定力と合わせたつり合いは安定である.

  1. x までの運動エネルギーは機械的仕事の積分から

K(x)=∫0x[F(s)−f]ds=V22[Ce(x)−Ce(0)]−fx.

K′(x)=F(x)−f は単調に減るので,初め内向きに動く場合,K(ℓ)≥0 なら途中で止まらず末端へ達する.従って

V2≥2fℓCe(ℓ)−Ce(0),Ce(ℓ)−Ce(0)=Cs2AℓD(D+Aℓ).

すなわち V≥2fD(D+Aℓ)/(ACs2).この下限では F(0)=f(D+Aℓ)/D>f なので初めの運動条件も満たす.等号では末端に達した瞬間の速度が0になる.ξ=x−xe として md2ξdt2=F′(xe)ξ より

ω=2Afm(D+Axe).

線形化には A|ξ|/(D+Axe) が十分小さく,振幅が xe,ℓ−xe より小さいことが必要である.端の影響を捨てた力の式には d/w,d/x,d/(ℓ−x) が十分小さい範囲を用いる.始端・末端での到達条件はその理想模型での値であり,d/ℓ→0 の極限で近似される.

演習 6

オリジナル ★★★★★

同じ2個の電気双極子を真空中に置きます.各双極子は長さ ℓ の軽い剛い棒の両端に電荷 −q,+q と質量 m/2,m/2 を固定したもので,p=qℓ です.初め中心間距離 r0 を ℓ より十分大きく保ち,中心を結ぶ直線を x 軸とします.各棒は xy 平面内を回転でき,双極子モーメントが +x 方向となす角を θ1,θ2 とします.重力を無視します.

  1. 点双極子の電位 V(r)=kp⋅r/r3 を微分し,中心間距離 r0 での相互作用エネルギーを求めよ.θ1=θ2=0 付近の2つの基準角振動数を求めよ.

  2. 両棒を +x 方向にそろえたまま中心の固定を外し,中心を摩擦のない直線の案内に沿って動かす.初速度は0とする.r<r0 かつ ℓ/r が十分小さい範囲で,各中心の速さを求めよ.姿勢を保つ拘束は仕事をしない.

  3. 同じ姿勢で4個の点電荷の相互作用を直接足し,点双極子近似のエネルギーの相対補正を求めよ.さらに姿勢を保つ拘束だけを外し,(2)の中心運動に小さな角振動を重ねる場合,距離変化をゆっくりした変化とみなせる条件を |drdt|/(rω−) で評価せよ.ω− は小さい方の局所的な基準角振動数である.

中心間距離r₀の2本の棒に長さℓ,両端の電荷と質量,+x方向からの角θ₁,θ₂を示す.中心を動かす案内を破線で描く. 中心間距離r₀の2本の棒に長さℓ,両端の電荷と質量,+x方向からの角θ₁,θ₂を示す.中心を動かす案内を破線で描く.
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考え方
一方の作る場に他方の双極子を置く.角度の運動はエネルギーの2次項で分離し,中心の運動は相互作用エネルギーの減少で求める.

  1. V=k(pxx+pyy+pzz)/r3 を各座標で偏微分すると

E1=−∇⁡V=kr3[3(p1⋅er)er−p1].

例えば ∂V∂x=k[px/r3−3x(p1⋅r)/r5] で,他の成分も同様である.第2双極子のエネルギーは U=−p2⋅E1 だから

U=kp2r03[cos⁡(θ1−θ2)−3cos⁡θ1cos⁡θ2].

H=kp2/r03 と置き,角度を2次まで展開すると U≈−2H+H(θ12+θ22+θ1θ2).各棒の慣性モーメントは J=mℓ2/4 である.電荷は一定なので,Jd2θ1dt2=−∂U∂θ1=−H(2θ1+θ2),Jd2θ2dt2=−H(2θ2+θ1).和と差をとれば

ω+=3kp2Jr03,ω−=kp2Jr03.

両方とも実数なので,中心固定のもとでこの姿勢は安定である.

  1. そろった姿勢では U(r)=−2kp2/r3.全運動量が0なので2中心の速さは同じ v で,運動エネルギーの和は mv2.保存則から

mv2=2kp2(1r3−1r03),v=2kp2m(1r3−1r03).
  1. 同符号の2組の距離は r,異符号の組は r−ℓ,r+ℓ なので,r>ℓ で

Uexact=kq2[2r−1r−ℓ−1r+ℓ]=−2kp2r311−(ℓ/r)2.

相対補正は先頭で (ℓ/r)2.接近が進んで r が ℓ に近づくと近似は破れる.局所的な ω−=kp2/(Jr3),|drdt|=2v より

|drdt|rω−=22J/mr1−(rr0)3=2ℓr1−(rr0)3.

従って ℓ/r が十分小さければ,中心の接近も角振動に比べてゆっくりである.実際に(2)へ角振動を重ねても中心運動の式を先頭で保つには,角振動のエネルギーが相互作用エネルギーの大きさより十分小さいことも必要である.角振幅と ℓ/r が小さい条件を別々に確かめる.