問いしるべ
問いから始める物理 電磁波(発展)

電磁波(発展)

第26章の発展問題

著者:柚木芹香

放射による減衰,光圧で変わる軌道,物質の応答を,エネルギーと運動量の収支から調べます.各問題の最後では,近似の範囲や測定の限界,最適な条件を確かめてください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

質量 m,電荷 −e の粒子を,固定した中心へ向かう復元力 −mω02x で束縛します.初め x=A0,速度0で放し,他の抵抗はありません.非相対論的な運動の放射電力は P=e2a2/(6πε0c3) です.放射は弱く,振幅 A(t) は1周期の間にほとんど変わらないとします.

  1. 振動エネルギー U と平均放射電力を A で表し,エネルギーと振幅の時間変化を導け.τe=e2/(6πε0mc3) とおけ.

  2. 周期平均の損失を同じにする速度比例抵抗 −bradv を求めよ.この有効な抵抗を入れた運動方程式を,複素指数関数で初期条件まで解け.この式が瞬間ごとのラーモアの損失まで再現するかも述べよ.

  3. e=1.6×10−19C,m=9.1×10−31kg,ε0=8.9×10−12Fm−1,c=3.0×108ms−1,ω0=4.0×1014rads−1,A0=8.0×10−11m のとき,包絡線振幅の半減時間を求めよ.1周期あたりのエネルギー損失割合と最大速度から,近似を検証せよ.

固定した束縛中心とx方向に振動する粒子を示す.初めの変位はA_0で速度は0である.外へ出る放射は模式的な光の矢印で示す. 固定した束縛中心とx方向に振動する粒子を示す.初めの変位はA_0で速度は0である.外へ出る放射は模式的な光の矢印で示す.
解答を見る

考え方

周期内では振幅を固定して放射を平均し,その平均をエネルギーのゆっくりした減少に結びつける.有効な摩擦はその平均だけを表す.

  1. x≈Acos⁡ω0t とすると U=mω02A2/2,⟨a2⟩=ω04A2/2.従って

⟨P⟩=mτeω04A22=τeω02U,dUdt=−τeω02U.

積分すると U(t)=U(0)e−τeω02t.エネルギーは振幅の2乗に比例するので A(t)=A0e−τeω02t/2 である.これらは周期でならした量についての式である.

  1. 摩擦による平均損失は brad⟨v2⟩=bradω02A2/2.(1)と一致させると brad=mτeω02.γ=τeω02/2 とおくと,有効な方程式は d2xdt2+2γdxdt+ω02x=0 である.x∝est を代入すると

s2+2γs+ω02=0,s=−γ±iΩ,Ω=ω02−γ2.

共役な解を足し,初期条件を入れると

x=A0e−γt(cos⁡Ωt+γΩsin⁡Ωt).

有効な方程式の中ではこの解は厳密だが,放射を平均摩擦へ置き換えた段階に近似がある.実際,転回点では摩擦の損失 bradv2 は0だが,ラーモアの放射は加速度が最大なので0ではない.従って瞬間の損失まで同じにはならない.

  1. τe=6.2×10−24s,γ=5.0×105s−1.包絡線半減時間は

tA=ln⁡2γ=2ln⁡2τeω02=1.4×10−6s.

1周期の損失割合は弱い減衰の範囲で ⟨P⟩(2π/ω0)/U=2πτeω0=1.6×10−8.最大速度の尺度は ω0A0/c=1.1×10−4 である.τeω0 と ω0A0/c がともに小さく,緩やかな減衰と非相対論的な運動の条件を満たす.e→0 では減衰が消えて単振動に戻る.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 M∗,放射電力 P∗ の恒星のまわりを,質量 M の探査機が半径 r0 の円軌道で回っています.展開前の光圧は無視でき,恒星の重力だけで円運動しています.時刻0に面積 S の薄い帆を瞬時に展開します.展開による力積はなく,探査機の質量も変わりません.帆の法線は常に半径方向で,反射率は R,残りを吸収します.吸収後の再放射による合力を無視し,恒星は等方的に放射する点光源とみなします.速度と光速 c の比は十分小さいとします.

  1. 光圧と重力の比を β として,展開後の中心力と,重力と光圧を合わせたポテンシャルを単位質量あたりで求めよ.ポテンシャルは無限遠を0とし,遠心項は含めません.

  2. 0<β<1/2 の場合,展開後の軌道の最遠距離,長半径,離心率,周期を求めよ.展開位置が近点になる理由も述べよ.

  3. 脱出する β の範囲と,正の終速度がある場合の無限遠での速さを求めよ.

  4. 小さい β について,最遠距離と周期の変化率を1次まで求めよ.また,展開から距離 r まで光圧がする仕事を求め,実際の重力だけを含む力学的エネルギーが増えることと,有効なエネルギー保存が両立する理由を述べよ.

解答を見る

考え方

光圧も重力も距離の2乗に反比例するため,中心力の強さだけが変わる.展開直後の速度は,弱まった引力で円運動するには大きすぎる.

  1. I=P∗/(4πr2) より Flight=(1+R)P∗S/(4πcr2).従って

β=(1+R)P∗S4πcGM∗M,F=−GM∗M(1−β)r2er.

ここで er は外向きの単位ベクトルである.有効ポテンシャルエネルギーを Ueff とすると,単位質量あたりでは Ueff/M=−GM∗(1−β)/r である.

  1. 初期速度は v0=GM∗/r0,単位質量あたりの角運動量は h=r0v0=GM∗r0.展開後の有効エネルギーは

UM=v022−GM∗(1−β)r0=GM∗r0(β−12).

ここで U は展開後の有効な力学的エネルギーである.転回点では半径方向の速度が0だから U/M=h2/(2r2)−GM∗(1−β)/r.u=r/r0 を代入すると

(2β−1)u2+2(1−β)u−1=0.

1つの根は u=1,他方は u=1/(1−2β)>1 である.また展開直後の半径方向の加速度は v02/r0−GM∗(1−β)/r02=βGM∗/r02>0 なので,初期位置は近点である.よって

rmax=r01−2β,a=r0(1−β)1−2β,e=rmax−r0rmax+r0=β1−β.

引力定数を GM∗(1−β) に置き換えたケプラーの周期から,初期周期 T0=2πr03/(GM∗) に対して

T=2πa3GM∗(1−β)=T01−β(1−2β)3/2.
  1. U≥0,すなわち β≥1/2 で脱出する.β=1/2 では引力が残る放物線軌道で終速度は0.β>1/2 では,無限遠で有効ポテンシャルが0になるので v∞=GM∗(2β−1)/r0.β≥1 でもこのエネルギー式は使えるが,中心力は0または外向きになり,引力のケプラー軌道とは区別する.

  2. β が小さいと rmax/r0≈1+2β,T/T0≈(1−β)(1+3β)≈1+2β.光圧の仕事は

Wlight=∫r0rβGM∗Mr′2dr′=βGM∗M(1r0−1r).

これは光から探査機へ渡るエネルギーである.有効ポテンシャルは光圧の仕事も位置だけの関数として組み込むため,その有効エネルギーは保存する.1次展開で捨てた項は β2 程度であり,β→1/2 へは延ばせない.点光源と静止帆の近似には,恒星と帆の大きさを r0 で割った量,および v0/c,v∞/c が十分小さいことも必要である.

演習 3

IPhO 1992 第3問(改題) ★★★★☆

宇宙空間で面積 S の薄い帆を光で照らします.入射光は半径方向 er に進み,その強さは I です.帆の法線を n=cos⁡θer+sin⁡θet とします.et は進行方向に垂直な所望の接線方向で,0≤θ≤π/2 です.入射エネルギーの割合 α を吸収し,残りを鏡面反射します.透過はありません.

帆は一様な温度 T,両面の熱放射率はともに ϵ,全熱容量は Cth です.熱放射の電力は各面で ϵσSBST4 です.両面の放射による合力は打ち消し合い,周囲からの熱放射,内部発熱,光圧がする仕事による入射エネルギーの変化は無視します.ϵ は熱放射の振動数帯に対する値で,入射光の吸収率 α とは別に与えます.

  1. u=cos⁡θ として,光による力の半径方向成分と接線方向成分,および平衡温度を求めよ.

  2. 帆の向きを固定し,平衡温度が正の場合に,平衡温度からの小さな温度差の緩和時間を導け.

  3. I=1.0×103Wm−2,S=2.0m2,α=0.20,ϵ=0.10,σSB=5.7×10−8Wm−2K−4,c=3.0×108ms−1,Cth=40JK−1 とします.平衡温度を Tlim=300K 以下に保って,接線方向の力を最大にする角度と,その力を求めよ.温度制限が最適角を変える一般条件も示せ.

解答を見る

考え方

吸収は入射方向の運動量を渡し,鏡面反射は法線方向の運動量を渡す.温度制限を投影面積の上限へ直してから力を最大化する.

  1. 届く電力は ISu.吸収の力は αISuer/c,反射の力は 2(1−α)ISu2n/c である.従って

Fr=ISc[αu+2(1−α)u3],Ft=2(1−α)IScu21−u2.

吸収電力と両面の熱放射をつり合わせると αISu=2ϵσSBSTe4 だから

Te=(αIu2ϵσSB)1/4.
  1. 熱収支は CthdTdt=αISu−2ϵσSBST4.T=Te+δT として T4≈Te4+4Te3δT と展開すると

dδTdt=−8ϵσSBSTe3CthδT,τT=Cth8ϵσSBSTe3.

温度のずれは指数的に減り,平衡は安定である.

  1. Te≤Tlim は u≤uT=2ϵσSBTlim4/(αI) となる.f(u)=u21−u2 は

f′(u)=u(2−3u2)1−u2

なので,制限がなければ u0=2/3 で最大である.0<α<1 では最適値は uopt=min(uT,2/3).従って uT<2/3 のとき温度制限が最適角を変える.指定の数値では uT=0.4617 なので

θopt=arccos⁡0.4617≈63∘,Ft,max=2×0.80×ISc(0.4617)21−(0.4617)2=2.0×10−6N.

このとき Te=Tlim,τT=16s.姿勢の変更中も温度を各姿勢の平衡値で近似するには,姿勢を変える時間が τT より十分長いことが必要である.緩和の線形化には |δT|/Te が小さいこと,光圧の静止近似には帆の速さと c の比が小さいことが必要である.u=0,1 の両極限で接線力は0となる.

演習 4

IPhO 1981 第3問(改題) ★★★★★

実験室で,遠くの送信源からの電波を,水平な反射面の上方にある受信器で測ります.電波の進む向きが水平面となす角は α,受信器の平均の高さは h です.電場は入射面に垂直です.直接波と反射波は同じ振動数・同じ偏光で,到達する電場の複素振幅をそれぞれ E0,rE0e−iδ とします.δ=4πhsin⁡α/λ,r=ρeiϕ,0<ρ<1 です.λ は真空波長です.

反射面は測定中に水平を保ってゆっくり上下し,平均位置からの高さ ζ が変動します.反射係数は変わらず,経路差の変化だけを考えます.ζ の平均は0,標準偏差は σh で,任意の実数 a に対して ⟨eiaζ⟩=e−a2σh2/2 が成り立つとします.各高さでは多くの変動を平均して測り,受信信号は電場の2乗を時間平均した値に比例します.

  1. 直接波だけの信号を1として,平均信号 J(h) と,コントラスト V=(Jmax−Jmin)/(Jmax+Jmin) を求めよ.

  2. sin⁡α=1/2 で高さを走査すると,次のコントラストが得られました.この2波長では ρ,ϕ,σh は共通です.波長 λ1 の信号は h=3.15m で極大になります.ρ,σh,ϕ を求めよ.測定値は示す桁に丸められています.

波長

λ(m)

V

λ1

0.300

0.400

λ2

0.600

0.673

  1. 反射面が,真空と屈折率 n>1 の非磁性・透明媒質の境界だとします.入射面に垂直な電場の反射係数は

r=−n2−cos2⁡α−sin⁡αn2−cos2⁡α+sin⁡α

です.測定と位相が整合するか調べ,n を推定せよ.

  1. 波長1種類のコントラストだけで,反射率と高さの揺らぎを分けて決められますか.σh→0 の極限と,この模型に σh/λ が小さいという条件が必要かも論じよ.

平均反射面から高さhの受信器に,水平面となす角αの直接波と反射波が届く.水平を保って上下する反射面の変位ζと,受信器の高さを走査する方向を示す.図の角度と高さは模式的である. 平均反射面から高さhの受信器に,水平面となす角αの直接波と反射波が届く.水平を保って上下する反射面の変位ζと,受信器の高さを走査する方向を示す.図の角度と高さは模式的である.
解答を見る

考え方

複素振幅の和を2乗してから高さの変動について平均する.位相の揺らぎは干渉項だけを弱めるので,波長を変えると反射振幅と分離できる.

  1. 反射面の変位により δ は δ−aζ,a=4πsin⁡α/λ に変わる.従って各瞬間の信号は |1+ρei(ϕ−δ+aζ)|2.与えた平均の式を使うと

J(h)=1+ρ2+2ρDcos⁡(ϕ−δ),D=exp⁡(−8π2σh2sin2⁡αλ2).

Jmax=1+ρ2+2ρD,Jmin=1+ρ2−2ρD より V=2ρD/(1+ρ2) である.

  1. C=2ρ/(1+ρ2),Ah=8π2σh2sin2⁡α/λ12 とおく.波長が2倍になるので V1=Ce−Ah,V2=Ce−Ah/4.対数をとると

Ah=43ln⁡V2V1≈0.694,C=V2eAh/4≈0.800.

Cρ2−2ρ+C=0 を解き,ρ<1 の根を選ぶと

ρ=1−1−C2C≈0.500,σh=λ1sin⁡αAh8π2=5.6×10−2m.

極大では ϕ−δ が 2π の整数倍である.h=3.15m では δ=4π×3.15×0.5/0.300=21π なので,ϕ=π を 2π の整数倍の違いを除いて得る.

  1. 与えた反射係数は負の実数なので,位相 π と整合する.b=n2−cos2⁡α とすると ρ=(b−sin⁡α)/(b+sin⁡α).従って

b=sin⁡α1+ρ1−ρ,n=cos2⁡α+sin2⁡α(1+ρ1−ρ)2≈3≈1.73.

数値は丸められた測定からの推定である.

  1. 1波長では C と D の積しか分からず,反射率 ρ2 と高さの揺らぎを分離できない.σh→0 なら D→1 となり,コントラストだけから ρ が決まる.ここでは位相平均を展開せず厳密に使ったため,σh/λ が小さいことは必要ない.ただし面の傾きと反射係数の変化を無視でき,σh/h が小さく,変動速度と光速の比も十分小さいという設定が必要である.推定値は 0<ρ<1 を満たし,揺らぎが増す極限では V→0 となる.

演習 5

オリジナル ★★★★★

希薄な非磁性媒質を,固定した中心に束縛された電子の集まりとみなします.電子の数密度は Ne,質量は m,電荷は −e,固有角振動数は ω0 です.外からの電場の複素振幅を E^ とし,実際の場は E^eiωt の実部です.電子の電場方向の変位 y は

d2ydt2+γdydt+ω02y=−emE(t)

に従います.γ>0 はこの振動数での損失を表す係数です.局所的な場と巨視的な場の違いを無視し,分極は P^=−Neey^=ε0χE^ とします.電子の位置は不規則で,前方以外への散乱の強さは各電子の分を足せるものとします.散乱光が直進ビームへ戻る効果と,境界での反射は無視します.真空の定数は ε0,μ0,c=1/ε0μ0 です.

  1. 複素感受率 χ を導け.マクスウェル方程式から非磁性媒質の平面波には n2=1+χ が成り立つことを示し,|χ| が小さいとき,n=nr−ina の nr,na を求めよ.ωp2=Nee2/(ε0m) とおけ.

  2. 電場を E^(x)eiωt の実部,E^(x)=E0e−inωx/c とするとき,細い直進ビームの強さの減衰係数 κI を求めよ.単位体積あたりの平均損失 Nemγ⟨v2⟩ と,ビームから失われる電力が一致するか,χ の1次までで確かめよ.

  3. 損失は放射だけとし,γ=γrad をラーモアの平均放射電力 e2⟨a2⟩/(6πε0c3) から決めよ.この場合の κI が,独立な電子の散乱断面積 σsc=⟨Prad⟩/I に対して Neσsc と χ の1次までで一致することを示せ.

  4. 放射だけの損失で ω/ω0 が十分小さいとします.厚さ d の媒質で真空に対して位相を Δϕ=ω(nr−1)d/c だけ遅らせるとき,散乱による光学的厚さ κId を Δϕ と振動数で表せ.同じ Δϕ を得るために密度と厚さを調整しても,損失を減らせますか.振動数を変える効果と近似の条件も述べよ.

厚さd,電子数密度N_eの希薄媒質を角振動数ωの光が通る.位相と振幅が変化する電場を模式図で示し,固定中心からの電子の変位yと固有角振動数ω_0を別の拡大図に記す.波形は定量的な解を表さない. 厚さd,電子数密度N_eの希薄媒質を角振動数ωの光が通る.位相と振幅が変化する電場を模式図で示し,固定中心からの電子の変位yと固有角振動数ω_0を別の拡大図に記す.波形は定量的な解を表さない.
解答を見る

考え方

電子の複素応答の実部は位相を遅らせ,虚部はビームからエネルギーを失わせる.同じ損失を,巨視的な波と電子の運動の両方で数える.

  1. D0=ω02−ω2,Q=D02+γ2ω2 とおく.複素振幅を代入すると

(D0+iγω)y^=−emE^,χ=ωp2D0+iγω=ωp2(D0−iγω)Q.

巨視的な電束密度は D^y=ε0(1+χ)E^y.x方向へ進む,y方向の電場とz方向の磁場をとると,ファラデーとアンペール・マクスウェルの法則は,長方形の道を縮めた形で

∂Ey∂x=−∂Bz∂t,−∂Bz∂x=μ0∂Dy∂t

となる.平面波の空間因子 e−ikx を入れると kE^y=ωB^z,kB^z=μ0ωD^y.両式より k2=ω2(1+χ)/c2,n=ck/ω だから n2=1+χ である.|χ| が小さければ n≈1+χ/2 なので

nr=1+ωp2D02Q,na=ωp2γω2Q>0.
  1. −in=−inr−na だから |E^(x)|=E0e−naωx/c.強さは振幅の2乗に比例し,I(x)=I(0)e−κIx で

κI=2ωnac=ωp2γω2cQ.

電子の速度の複素振幅は iωy^ なので,体積あたりの平均損失は

qloss=Nemγω2|y^|22=Nee2γω2|E^|22mQ.

一方,χ の0次の強さ I≈ε0c|E^|2/2 に κI を掛けると同じ値になる.従って薄片のエネルギー収支 −dIdx=qloss が1次の精度で成り立つ.

  1. ⟨Prad⟩=e2ω4|y^|2/(12πε0c3) を mγradω2|y^|2/2 と等しくする.τe=e2/(6πε0mc3) とすると

γrad=τeω2,κI=Nee4ω46πε02m2c4Q.

同じ複素応答から,0次の強さ I≈ε0c|E^|2/2 で放射電力を割ると σsc≈e4ω4/(6πε02m2c4Q) なので,χ の1次までで κI=Neσsc と一致する.この損失は熱への吸収ではなく,直進ビームから他方向への散乱である.γrad は振動数に依存し,ここでは単一振動数での有効係数として使う.

  1. 低振動数では D0≈ω02,Q≈ω04 なので

Δϕ≈ωωp2d2cω02,κId≈ωp2τeω4dcω04=2τeω3ω02Δϕ.

密度と厚さは Ned の積だけで両方に入るため,同じ振動数と位相遅れを保つ限り,それらの調整だけでは損失を減らせない.振動数を下げれば,同じ位相遅れでの光学的厚さは ω3 に比例して減るが,必要な Ned は 1/ω に比例して増える.ω2/ω02,τeω3/ω02,|χ| と電子の振動速度の振幅を c で割った量が小さいことが適用条件である.長い伝播距離で位相の1次式を使うには,捨てた位相 ωd|χ|2/c も十分小さくなければならない.κI の次元は長さの逆数で,γ→0 なら減衰は消える.