問いしるべ
問いから始める物理 気体の分子運動論

気体の分子運動論

第15章の発展問題

著者:柚木芹香

到達数の平均,装置の拘束,実在気体の等温線を,与えた模型で調べます.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

質量 m の分子の2本のビームが右へ進み,速さと数密度は (u,n),(3u,n/4) です.右の壁は速さ 0<vp<u で右へ動き,壁から見て弾性反射します.ビームは絶えず供給され,分子間力,分子の体積,再入射を無視します.

  1. 単位面積・単位時間の衝突数 Φ と,単位面積あたりの力 P を求めてください.

  2. 壁へ渡る単位面積あたりの仕事率 J を最大にする vp,そのときの速い分子の到達割合と平均入射エネルギーを求めてください.

速さuと3uのビームは数密度nとn/4をもつ.右向きに速さvₚで動く壁へ届く数は,相対速度u−vₚと3u−vₚで決まる. 速さuと3uのビームは数密度nとn/4をもつ.右向きに速さvₚで動く壁へ届く数は,相対速度u−vₚと3u−vₚで決まる.
解答を見る

考え方 届く数も力積も相対速度から数える.

  1. 速さ v,数密度 ni なら到達数は ni(v−vp),反射後の速度は 2vp−v.力積は 2m(v−vp) なので

Φ=n4(7u−5vp),P=2nm[(u−vp)2+(3u−vp)24].
  1. 1個が失うエネルギーは 2mvp(v−vp) より J=vpP.q=vp/u とすると J=nmu3(13q−14q2+5q3)/2.微分は nmu3(15q−13)(q−1)/2 で,q=13/15 の前で正,後で負だから最大は vp=13u/15.遅い・速いビームの到達数は 2nu/15,8nu/15 より速い割合は 4/5.平均は (1/5)mu2/2+(4/5)m(3u)2/2=37mu2/10.空間内の個数比ではなく,到達数で重みを付ける.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

体積 V の容器に,質量 m の分子Aが 3N0 個,質量 4m の分子Bが N0 個あります.分子の体積と分子間力を無視し,面積 S の小孔から真空へ流出します.容器内は一様で温度 T は一定.平均の速さをAで 2c,Bで c,成分 i の毎秒の流出数を Sni⟨vi⟩/4 とする模型を与えます.

  1. 各個数 N1(t),N2(t) と全圧を求めてください.

  2. Bの個数割合が 2/3 になる時刻 t∗,初圧に対する圧力の比,そこまでの流出分子のAの割合を求めてください.

  3. t∗ で個数による平均 ⟨v2⟩ を求め,質量密度 ρ を用いた p=ρ⟨v2⟩/3 が使えるか確かめてください.

温度Tを一定に保った体積Vの容器に,Aが3N₀個,BがN₀個入っている.平均の速さはAで2c,Bでcと与えられ,面積Sの小孔から真空へ流出する.分子の図は初期個数比3対1を表す. 温度Tを一定に保った体積Vの容器に,Aが3N₀個,BがN₀個入っている.平均の速さはAで2c,Bでcと与えられ,面積Sの小孔から真空へ流出する.分子の図は初期個数比3対1を表す.
解答を見る

考え方 成分ごとに流出を追う.

  1. λ=Sc/(4V) とすると dN1dt=−2λN1,dN2dt=−λN2.よって N1=3N0e−2λt,N2=N0e−λt,p=N0kBT(3e−2λt+e−λt)/V.

  2. N1/N2=1/2 より t∗=(ln⁡6)/λ.残る個数は N0/12,N0/6 だから圧力比は 1/16.流出数は 35N0/12,10N0/12 よりAの割合は 7/9.

  3. 同温度の希薄気体では ⟨vA2⟩=3kBT/m,⟨vB2⟩=3kBT/(4m).個数割合 1/3,2/3 で平均すると ⟨v2⟩=3kBT/(2m).一方 ρ=3N0m/(4V),p=N0kBT/(4V) なので 3p/ρ=kBT/m.指定の式は圧力を 3/2 倍に見積もる.正しくは nimi⟨vi2⟩/3 を足すか,質量で重み付けする.

演習 3

東京大 2004 前期(改題) ★★★★☆

真空中の水平な2つのシリンダーのピストンを剛い棒で連結します.断面積は左が A,右が 3A,連結体の質量は Mp.右向き変位 x に対して気体の体積は V1=V0+Ax,V2=3V0−3Ax です.各気体は物質量 ν の希薄な理想気体で,初めは両方 T0,x=0.摩擦を無視します.

  1. 右は T0 に保ち,左だけゆっくり温めます.xs=V0/(5A) のストッパーに達する左の温度を求め,左が 2T0 となったときストッパーが連結体へ及ぼす力を求めてください.

  2. ストッパーを外した場合の平衡位置と小振動の角振動数を求めてください.各温度は常に 2T0,T0,圧力は体積へ瞬時に応答する模型とします.

左面積A,右面積3Aのピストンが剛い棒で連結される.右向き変位xで左室は膨張,右室は圧縮される.ストッパーはxₛで右への運動を止める. 左面積A,右面積3Aのピストンが剛い棒で連結される.右向き変位xで左室は膨張,右室は圧縮される.ストッパーはxₛで右への運動を止める.
解答を見る

考え方 両面の圧力による力をつり合わせる.

  1. 自由に動ける間は p1=3p2.y=Ax/V0,θ=T1/T0 とすると θ/(1+y)=1/(1−y) だから y=1/5 で θ=3/2.その後は体積が固定される.p∗=νRT0/V0 とおくと,T1=2T0 で p1=5p∗/3,p2=5p∗/12.気体の合力は右へ A(p1−3p2)=5Ap∗/12 なので,ストッパーの力は左へ同じ大きさ.

  2. 2/(1+y)=1/(1−y) より xe=V0/(3A).合力 F=AνR[2T0/V1−3T0/V2] の傾きは F′(xe)=−27A2νRT0/(8V02).ξ=x−xe とすれば Mpd2ξdt2=F′(xe)ξ より ω=27A2νRT0/(8MpV02).

演習 4

オリジナル ★★★★★

物質量 ν のファンデルワールス気体 p=RT/(w−b)−a/w2 と既知の臨界定数 wc=3b,Tc=8a/(27Rb),pc=a/(27b2) を使います.

  1. ϕ=w/wc,θ=T/Tc,P=p/pc により,気体の種類によらない式を導いてください.これを対応状態の法則と呼びます.

  2. θ=3/2 で ϕ=1 から2までゆっくり膨張させます.気体が外へする仕事 W=ν∫pdw を νpcwc で割って求め,同じ温度と両端の体積の理想気体と比べてください.

θ=3/2のファンデルワールス等温線を実線,同じ温度の理想気体を破線で示す.φ=1から2の実線の下の面積はW/(νp꜀w꜀)である. θ=3/2のファンデルワールス等温線を実線,同じ温度の理想気体を破線で示す.φ=1から2の実線の下の面積はW/(νp꜀w꜀)である.
解答を見る
  1. 代入すると P=8θ/(3ϕ−1)−3/ϕ2,a,b は消え,同じ ϕ,θ なら同じ P になる.

  2. dw=wcdϕ より

Wνpcwc=∫12(123ϕ−1−3ϕ2)dϕ=4ln⁡52−32≈2.17.

理想気体は P=4/ϕ なので仕事は 4ln⁡2≈2.77.比は約 0.781.この模型では約22 %小さくなる.

演習 5

オリジナル ★★★★★

物質量 ν のファンデルワールス気体を鉛直ピストン(面積 A,質量 Mp)で閉じます.pc>Mpg/A とします.温度は振動中も T=(1+ϵ)Tc(ϵ>0)で一定.外圧 p0 を調整し,平衡のモル体積を 3b に保ちます.圧力は体積へ瞬時に応答し,気体は一様,摩擦と減衰は無視する模型です.

  1. p0+Mpg/A と小振動の角振動数を求めてください.

  2. ϵ=0 の極限で,上向き変位 x による先頭の復元力を求めてください.s=Ax/(3νb) とし,(1+s)−2=1−2s+3s2−4s3+⋯ を使ってよいとします.角振動数が0なら,復元力も消えますか.

鉛直ピストンの平衡体積は3νb.上向き変位xで体積がAx増す.温度を一定に保ち,圧力の傾きと高次の変化から復元力を調べる模型である. 鉛直ピストンの平衡体積は3νb.上向き変位xで体積がAx増す.温度を一定に保ち,圧力の傾きと高次の変化から復元力を調べる模型である.
解答を見る

考え方 圧力の傾きが0なら次の次数を調べる.

  1. RTc=8bpc,a=27b2pc より平衡圧力は p0+Mpg/A=pc(1+4ϵ).また ∂p∂w=−RT/(w−b)2+2a/w3 は w=3b で −2pcϵ/b.体積変化は Ax,モル体積変化は Ax/ν だから Mpd2xdt2=−2pcϵA2x/(νb).したがって ω=2pcϵA2/(Mpνb) である.

  2. 演習4の式に θ=1,ϕ=1+s を入れ,P=4/(1+3s/2)−3/(1+s)2 を展開すると P=1−3s3/2+⋯.合力は

F=A(p−pc)≈−pcA418ν3b3x3.

変位と逆向きの復元力は残り,単振動の線形近似が使えない.