問いしるべ
問いから始める物理 電磁誘導と交流

電磁誘導と交流

第23章の章末問題

著者:柚木芹香

磁束の変化,電流の過渡応答,導体の運動,交流の電力を組み合わせて考えます.交流は複素振幅の実部で表し,素子定数は一定,回路内の信号伝達時間は扱う時間尺度より十分短いとします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

固定された2つのコイルの相互インダクタンスを M>0 とし,正の電流が作る磁束は強め合うものとします.2次コイルは自己インダクタンス L,全抵抗 R の閉回路です.1次電流を0から Ip まで変え,その後は一定に保ちます.2次電流は初め0で,操作後も十分長く待ちます.

  1. 2次回路の式を立て,全時間に通過する符号付き電荷 qtot を求めよ.

  2. M=6.0mH,R=3.0Ω,Ip=2.0A で評価せよ.1次電流を増す速さだけを変えると,答えは変わるか.

固定した1次コイルと閉じた2次コイルを描く.正の電流が同じ向きの磁束を作る巻き方向と,2次回路のL,Rを示す. 固定した1次コイルと閉じた2次コイルを描く.正の電流が同じ向きの磁束を作る巻き方向と,2次回路のL,Rを示す.
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考え方 回路の式を操作前から電流が消えるまで積分する.

  1. 1次電流を I1(t),2次電流を I(t) とすれば,LdIdt+RI=−MdI1dt である.両辺を全時間にわたって積分すると

L[I(∞)−I(0)]+R∫0∞Idt=−M[I1(∞)−I1(0)].

両端で2次電流は0だから,qtot=−MIp/R となる.負号は増加した1次磁束を打ち消す向きに電荷が通過することを示す.

  1. qtot=−(6.0×10−3H)(2.0A)/(3.0Ω)=−4.0mC.電流の波形は変わっても積分値は変わらない.単位も HAΩ−1=C となり,電流が消えるまで待つ条件が重要である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

静止した N=100 巻の検出コイルの1巻の面積は S=2.0×10−3m2 です.正の法線方向の外部磁場を B(t)=B0sin⁡ωt,B0=0.010T,ω=1.0×103s−1 とします.検出コイルを含む閉回路の全抵抗は R=30Ω,自己インダクタンスは L=40mH です.定常状態を扱います.

  1. 誘導起電力と電流の複素振幅を求め,実際の電流を表せ.正の電流は正の法線方向に磁場を作ります.

  2. 平均発熱率と,磁場を変える装置が回路に与える1周期あたりのエネルギーを求めよ.

静止コイル,抵抗,磁場を変える外部装置を描く.S,N,正の法線と正の電流の対応を示す. 静止コイル,抵抗,磁場を変える外部装置を描く.S,N,正の法線と正の電流の対応を示す.
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考え方 外部磁束の変化を電源に相当する起電力とし,自己誘導はインピーダンスに含める.

  1. 外部の鎖交磁束は NSB0sin⁡ωt だから,E=−NSB0ωcos⁡ωt=−2.0cos⁡ωtV.複素振幅は E^=−2.0V,Z=R+iωL=(30+40i)Ω である.したがって

I^=−2.030+40iA=(−0.024+0.032i)A,I(t)=(−0.024cos⁡ωt−0.032sin⁡ωt)A.
  1. Ie=|I^|/2=0.040/2A より,P=RIe2=0.024W.回路の式に I を掛けると EI=RI2+ddt(LI2/2).1周期でコイルのエネルギーは元に戻るので,装置からの供給は W=PT=2πP/ω=1.5×10−4J となる.自己磁束を外部磁束と二重に数えておらず,L→0 では電流が起電力と同位相になる.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

自己インダクタンス L,抵抗 R>0 の静止した1巻き閉回路を考えます.正の法線方向の外部磁束を,時刻0から T の間だけ一定の割合 −E0 で減らし,それ以外では一定に保ちます.E0>0,初め電流0です.

  1. 時刻0以後の電流を求めよ.

  2. t=0 から電流が消えるまでの全発熱量を求め,起電力がする仕事と比較せよ.

  3. 外部磁束変化量の大きさ ΔΦ=E0T を固定して T を変えるとき,T→0 の発熱量を求めよ.

閉回路のLとR,正の周回方向を描く.外部磁束の時間グラフに初期値,傾き,変化時間Tだけを示す. 閉回路のLとR,正の周回方向を描く.外部磁束の時間グラフに初期値,傾き,変化時間Tだけを示す.
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考え方 起電力の有無で解をつなぎ,コイルに残るエネルギーも最終的には熱になると考える.

  1. τ=L/R とおく.0<t<T では LdIdt+RI=E0 だから,定常解と斉次解を加えて I=E0(1−e−t/τ)/R.電流の連続性より IT=E0(1−e−T/τ)/R.t≥T では I=ITe−(t−T)/τ である.

  2. 初めも終わりも磁気エネルギーは0なので,全発熱量は起電力の仕事に等しい.直接積分すると

Qtot=∫0TE0Idt=E02R[T−τ(1−e−T/τ)].

発熱を別々に積分しても,操作中は E02[T−2τ(1−e−T/τ)+τ(1−e−2T/τ)/2]/R,操作後は LIT2/2 であり,和は上式になる.

  1. E0=ΔΦ/T を代入する.u=T/τ が小さいとき 1−e−u=u−u2/2+⋯ なので,Qtot→ΔΦ2/(2L).この極限では直後の電流が ΔΦ/L となり,その磁気エネルギーが熱になる.極限は集中定数模型での値であり,実際に速い操作を近似するには信号伝達時間と T の比も十分小さくなければならない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

相互誘導のない理想コイル L1=L,L2=2L と抵抗 R を,同じ端子A,Dの間に並列につなぎます.時刻0に電源から切り離された直後の電流は,コイル1でAからDへ I∗>0,コイル2で0です.切り替え中もコイルの電流経路を確保します.以後,外部電源はありません.

  1. 両コイルの電流の和と,それぞれの電流を求めよ.両電流の正方向はAからDです.

  2. 十分時間がたった後の電流と,全発熱量を求めよ.

AとDの間の3本の並列枝にL,2L,Rを配置する.両コイルの電流の正方向と初期電流I_*を示す. AとDの間の3本の並列枝にL,2L,Rを配置する.両コイルの電流の正方向と初期電流I_*を示す.
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考え方 並列枝の電圧は共通である.電流の和は減衰するが,コイルどうしを循環する電流は残りうる.

  1. J=I1+I2 とおく.抵抗電流はAからDへ −J,共通電圧は V=−RJ である.LdI1dt=2LdI2dt=V より,dJdt=−3RJ/(2L).したがって J=I∗e−t/τ,τ=2L/(3R).一方,LI1−2LI2=LI∗ が保存される.これと和の式から

I1=I∗+2J3,I2=J−I∗3.
  1. J→0 なので I1→I∗/3,I2→−I∗/3.初期エネルギーは LI∗2/2,終状態では L(I∗/3)2/2+2L(I∗/3)2/2=LI∗2/6 である.全発熱量は差の Q=LI∗2/3.直接積分しても ∫0∞RJ2dt=RI∗2τ/2=LI∗2/3 となる.抵抗電流が消えても,各理想コイルの電流が0になるとは限らない.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

開放時の実効電圧 Ve=100V,内部抵抗 r=2.0Ω の交流電源に理想変圧器の1次側をつなぎます.巻数比 n=N2/N1 を可変とし,2次側には R=200Ω,L=0.40H,可変容量 C を直列につなぎます.角振動数は ω=5.0×102s−1,磁化電流は無視します.

  1. 抵抗 R に供給する平均電力を n,C の関数として表せ.

  2. この電力を最大にする C,n と最大電力を求め,電源の内部抵抗の発熱も求めよ.

内部抵抗付き交流電源,巻数比nの変圧器,2次側の直列RLC負荷を描く.電源の起電力と1次端子電圧を区別する. 内部抵抗付き交流電源,巻数比nの変圧器,2次側の直列RLC負荷を描く.電源の起電力と1次端子電圧を区別する.
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考え方 負荷を1次側へ換算し,リアクタンスを消してから巻数比を選ぶ.

  1. X=ωL−1/(ωC),負荷の複素インピーダンスを Z=R+iX とする.1次側から見た負荷は Z/n2.起電力の複素振幅を 2Ve と取ると,I^1=2Ve/(r+Z/n2),I^2=I^1/n だから

PR=R2|I^2|2=Ve2n2R(R+rn2)2+X2.
  1. 固定した n では X=0 が最適で,C=1/(ω2L)=10μF.y=n2>0 とすれば dPRdy=Ve2R(R−ry)/(R+ry)3 なので,最大は y=R/r=100,n=10 である.PR,max=Ve2/(4r)=1.3×103W.丸める前の値は 1250W で,I1,e=Ve/(2r)=25A,内部の発熱も rI1,e2=1250W となる.電源が与える VeI1,e=2500W の半分が負荷へ渡ることが検算になる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

2端子の箱には,抵抗 r と理想コイル L,または抵抗 r とコンデンサー C が直列に入っています.V(t)=V0cos⁡ωt,V0=10.0V を加え,定常電流を I(t)=Iccos⁡ωt+Issin⁡ωt として測定しました.表は表示桁に丸めた値で,箱と計器の温度は一定です.

ω[s−1]

Ic[mA]

Is[mA]

1.00×103

80.0

60.0

2.00×103

38.5

57.7

  1. 中の素子を判別し,最初の行から各定数を求め,2行目を予測せよ.

  2. 最初の周波数で cos⁡ωt=1 となる瞬間に電源を外し,箱の両端を短絡します.切り替えで電流の経路は途切れません.以後の電流と全発熱量を求めよ.

2端子の箱,交流電源,電流計と,電源を外して箱を短絡する切り替えを描く.箱の中の素子の種類は記さない. 2端子の箱,交流電源,電流計と,電源を外して箱を短絡する切り替えを描く.箱の中の素子の種類は記さない.
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考え方 正弦項の符号を複素振幅へ正しく移し,求めた定数を過渡応答でも使う.

  1. 実部に戻すときの符号から I^=Ic−iIs.したがって

Z=V0Ic−iIs=V0(Ic+iIs)Ic2+Is2=(80.0+60.0i)Ω.

虚部が正なのでコイルであり,r=80.0Ω,L=60.0/(1.00×103)H=60.0mH.次の周波数では Z=(80.0+120i)Ω,I^=10.0/(80.0+120i)A=(0.03846−0.05769i)A.よって表の2行目を表示精度内で説明する.

  1. 切り替え直後の電流は I(0)=Ic=0.0800A である.以後 LdIdt+rI=0 を積分し,I(t)=0.0800e−t/τA,τ=L/r=0.750ms.全発熱量は ∫0∞rI(0)2e−2t/τdt=rI(0)2τ/2=LI(0)2/2=1.92×10−4J となる.切り替えに使うのは振幅でなくその瞬間の電流であり,信号伝達時間を td とすれば td/τ と ωtd が十分小さい範囲の模型である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

間隔 l の水平レール上の導体棒の質量を m とします.レールの左端を抵抗 R>0 とコンデンサー C の直列で結び,面に垂直な一様磁場 B を加えます.レールと棒の抵抗は0です.時刻0に,無電荷のコンデンサーを接続したまま棒へ右向きの速度 u>0 を与えます.以後外力はなく,摩擦と自己誘導を無視します.正の電荷 q は,右向きの運動が充電する極板の電荷です.

  1. q(t),v(t) と,十分時間がたった後の速度を求めよ.

  2. 全発熱量を求め,棒が停止しない理由を述べよ.

水平レール,棒,左端の直列RCを描く.磁場,初速度u,充電される極板のqと電流の正方向を示す. 水平レール,棒,左端の直列RCを描く.磁場,初速度u,充電される極板のqと電流の正方向を示す.
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考え方 棒の運動量変化と通過電荷を結び付け,回路の式を電荷だけの方程式にする.

  1. b=Bl とおく.I=dqdt,回路の式は RI+q/C=bv,棒の式は mdvdt=−bI.後者を積分すると mv+bq=mu.これを前者へ代入して

Rdqdt+(1C+b2m)q=bu.

τ=RmC/(m+b2C),q∞=mCbu/(m+b2C) とおけば,初期条件より q=q∞(1−e−t/τ).したがって

v=mum+b2C+b2Cum+b2Ce−t/τ,v∞=mum+b2C.
  1. 初期エネルギーから最終の運動エネルギーと静電エネルギーを引くと

Q=mu22−mv∞22−q∞22C=mb2Cu22(m+b2C).

直接積分でも Q=∫0∞R(q∞/τ)2e−2t/τdt=Rq∞2/(2τ) となり一致する.充電後は運動起電力とコンデンサー電圧がつり合い,電流も制動力も消える.自己誘導の無視には,無視したインダクタンスを Ls として Ls/(Rτ) が十分小さいことが必要である.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

間隔 l の水平レールの左端を,理想コイル L とコンデンサー C の直列で結びます.L は一定で,レールと棒の自己誘導は無視します.質量 m の導体棒に右向きの初速度 u>0 を与え,時刻0に放します.一様磁場 B は面に垂直で,初め電流も電荷も0,抵抗,摩擦,外力はありません.q は右向きの運動が充電する極板の電荷です.

  1. q(t),I(t),v(t) を複素指数関数を用いて求めよ.

  2. 棒が左向きに動く時刻が存在するための条件を求めよ.また運動エネルギー,コイルとコンデンサーのエネルギーの和が保存されることを示せ.

棒とレール,直列LCを描く.初速度u,磁場,qの極板,正の充電電流を示す. 棒とレール,直列LCを描く.初速度u,磁場,qの極板,正の充電電流を示す.
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考え方 棒の速度は通過電荷で変わるため,電気振動の復元項に運動の効果が加わる.

  1. b=Bl,I=dqdt とおく.回路と棒の式は Ld2qdt2+q/C=bv,mdvdt=−bdqdt.積分して v=u−bq/m を代入すると

Ld2qdt2+(1C+b2m)q=bu.

qe=mCbu/(m+b2C),Ω=(1/C+b2/m)/L とする.q−qe∝est の特性方程式は Ls2+1/C+b2/m=0,根は s=±iΩ.初期条件から

q=qe(1−cos⁡Ωt),I=qeΩsin⁡Ωt,v=u[1−α+αcos⁡Ωt],α=b2Cm+b2C.
  1. 最小速度は u(1−2α)=u(m−b2C)/(m+b2C) だから,左向きになる条件は b2C>m.等号では瞬間的に静止するが,左向きにはならない.また

ddt(12mv2+12LI2+q22C)=−bvI+I(LdIdt+q/C)=0.

初期値は mu2/2 であり,制動が続いた後にはコイルとコンデンサーから棒へエネルギーが戻る.微小な残留抵抗を Rs とすると,無減衰の1周期を近似するには Rs/(LΩ) が十分小さいことが必要である.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

面積 S,巻数 N の発電コイルを,一様磁場 B の中で一定の角速度 ω>0 で回します.正の法線と磁場の角は ωt です.静止した負荷を含む全回路は直列RLCで,R,L,C>0 は回転速度によらず一定,定常状態とします.

  1. 電流の複素振幅と,回転を保つ外力の平均仕事率を求めよ.

  2. N,S,B,R,L,C を固定し,平均仕事率を最大にする有限の ω が存在する条件と,その値を求めよ.電流の振幅を最大にする回転速度も求めよ.

  3. ω→∞ の模型内の極限を求め,(2)の回転速度を 1/LC で近似する条件を述べよ.

回転コイルの磁場,法線,角ωt,摺動接点と静止した直列RLC負荷を描く. 回転コイルの磁場,法線,角ωt,摺動接点と静止した直列RLC負荷を描く.
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考え方 回転を速めると起電力の振幅も増す.電圧振幅を一定にした共振条件をそのまま使わない.

  1. K=NSB とおけば,E=Kωsin⁡ωt,E^=−iKω.したがって

I^=−iKωR+i(ωL−1/(ωC)),P=R2|I^|2=K2Rω22[R2+(ωL−1/(ωC))2].

実際の電流は I^eiωt の実部である.1周期で回路の蓄積エネルギーは元に戻るので,外力の平均仕事率も P となる.

  1. y=ω2,a=R2−2L/C とおくと,P=K2Ry2/[2(L2y2+ay+C−2)].微分すると

dPdy=K2R2y(ay+2C−2)(L2y2+ay+C−2)2.

有限の最大点が存在するのは a<0,すなわち R2C<2L の場合で,ω∗2=1/(LC−R2C2/2).それ以外では単調増加して極限値へ近づく.P=RI02/2 だから,電流振幅の最大点も同じである.

  1. P→K2R/(2L2),I0→K/L.ϵ=R2C/(2L) が十分小さいとき,ω∗=(LC)−1/2(1−ϵ)−1/2≈(LC)−1/2(1+ϵ/2).この近似の小さい量は ϵ である.無限大の周波数の極限はあくまで回路模型内の値で,実際の集中定数近似には,回路内の信号伝達時間を td として ωtd が十分小さいことも必要である.