問いしるべ
問いから始める物理 外部運動と内部運動

外部運動と内部運動

第9章の章末問題

著者:柚木芹香

系に含める物体と,角運動量を測る点を自分で選んでください.運動エネルギーを保存できない過程でも,何が変わらないかを探すと見通しが立ちます.

演習 1

オリジナル ★★★☆☆

なめらかな水平面を速さ V で直進する台に,同じ鉛直軸を持つ2つのローターを載せた.軸は台に固定され,外部へ鉛直軸まわりのトルクを伝えない.ローターの慣性モーメントは I,2I,初めの角速度は 3ω0,−ω0 である.装置全体の質量は M,重心は軸上にある.内部クラッチをつなぐと,最終的に両ローターが同じ角速度になる.

  1. 最終角速度と発熱量を求めよ.

  2. 重心の運動と外部の運動エネルギーは変わるか.発熱量を V で変えられるかも説明せよ.

台の上に同軸のローターIと2Iを上下に描き,初めの逆向き回転3ω₀と−ω₀,台のVを示す. 台の上に同軸のローターIと2Iを上下に描き,初めの逆向き回転3ω₀と−ω₀,台のVを示す.
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考え方 クラッチの摩擦は内力である.角運動量は足し算で保存するが,回転エネルギーは一部が熱になる.鉛直運動はない.

  1. I(3ω0)+2I(−ω0)=3Iωf より ωf=ω0/3.初めの回転エネルギーは 11Iω02/2,最後は Iω02/6 で,差の Q=16Iω02/3 が発熱になる.一般式 Q=I1I2(ω1−ω2)2/[2(I1+I2)] に戻しても同じ結果を得る.

  2. 水平外力はなく P=MV は一定なので,MV2/2 は変わらない.発熱は内部の相対的な回転が減った分であり,V を変えても同じである.特に V=0 でも発熱は生じる.「内部角運動量一定」は「内部運動エネルギー一定」を意味しない.

演習 2

オリジナル ★★★☆☆

水平な無端ベルトを2つの固定ローラーに掛ける.上側の直線部分で質量 m の人が右へ走り出する.ベルトとローラーの運動エネルギーを,上側ベルトの右向き速度 w を使って Aw2/2 と表せるとする.A>0 は装置の有効な慣性を表し,単位は質量である.初めはすべて静止し,人が上側ベルトから受ける右向き摩擦力は一定の f である.接触は滑らず,軸摩擦はない.人の体内エネルギーの減少を考え,重心の上下動と四肢の運動エネルギーの変化は無視する.

  1. 時間 t 後の人の速度と w を求めよ.

  2. 人の重心とベルトの幾何学的な重心を合わせて,水平運動量保存を使えない理由を説明せよ.

  3. 人が消費した内部エネルギーを求めよ.

固定軸を持つ2ローラーと無端ベルト,上側を走る人,右向きfを描く.上側ベルト速度wの正方向を示す. 固定軸を持つ2ローラーと無端ベルト,上側を走る人,右向きfを描く.上側ベルト速度wの正方向を示す.
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考え方 軸がなめらかでも,固定軸は装置へ外力を及ぼす.重心が静止するベルトでも,内部に運動エネルギーを蓄えられる.

  1. 人について mv˙=f より v=ft/m.ベルトの運動方向に沿う駆動力は −f なので Aw˙=−f,w=−ft/A.この式は仕事率 d(Aw2/2)dt=−fw とも一致する.

  2. 固定された支持台から水平反力を受けるため,人・ベルト・ローラーの系は孤立していない.一様な無端ベルトでは全体の重心は固定されていても,上側と下側は逆向きに運動している.人の運動量 ft の増加は支持部からの外力積でまかなわれ,矛盾はない.支持台まで自由に動ける別の装置なら,その台の反動も含める必要がある.

  3. 固定軸は仕事をせず,接触の滑りによる発熱もないので,減った体内エネルギーは増えた全運動エネルギーに等しい.

Q=12mv2+12Aw2=f2t22(1m+1A)

A→∞ ならベルトはほぼ静止し,普通の床を走る極限に近づく.有限の A では人はベルトを逆向きに回すためのエネルギーも使う.

演習 3

オリジナル ★★★☆☆

幅 a,質量 M の一様な薄い長方形板を,左の鉛直辺Oで摩擦なく支える.初め板は静止している.質量 m=M/3 の小球が,板の幅の中央へ垂直に速さ u で弾性衝突する.球と板の接触は滑らかである.

  1. 衝突直後の球の速度と板の角速度を求めよ.

  2. 軸が板へ与えた,入射方向の力積を求めよ.

鉛直辺Oを軸とする幅aの板を上から見て,Oからa/2の中央への入射球M/3とuを示す. 鉛直辺Oを軸とする幅aの板を上から見て,Oからa/2の中央への入射球M/3とuを示す.
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考え方 固定軸の力積があるので並進運動量を保存してはいけない.軸まわりの慣性モーメントは IO=Ma2/3.

  1. 板への力積を J とすれば IOω=Ja/2,球は u−J/m.弾性の反発条件は u−J/m−(a/2)ω=−u だから

J=2u1/m+(a/2)2/IO=8Mu15

となる.球の速度は −3u/5,板の角速度は 4u/(5a).板の重心速度は 2u/5 である.

  1. 板だけの運動量変化は 2Mu/5.よって軸から板への力積は JO=2Mu/5−8Mu/15=−2Mu/15,入射と反対向きである.板から軸へは逆向きとなる.エネルギーを検算すると,球は 3Mu2/50,板は 8Mu2/75,和は Mu2/6=mu2/2 で保存する.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

一様な棒の質量は M,長さは l である.なめらかな水平面上で,ある瞬間に棒が y 軸に沿い,重心は原点,重心速度は +x 方向に V>0,自転は反時計回りに ω>0 である.この瞬間,棒上の座標 y=b の点へ −x 方向の力積を1回だけ加える.

  1. 並進と回転を同時に止めるのに必要な力積の大きさと b を求めよ.

  2. そのような打点が棒上に存在する条件を求め,除かれるエネルギーを示せ.

棒の重心速度Vと反時計回りの角速度ω,左向きの力積Jを示す.打点は概念的な位置で,bの符号は未定である. 棒の重心速度Vと反時計回りの角速度ω,左向きの力積Jを示す.打点は概念的な位置で,bの符号は未定である.
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考え方 2つの運動を止めるには,運動量と内部角運動量を同時に0にする必要がある.力積の符号を外積で調べる.

  1. 力積の大きさを J とすると MV−J=0,よって J=MV.(0,b,0)×(−J,0,0)=(0,0,bJ) なので IGω+bJ=0.したがって b=−l2ω/(12V).Gより下側を打つ.上側へ左向きの力積を加えると,回転をむしろ強める.

  2. |b|≤l/2 は ωl≤6V に等しい.この範囲では Q=MV2/2+Ml2ω2/24 が除かれる.これは受動的な制動でも実現しうる.この打点の初速度は vx=V−ωb=V+IGω2/(MV)>0 で,力積はその動きを妨げる向きだからである.ω→0 なら中心を打てばよい.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

質量 M=2.0kg の剛体に,重心から未知の距離 d で垂直な力積 J=1.2kgms−1 を加えた.初め静止し,なめらかな水平面内で動く.直後の角速度は 3.0rads−1,全運動エネルギーは 0.90J と測定された.

  1. 重心まわりの慣性モーメントと打点の距離を求めよ.

  2. 直後の瞬間回転中心までの距離と,回転に入ったエネルギーの割合を求めよ.

形の詳細が未知の剛体にG,未知の距離d,力積Jを描く.角速度の測定とエネルギー測定を短く添える. 形の詳細が未知の剛体にG,未知の距離d,力積Jを描く.角速度の測定とエネルギー測定を短く添える.
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考え方 全エネルギーから並進の分を引けば,形を知らなくても回転の慣性モーメントを逆算できる.

  1. V=J/M=0.60ms−1.K外=0.36J より K内=0.54J.したがって IG=2K内/ω2=0.12kgm2.角力積から d=IGω/J=0.30m となる.

  2. s=V/ω=0.20m で,打点と反対側である.回転に入った割合は 0.54/0.90=0.60,すなわち60 %.ds=0.060m2=IG/M と検算できる.測定されたエネルギーが J2/(2M) より小さかったなら,この静止からの平面運動という仮定とは両立しない.また形が不明なので,回転中心が物体の内部にあるかどうかはこのデータだけでは決まらない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

平面上の3質点 m,m,2m の重心に対する位置が,ある瞬間 (a,0),(−a,0),(0,0) である.重心速度は V,重心まわりの角運動量の z 成分は L>0 とする.

  1. 各内部速度を vi′=ωez×ri′+wi と書き,ω=L/(2ma2) と選ぶと,エネルギーの交差項が消えることを示せ.

  2. この位置配置と V,L を持つ運動の,最小の運動エネルギーと各速度を求めよ.ez は紙面に垂直な単位ベクトルである.

Gの左右aにm,Gに2mの3質点を配置し,重心速度Vを描く.未知の内部速度は描かない. Gの左右aにm,Gに2mの3質点を配置し,重心速度Vを描く.未知の内部速度は描かない.
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考え方 指定の角運動量を持つ剛体回転を先に取り出すと,残りは角運動量を持たない速度になる.

  1. I=∑mi|ri′|2=2ma2.指定の回転の角運動量は Iω=L なので,∑mi(ri′×wi)z=0.したがって交差項 ω∑mi(ez×ri′)⋅wi は0で,

K=12(4m)V2+L22I+∑i12mi|wi|2

と書ける.

  1. 最後の和は非負で,すべての wi=0 のとき最小.Kmin=2mV2+L2/(4ma2).速度は順に V+(0,L/(2ma)),V+(0,−L/(2ma)),V である.これらは重心の条件も満たす.これはこの瞬間の下限であり,自由な3質点が以後もこの配置を保つという意味ではない.L=0 では全員が重心と同じ速度を持つ状態が最小になり,第6章の結果につながる.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

質量 M,長さ l の一様棒の端Aを,上下に動く支持具へ摩擦のない軸で取り付ける.支持具の鉛直上向き加速度を a とする.棒はAから斜め下へ延び,鉛直下向きから反時計回りに角 θ(0<θ<π/2) をなす.棒には重力とAの支持力だけが働く.

  1. 相対速度で測るAまわりの式から,棒の角加速度 α を求めよ.

  2. 支持具の加速度が一定で,棒を小さく振動させるときの周期を求めよ.a=−g と a<−g の場合も説明せよ.

鉛直に加速する支持点と棒を示す模式図. 鉛直に加速する支持点と棒を示す模式図.
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考え方 Aを通る支持力を消すには,Aが動くための補正も入れる.そのあと角の小さい極限を調べる.

  1. rAG=(lsin⁡θ/2,−lcos⁡θ/2).重力のトルクは −Mglsin⁡θ/2,補正の外積は Mlasin⁡θ/2.IA=Ml2/3 より α=−3(g+a)sin⁡θ/(2l).Aが空間に固定された場合の式へ,単に支持力を消しただけではこの a の分を得られない.

  2. 小さな θ では sin⁡θ≈θ だから,g+a>0 なら θ¨=−[3(g+a)/(2l)]θ,T=2π2l/[3(g+a)].a=0 で端を固定した棒の周期に戻る.a=−g では角加速度が0で,初めの角速度を保ち,復元する振動はない.a<−g では下向きの姿勢からのずれを増す角加速度となり,この姿勢は不安定である.l/(g+a) は時間の2乗の次元をもつ.ここでは座標を動く系へ移さず,静止系で導いた補正の式だけを使った.