問いしるべ
問いから始める物理 外部運動と内部運動

外部運動と内部運動

第9章の発展問題

著者:柚木芹香

保存則に加えて,打点の範囲,接触の条件,内部の拘束を調べます.式が解けても,負の接触力積や不可能な打点を採用していないかまで確かめてください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

なめらかな水平面上に静止した,質量 M,長さ l の一様な棒へ,質量 m の小球を垂直に速さ u で当てる.重心から打点までの距離を d(0≤d≤l/2) とし,反発係数は一定の e(0≤e≤1) である.接触の力積は入射方向に限る.

  1. 衝突直後の棒の角速度を最大にする d を求めよ(必要なら,商の微分 ddd(dc+d2)=c−d2(c+d2)2(c は定数)を使ってよい).質量比による場合分けを明示せよ.

  2. m=M,e=1/2 のとき,最適打点,瞬間回転中心,小球の速度,失われるエネルギーの割合を求めよ.

棒のGから可変距離dへ小球mが速さuで入射する図.選べる打点の範囲0からl/2を括弧で示す. 棒のGから可変距離dへ小球mが速さuで入射する図.選べる打点の範囲0からl/2を括弧で示す.
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考え方 端ほど腕は長いが,接触点が動きやすくなるので力積は小さくなる.力積を一定とみなして最大化してはいけない.

  1. I=Ml2/12,A=1/m+1/M とおく.反発条件から J=(1+e)u/(A+d2/I),したがって

ω(d)=(1+e)udIA+d2,dωdd=(1+e)u(IA−d2)(IA+d2)2

である.制限がなければ d∗=IA=l(M+m)/(12m) で最大.これが l/2 以下なのは M≤2m のときである.よって m≥M/2 では d∗,m<M/2 では端 l/2 を選ぶ.境界では両方の式が一致する.内部最適点では ωmax=(1+e)u/(2IA).反発係数は大きさを変えるが最適打点を変えない.

  1. d∗=l/6.この点では d∗2/I=A=2/M なので J=3Mu/8,V=3u/8,ω=36u/(4l).瞬間回転中心は打点と反対側へ s=V/ω=l/(26).小球は u−J/M=5u/8 で進む.損失は Q=(1−e2)u2/[2(A+d∗2/I)]=3Mu2/32,初めの Mu2/2 の 3/16 である.接触点の速度は V+ωd∗=9u/8 であり,小球との差は −u/2 と反発条件を満たす.小球が前進しても棒の接触点より遅ければ,両者は離れていく.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

質量 M,長さ l の一様な細い棒の端Aへ,棒と垂直な水平力積 J を加える.棒は初め静止し,水平面はなめらかである.撃力が終わった後の自由運動を考える.

  1. 棒の中央の断面で,一方の半分が他方の半分へ及ぼす力の大きさと向きを求めよ.

  2. 棒を同じ材質・断面積 S で作り,許される引張応力を σ とする.自由回転中に破断しないための J の上限を求めよ.衝突中の局所的な応力波は考えない.

  3. 衝突直後,中央の結合を力積なしに外せたとする.2本の半棒の重心速度と自転角速度を求め,エネルギーが飛び変わらないことを確かめよ.

棒の端AへのJと中央断面を示す.中央の結合を外せることを拡大図で描き,未知の内部力は描かない. 棒の端AへのJと中央断面を示す.中央の結合を外せることを拡大図で描き,未知の内部力は描かない.
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考え方 棒全体に外力がなくても,半分だけを系に取れば切断面の力は外力になる.半棒の重心は全体の重心のまわりを回っている.

  1. 全体の V=J/M,ω=6J/(Ml) は一定.半棒の重心はGから l/4 にあるので,その向心加速度は ω2l/4.質量は M/2 だから

F=Mω2l8=9J22Ml

で,それぞれの半棒をGへ引く向きである.切断面では引張力であり,2つの力は作用反作用の対となる.

  1. 線密度 λ=M/l とする.Gから距離 x≥0 の断面が外側部分へ及ぼす張力は T(x)=∫xl/2λω2rdr=λω2(l2/4−x2)/2.最大は中央で,F/S≤σ より J≤2MlSσ/9.単位は kgmN=kgms−1 である.これは撃力が終わった後の条件だけであり,衝突時にも安全だとは結論できない.

  2. A側と反対側の重心速度は入射方向を正として V+ωl/4=5J/(2M),V−ωl/4=−J/(2M).各半棒は同じ ω で回り続ける.各重心まわりの慣性モーメントは (M/2)(l/2)2/12=Ml2/96.並進エネルギーの和は 13J2/(8M),自転の和は 3J2/(8M),合計は 2J2/M.切断前の MV2/2+(Ml2/12)ω2/2 と一致する.内部力を除いた瞬間には速度は変わらず,その後の軌跡が変わるのである.

演習 3

オリジナル ★★★★★

質量 M,長さ l の一様な棒の両端に,棒を車軸とする薄い車輪を付ける.車輪の半径は棒の長さに比べて十分小さく,棒の運動は斜面に平行な平面内に限る.車輪の質量・慣性モーメント・軸摩擦は無視し,十分広い傾斜角 β の平面上を滑らずに転がるとする.車輪は車軸に垂直な方向へ自由に転がれるが,車軸方向には滑れない.両端の接触は保たれるものとする.

斜面に沿って下向きを x,等高線方向を y とし,棒の向き n=(cos⁡θ,sin⁡θ),それを90度回した方向を t=(−sin⁡θ,cos⁡θ) とする.初め θ=0,重心速度は0,棒は面内で θ˙=Ω>0 の回転をしている.

  1. θ˙ が一定で,重心速度が V=ut と書けることを示せ.

  2. u(t) と重心の軌跡を求め,1回転後の変位を示せ.必要なら cos2⁡θ=1+cos⁡2θ2 を使ってよい.

  3. 滑りを防ぐのに必要な静止摩擦係数の下限を求めよ.

斜面内の座標xを下り方向に取り,棒の両端の車輪,向きnと転がれる向きt,角θを描く.初期は棒がx方向である. 斜面内の座標xを下り方向に取り,棒の両端の車輪,向きnと転がれる向きt,角θを描く.初期は棒がx方向である.
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考え方 車輪の質量が無視できるので,転がる方向の力は0である.車軸方向の摩擦は棒に沿い,重心まわりの面に垂直なトルクを持たない.見かけの力を導入せず,斜面に固定した座標で計算する.

  1. 両端の車軸方向速度はともに V⋅n で,滑らないため0.よって V=ut.重力はGに作用し,接触力も面に垂直な角運動量を変えないので,θ˙=Ω,θ=Ωt.

  2. a=gsin⁡β と略記する.t 方向の運動方程式は u˙=−asin⁡θ.初期条件から u=a(cos⁡θ−1)/Ω.x˙=−usin⁡θ,y˙=ucos⁡θ を積分すると,初期位置を原点として

x=a2Ω2(1−cos⁡θ)2,y=aΩ2(θ2+sin⁡2θ4−sin⁡θ)

となる.1回転では Δx=0,Δy=πa/Ω2.下り続けるのではなく,上下に往復しながら等高線方向にずれていく.Mu2/2=Max が成り立ち,回転エネルギーは一定なのでエネルギー保存にも合う.β=0 ならGは動かない.

  1. t˙=−Ωn だから,重心の n 方向加速度は −uΩ.摩擦の合力の符号付き成分を f とすると −MuΩ=Macos⁡θ+f,よって f=Ma(1−2cos⁡θ).両輪の反力は Mgcos⁡β/2 ずつで,対称に f/2 を負担できる.|1−2cos⁡θ| の最大値は3なので,全回転で滑らない条件は μ≥3tan⁡β.条件を満たさない床では,(2)をそのまま長時間延長できない.

演習 4

オリジナル ★★★★★

質量 M,長さ l の一様棒が,なめらかな水平面上で y 軸に沿って静止している.質量がともに M の2つの小球A,Bが,+x 方向へそれぞれ速さ u,v>0 で進み,Aは棒の中心G,Bは上端へ同時に接触する.小球同士は接触せず,各接触の力積は x 方向だけである.

反発しない瞬間衝突を次の模型で扱う.各接触で,棒への力積 JA,JB は非負.力積が正の接触では,直後の球と棒の接触点の法線速度は等しくなる.力積が0の接触では,棒の接触点速度が球の速度以上で,互いに離れてよいものとする.これは付着を要求する模型ではない.

  1. 両方の力積が正の場合を解き,成立する v/u の範囲を求めよ.

  2. その範囲外で成立する解を求めよ.

  3. 各範囲のエネルギー損失を求め,境界で連続することを確認せよ.

y軸上の棒のGと上端に向け,左側から小球Aのuと小球Bのvを水平に描く.接触が同時であることを記す. y軸上の棒のGと上端に向け,左側から小球Aのuと小球Bのvを水平に描く.接触が同時であることを記す.
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考え方 2接点の力積は同じ棒を介して影響し合う.独立した2回の衝突として順に計算してはいけない.負になった力積は,引っ張る接触を意味し,この模型では認めない.

  1. 棒の重心速度は V=(JA+JB)/M,時計回りの角速度は ω=6JB/(Ml).Gと上端の速度はそれぞれ (JA+JB)/M,(JA+4JB)/M.球の速度と等置すると 2JA+JB=Mu,JA+5JB=Mv.したがって

JA=M9(5u−v),JB=M9(2v−u)

となる.両方正なのは 1/2<v/u<5.各球の速度は u−JA/M,v−JB/M で,棒の対応する接点と一致する.

  1. v/u≤1/2 では JB=0,JA=Mu/2.棒は回らず V=u/2 で,上端がBより速いので離れる条件を満たす.v/u≥5 では JA=0,JB=Mv/5.このとき V=v/5,ω=6v/(5l) で,GがAより速い.等号では一方の力積が0かつ相対速度も0で,両方の表式が同じ解を与える.

  2. 速度変化が力積に線形なので,エネルギー変化は各力積に対する接触相対速度の始値と終値の平均で計算できる.活動する接触は終値0だから Q=(JAu+JBv)/2.よって

Q={Mu2/4(v/u≤1/2),M(5u2−2uv+2v2)/18(1/2≤v/u≤5),Mv2/10(v/u≥5).

中央の分子は M{(u−v)2+4u2+v2} で常に正.境界 v=u/2 では Mu2/4,v=5u では 5Mu2/2=Mv2/10 に一致する.全運動量と角運動量はどの範囲でも保存し,エネルギーだけが失われる.