問いしるべ
問いから始める物理 外部運動と内部運動

外部運動と内部運動

第9章のまとめ

著者:柚木芹香

物体の集まりを,重心全体の運動と,重心に対する運動に分けました.2体について第6章で使った考え方が,多数の質点や回転する剛体にも使えます.ただし,分けて書けることと,それぞれが保存することは別です.

3つの分解

全質量を M,重心位置を R,重心速度を V とします.ri′=ri−R,vi′=vi−V です.角運動量は慣性系の固定点Oから測り,内部の角運動量は重心から測ります.

量

外部運動の分

内部運動の分

全体

運動量

MV

∑mivi′=0

P=MV

運動エネルギー

MV2/2

K内=∑mi|vi′|2/2

K=MV2/2+K内

角運動量

R×P

L′=∑ri′×mivi′

LO=R×P+L′

ポイント 分解で消えるもの

∑miri′=0 と ∑mivi′=0 によって交差項が消える.内部の運動量の和が0でも,各部分は動いており,内部のエネルギーや角運動量は0とは限らない.

並進しながら回る剛体を,Gの並進とGまわりの回転の2つに分ける模式図.運動量,エネルギー,角運動量の3行で外部と内部を対応させる. 並進しながら回る剛体を,Gの並進とGまわりの回転の2つに分ける模式図.運動量,エネルギー,角運動量の3行で外部と内部を対応させる.

保存則の選び方

ポイント 系・時間・基準点を決める

  1. まず系に含める物体を決めます.棒と球の接触力は,両者を含めれば内力,棒だけを取れば外力です.

  2. 調べる時間区間を決めます.衝突中は有限の重力やばねの力の力積を無視できても,固定軸や床の衝撃力まで無視できるとは限りません.

  3. 外力積が0の方向では運動量が保存します.固定軸で支えられた物体の全運動量は,普通は保存しません.

  4. 角力積が0になる固定点を選びます.固定軸を基準にすれば,軸の未知の力積を角運動量の式から消せます.重心まわりなら,重心が加速しても dL′dt=τG を使えます.接点のような動く点を使うときは,余分な項が消えるかを確かめます.内力のトルクが相殺する系を前提にします.

  5. エネルギーの行き先を調べます.弾性衝突なら運動エネルギーが保存します.付着や摩擦では熱・変形へ移る分を含め,爆発や筋肉では内部から供給される分を含めます.

  6. 反発係数は接触点どうしの速度に使います.剛体の接触点速度は V+ω×r′ です.重心の速度だけで代用しないでください.

  7. 力積の向き,打点の範囲,エネルギー損失の符号を検算します.解けた式が接触条件を満たさなければ,別の場合分けが必要です.

状況

運動量

重心まわりの角運動量

運動エネルギー

外力なし,内力で変形・発熱あり

保存

内力のトルクが相殺すれば保存

一般には変化

一様な重力だけを受ける平面運動の剛体

鉛直成分が変化

保存

並進の分が変化し,回転の分は一定

自由な剛体と球の滑らかな弾性衝突

系全体で保存

系全体の重心まわりで保存

系全体で保存

固定軸を持つ物体への衝突

一般には変化

一般には変化.固定軸まわりを選ぶ

弾性なら保存,付着なら減少

主な公式と条件

  • 平面運動の剛体では K内=IGω2/2,Lz′=IGω です.3次元の任意の回転で角運動量ベクトルが角速度と平行になるとは限りません.

  • 2質点では K内=μvrel2/2,L′=μr×vrel です.μ=m1m2/(m1+m2) は換算質量です.

  • 重心の仕事は Δ(MV2/2)=∫F外⋅dR.実際の仕事は各力の作用点の変位で計算します.外力は重心の運動だけでなく,内部の回転なども変えられます.

  • 静止した自由な剛体へ,Gから距離 d で垂直な力積 J を加えると,V=J/M,ω=Jd/IG.直後の瞬間回転中心は打点と反対側に s=IG/(Md) です.延長線上に来る場合もあります.

  • 一様棒では s=l2/(12d).固定支点OとGの距離が h なら,打撃の中心はOから q=IO/(Mh).端で支える一様棒では q=2l/3 です.

  • 動く点 A のまわりでは,静止系の速度で測ると dLAdt=τA−MvA×V,A に対する相対速度で測ると dLA∗dt=τA−M(R−rA)×aA です.剛体に固定した点では IAα=τA−M[(R−rA)×aA]z,瞬間回転中心 Q では IQα=τQ−Mdd˙ω(d は Q から G までの距離)です.

  • 軸が物体へ与える力積と,物体が軸へ与える力積は逆向きです.力積を報告するときは,受ける物体も添えます.

各節の問いへの答え

  • 外部運動と内部運動:花火の分裂中には外力積を無視でき,重心速度は変わりません.増えた運動エネルギーは破片の内部運動に入ります.その後も一様な重力だけなら重心は同じ放物線を描きます.

  • 角運動量の分解:一様な重力の重心まわりのトルクは0なので,投げたバトンの内部角運動量は一定です.平面運動で慣性モーメントも一定なら自転角速度も一定です.公転と自転を分けて書けても,個別に保存するとは限りません.両者の間で角運動量をやり取りする場合は,合計を追います.

  • 角運動量を取る点の選び方:一様な円柱の接点にある点は,速度0で加速度が G を向くので,接点のまわりで IPα=τP が使えます.偏心円板では加速度が G を向かず,OG が水平の瞬間に MbRω2 のずれが出ます.そのまま使えるのは,固定点,G,加速度が G への直線に沿う点です.瞬間回転中心なら,G までの距離が変わらない場合です.

  • 剛体の衝突:端を打った一様棒では,直後にGから反対側へ l/6 の点が止まっています.これは固定点ではなく,その後の瞬間回転中心は通常,棒の外へ出ます.手に力積が来ない理想的な「芯」は打撃の中心です.実際のバットの振動や変形までこの剛体模型で説明するわけではありません.

この章で使った数学

質量を重みにした和,ベクトルの分解,内積と外積の分配,平行軸の定理,力積の積分,動く点のまわりの外積の微分を使いました.発展では,打点に関する微分,部分系の運動方程式,回転する方向ベクトルの微分,接触条件による場合分けも使いました.いずれも,どの量を固定し,どの量を変えるかを先に決めることが計算の出発点です.