問いしるべ
問いから始める物理 光

光

第27章の章末問題

著者:柚木芹香

屈折,結像,干渉,回折,偏光を組み合わせて,光学装置の働きを調べます.空気の屈折率は1とし,レンズは薄い理想レンズです.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

格子定数 d=20.0μm の透過格子を,波長 λ=600nm の平行光で垂直に照らします.格子の直後に焦点距離 f=0.250m の凸レンズを置き,後側の焦点面で回折像を観察します.回折方向の角を θ,焦点面の横座標を x とします.

  1. 正の1次の主極大の位置を,近軸近似で求めよ.

  2. レンズを焦点距離 2f のものに替え,スクリーンもその焦点面へ動かすと,回折角と主極大の位置はどう変わるか.

透過格子の直後に凸レンズを置き,距離fの後側焦点面を観察する.格子定数d,回折方向θ,焦点面の横座標xを示す. 透過格子の直後に凸レンズを置き,距離fの後側焦点面を観察する.格子定数d,回折方向θ,焦点面の横座標xを示す.
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考え方 格子は光の進む角を決め,レンズはその角を焦点面の位置へ変える.

  1. 隣接スリットの経路差は dsin⁡θ で,1次の主極大には dsin⁡θ=λ が必要である.平行光束は焦点面の x=ftan⁡θ に集まるので,sin⁡θ≈tan⁡θ≈θ として

x≈fλd=0.250×600×10−920.0×10−6m=7.50mm

を得る.

  1. 格子の条件は変わらないので回折角は同じで,位置は x′=2ftan⁡θ≈15.0mm となる.ここで小さいとした量は λ/d=0.0300 で,位置の近軸近似の相対補正はその2乗程度である.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

自然光を空気から透明体の平面へ入射させます.反射光が完全な直線偏光になる入射角は θ1=60.0∘ で,そのとき反射方向と屈折方向は直交します.入射光の真空波長は λ0=660nm です.反射光の強度を Ir とし,その進路に理想検光子を置きます.

  1. 透明体の屈折率 n と,内部の光の波長を求めよ.

  2. 検光子の透過軸が入射面に垂直な方向となす角を β とする.透過強度が Ir/4 になる 0≤β≤90∘ の角を求めよ.

自然光は入射角θ₁が60.0°で透明体へ入射する.上段の紙面が入射面で,下段は反射光に沿って見た検光子の透過軸と角βを示す. 自然光は入射角θ₁が60.0°で透明体へ入射する.上段の紙面が入射面で,下段は反射光に沿って見た検光子の透過軸と角βを示す.
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考え方 ブルースター角では屈折角と入射角の和が直角になり,反射光の電場は入射面に垂直である.

  1. θ2=90∘−θ1 と屈折の法則 sin⁡θ1=nsin⁡θ2 より,n=tan⁡θ1=3≈1.73.境界を越えて振動数は変わらず,速さが 1/n 倍になるから,波長は λ=λ0/n=381nm である.

  2. マリュスの法則より I=Ircos2⁡β.指定範囲では cos⁡β=1/2 なので β=60∘.β=90∘ では消光することも確かめられる.角度を小さいとする近似は使っておらず,完全な偏光という結論は入射角が正確にブルースター角である場合に限る.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

空気中の凸レンズに入る平行光は,レンズから f=0.180m の位置に集まります.レンズの右 s=0.0400m の位置から,厚さ h=0.0120m,屈折率 n=1.50 の平行平板を光軸に垂直に挿入します.板の後方にも空気があります.開口半径は R=2.00mm,反射と回折は無視し,近軸光線を考えます.

  1. 板を入れた後の結像位置を求めよ.

  2. スクリーンを元の位置に保った場合の,光斑の直径を求めよ.

開口半径Rの凸レンズの右に,前面位置s,厚さh,屈折率nの平行平板を挿入する.元の焦点面までの距離fを示す. 開口半径Rの凸レンズの右に,前面位置s,厚さh,屈折率nの平行平板を挿入する.元の焦点面までの距離fを示す.
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考え方 板の内部では光線の傾きが小さくなるため,軸へ近づく距離が減る.後面を出ると元の傾きに戻る.

  1. レンズを出る光線の軸に向かう傾きの大きさを u とする.前面での高さは u(f−s).屈折の法則の近軸形から板内の傾きは u/n で,後面の高さは u(f−s)−uh/n である.後面から交点までの距離はこの高さを u で割った値だから,レンズから測る像距離は

b=s+h+f−s−hn=f+h(1−1n)=0.184m

となる.焦点は 4.00mm 遠ざかる.

  1. 開口の縁を通る光線では u=R/f.元の面は新焦点より δ=b−f 手前なので,半径は uδ.直径は

2Rfδ=22.00×10−30.180×4.00×10−3m=0.0889mm

である.n→1 で焦点の移動も光斑も消える.近軸条件は R/f=0.0111 が十分小さいことで,板全体が元の焦点より手前にあることも用いた.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

間隔 d の細い2スリットを,同じ光源からの同位相・同振幅の直線偏光で照らします.入射電場は,互いに直交する横方向の軸 x,y のそれぞれと 45∘ をなします.各スリットの直後に理想偏光板を置き,一方の透過光を x 方向,他方を y 方向の偏光にします.各スリットだけを開けたときのスクリーンでの強度は,偏光板を通した後でそれぞれ I0 です.光路差による相対位相を ϕ とし,スクリーンの直前に,透過軸が x 方向となす角 0≤β≤π/2 の理想検光子を置きます.

  1. 検光子を置かないと縞が見えない理由を述べ,検光子を置いた後の強度 I(ϕ) を複素振幅から求めよ.

  2. 縞の鮮明度を V=(Imax−Imin)/(Imax+Imin) と定義する.V と,完全に暗い縞が生じる β を求めよ.

2スリットの透過軸は互いに直交するxとyである.2経路の相対位相はφで,スクリーン前の検光子の透過軸はxと角βをなす. 2スリットの透過軸は互いに直交するxとyである.2経路の相対位相はφで,スクリーン前の検光子の透過軸はxと角βをなす.
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考え方 直交する電場には強度の交差項がない.同じ透過軸への射影後は,複素振幅を足してから絶対値を2乗する.

  1. 検光子がなければ2電場は直交し,強度は 2I0 で ϕ に依存しない.検光子後の複素振幅は E0(cos⁡β+eiϕsin⁡β).時間因子 eiωt を掛けた実部が電場であり,強度は

I=I0|cos⁡β+eiϕsin⁡β|2=I0(1+sin⁡2βcos⁡ϕ)

となる.

  1. sin⁡2β≥0 より Imax=I0(1+sin⁡2β),Imin=I0(1−sin⁡2β).したがって V=sin⁡2β で,完全な消光には β=π/4 が必要である.このとき最大は 2I0,最小は0,位相についての平均は I0 となり,検光子が平均強度を半分にすることとも一致する.これは偏光板が余分な時間変動や無相関な位相差を作らない理想化で,小角近似は不要である.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

水平な平面鏡を y=0 に置き,波長 λ=560nm の点光源を (z,y)=(0,H),H=0.350mm に置きます.z=L=1.25m のスクリーン上で,直接光と鏡で1回反射した光を重ねます.反射により電場の位相が π 変わり,両光の振幅は等しいとします.y>0 の小角領域だけを考えます.

  1. 光路差を鏡像光源で表し,最初の明線の高さと明線間隔を求めよ.

  2. 装置の距離を保って一様な屈折率 n=1.40 の液体中に入れます.鏡の位相変化は同じとして,最初の明線の高さを求めよ.

鏡yが0の上に高さHの点光源を置く.距離Lのスクリーン上に高さyの観測点をとり,光源とスクリーンの配置を示す. 鏡yが0の上に高さHの点光源を置く.距離Lのスクリーン上に高さyの観測点をとり,光源とスクリーンの配置を示す.
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考え方 反射経路の長さは鏡像光源からの距離に等しい.経路差に加えて反射の位相反転を数える.

  1. 鏡像光源は (0,−H) にある.反射経路から直接経路を引いた差は

Δ=L2+(y+H)2−L2+(y−H)2≈2HyL

である.反射側の相対位相は π−2πΔ/λ なので,明線は Δ=(m+1/2)λ,m=0,1,… に現れる.最初の高さは y0=Lλ/(4H)=0.500mm,間隔は w=Lλ/(2H)=1.00mm である.

  1. 光学距離の差は経路差の n 倍である.よって 2nHy0′/L=λ/2,y0′=y0/n=0.357mm.y→0 の極限では位相反転によって暗くなる.距離の展開は H/L,|y|/L が十分小さい範囲で有効である.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

屈折率 ng=1.60 の凸レンズは,空気中で焦点距離 f0=0.120m をもちます.これを屈折率 n=1.30 の液体へ沈めます.同じレンズについて

1f=K(ngn−1),1f0=K(ng−1)

が成り立ち,K は形状だけで決まる定数です.液体中のレンズの前 a=0.780m に,互いに無相関な2点光源を光軸に垂直に s=50.0μm 離して置きます.真空波長は λ0=600nm,円形開口の直径は D=8.00mm です.像面での分解の条件を,像の間隔が 1.22(λ0/n)b/D 以上と与えます.

  1. 液体中の焦点距離,像距離 b,像の間隔を求めよ.

  2. 2点は分解できるか.また,同じ形状のレンズを n=ng の液体へ入れると結像能力はどうなるか.

屈折率nが1.30の液体中に凸レンズを置く.間隔sが50.0 μmの2点光源の物体距離aは0.780 m,レンズの開口直径Dは8.00 mmである. 屈折率nが1.30の液体中に凸レンズを置く.間隔sが50.0 μmの2点光源の物体距離aは0.780 m,レンズの開口直径Dは8.00 mmである.
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考え方 周囲との屈折率の比がレンズの強さを決める.波長も液体中の値へ直し,幾何学的な像の間隔と回折の広がりを比べる.

  1. 2式の比から

f=f0ng−1ng/n−1=0.312m,b=afa−f=0.520m

となる.横倍率は M=−b/a=−2/3 であるから,像の間隔は s′=|M|s=33.3μm である.

  1. 分解に必要な間隔は

smin′=1.22λ0bnD=36.6μm

で,s′<smin′ より分解できない.n=ng なら 1/f=0 で,レンズ表面で光が曲がらず,有限距離の実像は作れない.近軸近似では D/a,D/b,s/a が十分小さいことが必要で,ここでは最大でも D/b=0.0154 である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

空気に挟まれた一様な透明膜を,いろいろな入射角で照らします.膜厚 h と屈折率 n>1 は未知で,分散を無視します.各角度で,反射光が強め合う最長の真空波長 λ を測りました.膜内での屈折角を θ2 とし,膜の上下の反射光だけを考え,その振幅の違いは極大の位置に影響しないとします.

X=sin2⁡θ1

0

0.2500

0.6400

λ

600.0nm

565.7nm

507.5nm

  1. Y=λ2 と X を使って直線化し,最初と最後の測定から h,n を推定せよ.中間の測定も確かめよ.

  2. 両端の波長に独立な不確かさ uλ=0.2nm があるとする.X は正確とし,h の不確かさを一次近似で求めよ.独立な誤差の寄与は2乗して足し,平方根を取る.

空気に挟まれた厚さhの膜について,法線,入射角θ₁,膜内の角θ₂を示す.下段はXがsin²θ₁,Yが測定波長λの2乗である3測定点のみを示す. 空気に挟まれた厚さhの膜について,法線,入射角θ₁,膜内の角θ₂を示す.下段はXがsin²θ₁,Yが測定波長λの2乗である3測定点のみを示す.
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考え方 片方だけの反射で位相が反転することから最長波長を選び,屈折の法則で膜内の角を消去する.

  1. 反射の位相反転は上面だけにあり,強め合いの条件は 2nhcos⁡θ2=(m+1/2)λ,m=0,1,….最長波長は m=0 だから λ=4nhcos⁡θ2.sin⁡θ1=nsin⁡θ2 より

Y=16h2(n2−X)=B−SX,S=16h2,B=16h2n2

である.波長をナノメートル単位で計算すると,B=360000nm2,S=(600.02−507.52)/0.6400nm2=160068nm2.よって

h=S4≈100.0nm,n=BS≈1.500

を得る.中間の予測は B−0.2500S=565.67nm で,表の桁に丸めると一致する.

  1. X3=0.6400 と置くと S=(λ12−λ32)/X3 なので

uS=2uλX3λ12+λ32≈491nm2,uh=uS8S=huS2S≈0.15nm

となる.したがって h=(100.02±0.15)nm.直線の負の傾きは斜め入射で光路差が減ることを表す.誤差の一次近似には uλ/λ と uS/S が十分小さいことが必要で,後者は約 0.0031 である.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

波長 λ1=600nm,λ2=630nm の2種類の光を,間隔 d=0.500mm の細い2スリットに垂直に当てます.各波長ではスリットの複素振幅は同じで,片スリットだけによる強度は I0 です.異なる波長どうしの干渉項は検出器の時間平均で消えます.直後の凸レンズの後側焦点面で観察し,焦点距離は f=0.250m,横座標は x とします.回折の包絡線を無視し,小角で考えます.

  1. 合計の強度を,速く変化する余弦と,ゆっくり変化する余弦の積で表せ.その変調の振幅が最初に0になる正の x を求めよ.

  2. 両波長の明線が中央以外で初めて一致する正の位置と,それぞれの次数を求めよ.

波長λ₁が600 nm,λ₂が630 nmの光を,間隔dが0.500 mmの2スリットに垂直入射する.レンズから距離fの後側焦点面と横座標xを示す. 波長λ₁が600 nm,λ₂が630 nmの光を,間隔dが0.500 mmの2スリットに垂直入射する.レンズから距離fの後側焦点面と横座標xを示す.
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考え方 同じ波長の振幅を足して強度を出し,波長が違う成分は強度で足す.和積の公式から縞の変調を読む.

  1. ϕj=2πdx/(fλj) とすれば,各強度は Ij=I0|1+eiϕj|2=2I0(1+cos⁡ϕj).したがって

I=4I0[1+cos⁡(ϕ1+ϕ22)cos⁡(ϕ1−ϕ22)]

となる.ゆっくり変わる因子が最初に0になる条件は πdx(1/λ1−1/λ2)/f=π/2 だから

x∗=fλ1λ22d(λ2−λ1)=3.15mm

である.変調の振幅が0になる位置でも,合計強度は 4I0 であり暗点ではない.

  1. 一致には dx/f=m1λ1=m2λ2 が必要で,20m1=21m2 の最小の正整数解は m1=21,m2=20.よって x=f(21λ1)/d=6.30mm.波長が近いため速い縞と遅い変調を分けて見られるが,強度の式自体に波長差の展開はない.位置の近似には |x|/f が十分小さいことが必要で,この位置では 0.0252 である.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

凸レンズによる点光源の実像の距離は b=0.200m ですが,スクリーンはその位置から δ=1.00mm 遠くへずれています.波長は λ=550nm,可変の円形開口の直径は D です.ぼけを評価する模型として,幾何学的な光斑半径と回折の半径を

rg=Dδ2b,rd=1.22λbD,r=rg2+rd2

と与えます.吸収と収差は無視し,この r の最小化を考えます.

  1. 最適な D と,最小の r を文字式と数値で求めよ.

  2. δ が4倍になったときの最適直径と最小半径の倍率を求めよ.δ→0 での最適直径の振る舞いと,模型の限界を述べよ.

開口直径Dの凸レンズによる結像距離bは0.200 mである.スクリーンはその結像面よりδが1.00 mm遠くに置かれる. 開口直径Dの凸レンズによる結像距離bは0.200 mである.スクリーンはその結像面よりδが1.00 mm遠くに置かれる.
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考え方 絞ると幾何学的なぼけは減るが,回折は増える.与えた模型の半径の2乗を最小化する.

  1. A=δ/(2b),B=1.22λb と置くと,r2=A2D2+B2/D2.微分して 2A2D−2B2/D3=0 より D2=B/A.両端で r が発散するのでこの点は最小で,rg=rd が成り立つ.したがって

Dopt=2.44λb2δ=7.33mm,rmin=2AB=1.22λδ=25.9μm

である.

  1. Dopt∝δ−1/2,rmin∝δ1/2 なので,直径は半分,半径は2倍になる.δ→0 では模型は無限大の開口を要求するが,実際にはレンズの直径が有限で,近軸近似や無収差の理想化も破れる.数値設定では δ/b=0.00500,Dopt/b=0.0366 が小さく,回折を元の像面の式で評価する近似も有効である.2乗の和という評価法は与えた模型の約束である.