問いしるべ
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光

第27章の発展問題

著者:柚木芹香

屈折率分布,レンズ系,多スリットの振幅を使って,光学装置の設計とその限界を調べます.必要な模型を問題文で与え,近似や理想化が結果にどう影響するかまで考えます.

演習 1

IPhO 1969 第4問(改題) ★★★★☆

高さ H=30.0mm の透明な台の上に,固定されたガラス板があり,台の上面と板の間に一様な空気層ができています.初めの厚さ h0 は未知です.垂直入射の反射光を分光すると,真空波長 λ1=480nm,λ2=800nm に強め合いの極大があり,その間に別の極大はありません.空気の屈折率は1,ガラスと台の屈折率はともに1より大きく,空気層の2面からの反射だけを考えます.

台だけをゆっくり温めると,上面が上がります.温度上昇を ΔT,台の線膨張係数を α=1.00×10−5K−1 とし,h=h0−αHΔT とする模型を用います.台の底面とガラス板は固定され,空気の屈折率は温度によらないものとします.

  1. h0 と,各極大の次数を求めよ.

  2. 接触するまでの温度上昇を求めよ.次に波長を λ0=600nm に固定し,接触前に反射が極大となる温度上昇をすべて求めよ.

  3. 膜厚の推定には,λ1 と λ2 の値だけでなく,間に極大がないという情報が必要です.その情報がなければ許される膜厚を表せ.また,2波長が非常に近い場合に膜厚推定が誤差に敏感になる理由を微分で示せ.

底面を固定した高さHの台と固定ガラス板の間に厚さhの空気層がある.下段には観測された480 nmと800 nmの2極大のみを示し,高さは模式的に表す. 底面を固定した高さHの台と固定ガラス板の間に厚さhの空気層がある.下段には観測された480 nmと800 nmの2極大のみを示し,高さは模式的に表す.
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考え方 一方の反射だけに位相反転がある.波長の順序と次数の順序は逆になり,隣接する極大の次数差は1である.

  1. 空気から台への反射では位相が π 変わり,ガラスから空気への反射では変わらない.したがって極大の条件は 2h0=(m+1/2)λ,m=0,1,….短い波長側の次数が1だけ大きいから

2h0(1λ1−1λ2)=1,h0=λ1λ22(λ2−λ1)=600nm

である.2h0/λ1=5/2,2h0/λ2=3/2 より次数は順に2,1となる.

  1. 接触には h=0 が必要なので,ΔTc=h0/(αH)=2.00K.固定波長では極大の厚さは hm=(m+1/2)λ0/2.0<hm<h0 にあるのは 450nm と 150nm であるから

ΔT1=600−450300K=0.500K,ΔT2=600−150300K=1.50K

の2回である.ここで温度上昇 1K あたりの厚さ減少が 300nm であることを用いた.

  1. 次数差を正整数 k とすれば h0=600knm.両波長について m+1/2 が半整数になるには,5k/2,3k/2 が半整数でなければならないので k は奇数である.したがって許される厚さは 600(2j+1)nm,j=0,1,… で,間の極大がないことが k=1 を選ぶ.隣接と分かっている場合でも,g=λ2−λ1 とすると

∂h0∂λ1=λ222g2,∂h0∂λ2=−λ122g2

で,差 g が小さいほど絶対誤差が増幅される.誤差の一次近似には,各波長の不確かさが g より十分小さいことが必要である.膨張の線形化も αΔTc=2.00×10−5 が小さいため有効である.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

空気中で平行な単色光束を広げる装置を作ります.光は左から進み,最初に焦点距離 f1=−40.0mm の凹レンズ,次に f2=240mm の凸レンズを通ります.両者の間隔は ℓ,入射光束の直径は D0=4.00mm,第2レンズの開口直径は 30.0mm です.第1レンズの開口では光束が遮られないものとします.光線の高さ y と符号つきの小さい傾き u について,距離 ℓ の伝播は y↦y+ℓu,薄いレンズは u↦u−y/f と与えます.

  1. 出射光束が平行になる間隔 ℓ0 と,出射直径を求めよ.開口で光が遮られるかも答えよ.

  2. 第2レンズの直後に焦点距離 f3=120mm の凸レンズを置き,その開口では光束が遮られないものとします.波長 λ=600nm の光の焦点面での回折半径を 1.22λf3/D と与え,拡大前の光束を直接第3レンズで集めた場合と比較せよ.回折の計算では照明された直径 D を円形開口の直径として扱います.

  3. 間隔を ℓ0+ε にすると,第3レンズから測る結像距離はどれだけ変わるか.ε の一次まで求め,ε>0 での移動方向を答えよ.

凹レンズf₁が−40.0 mmと凸レンズf₂が240 mmを間隔ℓで置く.入射直径D₀は4.00 mm,第2レンズの開口は30.0 mmである.破線の凸レンズは第2レンズ直後に追加するf₃が120 mmのレンズを表す. 凹レンズf₁が−40.0 mmと凸レンズf₂が240 mmを間隔ℓで置く.入射直径D₀は4.00 mm,第2レンズの開口は30.0 mmである.破線の凸レンズは第2レンズ直後に追加するf₃が120 mmのレンズを表す.
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考え方 光線の高さと傾きを順に追えば,無限遠の像や虚物体を使わずに平行化と誤差を扱える.

  1. 入射高さを y0,傾きを0とする.第1レンズ後は u1=−y0/f1,第2レンズでの高さは y2=y0(1−ℓ/f1).出射傾きは

u2=−y0f1−y0(1−ℓ/f1)f2=ℓ−f1−f2f1f2y0

なので,ℓ0=f1+f2=200mm.このとき y2=−f2y0/f1=6y0 より D=6D0=24.0mm で,開口より小さく遮られない.

  1. 拡大後は

rd=1.22600×10−9×0.1200.0240m=3.66μm

で,拡大前の 22.0μm の 1/6 になる.光束が広がることで,第3レンズが使える開口が増えるためである.

  1. ℓ=ℓ0+ε とすると

u2y2=εf1f2(1−ℓ/f1)=−εf2(f2+ε)

となる.第3レンズ後の傾きは u3=u2−y2/f3,像距離は b=−y2/u3 だから

b=11/f3+ε/[f2(f2+ε)]≈f3−f32f22ε=f3−14ε

である.間隔が広すぎると第3レンズを入れる前から収束するので,像はレンズに近づく.展開には |ε|/f2 と |ε|f3/f22 が十分小さいことが必要である.近軸条件も,例えば第1レンズ後の最大傾き (D0/2)/|f1|=0.0500 が小さいことに対応する.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

2M 本の細いスリットを間隔 d で並べ,垂直入射の波長 λ の光で照らします.M≥2,d>λ とします.スリット j=0,1,…,2M−1 のうち偶数番は複素振幅 A,奇数番は薄い位相板と減光板を通り,複素振幅 qAeiχ,0<q≤1 を出します.観測角 θ における隣接スリットの伝播位相差を ϕ=2πdsin⁡θ/λ とします.単スリットの包絡線は無視し,1本の偶数番スリットの強度を I1 とします.

  1. 合成の複素振幅を偶数番・奇数番の組でまとめ,強度を求めよ.

  2. χ=π のとき,ϕ=2πr と ϕ=(2r+1)π の方向の強度を求めよ.q=1 の装置で強い主極大の sin⁡θ の間隔だけを見て,通常の格子と誤認すると,格子定数をどう推定するか.

  3. q=1,χ=π+η とする.ϕ=0 と ϕ=π の強度比を求め,前者を後者の ϵ 倍以下に抑える小さい位相誤差の条件を示せ.0<ϵ<1 とし,近似条件では ϵ が1より十分小さい場合を考えます.

間隔dの2M本のスリットを垂直に照らす.偶数番の複素振幅はAで,奇数番には位相χの位相板と振幅比qの減光板がある.観測方向θを示す. 間隔dの2M本のスリットを垂直に照らす.偶数番の複素振幅はAで,奇数番には位相χの位相板と振幅比qの減光板がある.観測方向θを示す.
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考え方 2本を1組とする振幅の因子と,組どうしの等比級数を分けると,周期が2倍になった意味が分かる.

  1. 時間因子 eiωt を省いた複素振幅は

U=A(1+qei(χ+ϕ))∑k=0M−1e2ikϕ=A(1+qei(χ+ϕ))ei(M−1)ϕsin⁡Mϕsin⁡ϕ

である.最後の式は分母が0でない所で使い,それ以外は有限和で評価する.強度は

I=I1[1+q2+2qcos⁡(χ+ϕ)](sin⁡Mϕsin⁡ϕ)2

となる.

  1. ϕ=pπ では組どうしの位相はすべてそろい,有限和は M になる.χ=π より,偶数 p では I=M2I1(1−q)2,奇数 p では I=M2I1(1+q)2.q=1 なら前者は消え,後者は 4M2I1 となる.強い主極大は dsin⁡θ=(r+1/2)λ で,隣の強い主極大との sin⁡θ の差は λ/d.したがって間隔だけから推定する格子定数は d のままである.ただし全体が半次数分ずれ,0次が消えているため,通常の格子とは区別できる.

  2. 指定された2方向では,有限和の強度因子は同じである.よって

I(0)I(π)=|1−eiη|2|1+eiη|2=4sin2⁡(η/2)4cos2⁡(η/2)=tan2⁡η2

である.|η|<π の範囲では厳密に |η|≤2arctan⁡ϵ,小さい誤差では |η|≤2ϵ が先頭の近似となる.小角展開には |η| が十分小さいことが必要である.距離 L のスクリーンでレンズなしに観察する遠方近似には,全スリット幅 W≈(2M−1)d に対して W2/(λL) が十分小さいことも必要となる.

演習 4

IPhO 1974 第2問(改題) ★★★★★

平行な端面をもつ透明な板の内部では,屈折率は光軸からの距離だけで決まります.光軸を含む断面の符号付き横座標を y とすると,屈折率は

n(y)=n01−γ2y2,n0>1,γ>0

と変わります.板の長手方向を z とし,入射端面を z=0,出射端面を z=ℓ0=π/(2γ) に置きます.n(y)>1 の領域を使います.空気中から光軸に平行な光を入れ,板内で y(0)=y0>0,dydz(0)=0 とします.反射を無視し,幾何光学で扱います.

  1. 屈折の法則を薄い層に適用して p=n(y)/1+(dydz)2 が一定であることを示し,光線 y(z) と最初に軸を横切る位置 z∗ を求めよ.

  2. γy0 が小さいときの z∗ の先頭の補正を求めよ.入射光束半径を R とし,全光線の z∗ を ℓ0 の相対誤差 ϵ 以内にする厳密な条件を求めよ.

  3. 軸上の結像位置を近軸値 ℓ0 に固定します.出射面での周辺光線のずれは,先頭の項で rg=πγ2R3/4 です.これを確かめ,空気中の回折半径の見積もり rd=0.61λ0/(n0γR) と合わせた評価 r=max(rg,rd) を最小にする R を求めよ.n0=1.50,γ=10.0m−1,λ0=600nm で最適半径と r を評価し,近似を点検せよ.

長さℓ₀の透明板の中心で屈折率が高く,横方向yに離れるほど低くなる.光束半径R,入射高さy₀,光軸に平行な入射光線を示す. 長さℓ₀の透明板の中心で屈折率が高く,横方向yに離れるほど低くなる.光束半径R,入射高さy₀,光軸に平行な入射光線を示す.
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考え方 屈折率は y 方向だけに変わるため,層に平行な光の方向成分に保存量がある.近軸ではそろう焦点が,有限開口でずれることを厳密解から調べる.

  1. 層の法線は y 方向である.光線と z 軸の角を α とすると,屈折の法則の保存量は ncos⁡α.tan⁡α=dydz より,これが指定された p である.初期条件から p=n(y0)=n01−γ2y02.したがって

(dydz)2=n(y)2p2−1=γ2(y02−y2)1−γ2y02

である.光線の傾きが0でない所で微分すると d2ydz2=−γ2y/(1−γ2y02) となり,滑らかな光線では初期点にも連続に成り立つ.したがって初めに軸へ曲がる.軸に向かう枝で積分すると,arccos⁡(y/y0)=γz/1−γ2y02.滑らかに軸の反対側まで続けて

y(z)=y0cos⁡(γz1−γ2y02),z∗=π2γ1−γ2y02

を得る.

  1. 1−u≈1−u/2 より z∗≈ℓ0(1−γ2y02/2).周辺ほど手前で軸を横切る.最大の相対ずれは 1−1−γ2R2 であるから,0<ϵ<1 に対し

1−1−γ2R2≤ϵ⟺γR≤2ϵ−ϵ2

となる.別に n(R)>1,すなわち γ2R2<1−1/n02 も満たす必要がある.

  1. 出射面では y0=R として

y(ℓ0)=Rcos⁡(π21−γ2R2)≈Rcos⁡(π2+πγ2R24)≈−πγ2R34

なので,絶対値が rg である.rg は R とともに増え,rd は減るので,最大値の最小は2つが等しい点にある.よって

Ropt=(2.44λ0πn0γ3)1/4=4.20mm,r=0.61λ0n0γRopt=5.81μm

となる.γR=0.0420 と空気側の最大傾き n0γR≈0.0630 は小さく,幾何学的な先頭の補正と回折の近軸見積もりは整合する.幾何光学には局所波長内の屈折率変化も小さくなければならず,その比 λ0|dndy|/n2 は開口内で最大でも約 1.7×10−7 である.r は指定された2尺度の比較による見積もりである.

演習 5

オリジナル ★★★★★

色による結像位置の変化を抑えるため,空気中で凸レンズと凹レンズを間隔 ℓ で置きます.光は左から進み,基準波長を λ0,ε=(λ0−λ)/λ0 とします.光学的な強さ Pj=1/fj は,波長の狭い範囲で

P1(ε)=P10(1+κ1ε),P2(ε)=P20(1+κ2ε)

という模型に従います.P10=20.0m−1,P20=−10.0m−1,κ1=0.0100,κ2=0.0800 です.0<ℓ<1/P10 とし,入射光は光軸に平行です.薄いレンズでは高さ y の光線の傾きが −Pjy だけ変わります.第2レンズから測る像距離を b とします.

  1. A=1−ℓP1,P=P1+P2−ℓP1P2 と置き,b=A/P を導け.

  2. ε=0 における dbdε が0になる ℓ と,そのときの b を求めよ.

  3. 与えた模型をそのまま使い,その配置での b の2次までの変化を求めよ.像距離が一定であることと,系の有効焦点距離 F=1/P が一定であることは両立するか.最後に,この残留変化が円形開口の回折半径より小さい条件を求めよ.第2レンズでの照明半径を R とし,残留変化による光斑半径を R|b−b0|/b0,回折半径を 0.61λ0b0/R と見積もります.ここで b0=b(0) です.

共軸の凸レンズと凹レンズを間隔ℓで置き,光軸に平行な光を入れる.第2レンズでの照明半径Rを示す. 共軸の凸レンズと凹レンズを間隔ℓで置き,光軸に平行な光を入れる.第2レンズでの照明半径Rを示す.
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考え方 色でレンズの強さが変わるだけでなく,第2レンズを通る高さも変わる.像距離の微分では分子と分母の両方を変化させる.

  1. 入射光線の高さを y0 とする.第1レンズ後の傾きは −P1y0,第2レンズでの高さは y2=(1−ℓP1)y0=Ay0.出射傾きは u2=−P1y0−P2Ay0=−Py0 だから,軸との交点までの距離は b=−y2/u2=A/P である.

  2. 基準で dP1dε=κ1P10,dP2dε=κ2P20.商の微分を用いると

dbdε=A′P−AP′P2,P′=P1′(1−ℓP2)+P2′A

で,ℓP+A(1−ℓP2)=1 を使えば,基準で

dbdε∫|0=−κ1P10+κ2P20A02P02

となる.したがって 0.200−0.800A02=0.指定範囲で A0>0 なので A0=1/2,ℓ=(1−A0)/P10=0.0250m.このとき P0=15.0m−1,b0=A0/P0=0.0333m である.

  1. この間隔では

A=0.500−0.00500ε,P=(15.0−0.150ε+0.00400ε2)m−1

である.よって

bb0=1−0.0100ε1−0.0100ε+(0.00400/15.0)ε2≈1−c2ε2,c2=0.0040015.0=2.67×10−4

となり,b−b0≈−8.89×10−6ε2m.一方,P0′=−0.150m−1≠0 なので F の一次変化は消えない.一般にも b0′=0 と P0′=0 が両立するなら A0′P0=0 が必要だが,ここでは A0′=−ℓκ1P10≠0,P0≠0 である.したがって同時には一定にできない.

最後の条件は Rc2ε2<0.61λ0b0/R,すなわち

|ε|<0.61λ0b0c2R2

である.これは指定された局所的な分散模型内の評価で,実際の材料の2次の分散を無視できることまでは保証しない.展開には |ε| が十分小さく,近軸の光斑評価には R/b0 が十分小さいことが必要である.