問いしるべ
問いから始める物理 光

光

第27章のまとめ

著者:柚木芹香

この章では,光がどう進み,どう重なるかを扱いました.前半は光を細い線(光線)とみなす幾何光学で,出発点はフェルマーの原理です.光は光学距離(かかる時間)が停留する道を通るとすると,反射と屈折の法則,全反射,屈折率が場所で変わる媒質の中の光線の曲がり方が出てきました.1点から出ていろいろな道を通る光の時間をそろえる道具がレンズと曲面鏡で,そこから像の式が出ました.後半は光を波として扱い,複素振幅を足して2乗するという1つの規則から,薄膜やヤングの実験の干渉,回折格子と単スリットの回折,回折限界を導きました.最後に,光が横波であることから偏光が生まれることを見ました.光線の考えは,波長が物体の大きさや屈折率が目立って変わる距離に比べて十分小さいときの近似です.

定義と法則

法則 反射・屈折の法則とフェルマーの原理

  • 屈折率は真空中の光の速さ c と媒質中の速さ v の比 n=c/v である.水は 1.33,ガラスは 1.5 程度.

  • 角は境界の法線から測る.入射光線・反射光線・屈折光線と法線は同じ平面内にあり,反射角は入射角に等しく,屈折では n1sin⁡θ1=n2sin⁡θ2(スネルの法則)が成り立つ.

  • フェルマーの原理:光は,道筋を少しずらしてもかかる時間が1次の範囲で変わらない道を通る.時間は光学距離 ∑nℓ を c で割ったものなので,光学距離が停留する道と言ってもよい.反射と屈折の法則はここから出る.停留は最小とは限らない(楕円の鏡では一定,それより強く曲がった鏡では最大).

定義 全反射・層状の媒質・分散

  • 屈折率の大きい側から小さい側へ進む光(n1>n2)は,入射角が臨界角 sin⁡θc=n2/n1 を超えると全反射する.水から空気へは 48.8∘,ガラスから空気へは 41.8∘.光ファイバーは芯とクラッドの境界での全反射を使う.

  • 屈折率が高さとともに変わる層状の媒質では,鉛直から測った光線の角 θ について nsin⁡θ が光線に沿って一定で,光線は屈折率の大きい側へ曲がる(逃げ水,大気差).

  • 屈折率が波長で違うことを分散という.可視光では波長が短いほど屈折率が大きい.

法則 薄いレンズと曲面鏡の結像

近軸近似(h/a,h/b,h/R が十分小さい)で,物体距離 a,像距離 b,焦点距離 f について

1a+1b=1f,M=−ba

が成り立つ(M は横倍率).空気中の薄いレンズでは 1/f=(n−1)(1/R1−1/R2)(両凸レンズは R1>0,R2<0)で,周囲が屈折率 n0 の物質なら n を n/n0 に置きかえる.半径 R の球面鏡は f=R/2 である.どちらも,1点から出ていろいろな高さを通る道の光学距離をそろえる条件から出る.

定義 符号の約束と実像・虚像

  • レンズ:光は左から右へ進むとする.物体が入射側なら a>0,右側の点へ収束していく光が入るときは,その点を虚物体として a<0.像が出射側なら b>0(実像),入射側なら b<0(虚像).凸レンズは f>0,凹レンズは f<0.

  • 鏡:前側の像は b>0(実像),裏側の像は b<0(虚像).凹面鏡は f=R/2>0,凸面鏡は f=−R/2<0,平面鏡は b=−a,M=1.

  • M<0 なら倒立,M>0 なら正立.実像は光が実際に集まる点でスクリーンに映せる.虚像は出た光を逆に延ばした線の交点で,眼には光がそこから来るように見える.

ポイント 薄いレンズの光線の規則

高さ y で入った光線は,傾きが −y/f だけ変わる.中心を通る光線は直進し,光軸に平行な光線は後ろの焦点を通り,前の焦点を通る光線は光軸に平行に出る.傾き θ の平行光は焦点面の高さ fθ に集まる.像点には開口全体の光が集まるので,レンズの一部を覆っても像は欠けずに暗くなる.

定義 光学距離と干渉

  • 屈折率 n の中の距離 ℓ に対し,nℓ を光学距離という.物質の中の波長は λ0/n である.2つの光の光学距離の差(光路差)Δ から,位相の差は ϕ=2πΔ/λ0.

  • 光の電場を複素振幅 E^ で E=Re(E^eiωt) と書くと,強さは |E^|2 に比例する.同じ光源から分けた光は複素振幅を足してから2乗し,I=I1+I2+2I1I2cos⁡ϕ となる.I1=I2=I0 なら I=4I0cos2⁡(ϕ/2).

  • 屈折率の小さい側から大きい側の面での反射は位相が π ずれる.大きい側から小さい側の面での反射と,透過では変わらない.

  • 互いに無関係な光源どうし,光路差が可干渉距離(白色光で数 μm)を超えた光,偏光の向きが直交する光は干渉せず,強さを足す.

法則 回折

  • 回折は多くの波の重ね合わせで,長さが振幅,向きが位相の矢印を順につないだ始点から終点への矢印が合成の振幅になる.遠方回折の条件は,すき間の全体の幅 w について w2/(λL) が1より十分小さいこと.

  • 格子定数 d,本数 N の回折格子の主極大は dsin⁡θ=mλ(m は次数)で,斜め入射では d(sin⁡θ−sin⁡α)=mλ.主極大の幅は sin⁡θ で測って λ/(Nd),分解能はレイリーの基準で λ/δλ≤|m|N.

  • 幅 a の単スリットの暗線は asin⁡θ=mλ(m≠0).

  • 直径 D の円い穴による回折限界は θmin≈1.22λ/D で,倍率を上げても改善しない.

  • X 線の結晶回折はブラッグの条件 2dsin⁡θ=mλ(θ は格子面から測る).

定義 偏光

  • 光は横波で,電場の振動する向きを偏光の向きという.直線偏光,円偏光(同じ振幅で位相が 90∘ ずれた2つの直線偏光の和),楕円偏光がある.

  • 自然光は偏光の向きと位相がでたらめに入れ替わる光で,強さが半分ずつの無相関な2つの直線偏光の和とみなせる.

  • 入射面に垂直な電場の成分をs偏光,入射面内の成分をp偏光という.

法則 マリュスの法則とブルースター角

  • 強さ I0 の直線偏光が,偏光の向きと角 θ をなす透過軸の理想的な偏光板を通ると I=I0cos2⁡θ で,透過軸の向きの直線偏光になる.自然光は半分になる.

  • 入射角が tan⁡θB=n2/n1 のとき,反射光と屈折光が直交してp偏光の反射率が0になり,反射光はs偏光の直線偏光になる.空気から水では 53∘.

  • 散乱光の電場は,入射光の電場 E のうち見る向き s に垂直な成分 E−(E⋅s)s に比例する.太陽と直角の向きの空の光は強く偏光している.

定義 複屈折と波長板(発展)

電場の向きによって屈折率が違うことを複屈折という.厚さ d の板を垂直に通ると,2つの軸の成分の間に位相差 δ=2π(ns−nf)d/λ0 が生じる.δ=π/2 の 1/4 波長板は軸と 45∘ の直線偏光を円偏光に変え,δ=π の 1/2 波長板は軸と角 α の直線偏光を −α の直線偏光に変える.液晶ディスプレイは,ねじれた液晶で偏光の向きを回し,直交した偏光板で明暗を作る.

手順

ポイント 光の問題を解く手順

  1. 屈折では,境界ごとに法線を描いて角を法線から測り,屈折の法則を書く.平行な境界では nsin⁡θ がそのまま受け渡される.屈折率の大きい側から出るときは臨界角と比べる.

  2. 結像では,前の面やレンズの像を次の物体とし,次を越えた所へ収束する光は虚物体 a<0 とする.

  3. 干渉では,2つの光の光学距離の差 Δ を出し,反射の反転を数え,片方だけに反転があれば強め合いと弱め合いの条件を入れ替える.近似が成り立つかを最後に確かめる.

  4. 回折では,位相の矢印をつなぐか,等比級数や積分で複素振幅を足す.格子の次数は sin⁡θ の区間で考える.

  5. 偏光板を何枚も通すときは,1枚ごとに直前の偏光の向きと透過軸のなす角でマリュスの法則を使う.

主な公式

  • 見かけの深さ:真上近くから h/n,斜めから h′=hcos3⁡θ2ncos3⁡θ1

  • 光ファイバー:取り込める光 sin⁡θ0≤n12−n22(開口数),長さ L での到着時刻の差 n1(n1−n2)Ln2c

  • プリズム:偏角 δ=θ1+θ3−A,最小偏角から n=sin⁡[(A+δmin)/2]sin⁡(A/2)

  • 虹:1回反射の偏角 D=180∘+2θ−4r,最小の条件 cos2⁡θ=(n2−1)/3.太陽と反対の方向から赤は約 42∘,紫は約 41∘

  • 球面1面:n1a+n2b=n2−n1R,M=−n1bn2a

  • レンズ2枚:a2=ℓ−b1,M=M1M2.密着させると 1/f=1/f1+1/f2

  • 角倍率は虫めがね D0/f(D0=0.25m),望遠鏡 −f1/f2(間隔 f1+f2)

  • ヤングの実験:明線間隔 w=Lλ/d.スリットを厚さ h の板で覆うと光学距離が (n−1)h 増える.液体の中では Lλ0/(nd)

  • 薄膜の光路差 2nhcos⁡θ2.くさびの暗線 2t=mλ0

  • ニュートンリング:暗輪 rm=mRλ0(中心は暗い),rm+k2−rm2=kRλ0

  • 反射防止膜:t=λ0/(4nf),nf=ns で反射が0

  • マイケルソン干渉計:鏡を δ 動かすと縞が N=2δ/λ0 本流れる

  • 回折格子の強さ:I=I1sin2⁡(Nϕ/2)sin2⁡(ϕ/2),ϕ=2πdsin⁡θλ

  • 単スリットの強さ:I=I0(sin⁡ββ)2,β=πasin⁡θλ.最初の小さな山は中央の約0.047倍

  • 幅をもつスリットの列:単スリットの包絡線と干渉の因子の積.m=pd/a の次数が欠ける

  • 偏光板3枚(直交した2枚の間に角 θ の1枚):I08sin2⁡2θ.液晶の画素:I02sin2⁡φ

各題材の問いへの答え

  • 光の屈折とフェルマーの原理:光は水の中では空気中の 1/1.33 倍の速さでしか進めないので,時間が停留する道として,遅い水の中を短く通るように境界で折れ曲がる.目は届いた光をまっすぐ逆にたどるので,水中の部分は水面に近く(真上近くからは深さの約 1/1.33 倍に)見え,箸は折れ曲がって見える.

  • レンズと像:レンズは,焦点までのどの道も時間が等しくなるように厚さが作られているので,フェルマーの原理によりすべての道が実際の光線になって焦点に集まる.紙の上の明るい点は,見かけの直径約 0.0093rad の太陽の実像で,直径は f×0.0093(f=0.10m なら約 0.9mm)である.

  • 光の干渉と光学距離:シャボン玉の色は膜の表と裏で反射した光の干渉で,光路差 2nhcos⁡θ2 で弱め合う波長が抜けて残りの色が見える.膜が波長よりずっと薄くなると光路差はほぼ0になり,表の反射だけが反転するので2つの反射光が打ち消し合い,黒く見える.

  • 回折と回折格子:CD の溝は間隔 1.6μm の反射の回折格子で,dsin⁡θ=mλ の向きが色ごとに違うので白色光が分かれる.d/λ が2〜4なので2次以上も出て,外側にもう1組の虹が見える.

  • 光の偏光:水面の照り返しはブルースター角 53∘ の前後でほとんどs偏光,つまり電場が水平な直線偏光である.透過軸が鉛直な偏光サングラスはこれをほとんど通さず,自然光に近い水中からの光は半分通す.首を α 傾けると照り返しの sin2⁡α の割合が通る.

この章で使った数学

近軸近似(sin⁡θ≈tan⁡θ≈θ,サジッタ h2/(2R),1+x≈1+x/2.誤差の比は θ2 の程度),停留点を微分で求めること(屈折の法則,虹,プリズムの最小偏角),微分による角の差や不確かさの見積もり,複素振幅による波の足し算,等比級数による N 本の矢印の和,和を積分に直す単スリットの計算がありました.

光線と波のつながり(発展)

光が進む前にあらゆる道の時間を比べているように見えるのは,光が波だからです.いろいろな道の寄与の位相は光学距離で決まり,時間が停留する道の近くでは位相がそろって強め合い,離れた道どうしは打ち消し合います.残った細い束が光線に見え,その太さは波長で決まります.波長が無視できない所では光線の考えが破れ,干渉と回折が現れます.第29章では,光が粒としての性質ももつことへ進み,第30章では電子にも同じ考えが当てはまることを見ます.