問いしるべ
問いから始める物理 電磁気と波の総合演習

電磁気と波の総合演習

場の重ね合わせと対称性

著者:柚木芹香

第20章の電場の重ね合わせ,ガウスの法則,電位と導体の境界条件を,第6章のエネルギー,第7章の振動,第8章の角運動量と組み合わせます.対称性は計算を短くしますが,つり合いの安定性までは保証しません.固定した電荷と電源につないだ導体を区別し,何が力学系へ仕事をするかを確かめよ.近似で捨てた項の大きさも調べます.

総合演習 1

オリジナル ★★★★★

2つの帯電リングで復元力を調整する

半径 R の細い絶縁リング2個を,共通の z 軸に垂直に,中心が z=±a となるよう固定します.各リングに負の電荷 −Q を一様に分布させます.Q>0 です.質量 m,電荷 q>0 の小粒子は,電気的な影響を無視できる滑らかな案内により z 軸上だけを動きます.リングの分布は粒子によって変わらず,重力,相互の変形,放射と抵抗を無視します.クーロン定数を ke=1/(4πε0) とします.

同符号に帯電した2つのリングと軸上の粒子を描く.半径 \(R\),中心の位置 \(\pm a\),粒子の座標 \(z\),案内を示す. 同符号に帯電した2つのリングと軸上の粒子を描く.半径 \(R\),中心の位置 \(\pm a\),粒子の座標 \(z\),案内を示す.
  1. 無限遠を基準にした軸上の電位 V(z) と電場 Ez(z) を求めよ.原点のつり合いが軸方向に安定となる a/R の範囲と,小振動の角振動数を求めよ.

  2. 小振動の線形の復元力が消えるときの a を ac とします.その配置で粒子の位置エネルギーを U(z)=U(0)+βz4+⋯ と展開し,β を求めよ.振幅 A から静かに放した運動の周期を定積分で表し,∫01(1−s4)−1/2ds=1.311 を用いて係数を評価してください.1≫A/R とします.

  3. 間隔を少し増し a=ac+δa,0<δa/R が十分小さい場合,原点近くの新しいつり合い位置と各位置の小振動の角振動数を求めよ.また,a=ac で次の周期を測りました.線形の単振動模型と4次の位置エネルギーの模型を比較し,後者から β/m を決める式を示せ.最後に,案内を外した場合の安定性を検討せよ.

振幅

周期(s)

A

2.40±0.03

2A

1.21±0.03

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考え方

リングの各点から軸上までの距離は等しい.まず電位を加え,位置エネルギーの2次と4次の項を分ける.案内で横方向の運動を除いた1自由度の模型であり,静電場だけによる空間全体での閉じ込めとは区別する.

  1. 一方のリングでは dV=kedq/R2+(z−a)2 であり,電荷を積分すると −keQ/R2+(z−a)2 となる.したがって

V(z)=−keQ[1R2+(z−a)2+1R2+(z+a)2],
Ez=−dVdz=−keQ[z−a(R2+(z−a)2)3/2+z+a(R2+(z+a)2)3/2].

偶関数の電位だから Ez(0)=0.D=R2+a2 と置くと,U=qV の曲率は

K=d2Udz2∫|z=0=2keqQ(R2−2a2)D5/2.

md2zdt2=−Kz より,0≤a/R<1/2 で線形の安定性を持ち,ω=K/m.a/R>1/2 では小さな変位と同方向の力となる.等号では次の4次項が正なので軸方向には安定だが,振動は単振動ではなく,線形の角振動数は0となる.

  1. 一つのリングの距離因子を4階微分すると,z=0 で (9R4−72R2a2+24a4)/D9/2 となる.両リングの寄与を足して 4!=24 で割り,ac=R/2 を入れると

β=7keqQR44(3R2/2)9/2>0.

2次の項が消えても Fz≃−4βz3 は復元力である.エネルギー保存は

m2(dzdt)2+βz4=βA4.

四分の一周期は A から0への移動なので,

T=4m2β∫0AdzA4−z4=4(1.311)Am2β≃3.708Amβ.

振幅を0に近づけると周期は発散する.これは力がなくなることではなく,原点近くの復元力が変位の3乗まで小さくなることを表す.

  1. ac で K=0 なので,曲率の分母の変化は1次の K に寄与しない.Dc=3R2/2 と置くと

K≃−8keqQacDc5/2δa<0,U−U(0)≃K2z2+βz4.

停留条件 z(K+4βz2)=0 から,原点以外に

z±=±−K4β,z±2≃187acδa

を得る.新しい位置の曲率は K+12βz±2=−2K>0 で,角振動数は ω±≃−2K/m.原点は不安定となり,軸方向の谷が2つへ分かれる.近似には δa/R と |z±|/R が十分小さいこと,各谷の振動振幅が |z±| より十分小さいことが要る.

測定の周期比の公称値は 1.21/2.40=0.504.誤差上限から比は 1.18/2.43=0.486 から 1.24/2.37=0.523 の間である.単振動なら比は1,4次の模型なら T(2A)/T(A)=1/2 なので後者に整合する.振幅 A を別に測れば

βm=8(1.311)2A2T(A)2

で決まる.小さな読取誤差の上限は1次で |δ(β/m)|/(β/m)≤2|δA|/A+2|δT|/T と見積もれる.これだけでは未測定の大振幅まで4次の模型が使えるとはいえない.

間隔に誤差があると2次のエネルギーが戻る.4次の運動として扱うには,測定振幅で |K|/(βA2) も十分小さい必要があり,単に A/R を小さくするだけでは足りない.また真空の原点近傍には電荷がないので,V はラプラス方程式を満たす.軸上では軸対称性から ∂2V∂x2=∂2V∂y2,従って ∂2V∂x2=∂2V∂y2=−12∂2V∂z2 である.軸方向に正の曲率がある原点や新しいつり合い位置では,横方向の曲率が負なので案内なしでは不安定である.a=ac の原点では2次の曲率がすべて0となるため,4次まで調べる.軸からの距離を ϱ=x2+y2 とし,軸対称な4次項を βz4+c4z2ϱ2+d4ϱ4 と置く.ラプラス方程式は (12β+4c4)z2+(2c4+16d4)ϱ2=0 を与えるので,c4=−3β,d4=3β/8.従って

U−U(0)≃β(z4−3z2ϱ2+38ϱ4).

軸上では正だが ϱ=|z| の方向では −13βz4/8<0 となるので,この場合も原点は空間全体では不安定である.β の次元は Jm−4 であり,求めた周期は時間の次元を持つ.

総合演習 2

オリジナル ★★★★☆

浮いた導体板の電荷がばねを柔らかくする

面積 S の平行な固定導体板を x=−d,x=d に置き,理想電源でそれぞれの電位を V/2,−V/2 に保ちます.間に同面積,質量 m の薄い導体板を置き,電荷 Q を与えて電気的に孤立させます.中央板の変位を x とし,水平案内に沿って −d<x<d の範囲で動かします.中央板には x=0 を自然長の位置とするばね定数 k のばねをつなぎます.重力,摩擦,板厚,端の電場を無視し,電荷分布は運動に対し十分速く平衡化するとします.α=ε0S と置きます.

3枚の導体板,中央板のばねと水平案内,外板間の理想電源を描く.外板の電位,左右の間隔 \(d+x\),\(d-x\),中央板の全電荷 \(Q\) を示す. 3枚の導体板,中央板のばねと水平案内,外板間の理想電源を描く.外板の電位,左右の間隔 \(d+x\),\(d-x\),中央板の全電荷 \(Q\) を示す.
  1. 中央板の電位 Vm と左右の隙間の電場 EL,ER を,右向きを正として求めよ.中央板の左右の面の電荷の和が Q であることを確かめよ.

  2. 片側の電場による圧力 ε0E2/2 を用い,中央板への電気力とばねを含めた運動方程式を求めよ.安定な平衡位置,振動数,板に接触せずに振動する振幅の条件を示せ.

  3. 中央板を x1 から x2 へゆっくり動かします.電場のエネルギー変化,電源の仕事,外力の仕事を求め,電場のエネルギーだけを微分すると誤る理由を示せ.次に V=0 のまま Q を増す操作と,Q=0 のまま V を増す操作を比較し,どちらが小振動数を下げるか説明せよ.

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考え方

中央の孤立板では全電荷を保存し,外板では電位を固定する.力には左右の電場の圧力差を使う.準静的な平行板模型を用い,電源が受け渡す電荷も収支に入れる.

  1. 左右の容量は CL=α/(d+x),CR=α/(d−x).中央板の電荷保存は

Q=CL(Vm−V2)+CR(Vm+V2).

両辺に (d2−x2)/α を掛けて整理すると,

Vm=Q(d2−x2)2αd−Vx2d.

電位が低下する向きを正として,

EL=V/2−Vmd+x=V2d−Q(d−x)2αd,ER=Vm+V/2d−x=V2d+Q(d+x)2αd.

中央板の左面は −αEL,右面は αER の電荷を持つ.差 α(ER−EL)=Q が保存された全電荷である.各面の電荷を最初から等量異符号とすることはできない.

  1. 右面の圧力は右向き,左面の圧力は左向きなので,

Fe=α2(ER2−EL2)=QV2d+Q2x2αd.

従って k∗=k−Q2/(2αd) と置けば

md2xdt2=QV2d−k∗x.

k∗>0 の場合,xe=QV/(2dk∗),ω=k∗/m,振動数は f=ω/(2π).この平衡が装置内に存在する条件は |xe|<d.平衡からの振幅 A は A<d−|xe| でなければならない.この平行板模型では合力が厳密に変位の1次式なので,振幅が小さいという近似を使わなくても単振動となる.

k∗<0 のつり合いは不安定である.k∗=0 では QV≠0 なら一定の力で加速し,QV=0 なら変位への復元力がなく中立である.後者を正の振動数を持つ安定な振動と呼ぶことはできない.

  1. 両隙間の場を積分したエネルギーは

U=α2[EL2(d+x)+ER2(d−x)]=αV24d+Q2(d2−x2)4αd.

よって ΔU=−Q2(x22−x12)/(4αd).左外板の内面の電荷は

QL=αEL=αV2d−Q(d−x)2d.

右外板の内面の電荷は QR=−αER.両外板の変化は dQR=−dQL なので,電源の仕事は

dWs=V2dQL−V2dQR=VdQL,Ws=QV2d(x2−x1).

速度を無視する操作で,ばねのエネルギー増加を ΔUk=k(x22−x12)/2 とすると,Ws+Wext=ΔU+ΔUk.従って

Wext=k∗2(x22−x12)−QV2d(x2−x1).

この式の微分はばねと電気力の合力の負となる.−dUdx だけでは QV/(2d) の力を落とす.電源の仕事を除いて力学に使える関数は,ばねも含めて k∗x2/2−QVx/(2d) である.

V=0 でも外板間は短絡されて電荷を交換でき,Q が増すと k∗ が減る.一方 Q=0 なら両側の電場が等しく,V を増しても中央板の合力と振動数は変わらない.これは外板を固定電荷にした比較ではない.端の効果を捨てるには最大隙間と板の代表幅の比が十分小さく,準静的には ωd/c が十分小さい必要がある.Q→0 で ω→k/m,Q2/(αd) の次元がばね定数となることも確かめられる.

総合演習 3

オリジナル ★★★★☆

逆1乗の電気力で回る粒子の軌道

半径 a の十分長い固定導体円筒に,単位長さあたり −λ の電荷を与えます.λ>0 です.真空中で電荷 q>0,質量 m の粒子を円筒軸に垂直な平面内で動かします.粒子自身による誘導電荷の変化,重力,放射,衝突を無視します.円筒からの距離に比べ両端は十分遠いとし,角運動量の大きさを J>0,κ=qλ/(2πε0) と置きます.粒子が表面へ達したら吸収されるものとします.

負に帯電した円筒の断面と外側の粒子を描く.表面半径 \(a\),粒子の極座標 \(r,\theta\),初期速度の径方向と接線方向の成分を示す. 負に帯電した円筒の断面と外側の粒子を描く.表面半径 \(a\),粒子の極座標 \(r,\theta\),初期速度の径方向と接線方向の成分を示す.
  1. 円筒を囲むガウス面から外部の電場を求めよ.表面の電位を0とした粒子の位置エネルギーと,径方向の運動に用いる有効ポテンシャルを導いてください.

  2. 円軌道の半径 r0,速さ,角振動数を求めよ.r0>a の場合に,円軌道の近くの径方向振動が安定であることを示し,径方向の角振動数と公転の角振動数の比を求めよ.

  3. 円軌道の位置で接線速度を変えず,径方向だけに速さ u を与えます.表面に衝突せず運動する u の厳密な条件を求めよ.さらに微小な径方向振動で,連続する最接近点の間の方位角を求め,軌道が一般には閉じない理由を説明せよ.

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考え方

ガウスの法則で場を決め,中心力の角運動量を保存して径方向を1自由度へ減らす.試験粒子の近似と無限長近似のもとで,電気力は距離の逆1乗である.逆2乗の重力の円軌道とは振動数の比が変わる.

  1. 半径 r>a,長さ ℓ の円筒面では電場は径方向で側面上一定,端面の流束は0である.外向きを正とすると

Er(2πrℓ)=−λℓε0,Er=−λ2πε0r.

表面からの電位差は V(r)=−∫arErdr=λln⁡(r/a)/(2πε0).無限遠では対数が発散するため,無限遠を基準にすることはできない.U=κln⁡(r/a) で,−dUdr=−κ/r は内向きの力となる.

接線速度は rdθdt=J/(mr) なので,エネルギーは

E=m2(drdt)2+Ueff(r),Ueff=J22mr2+κln⁡ra.

遠心力の項は電位そのものではなく,保存する角運動量を用いて運動エネルギーの一部を書き替えた項である.

  1. dUeffdr=−J2/(mr3)+κ/r=0 より

r0=Jmκ,v0=Jmr0=κm,Ω=v0r0=κJ.

円軌道の速さは半径に依存しない.曲率は 3J2/(mr04)−κ/r02=2κ/r02>0 なので,ξ=r−r0 に対し

md2ξdt2≃−2κr02ξ,ωr=2κmr02=2Ω.

J>amκ なら谷が表面の外にある.それ以外では外側に円軌道の谷はない.

  1. 付与するエネルギーは mu2/2 で,角運動量は変わらない.a<r0 では a<r<r0 で有効ポテンシャルは内側へ向かって増す.表面の高さに達しなければ衝突しないので,必要十分な条件は

mu22<Ueff(a)−Ueff(r0)=κ[r022a2−12−ln⁡r0a].

右辺の括弧は h=r0/a>1 に対して,h=1 で0,微分 h−1/h>0 なので正である.等号は速さ0で表面に触れる場合で,吸収を避ける条件から除く.対数項は外へ向かって無限に増すため,外向きに与えた有限の u でもいずれ戻り,同じ条件で内側の衝突を判断できる.

小振動では ξ の周期は 2π/ωr.dθdt=Ω(r0/r)2≃Ω(1−2ξ/r0) であり,1周期の ξ の平均は0なので,最接近点間の方位角は先頭の近似で 2πΩ/ωr=2π.これは 2π の有理数倍ではなく,一般に同じ位置と向きへ戻らない.有限振幅ではこの角度にも補正がある.近似には径方向の振幅と半径の比 Ar/r0 が十分小さく,かつ Ar<r0−a が要る.κ はエネルギーの次元を持ち,r0→a で許される径方向の付与エネルギーが0になることも装置の境界と整合する.