問いしるべ
問いから始める物理 測定と不確かさ(発展)

測定と不確かさ(発展)

第14章の章末問題

著者:柚木芹香

測る量の定義から,記録の整理と結果の報告までをつなげます.データはすべて架空です.不確かさは標準不確かさで,特に断らない限り独立とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

板の厚さについて,計算機の出力は d=0.0413723m,合成標準不確かさは uc(d)=0.0008267m でした.

  1. 不確かさを2桁に丸め,値の桁をそろえて報告せよ.括弧を使う形と,言葉で不確かさを明示する形の両方を書け.

  2. k=2 の拡張不確かさも報告せよ.「誤差は必ずこの範囲内である」といってよいか.

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考え方 値の最後の桁は,不確かさの最後の桁に合わせる.包含係数は,幅が何の幅かを伝える情報である.

  1. uc=0.00083m,d=0.04137m.括弧では d=0.04137(83)m.言葉では「厚さ 0.04137m,合成標準不確かさ 0.00083m」と書く.

  2. 丸め前から U=2×0.0008267=0.0016534m なので,U=0.0017m(包含係数2)と報告する.これは必ず含む境界ではない.正規分布で近似できる場合の約95 % の範囲の目安であり,見落とした系統的な効果まで保証しない.確かめとして,括弧の83は 83×10−5m を意味し,単位も桁も一致する.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

ばねの長さを,12.01,11.99,12.03,11.97,12.00cm と5回読みました.読みの偶然のずれは独立です.器械の読みには +0.020cm の加算の偏りがあると別に分かっており,この偏りの見積もりの標準不確かさは 0.005cm です.

ばねの長さを測る装置と5回の読みを示す.補正後の平均は示していない. ばねの長さを測る装置と5回の読みを示す.補正後の平均は示していない.
  1. 読みの平均,標準偏差,平均のタイプAの標準不確かさを求めよ.

  2. 偏りを補正し,補正後の平均の合成標準不確かさを求めよ.測定回数を増やすだけでは消えない寄与は何か.

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考え方 読みの平均から偏りを引く.補正値は全5回で共通なので,その不確かさをさらに 5 で割らない.

  1. l¯=12.000cm.偏差の2乗の和は 0.0020cm2,s=0.0020/4=0.0224cm,u(l¯)=0.0100cm.

  2. 補正後は l=12.000−0.020=11.980cm.uc(l)=0.01002+0.0052=0.011cm,よって l=11.980(11)cm.補正値の寄与 0.005cm は,ばねの測定回数だけ増やしても消えない.確かめとして,正の偏りを引いたので,補正後の長さは読みより小さい.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

小球を静かに放す装置で,高さ h=1.200m の落下時間を5回測りました.u(h)=0.002m,時間の記録は 0.494,0.498,0.496,0.492,0.500s です.時間の独立な偶然のずれ以外は無視し,空気抵抗も無視します.

小球を静かに放す装置と下のセンサー,球の移動距離hを示す. 小球を静かに放す装置と下のセンサー,球の移動距離hを示す.
  1. 時間の平均,標準偏差,平均の標準不確かさを求めよ.

  2. g=2h/t¯2 とその合成標準不確かさを求めよ.一定の初速度が入る可能性を,繰り返しだけで否定できるか.

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考え方 5回のばらつきを平均の不確かさに変えてから,g に伝える.静かに放すという条件も式の一部である.

  1. t¯=0.4960s,偏差の2乗の和は 4.00×10−5s2.s=0.00316s,u(t¯)=0.00141s.

  2. g=2.400/0.49602=9.755ms−2,uc(g)=g(0.002/1.200)2+(2×0.001414/0.4960)2=0.058ms−2.g=9.755(58)ms−2 と報告する.毎回同じ初速度が入れば,時間は同じ向きに変わるので,繰り返しだけでは否定できない.放し方や高さを変える測定が必要になる.確かめとして,g の単位は距離を時間の2乗で割った単位である.

演習 4

オリジナル ★★★☆☆

台車が静止から斜面を下る実験で,モデルとして斜面方向の加速度を α=gh/L と仮定します.L は斜面に沿った長さ,h はその高さです.抵抗や回転の影響があればこのモデルから外れるので,ここではそれらを無視します.斜面上を距離 s 進む時間は s=αt2/2 に従うとします.

斜面の高さh,全長L,台車が計時中に進む距離sを区別して示す. 斜面の高さh,全長L,台車が計時中に進む距離sを区別して示す.
  1. g を s,L,h,t で表せ.s=0.5000m,L=1.000m,h=0.1000m,t=1.010s で値を求めよ.

  2. 独立な標準不確かさが順に 0.0010m,0.002m,0.0010m,0.003s であるとき,g の不確かさを求めよ.最も大きい寄与はどれか.

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考え方 斜面の運動のモデルは問題で与えられている.その式を組み合わせ,指数を含む相対不確かさを足す.

  1. α=2s/t2 なので,g=2sL/(ht2)=9.803ms−2.

  2. 相対寄与は順に 0.00200,0.00200,0.0100,0.00594.uc(g)=9.8030.002002+0.002002+0.01002+0.005942=0.12ms−2.g=9.80(12)ms−2 と報告する.高さの読みが最大の寄与で,斜面が低すぎるとその相対不確かさが大きくなる.確かめとして,2sL/(ht2) は ms−2 の次元を持つ.モデルの抵抗の無視を確かめるには,斜面の高さを変えて同じ g が出るか調べる.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

音源とマイクを同じ位置に置き,壁までの距離 L を変えて反射音の遅れの読み y を測りました.一定の計時のずれを δ として,y=δ+2L/c を仮定します.距離の不確かさは無視し,各時間の偶然のずれは独立で同じ大きさとします.

L[m]

5.00

10.00

15.00

20.00

25.00

y[s]

0.034

0.063

0.094

0.122

0.153

上は壁までの距離Lと遅れyの5点,下は空の残差グラフ.当てはめた直線と残差は描いていない. 上は壁までの距離Lと遅れyの5点,下は空の残差グラフ.当てはめた直線と残差は描いていない.
  1. 最小二乗直線を求め,c,δ を求めよ.

  2. 残差,se,u(b) から c の標準不確かさを求めよ.残差だけで,時計の倍率が正しいことも確かめられるか.

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考え方 切片を自由にして一定の遅れを分ける.倍率のずれは直線の傾きに入るので,残差には現れないことがある.

  1. L¯=15.0m,y¯=0.0932s,Sxx=250m2,分子は 1.485ms.b=0.005940sm−1,a=0.004100s.c=2/b=336.7ms−1,δ=a=0.00410s.

  2. 残差は 0.0002,−0.0005,0.0008,−0.0009,0.0004s.2乗の和は 1.90×10−6s2,se=0.000796s,u(b)=0.0000503sm−1.u(c)=cu(b)/b=2.9ms−1 で,c=336.7(29)ms−1.これは当てはめからの標準不確かさであり,時計の倍率は別の基準と比較する必要がある.確かめとして,残差の和と ∑(Li−L¯)ei は0になる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

同じ動画と目盛りを使い,台車の2区間の平均の速さを比べます.距離の読みは L1=0.400m,L2=0.600m,時間は t1=t2=0.2000s でした.距離の独立な読みの不確かさは無視しますが,両距離には同じ倍率のずれがあり,その相対標準不確かさは1 % です.各時間の標準不確かさは独立に 0.0010s です.

台車の二つの測定区間L₁とL₂,それぞれの時間t₁とt₂を示す.両距離の目盛りは共通.速さの比は描いていない. 台車の二つの測定区間L₁とL₂,それぞれの時間t₁とt₂を示す.両距離の目盛りは共通.速さの比は描いていない.
  1. 速さの比 R=v2/v1 とその標準不確かさを求めよ.

  2. 目盛りの倍率を調べ直さなくても,速さが変わったと判断できるか.これだけで加速度が一定ともいえるか.

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考え方 比を入力の読みの式に戻すと,共通の距離の倍率が消える.2つの速さの不確かさを独立として足さない.

  1. R=L2t1/(L1t2)=1.500.L1,L2 の両方に (1+ε) を掛けても比は変わらない.したがって u(R)=R(0.0010/0.2000)2+(0.0010/0.2000)2=0.011.R=1.500(11) と報告する.

  2. 比と1との差 0.500 は 2u(R)≈0.021 より十分大きいので,この測定モデルの範囲では速さが変わったと判断できる.ただし2区間の平均の速さだけでは,一定加速度かどうかは決まらない.時刻と位置をさらに記録してモデルを確かめる必要がある.確かめとして,R は無次元で,距離を cm に換算しても同じ値である.