問いしるべ
問いから始める物理 測定と不確かさ(発展)

測定と不確かさ(発展)

第14章の発展問題

著者:柚木芹香

装置の計画とデータ処理を一続きで考えます.必要な運動のモデルや新しい処理方法は問題中で与えます.データは架空で,標準不確かさは1次近似で評価してください.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

ばねにつるす質量 m を変え,振動の周期 T を測って,ばね定数 k を求めます.ばね定数は「ばねの伸び1 mあたりの力」で,単位は Nm−1=kgs−2 です.ここでは第7章で導く周期の式を拡張したモデル T2=4π2(m+m0)/k を与えます.m0 は,ばね自身や取付具の動きをまとめた一定の有効質量で,未知です.

ばね,取付具,交換する質量mを示す.下は与えられたmとT²の5点で,直線は描いていない. ばね,取付具,交換する質量mを示す.下は与えられたmとT²の5点で,直線は描いていない.

m[kg]

0.100

0.200

0.300

0.400

0.500

T2[s2]

0.240

0.440

0.646

0.840

1.046

  1. 測る量,そろえる条件,記録すべき生の値を挙げよ.

  2. 横軸の不確かさを無視し,各 T2 の独立な偶然のずれが同じ大きさとして直線を当てはめ,k,m0,当てはめからの u(k) を求めよ.m0 の不確かさは求めなくてよい.

  3. 時計の全測定に共通する倍率の相対標準不確かさが0.2 % と分かった.これを含む k の合成標準不確かさを求めよ.切片を0と決めつけると何が起こるか.

解答を見る

考え方 周期の2乗と質量を直線にし,傾きから k,切片と傾きの比から m0 を出す.時計の倍率は繰り返しのばらつきとは別に残る.

  1. おもりの質量と,例えば10振動分の時間 t10 を測り,T=t10/10 にする.支点・取付具・振れ幅の条件をそろえ,ばねが伸び切らない範囲を使う.質量,時間の各読み,回数,振れ幅,器械の分解能を残す.同じ向きの通過を数え,質量を戻したときにも周期が再現するか調べる.

  2. m¯=0.300kg,y¯=0.6424s2,Sxx=0.100kg2,分子 0.2012kgs2.b=2.012s2kg−1,a=0.0388s2.k=4π2/b=19.621Nm−1,m0=a/b=0.0193kg.残差は 0,−0.0012,0.0036,−0.0036,0.0012s2,2乗の和は 2.88×10−5s4.se=0.00310s2,u(b)=0.00980s2kg−1,u(k)=ku(b)/b=0.096Nm−1.

  3. 時間の倍率は T2 に2倍効き,k への相対寄与は0.4 %.uc(k)=0.095552+(19.621×0.004)2=0.12Nm−1.k=19.62(12)Nm−1 と報告する.原点を強制すると有効質量を傾きで説明するため,k を小さく見積もる.確かめとして,m0→0 なら切片が消え,4π2/b の単位は kgs−2 になる.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

音の反射を使う装置で,壁までの距離 L と,出力音から反射音までの時間の読み y を測りました.音源とマイクは同じ位置にあります.一定の電子回路の遅れを δ として,モデルは y=δ+2L/c です.

L[m]

0.500

1.000

1.500

2.000

2.500

y[s]

0.00495

0.00784

0.01085

0.01374

0.01675

音源とマイク,壁までの距離L,往復する音の経路を示す.波形には出力と反射音の山だけを描く. 音源とマイク,壁までの距離L,往復する音の経路を示す.波形には出力と反射音の山だけを描く.
  1. 直線を当てはめ,c,δ,残差の標準偏差,当てはめからの u(c) を求めよ.横軸の不確かさを無視し,縦軸の偶然のずれは独立で同じ大きさとする.

  2. 距離の共通の倍率の相対標準不確かさ0.3 % と,時計の共通の倍率の相対標準不確かさ0.2 % を加えて,c を報告せよ.2つの倍率のずれと当てはめの偶然のずれは独立とする.

  3. 残差が小さいことだけで δ が電子回路の遅れだと断定できるか.室温がゆっくり変わる場合の測定順序も提案せよ.

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考え方 一定の時間の効果は切片,長さと時間の倍率の効果は傾きに入る.原因の種類ごとに不確かさを分ける.

  1. L¯=1.500m,y¯=0.010826s,Sxx=2.500m2,分子 0.014750ms.b=0.005900sm−1,a=0.001976s.c=2/b=338.983ms−1,δ=1.976ms.残差は 24,−36,24,−36,24μs,se=37.95μs,u(b)=24.0μsm−1.u(c)=cu(b)/b=1.38ms−1.

  2. c は長さに比例し時間に反比例するので,相対寄与はそれぞれ0.3 % と0.2 %.uc(c)=c(0.0000240/0.005900)2+0.0032+0.0022=1.8ms−1.c=339.0(18)ms−1 と報告する.

  3. 断定できない.距離の基準位置の一定のずれも切片に入る.電子回路の遅れは別の電気的な信号で調べ,距離の基準は音源・マイクの位置に合わせる.温度変化と距離が結び付かないよう,距離を小さい順だけに測らず,順を入れ替え,同じ中間距離を測定の途中に繰り返す.確かめとして,距離を 0.500m 増やすと,遅れは傾きから 2.950ms 増える.

演習 3

オリジナル ★★★★★

自由落下する球を動画で追い,下向きの位置 h を読みます.撮影開始の位置と初速度は未知で,モデルは h(t)=h0+v0t+gt2/2 です.時刻の間隔は Δ=0.1000s,各位置の独立な標準不確かさは σ=0.0020m とします.

t[s]

0.1000

0.2000

0.3000

0.4000

0.5000

h[m]

0.080

0.244

0.512

0.873

1.336

等間隔の時刻で読む球の5位置を示す.時刻と位置は問題の生の記録だけで,差や加速度は示していない. 等間隔の時刻で読む球の5位置を示す.時刻と位置は問題の生の記録だけで,差や加速度は示していない.
  1. 連続する3点から gj=(hj−2hj+1+hj+2)/Δ2 を作ると,h0,v0 が消えることを示せ.3つの gj と,1つの gj の標準不確かさを求めよ.

  2. g¯=(g1+g2+g3)/3 を,元の5つの読みの1次式として書き直し,標準不確かさを求めよ.3つの gj を独立として計算してはいけない理由を説明せよ.

  3. 時計の全時刻に共通する倍率の相対標準不確かさが0.1 % ある.これを含めて g¯ を報告せよ.位置の共通の加算のずれと倍率のずれのうち,消えるのはどちらか.測定の改善案も述べよ.

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考え方 隣り合う差は同じ画像の読みを共有する.新しい量の独立性を仮定せず,独立と分かっている元の読みへ戻して合成する.

  1. 定数項は 1−2+1=0,時間の1次項も t−2(t+Δ)+(t+2Δ)=0.2次項だけが gΔ2 残る.3つの値は 10.4,9.3,10.2ms−2.1つの値の不確かさは u(gj)=12+(−2)2+12σ/Δ2=0.490ms−2.

  2. 足して整理すると g¯=(h1−h2−h4+h5)/(3Δ2)=9.9667ms−2.h3 は消える.独立な4つの読みの係数の2乗を足すので,u(g¯)=2σ/(3Δ2)=0.1333ms−2.0.490/3=0.283ms−2 とは異なる.各 gj には同じ読みが異なる符号で入り,ずれが互いに関係するからである.

  3. 時計の相対寄与は 2×0.001=0.002.uc(g¯)=0.13332+(9.9667×0.002)2=0.13ms−2.結果は g¯=9.97(13)ms−2.位置の加算のずれは係数の和が0なので消えるが,位置の倍率は残る.改善には位置の読みを良くするか,等間隔を保って Δ を広げる方法がある.ただし空気抵抗や画面外への落下が問題にならない範囲にする.確かめとして,u(g¯)∝Δ−2 で,間隔を2倍にできれば位置由来の寄与は4分の1になる.

演習 4

オリジナル ★★★★★

一定の速さの台車を2つの方法で測り,y1=1.020ms−1,y2=0.980ms−1 を得ました.独立な偶然のずれの標準不確かさは u1=0.020ms−1,u2=0.040ms−1 です.不確かさの違う読みをまとめる方法として,重みつき最小二乗法をここで導入します.候補の速さ v に対し,S(v)=∑i=12(yi−v)2/ui2 を最小にします.

二つの方法の読みと,独立な偶然のずれの標準不確かさの幅を示す.共通の補正値の不確かさはこの幅に含めていない.合成した答えは示していない. 二つの方法の読みと,独立な偶然のずれの標準不確かさの幅を示す.共通の補正値の不確かさはこの幅に含めていない.合成した答えは示していない.
  1. S を微分し,最小にする v と,独立な偶然のずれからの標準不確かさを求めよ.単純な算術平均の標準不確かさと比べよ.

  2. 両方法には同じ補正値を使い,補正後にも共通の加算のずれ β が残ります.その見積もりは0,標準不確かさは u(β)=0.030ms−1 です.yi=vtrue+β+εi と書き,β と各偶然のずれ εi は独立とします.これを含む合成標準不確かさを求めよ.

  3. 各方法の測定回数を増やし,u1,u2 だけを十分小さくできたときの限界と,次に改善する測定を答えよ.

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考え方 不確かさの小さい読みを重く扱う.共通のずれは読みの差では見えず,重みを変えても打ち消せない.

  1. dSdv=−2∑(yi−v)/ui2=0 より,v=∑yi/ui2/∑1/ui2.重みは w1=0.8,w2=0.2 で,v=0.8×1.020+0.2×0.980=1.012ms−1.d2Sdv2=2∑1/ui2>0 なので最小である.u(v)=w12u12+w22u22=1/1/u12+1/u22=0.0179ms−1.算術平均は 1.000ms−1,標準不確かさ u12+u22/2=0.0224ms−1 である.

  2. w1y1+w2y2=vtrue+(w1+w2)β+w1ε1+w2ε2.w1+w2=1 なので,β はそのまま残る.uc(v)=0.0178892+0.0302=0.035ms−1.v=1.012(35)ms−1 と報告する.

  3. 極限は uc(v)→0.030ms−1.共通の補正値を決める基準の測定を改善する.確かめとして,同じずれが2つに加わっても y1−y2 は変わらないので,2つの方法が一致することだけでは共通の偏りを否定できない.