問いしるべ
問いから始める物理 測定と不確かさ(発展)

測定と不確かさ(発展)

第14章のまとめ

著者:柚木芹香

この章では,振り子の周期から重力加速度を求める実験を通して,測る量を決め,測り方を計画し,繰り返してばらつきを数にし,計算した量の不確かさを出し,グラフでモデルを確かめるところまでを一続きで行いました.測った値は,どこまで信じてよいかを表す数と組にして初めて意味を持ちます.ここで定義と公式を一覧にし,各題材の最初の問いに短く答えます.

定義

定義 誤差と不確かさ

  • 測る量のほんとうの値を真の値,測定値と真の値の差を誤差という.真の値は知りえないので,誤差も知りえない.

  • 測った結果がどれだけ疑わしいかを表す数を不確かさ,それを標準偏差の形で表したものを標準不確かさ u(x) という.値に対する割合 u(x)/|x| が相対標準不確かさである.

  • 繰り返し測定の統計から求めるのがタイプAの評価,目盛り・分解能・仕様などそれ以外の情報から求めるのがタイプBの評価である.

  • 測るたびに向きも大きさも変わるずれが偶然誤差,同じ条件ならいつも同じ向きに出るずれが系統誤差である.偶然誤差は平均で減るが,系統誤差は繰り返しても減らない.

定義 測定器と記録

  • 最小目盛り・分解能は読みの細かさの限りで,値の確かさとは別である.アナログの目盛りは最小目盛りの 110 まで目分量で読み,視差に注意する.

  • 有効数字は不確かさの大まかな表し方である.この章では,それを標準不確かさという数にした.

主な公式

  • 平均 x¯=1N∑xi,標準偏差 s=∑(xi−x¯)2N−1,平均の標準不確かさ u(x¯)=sN.

  • ±a に一様に散らばるずれ(表示の丸めなど)の標準不確かさは a/3.

  • 正規分布では,平均 ±s に約 68 %,±2s に約 95 % の値が入る.拡張不確かさ U=2uc は約 95 % の範囲の目安.

  • 1つの量から:u(y)=|f′(x)|u(x).べき y=Cxn では相対不確かさが |n| 倍.

  • 独立な量から:uc(y)2=∑(∂f∂xk)2u(xk)2.和・差は u の2乗の和,積・商・べき y=Cx1px2q は (uc(y)y)2=(pu(x1)x1)2+(qu(x2)x2)2.

  • 最小二乗法:b=∑(xi−x¯)(yi−y¯)∑(xi−x¯)2,a=y¯−bx¯,u(b)=se∑(xi−x¯)2,se=∑ei2N−2.

  • 振り子:g=4π2lT2,(uc(g)g)2=(u(l)l)2+(2u(T)T)2.T2 と l′ のグラフの傾きは 4π2/g.

手順

ポイント 測定から結論までの手順

  1. 求める量と,測る量を言葉で決める(振り子の l は支点からおもりの中心まで,振れ角は小さく).

  2. 測定器の最小目盛り・分解能を確かめ,何をそろえ,何回,何周期まとめて測るかを計画する.生の読みと条件を記録し,すぐに大まかな値を計算して大きな誤りを見つける.

  3. 繰り返した値から平均・標準偏差・平均の標準不確かさを出す(タイプA).目盛りや仕様からの不確かさも見積もる(タイプB).

  4. 測り方を変えて系統誤差を探し,分かったものは補正する.

  5. 計算した量の不確かさを,偏微分か相対不確かさの規則で合成し,内訳の表を作る.一番大きな寄与から減らす.

  6. 不確かさを1〜2桁にし,値をその桁にそろえて報告する.何の不確かさかを書き添える.

  7. 条件を変えて,直線になる軸でグラフを描き,当てはめた直線の残差に形が無いかを見る.

各題材の問いへの答え

  • 何をどう測るか:10周期ほどをまとめて測り,時刻はおもりが速く動く最下点で取る.押すずれが1周期あたり 110 になる.数え違いは,1周期 → 10周期 → 50周期と段階を踏んで確かめる.

  • ばらつきと偏り:どれか1つが正しい値なのではない.10個の平均 17.940s が最も信じられる値で,標準不確かさは s/10=0.017s.ただし全部が同じ向きにずれる系統誤差は,平均では見えないので,やり方を変えて確かめる.

  • 計算した量の不確かさ:g=9.800ms−2,合成標準不確かさ 0.022ms−2.周期は2乗で効くので,周期の寄与(0.184 %)が長さ(0.125 %)より大きく,周期を良くするのが先である.

  • グラフでモデルを確かめる:長さを変えて T2 と l′ のグラフが直線になり,残差に形が無いことを確かめる.傾きから g=9.801ms−2(標準不確かさ 0.017ms−2),横軸との交点からおもりの半径が読める.同じ距離だけ引いて放すと残差が弓なりになり,大きな振れ角でモデルが合わないことが分かる.

この章で使った数学

平均と標準偏差,独立なずれの和の2乗の平均が足し算になること(交差項の平均が0),一様分布の2乗の平均を積分で出すこと,任意の指数での (xn)′=nxn−1(第2章の一次近似から),1次近似と偏微分,最小二乗法(偏微分を0とおく),常用対数と両対数グラフを使いました.どれも「小さなずれが,計算を通ってどう伝わるか」を数で追うための道具です.