問いしるべ
問いから始める物理 測定と不確かさ(発展)

測定と不確かさ(発展)

グラフでモデルを確かめる演習

著者:柚木芹香

グラフの傾きに,何の量がどの単位で現れるかを考えましょう.データはすべて架空で,最小二乗法を使う問題では横軸の不確かさを無視し,縦軸の偶然のずれは独立で同じ大きさとします.

演習

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

小球を静かに放し,落下時間 t と落下距離 h を測ります.空気抵抗を無視したモデルは h=gt2/2 です.

落下する小球と,横軸t²,縦軸hの空のグラフを示す.測定点と直線は描いていない. 落下する小球と,横軸t²,縦軸hの空のグラフを示す.測定点と直線は描いていない.
  1. 直線にするには何を横軸・縦軸にすればよいか.傾きの意味と単位を答えよ.

  2. 距離の読みに一定の加算のずれが入ると,直線のどこが変わるか.時間の始めのずれも同じように扱えるか.

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考え方 実際に器械が読む量をモデルの式に代入し,直線の傾き・切片に分ける.

  1. 横軸 x=t2[s2],縦軸 y=h[m] とすると,y=bx,b=g/2 で単位は ms−2.

  2. 距離のずれ d は y=d+(g/2)x の切片に入る.一方,読んだ時間が t′=t+δ なら,h=g(t′−δ)2/2 となり,t′2 に対する切片だけでは表せない項が残る.確かめとして,d=0,δ=0 なら原点を通る直線に戻る.

演習 2

オリジナル ★★☆☆☆

音源から距離 x を変えてマイクを置き,到達時間の読み y を得ました.音は等速で進み,器械には一定の時間のずれ δ があるとして,y=δ+x/c を仮定します.

x[m]

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

y[s]

0.010

0.012

0.016

0.018

0.022

横軸xは音源からマイクまでの距離,縦軸yは時間の読み.問題の5点を示し,直線は描いていない. 横軸xは音源からマイクまでの距離,縦軸yは時間の読み.問題の5点を示し,直線は描いていない.
  1. 最小二乗直線 y=a+bx を求め,c と δ を求めよ.

  2. 原点を必ず通る直線を使うと問題になる理由を述べよ.

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考え方 傾きは音速ではなく音速の逆数である.器械の時間のずれもデータから決める.

  1. x¯=3.00m,y¯=0.0156s,Sxx=10.0m2,∑(xi−x¯)(yi−y¯)=0.0300ms.したがって b=0.00300sm−1,a=0.00660s.c=1/b=333.3ms−1,δ=a=0.00660s.残差は順に 0.0004,−0.0006,0.0004,−0.0006,0.0004s.

  2. 原点を通すと一定の時間のずれを傾きで説明することになり,音速が変わってしまう.確かめとして,残差の和は0で,1/b の単位は速さである.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

静止から等加速度で動く台車について,横軸を x=t2,縦軸を位置の読み y とします.モデルは y=y0+αt2/2 で,α が加速度です.

x[s2]

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

y[m]

0.02

0.49

1.02

1.49

2.02

横軸t²と縦軸の位置の読みyの5点を示す.当てはめ直線と加速度は示していない. 横軸t²と縦軸の位置の読みyの5点を示す.当てはめ直線と加速度は示していない.
  1. a,b,残差の標準偏差 se,傾きの標準不確かさを求めよ.

  2. 加速度とその標準不確かさを報告せよ.

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考え方 直線の傾きは加速度の半分なので,傾きだけでなくその不確かさも2倍する.

  1. x¯=2.00s2,y¯=1.008m,Sxx=10.0s4,分子は 5.00ms2.b=0.500ms−2,a=0.008m.残差は 0.012,−0.018,0.012,−0.018,0.012m で,2乗の和は 0.00108m2.se=0.00108/3=0.0190m,u(b)=se/10.0=0.0060ms−2.

  2. α=2b=1.000ms−2,u(α)=2u(b)=0.012ms−2.結果は α=1.000(12)ms−2.確かめとして,位置の一定のずれは a に入り,ここで求めた加速度を変えない.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

ある小球の落下について,時間 t=0.100,0.200,0.400s に対する距離が h=0.0490,0.196,0.784m でした.h=Ktn の形を仮定します.

時刻を1 s,距離を1 mで割った無次元の数の常用対数を軸にする.与えられた3点だけを描き,傾きは示していない. 時刻を1 s,距離を1 mで割った無次元の数の常用対数を軸にする.与えられた3点だけを描き,傾きは示していない.
  1. 両対数グラフの傾きから n を求めよ.

  2. K を求め,その単位と g との関係を答えよ.

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考え方 対数を取る量は,単位で割った無次元の数にする.比から傾きを計算すれば単位の選択は傾きに入らない.

  1. 時間が2倍になると距離は4倍なので,n=log10⁡4/log10⁡2=2.両端でも n=log10⁡16/log10⁡4=2 になる.

  2. K=h/t2=0.0490/0.1002=4.90ms−2.静止からの自由落下なら K=g/2,よって g=9.80ms−2.確かめとして,3点すべてで h/t2 が同じである.ただし3点だけの一致から,任意の距離で空気抵抗がないことまでは証明できない.

演習 5

オリジナル ★★★☆☆

水平に進む台車の位置を,次のように動画で読みました.各位置の標準不確かさは 0.010m 程度です.等速モデル y=a+bt を確かめたいと考えています.

t[s]

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

y[m]

0.00

0.40

0.80

1.08

1.32

上は位置の5つの記録,下は残差を描くための空の枠.直線と残差の答えは示していない. 上は位置の5つの記録,下は残差を描くための空の枠.直線と残差の答えは示していない.
  1. 最小二乗直線と残差を求めよ.

  2. 残差の大きさを位置の不確かさと比べ,前半と後半の区間速度も使って,等速モデルを評価せよ.

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考え方 全体の傾きだけでは,途中から速度が変わることを見逃す.残差と局所的な区間速度を両方見る.

  1. t¯=0.40s,y¯=0.720m,Sxx=0.400s2,分子は 0.664ms.b=1.660ms−1,a=0.0560m.残差は −0.056,+0.012,+0.080,+0.028,−0.064m.

  2. 最大の残差は 0.080m で,標準不確かさの約8倍もある.前半 0〜0.40s の速度は 2.00ms−1,後半 0.40〜0.80s は 1.30ms−1.この記録を等速とは見なせず,台車の減速や動画の読み方の変化を調べる.確かめとして,残差の和は0であるが,それだけでモデルが正しいとはいえない.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

一定の速さの台車を光センサーで調べ,距離 x と通過時間 y の傾きから速さを求めます.6点に直線を当てはめます.候補Aの距離は 0.40,0.45,0.50,0.55,0.60,0.65m,候補Bは 0.10,0.30,0.50,0.70,0.90,1.10m です.どちらも残差の標準偏差を se=0.0060s と見込みます.

候補Aの6距離と候補Bの6距離を同じ軸に並べる.縦の位置は候補を分けるためのもの.傾きや不確かさの答えは示していない. 候補Aの6距離と候補Bの6距離を同じ軸に並べる.縦の位置は候補を分けるためのもの.傾きや不確かさの答えは示していない.
  1. それぞれの Sxx と,傾きの標準不確かさを求めよ.

  2. 候補Bを選ぶ前に確かめるべき条件を挙げよ.測定の速さが途中で変わる場合にも同じ比較が使えるか.

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考え方 回数だけでなく,横軸の平均からの広がりが傾きの不確かさを決める.

  1. Aは x¯=0.525m,Sxx=0.04375m2,u(b)=0.0060/0.04375=0.029sm−1.Bは x¯=0.600m,Sxx=0.700m2,u(b)=0.0072sm−1.Bでは不確かさが4分の1になる.

  2. 広い範囲でも同じ速さか,センサーの条件が一定か,距離の不確かさを無視できるかを確認する.途中で速度が変わると直線モデルが合わず,傾きの不確かさだけを比較して選べない.残差を見てから範囲を決める.確かめとして,Sxx は距離の2乗の単位を持つので,se/Sxx は傾きと同じ単位になる.

ポイント 教える人へ

グラフを描く前に,軸の単位と傾きの物理的な意味を説明してもらってください.残差の和が0になるのは当てはめの性質で,モデルの正しさの証拠ではありません.「データが直線に見える」と「残差が想定したばらつきに収まる」を区別できるか確かめます.