問いしるべ
問いから始める物理 原子核と素粒子

原子核と素粒子

第31章の章末問題

著者:柚木芹香

結合エネルギー,崩壊の時間変化,核反応の保存則を組み合わせます.測定される計数や熱量から,核の変化をどこまで決められるかも考えてください.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

重水素核 12H 2個が反応して,陽子と核Xを作ります.重水素核とXの全結合エネルギーは,それぞれ BD=2.225MeV,BX=8.482MeV です.自由な陽子・中性子を基準にし,電子は考えません.

  1. Xの質量数と原子番号を求め,反応1回の Q 値を求めよ.Q は反応前の総静止エネルギーから反応後の値を引いた量です.

  2. BX>BD という比較だけで Q>0 といえますか.反応による総静止質量の減少を,(1u)c2=931.5MeV を用いて求めよ.

重水素核2個が陽子と核Xを作る反応.既知の核種の質量数・原子番号と,B_D=2.225 MeV,B_X=8.482 MeVを示す. 重水素核2個が陽子と核Xを作る反応.既知の核種の質量数・原子番号と,B_D=2.225 MeV,B_X=8.482 MeVを示す.
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考え方
反応の前後で陽子・中性子の総数が同じなので,自由核子の静止エネルギーが相殺する.結合エネルギーは反応に参加する核すべてについて足す.

  1. 質量数の保存から 2+2=1+AX,電荷の保存から 1+1=1+ZX.したがって AX=3,ZX=1 で,Xは三重水素核である.自由核子の静止エネルギーの和を E0 とすると,始状態は E0−2BD,終状態は E0−BX.よって Q=BX−2BD=(8.482−4.450)MeV=4.032MeV である.

  2. 必要な比較は BX>2BD である.例えば BD<BX<2BD なら吸熱となる.今回の質量減少は Δm=Q/c2=(4.032/931.5)u=0.004329u.結合の増加が正の質量減少に対応し,Δmc2=Q に戻ることも確かめられる.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

初めに N0=4.0×1012 個の放射性核を含む試料を,断熱容器内に置きます.核は半減期 T1/2=6.0h で安定核へ β− 崩壊し,1回の崩壊で総静止エネルギーが Q=1.80MeV 減ります.反ニュートリノは平均 0.60MeV を持って容器外へ逃げ,それ以外の放出エネルギーはすべて熱になります.1h=3600s,1MeV=1.602×10−13J,c=3.00×108ms−1 とします.

  1. 初めの熱出力を求めよ.

  2. 初めから 12h の間に発生する熱量と,崩壊した核すべてについての総静止質量の減少を求めよ.熱量を c2 で割った値との違いも述べよ.

断熱容器内の試料からの電子などは容器内で熱になり,反ニュートリノだけが外へ逃げる.初期核数4.0×10¹²,半減期6.0 hを示す. 断熱容器内の試料からの電子などは容器内で熱になり,反ニュートリノだけが外へ逃げる.初期核数4.0×10¹²,半減期6.0 hを示す.
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考え方
熱出力は崩壊率と1回あたりの熱の積である.総静止質量の減少には,外へ逃げる反ニュートリノのエネルギーも含む.

  1. 1回あたりの熱は qh=Q−0.60MeV=1.20MeV=1.9224×10−13J.崩壊定数は λ=ln⁡2/(6.0×3600s)=3.209×10−5s−1 なので,P0=λN0qh=2.5×10−5W である.

  2. 2半減期後の核数は N0/4 で,崩壊数は 3N0/4=3.0×1012.熱量は H=(3N0/4)qh=0.58J.総静止質量の減少は

Δm=(3N0/4)Qc2=3.0×1012×1.80×1.602×10−13(3.00×108)2kg=9.6×10−18kg

である.H/c2=6.4×10−18kg はその 2/3 であり,残りは反ニュートリノが運ぶ.断熱容器内に蓄えられた熱にも質量相当量があるので,核の静止質量の減少と容器全体の質量減少は区別する.P0 の次元はエネルギー毎時間である.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

点状の線源は崩壊1回につき1個の単色γ光子を等方的に放出し,半減期は 5.0h です.初めに距離 d0=0.25m の小さな検出器で得られる正味計数率は 640s−1 でした.その後,線源と検出器を距離 d=0.50m に固定し,間に板を置きます.未散乱γ線の透過率は e−μx,板の半価層は 8.0mm です.検出器の面は常に線源に正対し,面積と検出効率は一定,散乱光子は検出しません.

  1. 初めから 10h 後の正味計数率を,板厚 x の関数として求めよ.

  2. その時点の正味計数率を 5.0s−1 以下にする最小の板厚を求めよ.背景計数率が 2.0s−1 なら,その最小厚さでの総計数率はいくらですか.

初期測定の距離d_0=0.25 mと,板を置いた測定の距離d=0.50 mを別々に示す.板厚xと線源に正対する検出器を描く. 初期測定の距離d_0=0.25 mと,板を置いた測定の距離d=0.50 mを別々に示す.板厚xと線源に正対する検出器を描く.
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考え方
時間による崩壊,距離による幾何学的な減少,板による吸収は別々の因子として掛かる.背景は最後に足す.

  1. 検出器の面積を Sd とすると,受け取る割合は Sd/(4πd2).したがって距離の変更で (d0/d)2=1/4 倍,2半減期の経過で 1/4 倍になる.また μ=ln⁡2/(8.0mm) なので,求める率は r(x)=640×(1/4)×(1/4)e−μxs−1=40e−μxs−1 である.

  2. 40e−μx≤5.0 より μx≥ln⁡8=3ln⁡2.最小厚さは x=24mm.総計数率は (5.0+2.0)s−1=7.0s−1 である.距離を2倍にしても背景は 1/4 倍にならない.幾何学的な近似には Sd/d02 が十分小さいこと,指数則の使用には未散乱光子だけを数える配置が必要である.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

安定核Xが中性子を捕獲して放射性核Yとなり,Yは半減期 600s で安定核へ崩壊します.XとYは同じ原子番号で,結合エネルギーの差は BY−BX=6.00MeV です.捕獲は一定の率 R で起こり,Yの再捕獲はありません.初めにYはなく,1200s 照射し,照射を止めてから 600s 待ち,続く 600s に背景を差し引いて 4.87×104 個の崩壊を検出しました.検出効率は ε=0.100 です.Xの初期核数は 3.0×1010 個,入射中性子の運動エネルギーは無視でき,1MeV=1.602×10−13J とします.

  1. 照射中のYの核数を求め,測定から R を決めよ.

  2. 捕獲の Q 値と,捕獲直後のγ放出・反跳に対応する放出仕事率を求めよ.Xの減少を無視した仮定を確かめよ.

Xが中性子を捕獲してYとなり,Yが安定核へ崩壊する.照射1200 s,待機600 s,計数600 sと検出効率0.100を示す. Xが中性子を捕獲してYとなり,Yが安定核へ崩壊する.照射1200 s,待機600 s,計数600 sと検出効率0.100を示す.
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考え方
照射中は生成と崩壊を同時に追い,照射後の核数から有限時間内の崩壊数を数える.捕獲のエネルギー収支には,自由中性子の静止エネルギーも入る.

  1. λ=ln⁡2/(600s) とおく.照射中は dNYdt=R−λNY.両辺に eλt を掛けて積分すると eλtNY=R(eλt−1)/λ だから,NY(t)=R(1−e−λt)/λ.照射終了時は Ni=3R/(4λ) である.待機で半分となり,次の半減期にその半分が崩壊するので,正味計数 C=εNi/4=3εR/(16λ).よって

R=16λC3ε=3.00×103s−1

となる.

  1. 陽子数は同じで中性子が1個増すので,Q=(MX+mn−MY)c2=BY−BX=6.00MeV.求める仕事率は Pc=RQ=2.88×10−9W で,Yの後の崩壊熱はこの値に含めない.照射中に消費したXの割合は R(1200s)/(3.0×1010)=1.2×10−4 と小さい.一定生成率の仮定には,この割合とYの再捕獲確率が小さいことが必要である.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

同じ試料に,互いに生成し合わない核種UとVが含まれます.半減期はUが 10.0min,Vが 5.00min です.両者の崩壊を同じ効率 ε=0.200 で検出し,各回 60.0s 測定しました.総計数を表に示します.背景の期待計数は各回100であり,別の長時間測定によってその不確かさは無視できるとします.1min=60s です.

測定開始時刻

総計数

0min

6100

10.0min

2600

20.0min

1225

  1. 最初の測定窓にUとVがそれぞれ寄与する正味計数の期待値 u,v を,最初の2点から決めよ.3点目を予測して模型を検証せよ.

  2. 初めの核数 NU0,NV0 を求めよ.測定窓の間も崩壊することを考慮せよ.

  3. 各回の計数は独立で,分散は総計数に等しいとします.u,v の標準不確かさを求めよ.背景を差し引いた計数を,1種類の指数関数で表せますか.

核種UとVを含む試料を同じ効率で測定する.開始時刻0,10.0,20.0 minの各60.0 sの測定窓と総計数6100,2600,1225を示す. 核種UとVを含む試料を同じ効率で測定する.開始時刻0,10.0,20.0 minの各60.0 sの測定窓と総計数6100,2600,1225を示す.
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考え方
一定長の測定窓の寄与は,開始時刻に対して各核種の指数則で減る.成分を分ける連立方程式を立て,ゆらぎは元の総計数から評価する.

  1. 正味計数は S0=6000,S1=2500,S2=1125.開始時刻が 10.0min 遅れると,Uの寄与は 1/2,Vは 1/4 となる.よって u+v=S0,u/2+v/4=S1.解くと u=4S1−S0=4000,v=2S0−4S1=2000.3点目の予測は u/4+v/16=1000+125=1125 で一致する.

  2. 測定時間を Δt=60.0s とすると,Uの最初の計数は u=ε∫0ΔtλUNU0e−λUtdt=εNU0(1−e−λUΔt).λUΔt=ln⁡2/10,λVΔt=ln⁡2/5 だから

NU0=40000.200(1−2−1/10)=2.99×105,NV0=20000.200(1−2−1/5)=7.73×104

である.瞬間の崩壊率を測定時間倍する近似は使っていない.

  1. 背景の不確かさを無視できるので,σS02=6100,σS12=2600.線形結合から σu=16×2600+6100=218,σv=4×6100+16×2600=257 である.従って u=(4.00±0.22)×103,v=(2.00±0.26)×103.各不確かさは周辺の値であり,u,v 自体は独立ではない.S1/S0=0.417,S2/S1=0.450 と比が異なるため,中央の値は単一指数則に一致しない.単一模型を統計的に棄却できるかは別の検定が要る.大計数の近似に必要な 1/Ci は各回とも小さい.

演習 6

オリジナル ★★☆☆☆

運動エネルギー Kα=3.20MeV のα粒子が静止した 613C 核に入射し,中性子と核Xを作りました.入射方向と直角に出た中性子の運動エネルギーは Kn=4.34MeV です.運動の計算では非相対論近似を用い,α粒子,中性子,Xの質量を,それぞれ 4m0,m0,AXm0 と近似します.m0c2=931.5MeV,炭素核とα粒子の結合エネルギーは 97.11MeV,28.30MeV とします.電子は考えません.

  1. Xの質量数・原子番号と運動エネルギーを求めよ.

  2. 測定から反応の Q 値とXの結合エネルギーを求めよ.質量数を質量の比に使う近似の限界も述べよ.

α粒子がx軸の正方向へ静止炭素13核に入射し,中性子がy軸の正方向へ出る.既知の運動エネルギーK_αとK_nを示す. α粒子がx軸の正方向へ静止炭素13核に入射し,中性子がy軸の正方向へ出る.既知の運動エネルギーK_αとK_nを示す.
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考え方
運動量の直角な成分を2乗して足すと,反跳する核の運動エネルギーが分かる.その後にエネルギー保存と結合エネルギーの差を使う.

  1. 保存則から AX=13+4−1=16,ZX=6+2=8 なのでXは酸素核である.入射運動量を pα,中性子の運動量を pn とすると,pX=pαex−pney.ここで ex,ey は各軸の単位ベクトルである.従って

KX=pα2+pn22(16m0)=4Kα+Kn16=1.07125MeV≈1.07MeV

である.

  1. Kα+Q=Kn+KX より Q=(4.34+1.07125−3.20)MeV=2.21MeV.また自由核子の静止エネルギーが相殺するので Q=BX−BC−Bα.よって BX=(97.11+28.30+2.21125)MeV=127.62MeV である.非相対論近似には K/(mc2) が小さいことが必要で,最大でも中性子の 0.00466 である.質量比の近似には核子質量の差と B/(Am0c2) の小ささも必要であり,得た結合エネルギーは指定した近似模型の値である.

演習 7

オリジナル ★★★☆☆

仮想的な静止核 (A,Z)=(200,80) が,同一の核2個へ分裂します.中性子と光子の放出はなく,生成核は基底状態です.親核と生成核の核子1個あたりの結合エネルギーを 7.60MeV,8.70MeV とします.分裂後は球形の生成核2個が表面を接している状態から,クーロン反発だけで遠ざかる模型を使います.生成核の半径は R=r0A1/3,r0=1.25fm,kee2=1.44MeVfm です.1fm=10−15m,(1u)c2=931.5MeV とします.

  1. Q 値と,接触時・無限遠での各核の運動エネルギーを求めよ.

  2. 同じ核子数・電荷・半径で Q だけが小さかった場合,この接触状態から出発できる条件を求めよ.Q>0 だけで,指定された分裂経路が可能といえますか.

静止親核A=200,Z=80と,表面が接する同一の球形生成核2個.生成核の半径Rと中心間距離2Rを示す. 静止親核A=200,Z=80と,表面が接する同一の球形生成核2個.生成核の半径Rと中心間距離2Rを示す.
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考え方
Q は,反発の位置エネルギーと運動エネルギーを合わせたものになる.接触時にクーロンエネルギーを全運動エネルギーへさらに足すと,二重に数えてしまう.

  1. 保存則から各核は A=100,Z=40.結合エネルギーの増加は Q=[2(100×8.70)−200×7.60]MeV=220MeV.接触距離は dc=2r01001/3=11.604fm なので,相互作用の位置エネルギーは Uc=ke(40e)2/dc=198.553MeV.途中の計算には桁を多めに残した.エネルギー保存 2Kc+Uc=Q から Kc=(Q−Uc)/2≈11MeV.差を取るため,入力の精度では小数第1位まで確定できない.無限遠では位置エネルギーが0となり,各核は K∞=Q/2=110MeV となる.各核の運動量が互いに逆で質量が等しいため,常に等分である.

  2. 接触時の運動エネルギーが非負である条件は Q≥Uc≈199MeV.0<Q<Uc なら,無限遠での収支は発熱でも,指定した接触状態には達せない.これは球形の接触状態を出発点とした模型についての必要条件であり,実際の変形経路や核力による障壁を決めたものではない.運動の計算で質量を 100u と近似すると,K∞/(100uc2)≈0.0012 は小さく,非相対論的に扱える.

演習 8

オリジナル ★★★☆☆

静止核Pが基底状態の娘核D,電子,反ニュートリノへ崩壊します.PとDの核質量を MP,M,電子質量を m とし,Q=(MP−M−m)c2=1.20MeV,Mc2=5.00×104MeV,mc2=0.511MeV とします.反ニュートリノの質量は0です.粒子の全エネルギーは E2=(pc)2+(mc2)2 に従い,質量0の粒子は E=pc です.

  1. 反ニュートリノのエネルギーが0へ近づく極限で電子の運動エネルギーが最大になります.その最大値を厳密に求め,反跳を無視した値からの差を電子ボルトで示せ.1MeV=106eV です.

  2. 電子の運動エネルギーが 0.800MeV の事象では,反ニュートリノのエネルギーをまず反跳なしで近似し,娘核の反跳エネルギーの最大値・最小値を求めよ.

静止Pから娘核D,電子,反ニュートリノが生じる.電子と反ニュートリノの運動量の間の角θを示す.Dの位置は模式的に配置したもの. 静止Pから娘核D,電子,反ニュートリノが生じる.電子と反ニュートリノの運動量の間の角θを示す.Dの位置は模式的に配置したもの.
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考え方
端点では2体のエネルギー保存を相対論の式で解く.端点以外では,娘核の運動量が電子と反ニュートリノの運動量のベクトル和で決まる.

  1. W=MPc2=Mc2+mc2+Q とおく.端点では電子と娘核の運動量の大きさが同じで,ED=W−Ee.両者の関係式を引くと ED2−Ee2=M2c4−m2c4 だから,W2−2WEe=M2c4−m2c4.従って

Kmax=W2+m2c4−M2c42W−mc2=Q(2Mc2+Q)2(Mc2+mc2+Q)

である.反跳による差は Q−Kmax=Q(Q+2mc2)/[2(Mc2+mc2+Q)]=2.6663×10−5MeV≈26.7eV.よって最大値は約 1.19997MeV となる.追加の桁は模型の中央の値で反跳補正を示したものである.

  1. まず Eν≈Q−Ke=0.400MeV.電子の運動量は pec=Ke(Ke+2mc2)=0.800(0.800+1.022)MeV=1.2073MeV で,電子には非相対論式を使わない.娘核の運動量の大きさは,同方向の放出で pe+Eν/c,逆方向で |pe−Eν/c|.娘核だけを非相対論的に扱うと

KD,max≈(1.2073+0.400)22(5.00×104)MeV=25.8eV,KD,min≈(1.2073−0.400)22(5.00×104)MeV=6.52eV

となる.KD/Eν は最大でも 6.5×10−5,KD/(Mc2) は 5.2×10−10 以下なので,反ニュートリノのエネルギーから反跳を省き,娘核に非相対論式を使う近似は整合する.M→∞ で端点は Q に戻る.

演習 9

オリジナル ★★★☆☆

仮想的な核X (A,Z)=(20,10) がγ光子を吸収して,核Yと中性子1個へ分かれます.XとYの結合エネルギーは BX=160.0MeV,BY=154.0MeV,Xの核質量は Mc2=1.860×104MeV です.光子の運動量は Eγ/c,系の s=Es2−c2|ps|2 は重心系でも同じ値です.

  1. Yの質量数・原子番号と,中性子を静止して分離するのに必要なエネルギー Sn を求めよ.

  2. 静止Xへの光子のしきいエネルギーを求め,Sn との差をキロ電子ボルトで示せ.しきい値でのYと中性子の運動について説明せよ.1MeV=103keV です.

エネルギーE_γの光子が,質量数20,原子番号10の静止核Xに入射し,Yと中性子を作る. エネルギーE_γの光子が,質量数20,原子番号10の静止核Xに入射し,Yと中性子を作る.
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考え方
分離エネルギーは結合の減少である.入射光子の運動量を生成物が受け取るため,実験室系では分離エネルギーだけでは足りない.

  1. 保存則からYは AY=19,ZY=10.(MY+mn−M)c2=BX−BY なので,Sn=BX−BY=6.0MeV である.

  2. 反応前は Es=Mc2+Eγ,ps=Eγ/c より s=M2c4+2Mc2Eγ.しきい値では重心系で相対運動がなく,s=(MY+mn)2c4=(Mc2+Sn)2.よって

Eγ,th=Sn+Sn22Mc2=6.000968MeV

で,差は約 0.97keV である.追加の桁は与えた模型の中央の値で補正の大きさを示したものである.しきい値で両粒子は実験室系では同じ速度で動き,合計の運動エネルギーは Eγ,th−Sn となる.両方が静止していれば光子の運動量を保存できない.補正の相対値 Sn/(2Mc2)=1.6×10−4 は小さいが,その存在を論じる際には省けない.