問いしるべ
問いから始める物理 原子核と素粒子

原子核と素粒子

核反応と粒子生成の演習

著者:柚木芹香

重心運動と相対運動を分けて解いてください.以下,1uc2=931.5MeV とします.

演習 1

オリジナル ★☆☆☆☆

静止した 92236U が 56144Ba と質量数92の核Xへ分裂した直後を考える.中性子・光子の放出はなく,運動エネルギーの和は 177MeV.質量は 144u,92u とし,運動は非相対論近似で扱う.

  1. Xの原子番号を求めよ.

  2. 各運動エネルギーと速さの比を求めよ.

静止したウラン236核が,バリウム144核と質量数92の核Xへ分裂する模式図.運動エネルギーの和177 MeVは与えられた値である. 静止したウラン236核が,バリウム144核と質量数92の核Xへ分裂する模式図.運動エネルギーの和177 MeVは与えられた値である.
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考え方 等しい運動量からエネルギーを配分する.

  1. ZX=92−56=36.

  2. BaをBと略し,pB=pX=p と K=p2/(2m) より KB/KX=92/144.和が 177MeV なので KB=177×92/236MeV=69.0MeV,KX=108MeV.vB/vX=mX/mB=92/144 である.和は 177MeV に戻る.K/(mc2)≤0.0013 は小さい.

演習 2

オリジナル ★☆☆☆☆

世代 j の中性子数を平均して nj とする.各中性子が確率 p で核分裂を起こし,新たな中性子を平均2.50個生む.残りは失われる.検出効率一定で平均計数を得た.

世代 j

0

1

2

平均計数

1000

1200

1440

  1. 増倍率 k=nj+1/nj と p を求めよ.

  2. 期待値が2倍以上となる最初の世代と,定常となる p を求めよ.

中性子が確率pで分裂を起こして平均2.50個を生み,確率1−pで失われる模型. 中性子が確率pで分裂を起こして平均2.50個を生み,確率1−pで失われる模型.
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考え方 放出数に次の分裂につながる割合を掛ける.

  1. nj+1=2.50pnj.計数比から k=1.20,p=k/2.50=0.480.

  2. nj=kjn0 より j≥ln⁡2/ln⁡1.20=3.80.最初は第4世代である.一定には k=1 が必要で,p=1/2.50=0.400 である.放出数が1を超えても損失があれば増殖しない.

演習 3

オリジナル ★★☆☆☆

質量 m の中性子が,静止した質量 3m の核と非相対論的な正面弾性衝突を繰り返す.吸収はない.初めの運動エネルギーは 16keV である.

  1. 衝突後の速度と残るエネルギー割合を求めよ.

  2. 0.025eV 以下まで減速する最小衝突回数を求めよ.

質量mの中性子が速度vで質量3mの静止核へ正面から入射する.衝突前の配置を示す. 質量mの中性子が速度vで質量3mの静止核へ正面から入射する.衝突前の配置を示す.
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考え方 速度比の2乗がエネルギー比になる.

  1. 衝突後の核・中性子の速度を V,v′ として v=v′+3V,v2=v′2+3V2.弾性衝突なので v′−V=−v.これを連立し v′=−v/2,V=v/2.E′/E=(v′/v)2=1/4 である.

  2. En=16000×4−neV より n≥ln⁡(16000/0.025)/ln⁡4=9.64.最小は10回.9回後は 0.061eV,10回後は 0.015eV となる.斜めの衝突では取り分が変わる.非相対論式には E/(mc2) が小さい条件が要る.

演習 4

オリジナル ★★☆☆☆

粒子 m=4.00u が静止核 M=12.0u に衝突し,2粒子へ変わる吸熱反応を考える.生成粒子の質量の和は m+M+δ/c2,δ=8.50MeV.

  1. 慣性質量変化を無視する非相対論近似で,入射運動エネルギー K のしきい値 K0 を求めよ.

  2. 全エネルギー Es,全運動量 ps の s=Es2−c2ps2 は重心系でも不変である.粒子の E2=(pc)2+(mc2)2 を使い,厳密なしきい値と補正を求めよ.

質量mの入射粒子と質量Mの静止核が2粒子へ変わる.生成粒子の質量の和m+M+δ/c²と,δ=8.50 MeVを示す. 質量mの入射粒子と質量Mの静止核が2粒子へ変わる.生成粒子の質量の和m+M+δ/c²と,δ=8.50 MeVを示す.
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考え方 しきい値でも重心運動は残る.

  1. K=p2/(2m).重心のエネルギーは p2/[2(m+M)]=mK/(m+M) なので,利用できる分は MK/(m+M).よって K0=δ(1+m/M)=11.3MeV.

  2. Es=(m+M)c2+K,p2c2=K2+2mc2K から

s=(m+M)2c4+2Mc2K

しきい値の重心系では s=[(m+M)c2+δ]2.展開すると

K0=δ(1+mM)+δ22Mc2

補正は 8.502/(2×12.0×931.5)MeV=3.23keV で,主項の 2.85×10−4 倍.近似条件の K/(mc2),δ/[(m+M)c2] はともに0.004未満で小さい.

演習 5

オリジナル ★★☆☆☆

重水素核D・三重水素核Tの数密度を nD,nT とする.古典的な障壁越えで,単位体積・単位時間の融合回数を r=κ0nDnTe−Eb/(kBT) とする.κ0 は一定,Eb=20keV,kB はボルツマン定数である.

等量混合で kBT1=5.0keV のとき r1=1.0×1014m−3s−1 であった.密度一定で温度を2倍にした r と,体積 0.020m3 での総放出仕事率を求めよ.1反応で 17.6MeV,1eV=1.602×10−19J とする.

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考え方 密度一定なら反応率の比は指数因子だけで決まる.

r2/r1=exp⁡[Eb/(2kBT1)]=e2=7.4.r2=7.4×1014m−3s−1.Q=17.6×106×1.602×10−19J=2.82×10−12J より P=r2VQ=42W.時間 Δt に r2Δt/nD,r2Δt/nT が小さい条件で密度を一定とできる.実際の反応率はトンネル効果で変わる.

演習 6

オリジナル ★★★☆☆

真空中の2光子が角 θ で衝突し,電子・陽電子を作る.光子エネルギーは E,ε.両粒子の質量は m,mc2=0.511MeV.全エネルギー・運動量の s=Es2−c2|ps|2 は重心系でも不変で,光子は p=E/c に従う.

  1. 対生成の条件を導け.1光子だけでは生成できない理由も述べよ.

  2. ε=1.00eV の光子との正面衝突の最小 E と,E=4.00×102GeV での最小角を求めよ.1GeV=109eV とする.

エネルギーE,εの2光子が衝突する.下段で進行方向を同じ始点に移し,その間の角θを示す. エネルギーE,εの2光子が衝突する.下段で進行方向を同じ始点に移し,その間の角θを示す.
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考え方 重心系のエネルギーで判断する.

  1. 運動量の和より c2ps2=E2+ε2+2Eεcos⁡θ.よって s=2Eε(1−cos⁡θ).重心系で必要な最低エネルギーは 2mc2 だから

Eε(1−cos⁡θ)≥2m2c4

1光子では s=E2−(pc)2=0 で,必要な s≥4m2c4 を満たさない.

  1. 正面では 1−cos⁡θ=2 より Emin=(mc2)2/ε=2.61×102GeV.指定値で 1−cos⁡θ≥2(0.511×106)2/(4.00×1011)=1.3056.よって θ≥arccos⁡(−0.3056)≈108∘.同方向なら s=0 で,高エネルギーでも生成できない.

ポイント 教える人へ

分裂片への配分を説明させます.
平均と個々の増殖を区別させます.
しきい値で重心運動が残る理由を問います.
核融合模型の範囲と密度一定の条件を問います.