原子核と素粒子
核反応と対消滅・対生成の例題
著者:柚木芹香
本体の
例題
例題 1
ほとんど
中性子の
この
反応の 値を求めよ.原子の 質量を 使ってよい 理由も 述べよ. 重水素核の
反跳を 考えて,γ線の エネルギーを 求めよ.反跳の 運動エネルギーは どれほどか.重水素核の 静止エネルギーは とする.
上は遅い中性子nが静止した陽子¹₁Hへ近づく反応前の状態である.下は吸収後の模式図で,重水素核²₁Hが右へ反跳し,光子γが左へ出る.矢印は進む向きを表す.
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考え方 原子の
左辺の
水素原子と 右辺の 重水素原子は どちらも 電子を1個含むので,両辺に 電子の 質量が 同じだけ 加わり,差を 取ると 打ち消し合う(電子の 結合 エネルギーの 差は より十分小さく,無視できる).よって
である.これは
γ線の
エネルギーを ,重水素核の質量を とする.運動量の 保存から 重水素核の 運動量は で,反跳の速さは 光速より ずっと 小さいので,運動エネルギーは .エネルギーの保存は
である.右辺第2項は
よって
確かめ:
例題 2
止まっている
電子と 陽電子が 対消滅して2個の 光子に なった.各光子の エネルギーと 波長を 求めよ. 運動エネルギー
の陽電子が 止まっている 電子と 対消滅し,2個の 光子が 陽電子の 進んでいた 向きの 前方と 後方へ出た.各光子の エネルギーを 求めよ.
上の(1)は電子e⁻と陽電子e⁺がともに静止している場合で,反応後に2個の光子γが左右へ出る.下の(2)は運動エネルギーK = 1.00 MeVの陽電子が右へ進み,静止した電子と対消滅する場合で,光子が前方と後方へ出る.矢印は進む向きだけを示し,波線の間隔は模式的である.
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考え方 対消滅の
全
運動量は0なので,2個の 光子の 運動量は 大きさが 等しく 反対向きで,エネルギーも 等しい.全エネルギーは だから,各光子は である.波長は
である.
陽電子の
全エネルギーは ,運動量 は から
前方・後方の
で,
確かめ:
例題 3
エネルギー
を使って,対生成が 起こる のしきい値を 求めよ. が鉛の 原子核(静止エネルギー )の場合と,電子の 場合に ついて,しきい値を 数値で 求めよ. がない 真空中では,どんなに エネルギーの 大きい 光子でも 対生成は 起こらない.その 理由を, を使って 説明せよ.
上はエネルギーEの光子γが,静止した質量Mの標的粒子Xへ入射する状態である.下はしきいの模式図で,電子,陽電子,Xが同じ速度vで前へ進む.
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考え方 しきいでは,重心系で3つの
実験室系では
, だから
これが
である.
鉛の
原子核では で,しきい値は とほとんど 同じである.電子では で, となる.軽い 標的では,重心の 運動に 回る エネルギーが 大きいので,しきいが 高くなる. 光子1個では
で,エネルギー によらない.光子1個には 重心系が 存在しない.一方,電子と 陽電子の 系は なので,反応前後で が一致せず,エネルギーと 運動量を 同時に 保存できない.
確かめ:
ポイント ここまでの
原子の
質量の 表から 値を出すときは,両辺の 電子の 数を そろえる. 止まった
状態からの 反応では 全運動量が0で,生成物は エネルギーを 運動量の 釣り合いで 分け合う.重い 反跳核の 運動エネルギーは と小さい. 対消滅の2個の
光子は,重心系では ずつ,動いている陽電子では 前方の 光子ほど 大きな エネルギーを もつ. 不変量
を実験室系と 重心系で 比べると,しきいが 一度に 求まる.光子1個は なので単独では 対を 作れない.