問いしるべ
問いから始める物理 原子核と素粒子

原子核と素粒子

第31章の発展問題

著者:柚木芹香

核反応の収支を,測定の逆算,散乱の統計,相対論的な運動と結びつけます.近似を使うときは,省いた量の比と,得た結論が適用できる範囲を明らかにしてください.

演習 1

IPhO 2015 第1問(改題) ★★★★☆

太陽型の恒星では,正味の反応 4p+2e−⟶24He+2ν によって,1反応につき Q=26.7MeV の静止エネルギーが解放されます.ニュートリノ1個の平均エネルギーは 0.400MeV で,恒星の外へ逃げます.残りは光となり,光とニュートリノは等方的に放射されます.反応率は一定です.恒星との距離は D=1.50×1011m,1MeV=1.602×10−13J です.

同じ面積 Sd=2.00m2 を持つ,互いに独立な2台の検出器を光の進行方向に垂直に置き,Δt=1000s 測定します.ニュートリノには到着時に種類aとbがあり,aの割合を f とします.この種類の変化はエネルギーを変えません.1台目の検出確率は両種類とも ε=1.00×10−14,2台目はaで 2ε,bで ε/2 です.背景を無視でき,計数はそれぞれ C=14000,H=17500 でした.

  1. ニュートリノの到来数密度率 Φν と f を測定から求めよ.0≤f≤1 に対応する計数比の範囲も求めよ.

  2. 恒星の反応率と光の全放射仕事率 L を求めよ.ニュートリノの持ち去るエネルギーを無視すると,L をどう誤りますか.

  3. 計数の分散はそれぞれの計数に等しく,効率・距離・面積の不確かさは無視できます.1次の誤差伝播では,独立な量 x,y の関数 F の分散は σF2=(∂F∂x)2σx2+(∂F∂y)2σy2 です.f と L の標準不確かさを求め,計数比が許容範囲外なら何を疑うべきか述べよ.

恒星から距離Dにある独立な2台の検出器.両者の面積,測定時間,種類aとbの検出確率,総計数CとHを示す. 恒星から距離Dにある独立な2台の検出器.両者の面積,測定時間,種類aとbの検出確率,総計数CとHを示す.
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考え方
検出器ごとの効率を種類の割合で平均する.全種類を等しく数える1台目で総到来数を決め,2台目との比で種類の割合を決める.

  1. 1台目から C=εSdΔtΦν なので,Φν=7.00×1014m−2s−1.2台目では H=εSdΔtΦν[2f+(1−f)/2].比を r=H/C とすると r=1/2+3f/2,従って f=(2r−1)/3=0.500.0≤f≤1 に対応する期待計数比は 1/2≤r≤2 である.

  2. 1反応で2個出るため,反応率は Rn=4πD2Φν/2=9.90×1037s−1.光へ渡るエネルギーは qh=Q−2(0.400MeV)=25.9MeV.よって L=Rnqh=4.11×1026W.ニュートリノのエネルギーを省くと L′=RnQ となり,相対的に (L′−L)/L=0.800/25.9=0.0309,約3.09 %大きく見積もる.

  3. r=H/C の偏微分は 1/C,−H/C2.よって

σr2=HC2+H2C3=r2(1H+1C),σf=23σr=0.00945

となる.従って f=0.500±0.009.L は C に比例するから,σL/L=1/C=0.00845,σL=3.47×1024W で,L=(4.11±0.03)×1026W.許容範囲外の比が計数のゆらぎを超えて続くなら,背景,効率の較正,種類が2つだけという模型などを調べる必要がある.1次の伝播には σC/C,σH/H が小さいことが必要で,いずれも0.01未満である.ΦνSdΔt が個数となることも次元の確かめになる.

演習 2

IPhO 2015 第3問(改題) ★★★★☆

質量 m の中性子が,静止した質量 Am の核と非相対論的な弾性衝突を繰り返します.衝突前の中性子の速さを v,重心系での中性子の散乱角を θ とします.ここで A>1 は質量比で,質量数で質量比を近似する模型です.各衝突で cos⁡θ は区間 [−1,1] に一様に分布し,衝突どうしは独立です.核の熱運動と空間からの漏れを無視します.

  1. 衝突前後の中性子のエネルギー比 g を求め,その確率密度を示せ.

  2. 対数減少 Y=−ln⁡g の平均 ξ と分散 σY2 を求めよ.A→1,A→∞ の極限も調べよ.

  3. 初期エネルギー E0=2.00MeV,目標値 Ef=0.0400eV とします.平均対数を用いる代表回数を n∗=ln⁡(E0/Ef)/ξ と定義し,実際に比較する回数 n を,n∗ 以上の最小整数とします.各衝突後に吸収されず残る確率は,散乱角と独立に q=0.9950 です.A=2,12 の n とその回数までの生存確率を求めよ.さらに nσY2/(nξ) を評価し,n 回なら全中性子が Ef 以下になるといえるか述べよ.1MeV=106eV,mc2=939MeV とします.

実験室系の静止核への中性子入射と,重心系の中性子散乱角θを別々に示す.各衝突後の生存確率qと吸収確率1−qを枝で示す. 実験室系の静止核への中性子入射と,重心系の中性子散乱角θを別々に示す.各衝突後の生存確率qと吸収確率1−qを枝で示す.
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考え方
重心速度に,回転した重心系の速度を足す.繰り返しのエネルギー比は積だが,対数なら独立な減少量の和になり,平均と分散を足せる.

  1. 重心速度は Vc=v/(A+1).重心系での中性子の速さは u=Av/(A+1) で,弾性衝突後も同じである.従って実験室系で v′2=Vc2+u2+2Vcucos⁡θ なので

g=E′E=A2+1+2Acos⁡θ(A+1)2

となる.α=[(A−1)/(A+1)]2 とおくと α≤g≤1.g は cos⁡θ の1次式であるから,確率密度は p(g)=1/(1−α) で一様となる.この α は粒子の種類を表す記号とは別の,最小エネルギー比である.

  1. 平均は

ξ=11−α∫α1(−ln⁡g)dg=1−α+αln⁡α1−α=1+αln⁡α1−α

である.2乗平均には原始関数 g[(ln⁡g)2−2ln⁡g+2] を使い,

⟨Y2⟩=2−α[(ln⁡α)2−2ln⁡α+2]1−α,σY2=⟨Y2⟩−ξ2=1−α(ln⁡α)2(1−α)2

を得る.A→1 では α→0,αln⁡α,α(ln⁡α)2→0 だから ξ→1,σY2→1.A→∞ では g→1 となり,両方とも0へ近づく.

  1. ln⁡(E0/Ef)=ln⁡(5.00×107)=17.7275.A=2 では α=1/9,ξ=0.72535,σY2=0.32109,n∗=24.44,n=25.生存確率は q25=0.882.A=12 では α=121/169,ξ=0.15777,σY2=0.009251,n∗=112.36,n=113.生存確率は q113=0.568 となる.

独立な和 ln⁡(E0/En)=∑j=1nYj の平均は nξ,分散は nσY2.指定の相対幅は順に0.156,0.0573で,散乱のゆらぎは残る.生存した全中性子が目標以下とはいえず,qn は指定回数までの生存率であって,目標に到達する割合ではない.特に平均対数に基づく n∗ は初到達回数の厳密な平均でもない.初期の E0/(mc2)=0.00213 は小さく,非相対論近似がよい.熱運動を省くには,核の熱運動速度が目標付近の中性子速度より十分小さい条件も要る.

演習 3

オリジナル ★★★★★

液滴模型で核の結合エネルギーを B=avA−asA2/3−acZ2A−1/3 とします.表面の損失を Us=asA2/3,電気的な損失を Uc=acZ2A−1/3 とし,as=18.0MeV,ac=0.700MeV とします.核力の体積項以外の補正はこの2項だけです.分裂は核子数と電荷を保存し,電子と自由中性子は考えません.生成核は十分遠く離れ,その間の電気的な相互作用はなくなります.

  1. 核が等しい核2個に分裂するときの Q 値を Us,Uc で表し,Q>0 の条件を x=Uc/Us によって示せ.

  2. 分裂前の核の体積を保つ小さな変形の大きさを ϵ とします.この模型で表面項は Us(ϵ)≈Us(1+2ϵ2/5),電気的な項は Uc(ϵ)≈Uc(1−ϵ2/5) と与えられます.高次の項は省いています.球形が小変形に対して局所的に安定な条件を求めよ.A=240,Z=96 の核について,(1)と両立するか数値で調べよ.

  3. 非対称な分裂では,生成核の質量数を fA,(1−f)A,原子番号を fZ,(1−f)Z とします.f は 0<f<1 の連続量と近似します.Q(f) を求め,f=1/2 がエネルギー解放量の局所的な最大となる条件を求めよ.対称分裂が発熱なら球形は必ず不安定である,という主張も検討せよ.

球形核と同体積の小変形核を,変形εとともに示す.別に,核子数と電荷をfと1−fの割合で分けた十分離れた2生成核を描く. 球形核と同体積の小変形核を,変形εとともに示す.別に,核子数と電荷をfと1−fの割合で分けた十分離れた2生成核を描く.
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考え方
核子数に比例する体積項は分裂前後で相殺する.遠く離れた生成物のエネルギーと,小変形の曲率は,それぞれ違う条件を与える.

  1. 等分後の表面項は 2as(A/2)2/3=21/3Us,電気的な項は 2ac(Z/2)2(A/2)−1/3=2−2/3Uc.従って結合の増加は

Q=(1−2−2/3)Uc−(21/3−1)Us

である.Q>0 は x>xQ,ただし xQ=(21/3−1)/(1−2−2/3)=0.7024 に対応する.

  1. 静止エネルギーの変化は,結合の減少に等しく,ΔU=Us(ϵ)−Us+Uc(ϵ)−Uc≈(2Us−Uc)ϵ2/5.2次の係数が正なら球形は局所的な極小なので安定であり,条件は x<2 である.x=2 では高次の項が必要で,この式だけでは判定できない.指定の核では Us=18.0×2402/3MeV=695MeV,Uc=0.700×962×240−1/3MeV=1038MeV,x=1.493.(1)の Q=203MeV>0 と,(2)の局所安定性が両立する.小さな変形の初めには供給エネルギーが必要だが,十分離れた生成核はより低いエネルギーを持つ.障壁全体の高さはこの2次式からは決まらない.

  2. 核子数と電荷の分担を同じ割合にしたので,電気的な項は f5/3Uc と (1−f)5/3Uc になる.従って

Q(f)=Us[1−f2/3−(1−f)2/3]+Uc[1−f5/3−(1−f)5/3]

である.f と 1−f の対称性から,f=1/2 では dQdf=0.2回微分すると

d2Qdf2=2Us9[f−4/3+(1−f)−4/3]−10Uc9[f−1/3+(1−f)−1/3]

なので,f=1/2 で d2Qdf2=421/3(2Us−5Uc)/9.x>2/5 なら2次の係数が負で局所的な最大,x<2/5 なら局所的な最小である.等号では f=1/2+η として展開すると,Q(f)−Q(1/2)=3221/3Usη4/81+… となり,4次の係数が正なので局所的な最小である.従って局所的な最大となる条件は x>2/5 である.対称分裂の発熱条件 x>0.7024 はこれを満たすが,球形の不安定条件 x>2 は満たすとは限らない.すなわち 0.7024<x<2 が反例となる.小変形の展開には |ϵ| が十分小さい条件が,連続的な分担の近似には両生成核の fA,(1−f)A が十分大きい条件が必要である.

演習 4

オリジナル ★★★★★

質量 m の粒子aと質量 4m の粒子bが反応し,生成物の総静止質量が 7m となる仮想反応を考えます.電荷など他の保存則は満たされ,反応を妨げる別の障壁はありません.各粒子の全エネルギーと運動量は E2=(pc)2+(mc2)2 に従います.系の s=Es2−c2|ps|2 は重心系でも同じであり,反応の必要条件は s≥(7mc2)2 です.

  1. bを静止させてaを入射する場合,aの運動エネルギーのしきい値を求めよ.

  2. 両粒子を互いに正面から入射させ,供給する運動エネルギーの和を最小にします.その最小値と,aとbへの最適な配分,それぞれの運動量を求めよ.同じ運動エネルギーを両粒子に与える配分は最適ですか.

  3. 正面衝突に対して最適な配分を保ち,供給する運動エネルギーの和を 2mc2+ΔK とします.1≫ΔK/(mc2)>0 の場合,入射方向の角が π−δ にずれても反応できる δ の範囲を先頭の近似で求めよ.ΔK=0.0100mc2 で評価し,近似の条件を確かめよ.

粒子aの質量m,粒子bの質量4mを示す.下段は運動エネルギーK_a,K_bの2本のビームと,正面からの方向のずれδを表す. 粒子aの質量m,粒子bの質量4mを示す.下段は運動エネルギーK_a,K_bの2本のビームと,正面からの方向のずれδを表す.
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考え方
静止標的では全運動量が残る.2本のビームでは,供給したエネルギーを生成物の静止エネルギーへ最も多く使うために,全運動量を0にする.

  1. Ea=mc2+Ka,pa2c2=Ka2+2mc2Ka.始状態の Es=5mc2+Ka から

s=(5mc2+Ka)2−(Ka2+2mc2Ka)=25m2c4+8mc2Ka

を得る.これが 49m2c4 以上となるので,しきい値は Ka,th=3mc2 である.

  1. 運動エネルギーの和を KΣ とすると Es=5mc2+KΣ,また s≤Es2.従って少なくとも KΣ≥2mc2 が要る.等しい大きさで逆向きの運動量なら等号にできる.そのとき Ea+Eb=7mc2 で,Eb2−Ea2=15m2c4 だから Eb−Ea=15mc2/7.連立して Ea=17mc2/7,Eb=32mc2/7.従って

Ka=107mc2,Kb=47mc2,pa=pb=4157mc

となる.等しい運動エネルギーでは pa2c2=K2+2mc2K,pb2c2=K2+8mc2K が異なり,全運動量が残るため最適ではない.

  1. 正面に対する最適配分とは pa=pb=p である.Es=7mc2+ΔK,Eb2−Ea2=15m2c4 から,厳密には Ea=(Es2−15m2c4)/(2Es),p2c2=Ea2−m2c4 で求められる.方向のずれを入れると,全運動量の2乗は 2p2(1−cos⁡δ).従って

s=Es2−2p2c2(1−cos⁡δ)

であり,反応の条件は 2p2c2(1−cos⁡δ)≤Es2−49m2c4.ΔK/(mc2) が小さく,δ2 も小さいとき,1−cos⁡δ≈δ2/2,p≈415mc/7 とできるので

δ2≤14mc2ΔKp2c2≈343120ΔKmc2

となる.指定値では δmax≈0.169rad.捨てた相対的な補正は ΔK/(mc2)=0.0100 と δ2≈0.0286 によって小さく抑えられる.ΔK→0 で角度の許容幅が0になることも,しきい値で重心運動を残せないという条件と合う.

演習 5

オリジナル ★★★★★

自由な核の基底状態の質量を M,励起エネルギーを Δ=0.200MeV とします.励起核の質量は M+Δ/c2,Mc2=80.0×931.5MeV です.励起状態の平均寿命は τ=5.00×10−10s.核は1個のγ光子を放出して基底状態へ移り,基底状態の核はγ光子を吸収して同じ励起状態へ移れます.光子は E=pc,静止質量 M′ の核は E2=(pc)2+(M′c2)2 に従います.

  1. 静止励起核から出る光子のエネルギー Eem と,静止基底核が吸収できるエネルギー Eabs を,反跳を含めて厳密に求めよ.両者の差を Δ/(Mc2) の先頭の非零の次数まで求めよ.

  2. 線源だけを吸収核の方向へ速度 v で動かします.線源の静止系で前方に出る光子の実験室系のエネルギーは E=γ(1+v/c)Eem,γ=1/1−v2/c2 です.静止吸収核に共鳴する v を厳密に求め,数値で評価せよ.

  3. エネルギー幅の尺度を Γ=ℏ/τ とし,ℏ=6.58×10−16eVs,1MeV=106eV とします.動かない自由核どうしのエネルギー差と Γ を比較せよ.

  4. 線源の速度は(2)の値に固定し,線源自体の熱運動は無視します.吸収核だけが温度Tの気体中にあり,光の進行方向の速度 u は平均0,分散 kBT/M とします.1≫|u|/c では核が見る光子エネルギーは E′≈E(1−u/c) です.熱運動によるエネルギーの標準偏差を求め,それを Γ 以下にする温度を見積もれ.kB=8.62×10−5eVK−1,c=3.00×108ms−1 とします.

離れた励起核と基底核,光子の進行方向,線源の前進速度v,吸収核の熱運動の成分uを示す.準位差Δと励起状態の平均寿命τを添える. 離れた励起核と基底核,光子の進行方向,線源の前進速度v,吸収核の熱運動の成分uを示す.準位差Δと励起状態の平均寿命τを添える.
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考え方
放出では光子と反跳核にエネルギーを分け,吸収では励起に加えて反跳へエネルギーを供給する.その差をドップラー効果で埋め,寿命による幅と熱運動による幅を比べる.

  1. W=Mc2 と略記する.放出では W+Δ=Eem+ED,ED2=W2+Eem2.前者の ED を後者へ代入し,光子エネルギーの2乗を相殺すると

Eem=(W+Δ)2−W22(W+Δ)=Δ−Δ22(W+Δ)

となる.吸収では W+Eabs が全エネルギーで,励起核の運動量は Eabs/c.従って (W+Eabs)2=(W+Δ)2+Eabs2 より

Eabs=Δ+Δ22W

である.差は Eabs−Eem=Δ2/(2W)+Δ2/[2(W+Δ)]≈Δ2/W.それぞれ Eem=0.199999732MeV,Eabs=0.200000268MeV,差は 0.537eV となる.多くの桁は与えた模型の中央の値で補正を示すためである.

  1. r=Eabs/Eem,β=v/c とおく.共鳴条件は r=(1+β)/(1−β) なので,r2(1−β)=1+β.よって

v=cr2−1r2+1=cEabs2−Eem2Eabs2+Eem2=8.05×102ms−1

である.速度の向きは吸収核へ近づく向きである.小さな差では v/c≈(Eabs−Eem)/Δ≈Δ/W となり,2.68×10−6 と小さい.

  1. Γ=6.58×10−16/(5.00×10−10)eV=1.32×10−6eV.差との比は (Eabs−Eem)/Γ=4.08×105 であり,静止した自由核どうしは,寿命による幅だけではほとんど共鳴しない.幅は指定した尺度であり,ここで線の形そのものを導いたわけではない.

  2. E′−E≈−Eu/c なので,標準偏差は σE=(E/c)kBT/M=EkBT/W.σE≤Γ の条件は

T≤WkB(ΓE)2≈80.0×931.5×1068.62×10−5(1.316×10−60.200×106)2K=3.74×10−8K

である.極端に小さい値なので,古典気体の自由核という模型をその温度まで実現できるという意味ではない.速度調整で平均のずれを消せても,熱運動の広がりは残る.展開には Δ/W=2.68×10−6,熱運動の近似には kBT/W が十分小さいことが必要である.M→∞ なら反跳の差は0になり,(1)の両エネルギーが Δ に一致する.