問いしるべ
問いから始める物理 ボルツマン分布と等分配則(発展)

ボルツマン分布と等分配則(発展)

第17章の発展問題

著者:柚木芹香

応用を考えます.

演習 1

オリジナル ★★★★☆

分子質量 m の二原子理想気体が断熱固定容器から真空へ流出します.孔は平均自由行程より十分小さく,逆流・孔内衝突・壁の熱容量は無視します.内部は平衡化が流出より速く,温度 T のマクスウェル分布です.回転は古典的で並進と独立,振動は凍結しています.

  1. 流出分子の速さ分布と,回転を含む平均エネルギーを求めてください.

  2. 初め N=N0,T=450K です.N=32N0/243 での温度を求めてください.自由度は変わりません.

同じ入射角 α で孔へ向かう速さ v₁ と v₂ の分子を比べる.時間 Δt に孔へ届く領域の壁に垂直な奥行きは v cos α Δt で,v₂>v₁ の方が長い.緑の輪郭は到達領域,青い矢印は分子の速度を示す. 同じ入射角 α で孔へ向かう速さ v₁ と v₂ の分子を比べる.時間 Δt に孔へ届く領域の壁に垂直な奥行きは v cos α Δt で,v₂>v₁ の方が長い.緑の輪郭は到達領域,青い矢印は分子の速度を示す.
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考え方 到達数で重みづけし,逃げたエネルギーを引く.

  1. 孔への到達数で重みづけすると,方向平均後は内部の分布の v 倍になる.a=m/(2kBT) と本章の積分 Ij を使い,規格化すると P(v)=2a2v3e−av2(v≥0).並進の平均は (m/2)I5/I3=2kBT,回転の kBT を足して 3kBT である.

  2. dN<0 に対し dU=3kBTdN,U=5NkBT/2.微分して 5NdT=TdN,積分して T=450(N/N0)1/5K.よって 300K である.

演習 2

オリジナル ★★★★☆

半径 L,長さ ℓ の円筒に,質量 m1,2m1 の理想気体が各 N 個あります.共回転する大きな熱浴と弱く接し,角速度 ω の回転系で温度 T の熱平衡にあります.分子の出入りと重力はありません.ai=miω2/(2kBT),a1L2=ln⁡3 として,軸上と外壁での数密度比 n2/n1 を求めてください.

半径 L,長さ ℓ の円筒が軸のまわりに角速度 ω で剛体回転している.断面では軸からの距離 r と殻の厚さ dr を,側面では円筒の長さ ℓ を示す.橙の帯は同じ薄い殻に対応する. 半径 L,長さ ℓ の円筒が軸のまわりに角速度 ω で剛体回転している.断面では軸からの距離 r と殻の厚さ dr を,側面では円筒の長さ ℓ を示す.橙の帯は同じ薄い殻に対応する.
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考え方 回転系のボルツマン因子を殻の体積で規格化する.

有効な位置エネルギーは −miω2r2/2,従って ni=Cieair2.

N=2πℓCi∫0Lreair2dr=πℓCiai(eaiL2−1)

より,軸上の比は C2/C1=2(3−1)/(9−1)=1/2.外壁では e(a2−a1)L2=3 倍されて 3/2 である.

演習 3

オリジナル ★★★★☆

大きな熱浴と弱く接して温度 T で平衡にある振動子は,最低準位基準で Ej=jε(j=0,1,…),ε=kBθ で,各準位は1状態です.

  1. 分配関数,平均,分散を求め,c=d⟨E⟩dT と分散の関係を示してください.

  2. 零点エネルギー ε/2 を足す効果を答えてください.

各準位は1状態で,エネルギーは 0,ε,2ε,3ε,… と等間隔に並ぶ.例として T=θ,ε=k_Bθ のボルツマン分布を描き,占有確率の棒は高い準位ほど指数的に短くなる.この例では熱的な高さ k_BT と準位間隔 ε が等しい. 各準位は1状態で,エネルギーは 0,ε,2ε,3ε,… と等間隔に並ぶ.例として T=θ,ε=k_Bθ のボルツマン分布を描き,占有確率の棒は高い準位ほど指数的に短くなる.この例では熱的な高さ k_BT と準位間隔 ε が等しい.
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考え方 等比級数を微分し,定数を足す効果を分ける.

  1. β=1/(kBT),x=e−βε とすると,等比級数より Z=1/(1−x).微分して ⟨E⟩=−∂ln⁡Z/∂β=εx/(1−x),σE2=∂2∂β2ln⁡Z=ε2x/(1−x)2.温度微分で c=σE2/(kBT2),つまり σE2=kBT2c である.

  2. Z は e−ε/(2kBT) 倍,平均は ε/2 増す.確率の共通因子は消え,分散・比熱は変わらない.回転準位は等間隔でない.

演習 4

東京大 2004 前期(改題) ★★★★☆

真空中の水平シリンダーのピストン(断面積A側 S,B側 3S)を棒でつなぎ,棒を含む総質量を Mp とします.右への変位 x で気体の体積はAが V0+Sx,Bが V0−3Sx です.x=0 で静止し,圧力はAが 3p0,Bが p0 です.Bは単原子理想気体,Aは単原子割合 y の単原子・二原子の理想混合気体です.回転は有効,振動は凍結し,反応・摩擦・漏れはありません.

  1. 断熱・可逆で体積仕事だけの微小振動をさせます.内部で平衡を保ち,比熱は一定です.Aの CV,γA と角振動数 ω を求めてください.

  2. ω2=39p0S2/(2MpV0) から y を求め,各側を初温に保つ等温振動の角振動数も求めてください.

面積Sのピストンをもつ気体Aと,面積3Sのピストンをもつ気体Bを軽い棒で連結する.Aは単原子と二原子の混合気体で,Bは単原子気体である.棒と2枚のピストンの総質量はM_pであり,平衡では両気体の体積がV₀,圧力がp_A=3p₀,p_B=p₀である.右への変位xによってV_A=V₀+Sx,V_B=V₀−3Sxとなる. 面積Sのピストンをもつ気体Aと,面積3Sのピストンをもつ気体Bを軽い棒で連結する.Aは単原子と二原子の混合気体で,Bは単原子気体である.棒と2枚のピストンの総質量はM_pであり,平衡では両気体の体積がV₀,圧力がp_A=3p₀,p_B=p₀である.右への変位xによってV_A=V₀+Sx,V_B=V₀−3Sxとなる.
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考え方 自由度の平均と,断熱圧縮の復元力を使う.

  1. f¯=3y+5(1−y)=5−2y,CV=f¯R/2,γA=1+2/f¯,γB=5/3 である.可逆断熱より dp/p=−γdV/V.δVA=Sx,δVB=−3Sx を入れると,復元力は F=SpA−3SpB=−(3γA+15)p0S2x/V0.従って ω2=(3γA+15)p0S2/(MpV0).

  2. 3γA+15=39/2 より γA=3/2,f¯=4,y=1/2.等温なら両側で dp/p=−dV/V より ωiso2=12p0S2/(MpV0) である.熱移動が振動より速いことが条件である.

演習 5

オリジナル ★★★★★

温度 T の理想気体に,質量 m,qm(q>1)の分子がそれぞれ N1,N2 個あります.分子を無作為に選んで速さを測ります.η=N2/N1>0,s=mv2/(2kBT) とします.

  1. 速さ分布 P(v) と v>0 の停留条件 η=G(s) を求めてください.

  2. ある η で極大が2つになる q の条件を求めてください.

温度 T の容器に質量 m の分子が N₁ 個,質量 qm の分子が N₂ 個ある.容器内の同じ分子の位置を一定の時間間隔で記録し,移動距離から速さ v を測る装置の模式図である. 温度 T の容器に質量 m の分子が N₁ 個,質量 qm の分子が N₂ 個ある.容器内の同じ分子の位置を一定の時間間隔で記録し,移動距離から速さ v を測る装置の模式図である.
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考え方 状態数を含め,個数割合で分布を足す.

  1. a=m/(2kBT) とおき,マクスウェル分布を足すと

P(v)=4a3/2πv21+η[e−s+ηq3/2e−qs]

である.微分の符号は (1−s)e−s+ηq3/2(1−qs)e−qs と同じで,s≤1/q では正,s≥1 では負.停留点は 1/q<s<1,G=e(q−1)s(1−s)/[q3/2(qs−1)] となる.

  1. D=(1−s)(qs−1) とすると dln⁡Gds=(q−1)(1−1/D).D の最大値は (q−1)2/(4q) だから,G が途中で増加する条件は (q−1)2>4q,つまり q>3+22.G は減少・増加・減少し,両端で ∞,0 に近づく.η を極小値と極大値の間に選べば停留点は3個で,P は極大・極小・極大をもつ.閾値以下は極大1個である.

演習 6

オリジナル ★★★★★

2次元絶縁体の原子 N 個に,面内の線形音響モードを 2N 個考えます.曲げ振動と電子は除き,準位間隔の密度は D(ε)=Aε(0<ε<εD)です.熱的平均は u=ε/(eε/(kBT)−1) です.

  1. A と,εD≫kBT での定積熱容量を求めてください.最小の間隔は kBT より十分小さく,定数 J=∫0∞x2/(ex−1)dx を使えます.

  2. 高温の熱容量と,同一間隔 εD の振動子 2N 個の模型の低温比熱を比べてください.

左は面内の線形音響モードだけをもつ2次元薄膜であり,状態密度D(ε)=Aεが0からε_Dまで続く.k_BT付近までの低エネルギー側を青く示し,低温の熱容量CがT²に比例することを記す.右は全2Nモードを同じε_Dに集めた比較模型であり,低温の励起が指数的に減少する. 左は面内の線形音響モードだけをもつ2次元薄膜であり,状態密度D(ε)=Aεが0からε_Dまで続く.k_BT付近までの低エネルギー側を青く示し,低温の熱容量CがT²に比例することを記す.右は全2Nモードを同じε_Dに集めた比較模型であり,低温の励起が指数的に減少する.
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考え方 モードのエネルギーを状態密度で重みづけする.

  1. ∫0εDAεdε=2N より A=4N/εD2.Uth=∫0εDD(ε)udε に x=ε/(kBT) を入れ,上限を無限大に延ばすと

Uth=AJ(kBT)3,C=12NkBJ(kBTεD)2

となり,C∝T2 である.

  1. 高温の等分配則で u≈kBT より C→2NkB.同一間隔なら b=εD/(kBT) として低温では C≈2NkBb2e−b.音響模型は小さな間隔が残り,べき乗で下がる.